肥満の状態とは様々な病気を引き起こしてしまうことが医学的に明らかになっており、特に肥満との関係で最も注目されているのが糖尿病、高血圧、脂質異常症などの生活習慣病です。そして肥満を改善せずに長期的に肥満の状態が続いてしまうと生活習慣病がどんどん悪化し、血管を傷つけたり、血管を脆くしたり、やがて動脈硬化を引き起こす原因になります。そして動脈硬化は、脳梗塞や心筋梗塞などの命を脅かす重篤な病気につながる恐れがあります。さらに全身の血管が傷つくと老化のスピードが加速します。人は血管から老いるという言葉があるように若々しくいたいと思うのであれば全身の血管を若々しく健康に保ってあげることが重要な要素になります。
しかし、痩せようとダイエットで過剰に食事制限をすると体重は落ちたものの体調が悪くなったり、理想的な体型にならなかったり、痩せたものの顔色が悪く不健康に痩せて老けて見えてしまうなど、肌はボロボロ、髪の毛はパサパサになってしまったという最悪の状態に陥りかねません。
糖質の代わりにタンパク質を摂ることが基本になります。糖質は太ってしまう大きな原因になり、糖質を減らすのはもちろんのこと、逆に糖質を減らした分しっかりとタンパク質を摂らなければいけません。
タンパク質は筋肉の材料であり、さらに肌や髪の毛を形作っている土台となるものです。ダイエット中であっても肉や魚、卵といったタンパク質が豊富なものは絶対に摂らなくてはいけません。
脂肪肝こそが痩せられない原因
美しく痩せる方法、健康的に痩せる方法の鍵は肝臓にあります。脂肪肝という言葉を聞いたことがあると思います。これは肝臓に脂肪が貯まり、フォアグラのようになってしまった状態のことを指しています。脂肪肝は、実際日本人の約3人に1人の推定で約4000万人もの人が脂肪肝であると言われています。そしてこの脂肪肝こそが痩せられない原因になっていることが指摘されています。
この脂肪肝には、お酒の摂りすぎが原因でなるものと、糖質の摂りすぎが原因でなるものがあります。特に日本人は糖質の摂り過ぎによって脂肪肝になってしまうケースが圧倒的に多いとされています。このような状態だと肝臓の機能が上手に働かず、いくらダイエットに取り組んだとしても、脂肪を燃やす効果を十分に得ることができません。つまりなかなか痩せられません。少食なのに痩せない、いろんな方法を試したけれど全然痩せないのは、自分が 脂肪肝になってしまっているのではないかと疑う必要があります。
現代病の脂肪肝
脂肪肝は、肝臓に脂肪がたまりすぎた状態のことで、糖質の摂りすぎやアルコールの飲み過ぎによって起こる肝臓の現代病です。正常な肝臓には3%から5% の中性脂肪が蓄えられていますが、不摂生な生活が続くと内臓脂肪が増加し、20%を超えてしまうと脂肪肝と呼ばれる状態になります。
一度脂肪肝になってしまうと肝臓の細胞の6割以上を占める肝細胞が炎症を起こし、ダメージを受けます。すると肝細胞内の中性脂肪が血液中に溢れ出し、体中に移動して、お腹や足、腕などに脂肪として蓄積されて肥満へとつながります。さらに酷くなると血液がドロドロになって動脈硬化を引き起こします。
また、脂肪肝になると肝臓の機能が低下し、アルコールの分解や糖を処理する働きが悪くなります。さらに血糖値を安定させる働きも低下するため、余計に脂肪が蓄積しやすい体になります。この状態になってしまうと頑張ってダイエットをしたとしても十分な効果を得ることができません。
12時間ダイエット
12時間断食をすれば脂肪は消費され、体重が落ちてくれば悪くなりかけた肝機能が改善することが分かっています。例えば体重を7%を減らせば肝細胞から脂肪が減少して脂肪肝が改善し、体重を10%減らせば肝臓の脂肪が改善するというデータがあります。
この12時間断食は、何も食べないのは週1回だけでも良く、お腹が空いた時は大豆を食べる、この3つだけ守ることです。この12時間には睡眠時間も含まれており、例えば朝6時に朝食を食べるのであれば、夕方6時までに夕食を終えておくということになります。12時間断食を行おうとすると、1日3食の人は、自ず1日2食になり、脂肪肝の原因の一つである糖質の摂取量が減ります。また食事の時間をしっかり開けることで肝臓が休むことができます。
この12時間断食によって空腹の時間を長くすると体内でケトン体という物質が増加します。ケトン体は脂肪が使われる時に脂肪から作られる物質で、エネルギー源にもなります。そして脂肪が燃えて作られるケトン体には、炎症や活性酸素から神経細胞を保護する役割があります。活性酸素は体のサビと呼ばれ細胞の老化を引き起こし、肝機能の低下や様々な病気の原因となります。
オートファジーと脂肪肝
オートファジーとは簡単にいうと古くなった細胞を新しくする奇跡のメカニズムです。空腹の時間が長くなると体は生存するために体内にあるものでなんとかエネルギーを作ろうとします。そして古くなったり、壊れたりした細胞内のタンパク質を集めて分解してエネルギーを作ります。その際、古くなった細胞内のミトコンドリアも分解され、エネルギーを供給するとともに新たに生まれ変わります。オートファジーによって細胞が生まれ変われば体にとって不要なものや老廃物が一掃され、細胞や組織機関の機能が活性化し、病気になりにくく若々しい体を実現することができます。
しかし、体の中に食べ物から得られた栄養が十分に存在している状態では、オートファジーはあまり働きません。オートファジーをしっかりと発動させるためには空腹時間をしっかりと設けて、あえて飢餓状態を作ることが重要であると考えられています。
そして最新の研究はオートファジーが起きないと脂肪肝になってしまうことも報告されています。逆にオートファジーが起こると肝臓は細胞レベルで蘇ります。オートファジーを最大限に働かせるためには16時間の断食が理想的であるとされていますが、肝臓の脂肪を落とすには12時間断食でも十分だと分かっています。
実感できる12時間断食のメリットの一つが、腸内環境の改善です。そもそも腸の働きを低下させる原因こそ食べ過ぎであり、週に1回12時間断食を行うだけでも大きく改善されるはずです。
脂肪肝の減らす食べ物
肝機能検査によって肝臓のタンパク質の代謝に関わる3つの酵素の数値を調べることで脂肪肝の疑いがあるかどうかが簡単に分かります。また肝機能の数値を調べる以外にも脂肪肝の目安となるのがBMIです。BMIが25以上の肥満の人は、特に男性の場合ほぼ100%が脂肪肝だと言って良いでしょう。
脂肪肝を改善し、効率的に体中の脂肪を落としていく方法は難しくなく、いつもの食事をちょっと工夫するだけです。糖質を取ると血糖値上がりますが、上がった血糖値を下げようとインスリンが分泌されて、インスリンによって脂肪の合成が促進されます。その結果、肝臓を始め、体中に脂肪が蓄積することになります。そのため血糖値を制することが基本になります。この血糖値を制するのに役立つのが、高カカオチョコレートです。
高カカオチョコレート
カカオ含有量が70%以上の高カカオチョコレートの原材料であるカカオに含まれる「カカオポリフェノール」には、多くの効果効能があります。例えばカカオポリフェノールによって、様々なダメージを与える活性酸素が除去されます。肝臓に貯まった脂肪と活性酸素が結びつくと肝機能を低下させてしまうため、活性酸素を除去することによって脂肪肝の予防や改善につながります。
また、インスリンの働きを良くする効果もあり、血糖値の急激な上昇を抑えることにも役立ち、さらにカカオには食物繊維が豊富に含まれているため、糖が吸収される速度を緩やかにし、食後の血糖値上昇を抑えてくれます。つまりカカオポリフェノールと食物繊維のダブル効果によって、血糖値の上昇を抑え、脂肪肝を改善し、痩せ体質へと導いてくれる食べ物です。
ただし、一気に沢山食べてもあまり効果はありません。カカオポリフェノールの効果は食後約2時間がピークです。そして約4時間でその効果は無くなってしまうため、基本は食前で1回につき5gが適量です。
アスパラガス
アスパラガスは、必須ビタミンとミネラル、特に葉酸とビタミンA、ビタミンCビタミンKの優れた供給源であり、かつ低カロリーの食べ物です。アスパラガスは94%が水分のため、低カロリーかつ水分の多い食品を摂取することによって体重の減少につながることが研究によっても明らかになっています。またアスパラガスには食物繊維も豊富に含まれており、血糖値の上昇を抑えてくれることによってダイエット効果が期待できます。一方でルチンというポリフェノールが沢山含まれており、毛細血管を強く丈夫にして血流を改善してくれるため、高血圧や動脈硬化、脳卒中、心臓疾患などの生活習慣病の予防に効果があるとされています。また抗酸化作用も期待でき、アンチエイジングや認知症予防にも有効であり、カリウムが多く含まれているため血圧を下げてくれる効果も期待できます。
しじみ汁
お酒を飲む前にしじみ汁を飲むと良いと聞いたことがあると思います。しじみには、タウリンというアミノ酸に似た栄養素が入っており、タウリンは肝細胞の膜を丈夫にしてくれる作用があります。またATPの合成を高めることで、肝臓を元気にしてくれます。さらにしじみには、メチオニンという必須アミノ酸やビタミンB12も含まれていて、これも肝臓の働きを助けてくれます。
ブラックコーヒー
コーヒーを1日に2から3杯飲むと脂肪肝や肝硬変を予防し、肝臓の線維化の進行を抑えられることが分かっています。そのメカニズムはまだはっきりしていませんが、肝細胞の炎症を抑える効果がコーヒーにはあると考えられています。因みに紅茶には、そのような効果は認められていません。ただしカフェインの摂取量には注意をしましょう。
植物性タンパク質
タンパク質が不足すると肝臓にダメージが与えられることが分かっています。特に現代人は、植物性タンパク質が不足しているため、意識して植物性タンパク質を摂ることを心掛けましょう。植物性タンパク質の代表が豆類です。とりわけ大豆がおすすめで12時間断食でも空腹を紛らわす食べ物として最適です。さらに豆腐、納豆、おから、豆乳などカロリーの少ない大豆製品もおすすめです。そして植物性タンパク質だけでなく動物性タンパク質もバランスよく摂取することが重要です。
ビタミンが豊富な食べ物
既に脂肪肝になっている人には医師がビタミンEのサプリメントを勧めることがあります。なぜならビタミンEには、肝臓の炎症を抑えてくれる作用があるからです。しかし医師に勧められない限りビタミンEのサプリメントを飲むのはおすすめできません。ビタミンEもまずは食事で摂ることを心掛けましょう。
ビタミンEは、アーモンド、ピーナッツなどのナッツ類、カツオやアジ、秋刀魚などの魚介類に豊富に含まれています。また緑黄色野菜にも豊富に含まれています。
そしてビタミンBやビタミンCも大切です。ビタミンBやビタミンCは水に溶ける水溶性ビタミンと呼ばれており、水溶性ビタミンは体に必要な量以上を摂ると12時間もすれば尿と一緒にほとんど外に出ていきます。そのため取り過ぎはあまり問題になりませんので、不足しないようにとにかく毎日マメに摂ることを意識しましょう。
ビタミンBが豊富に含まれている食べ物としては、レバー、魚肉、貝類などが挙げられます。またビタミンCが多いのは赤や黄色のピーマン、ブロッコリー、キウイ、イチゴなどが挙げられます。
また、レバーには鉄分が多いということも知っておくべきでしょう。特に不足していない人が鉄分を摂り過ぎると体内で炎症が起きることがあり、その炎症は特に肝臓で起きることが多いです。とりわけ中年以降の男性や脂肪肝の男性と閉経後の女性は鉄分の過剰には注意しましょう。
濃い緑茶
緑茶に含まれるポリフェノールの一種であるカテキンには、様々な健康効果があります。その代表的な一つが痩せる効果です。最近の研究では高濃度のカテキンを継続的に摂取すると肝臓や筋肉における脂肪代謝が活発になり、その結果脂肪の燃焼が促進されることが分かっています。
また糖の吸収を穏やかにしてくれる効果もあり、食後の血糖値の急激な上昇を 抑えてくれる効果もあります。さらには余分な脂肪が合成されるのを防ぎ、脂肪燃焼効果と合わせて肥満予防に役立ちます。
クコ茶
クコの実は、肝臓に良い働きをしてくれることで知られています。これは、クコに含まれるベタインという成分の効果です。ベタインには、肝臓に脂肪が溜まりにくくする作用と脂肪の排出を促進する作用があります。さらに肝臓の解毒を促進してくれる効果があり、肝臓を活性酸素から保護する効果もあります。
さらにクコ茶には、タンパク質や食物繊維、ビタミン、ミネラルも豊富に含まれており、特にビタミンCはレモンのおよそ70倍程度も含まれていると言われており、美容にも健康にも効果的です。
ただし、クコ茶はナス科の一種であるため、ナスにアレルギーがある人は注意が必要で、妊娠中の方や持病がある方も飲む前には、お医者さんに相談しましょう。
睡眠と食欲ホルモン
毎日食事もバランスよく摂って運動しているつもりなのになぜか痩せられない。その理由の一つに睡眠不足があるかもしれません。実は体型に大きな影響を与えているのが睡眠時間や食べる時間であることが分かっています。
睡眠時間が短く足りていないと満腹ホルモンのレプチンが低下し、空腹ホルモンのグレリンが増加することが分かっています。満腹ホルモンが減って空腹ホルモンが増えやすくなるため、それだけドカ食いをしやすくなります。さらに空腹ホルモンは、分泌されることで甘いものや高カロリー食、つまりジャンクフードを求めやすい傾向になるとも言われています。
特に睡眠時間が4時間以下の人は、7時間から9 時間の睡眠をとれている人よりも73%も肥満になりやすいという研究データが報告されています。そのため睡眠時間が慢性的に足りていないという人は、まずは睡眠を改善することに注力していただきたいと思います。
一方で、グレリンが分泌されることによって細胞でエネルギーを生み出す役割のあるミトコンドリアを活性化してくれる効果があることが分かっています。ミトコンドリアが元気になることで若返り効果が期待できますが、慢性的な睡眠不足によってグレリンが分泌されるのは良いことではないため、あくまで日中の空腹時間を作ることによって空腹ホルモンのグレリンを分泌させるということは意識しつつ、睡眠不足によって過剰なグレリンを分泌させることはしないようにするということが大切です。
また睡眠をしっかりと取ることによって、成長ホルモンの分泌をしっかりと促すことができます。成長ホルモンは健全な新陳代謝を促し、細胞の修復や骨の形成、脂肪を分解するなど重要な働きをしているホルモンです。この成長ホルモンは、寝てから23時間で最も分泌量が増えると言われており、質の良い睡眠をとれているかどうかが成長ホルモンの分泌には深く関わっています。この成長ホルモンの分泌をしっかりと高めることで痩せやすい体質に変えていくことができます。
歯磨きしないと太る
歯を磨かないと痩せられないことが分かっています。例えば口の中には様々な菌が存在し、最近の研究では口の中の悪玉菌が食べ物や唾液と一緒に腸まで運ばれて、腸内環境に影響を及ぼしているということが分かってきています。悪玉菌の影響で腸内細菌のバランスが乱れると便秘がちになり、体の代謝機能が低下します。そして代謝が悪くなると脂肪が燃焼されず、痩せにくい体になってしまいます。また口の中の病気である歯周病は脂肪肝や糖尿病とも深い繋がりがあるとされています。
歯周病によって炎症が起きるとサイトカインという物質が生まれ、この物質がインスリンの働きを阻害し、血糖値を上げてしまうことが分かっていいます。そして血糖値が上がれば、当然太りやすくなり、脂肪肝も悪化します。さらに糖尿病になれば、歯茎の毛細血管が脆くなり、さらに歯周病が酷くなるという負のスパイラルに陥ります。歯周病菌は寝ている間に増えやすく、朝歯を磨かないまま食事をしてしまうと、食べ物などと一緒に歯周病菌が体内に入り込みます。歯磨きをしてから朝ごはんを食べることを心がけましょう。
脂肪を落とすための適度な運動
脂肪を燃焼させるためには、激しい運動は必要ありません。重要なのは組み合わせであり、有酸素運動と無酸素運動の2種類が必要です。なぜなら有酸素運動は脂肪を燃焼させますが、無酸素運動は筋肉量を増やし、基礎代謝を上げて太りにくくするという効果があるからです。つまりそれぞれの運動にはそれぞれの役割があります。
そして無酸素運動の代表である筋トレのポイントは、下半身の筋肉を鍛えることにあります。なぜなら下半身には大きな筋肉がいくつもあり、全身の筋肉の 約7割が集中しているからです。下半身の筋肉を鍛えることで効率的に、その量を増やし、効率的に基礎代謝をアップさせることができます。その下半身の筋肉を鍛えるためにはスクワットがおすすめです。
一方の有酸素運動は、激しいランニングをする必要はありません。歩くだけでも立派な運動になります。そしてウォーキングをする時は背筋をまっすぐ伸ばし、歩幅をいつもより広く取るようにしましょう。そうすることで自然と歩く スピードも早まります。1日20分を目標にウォーキングを始めるだけで、あなたの脂肪は落ちていくはずです。
脂肪肝に効果的なツボ
肝臓は1分間で1500mlもの血液を浄化しており、その主な働きは胆汁を生成して脂肪を消化させ、糖をグリコーゲンとして蓄え、体内に侵入した異物や毒物を解毒するなど様々な役割を担っています。
脂肪肝に効果的なツボである太衝(たいしょう)をツボ押しすることで、肝臓の機能を高め、血を浄化をサポートできます。上述した通り脂肪肝は、肝臓に脂肪が貯まるため、肝経の働きを整えることで、血の浄化を促進することで脂肪肝の改善が期待できます。
太衝(たいしょう):足の親指と人差し指の骨が合わさったところの少し手前のところ
【本コラムの監修】
・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。