東洋医学的体質診断(カウセリング)とは

    東洋医学的体質診断(カウセリング)とは

    東洋医学の起源は、中国伝承医学にあり、それは過去の治療経験を積み上げることによって確立した学問です。つまり伝承医学のベースにあるのは、過去の経験によって一体どんなことが起こったのか、その再現性が伝承されてきた学問です。

    例えば、ある治療を施した時に、一体どんなことが体の中で起きているのかを調べ、ある人は反応する、ある人は反応しない、どうして反応するのか、一体この人はどうして治ったのかを調べました。そこで、その人は体力がある、免疫力がある、この人は免疫力がないなどの分類を行い、それを陰陽に関連づけ、この人には何かをするとプラスの作用がある、この人には何かをするとマイナスの作用にあると考えていきました。

    一方で、どうしても上手く分類できないことがたくさん出てくる、そこで大自然の循環、宇宙の循環、あるいは人間関係の循環の中で理屈づけるために五行(木火土金水)と言う概念を生み出し、これによって物事を様々な角度で診ていくことでそれを理解することができるようになりました。

    相生とは

    この五行の考え方の中で、1番最初の理解する概念が「木」です。木が種を植えたら芽が出て、成長してどんどん大きくなっていく、このように生まれたものが成長し、そして葉や実がなるような、そういう物事やエネルギーを創造する概念です。そして「木」は枯れていきますが、人間が刈り取って伐採し、それを燃やすとエネルギーが燃やされていきます。その「木」から何か強烈なエネルギーが湧き出てくる概念が「火」になります。

    五行(木火土金水)

    これは必ず燃え尽き、地面に落ちる、つまり「土」に帰る、これが「土」の概念です。その土に雨が降れば、それらは吸収・分解されて土の中に貯まります。次の「金」は、まさに金属であり、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウムなど、肥料に入っている微量元素に分解されるのが「金」の概念です。それが雨が降ってくると地面の中に深く染み込み、そうするとそこに種を蒔かれた木の根が入ってくるとその自分たちが死んだものそのものを栄養として木がまた生えてくる、このような命の循環を延々と繰り返している概念が五行になります。

    これを医療に使う時に「木」に相当するもの、その成長やものを生み出す概念は、人の体の中でエネルギー源を作っている臓器が肝臓です。肝臓はグリコーゲンを作ったり、各種酵素を作ったり、例えばアンモニアという毒素を綺麗にしたりする役割があります。次の「火」はエネルギーを使うところの心臓に当たります。そして「土」の貯めるところは胃であり、「金」は二酸化炭素と酸素を分ける肺にあたります。また「水」を作るは腎臓、おしっこを作るところです。

    このように当てはめていくと肝臓がエネルギーを作り、それを心臓がエネルギーとして使う、それが体中に流れていく、そして胃に食べ物が溜まって消化吸収する、これが腸管に入っていってブドウ糖が流れていくとそれが心臓のエネルギーで回していくことになります。

    さらに肺ではエネルギー源として酸素が必要になるため、酸素を取り込んで物を酸化してエネルギー作って電気を作り、二酸化炭素を捨てます。また大腸では排泄物と水分を分けて、そして最後に体の水分量を調節しています。ただしおしっこは老廃物だけではなく、イオンが多かったら捨て、足りなかったら再吸収して調節をしています。このように人間の体のコントロールをする概念が東洋医学の原点になり、木火土金水の流れを相生(そうしょう)として、木火土金水の順番で回ると考えています。

    相克とは

    木火土金水には、相手を打つ相克(そうこく)という概念があり、例えば「木」は「土」を打ち、「土」は「水」を打ち、「水」は「火」を打ち、「火」は「金」を打ち、「金」は「木」を打つ、このように丁度星型の関係があります。

    例えば、心臓が過剰に働きすぎていると西洋医学的に言えばアドレナリンが出て心臓の脈が上がってレニン・アデジオテンシンと言うホルモンが副腎から出て、血圧を上げていると言う風に解釈します。しかし東洋医学では、そういう解釈をしません。これは「木」からのエネルギーが行き過ぎて血圧や脈拍が上がっていると考えます。例えば車であればアクセルを踏めばエンジンがガンガン回るような理屈で捉えます。これを東洋医学では心悸亢進(しんきこうしん)と言います。

    そして「木」のエネルギーを打つのが「金」であり、エネルギーによって血圧が上がっている時には、エネルギーを抑える「金」、つまり肺の機能を上げるようにします。例えば運動会で走った後に深呼吸すると血圧も脈拍も下がるのと同じように「金」を意図的に亢進させます。その意図的に動かすことができるのが肺です。体の中で肺だけは随意にも不随意にも動かせる非常に特殊な臓器です。これを使って心悸亢進を治める呼吸法の代表が太極拳です。呼吸と体の運動をして体の血圧、脈拍を含めてコントロールする、つまり「金」の部分から体をコントロールするのが太極拳のような動きや呼吸法になります。

    また「水」は「水克火」であり、腎臓の部分は「火」を消すことができると考えます。つまり腎機能を上げるとたくさんおしっこ作るってことができ、そのおしっこは血液から作られるため血液の量が少なくなり、血圧下がると考えます。しかし腎の機能を意図的に上げることはできないため、漢方を使って腎機能を上げようとして考えます。例えば、猪苓湯(ちょれいとう)、紫苓湯(しれいとう)、五苓散(ごれんさん)などがあり、これらは元々キノコであり、つまりキノコを煎じると利尿作用があります。

    例えば五苓散は、胸から上の血液の量をコントロールして調整し、猪苓湯は下半身をコントロールする漢方薬です。頭に血が回っているのであれば五苓散を使うと、主に上半身の水が抜けておしっことして出るからです。一方で西洋医学の利尿剤は全身から均等に抜いてしまい、つまり上半身も一緒に利尿するので意識が遠いたりします。しかし東洋医学的には上半身、下半身、膝の関節だけとか特異的に水を抜くことできます。このように漢方薬は、必要な部分のみを亢進させる、あるいはこの部分を抑える、木火土金水を陽にしたり、陰にしたりして、そして体のバランスを取るという考え方をします。

    感情と木火土金水

    そして臓器が持つ感情があると考え、「木」のタイプは想像性が強い人、忍耐の強い人が当てはまります。「火」は、心を表し、道徳感とか倫理感が強く、「土」の胃に溜まる臓器には、サボる、嫉妬、悩む、卑怯な、甘やかすなどの概念があります。そして「金」は、白黒を分ける時に出る、悲しみと言う概念があります。「水」は、水が適応できないという状態、つまりうまくいってない状態を表します。

    それぞれに精神の概念があり、例えば我慢することによって蓄えたエネルギーで相生で「火」が動く、「火」が出すぎて自分は凄いと奢ると人のことを馬鹿にする概念が生まれ、するとみんなから批判され、その結果悲しみという概念ができて反省すると適用してまともな人間に戻っていくというように感情も木火土金水によって回っています。

    さらに「木」のエネルギーが強い人は、忍耐をしているため、我慢の限度をすると肝臓が壊れます。「火」の道徳感や倫理感が強い人たちは、こんなのおかしいと倫理感が高くなれば高くなるほど血圧が高くなるので心臓循環系の疾患になり、脳梗塞、脳梗塞、血圧が高くなります。「土」は、貯まる概念、つまり嫉妬が強い概念のため、胃がんや乳がんになる人が多いと言われています。

    「金」にあたる肺は、悲しみの概念で胸が詰まる思い、つまり肺を悪くするので常に悲しんでいる感情があるとこれが喘息を起こします。「水」は、環境適用ができない概念が、それが腎盂炎や腎臓と膀胱は繋がっているため膀胱炎を起こし、おしっこから血が出ることになります。人によっては膀胱炎になる時があったり、ならなかった時があるのは悲しみという概念があって、それに適応できないからと東洋医学では捉えていいます。このように、この人はどういう病気になりやすいのかが一生の傾向として掴めるようになります。

    東洋医学的体質診断(カウセリング)とは

    私たちは体調を崩せば、病院に行き、体温や血圧を測り、採血や心電図、レントゲンを撮り、脈やお腹の状態を見て、医師の診断を受けます。西洋医学では、このように機器を使ってデータを集め、その数字を見て治療の判断をします。

    一方で東洋医学では、西洋医学のような機器を使ったデータではなく、東洋医学的体質診断に基づきお客様の心と体の状態について探っていきます。この東洋医学的体質診断とは、望診(ぼうしん)、視診断(ししん)、聞診(ぶんしん)、舌診(ぜっしん)、問診(もんしん)、脈診(みゃくしん)、切診(せっしん)のことです。

    • 望診(ぼうしん)、視診断(ししん):お客様の体格や動作、顔色を確認します。
    • 聞診(ぶんしん):お客様の声や話し方や呼吸の仕方をチェックします。
    • 舌診(ぜっしん):表裏の舌の状態を確認します。
    • 問診(もんしん):痛みや不快感、食欲、睡眠不足などの自覚症状、生活習慣を質問します。
    • 脈診(みゃくしん)、切診(せっしん):脈や肌の状態などを直接確認します。

    この東洋医学的体質診断で集めた情報を分析して治療にあたります。このようにまず「人を診る」ことが東洋医学の大きな特徴となっています。

    東洋医学の1番最初の診断ポイントは「望診」と言い、遠くから見てこの人は一体どのタイプにあたるかを診ていきます。そして「視診」で近くで診て、例えば黒目と白目の境界がくっきりしているから「金」の作用が強く、肺の作用が強いのではないか、だからこの人はちゃんと呼吸ができているか、できていないかというように診ていきます。それから性格(感情)がきっちりしているのか、していないのか診てみたり、その逆で黒目と白目がぼやけているのであれば、この人はだらしない人の可能性がある、あるいは交感神経と副交感神経のバランスが崩れ、しっかり寝ることができず、またいつまでもダラダラ寝ているのではないかと考えます。もちろん顔も診て、例えば唇は乳房を示し、白目の部分は肝臓を示すなどもあり、この人肝臓が悪い、子宮が悪いと診ていきます。

    次に「舌診」で舌を診て、唾液がちゃんと出ているのか、ちゃんと体の代謝が回っているのかを確認し、例えば舌がむくんでいたら腎臓が悪いのかなと考えます。次に舌を裏返すと動脈が赤で静脈が青で見えますが、赤の方が怒張(どちょう)と言いますが、膨らんでいる場合は、怒っている、交感神経が優位などを診ていきます。一方の青が膨らんでいる場合は、腎臓、膀胱系が悪い、例えば排泄できてないと考え、足を触り、押して戻らないのであれば腎臓が悪くなっていると考えます。

    そして次に「脈診」しますが、西洋医学では1 分間に何拍している、脈圧が強いことを確認しますが、東洋医学は心・肝・腎・肺・胃・三焦の6点を取ります。心・肝・腎・肺・胃・三焦で心臓の圧力はどうなんだ、肝臓の圧力「沈」か、腎臓の圧力は、肺・胃・三焦は西洋医学にはない臓器の名前で、あえて言うとリンパ系になります。ただしリンパ管ではなく免疫系になります。

    そして、この人の臓器が悪いのでれば、実際にどこが活動していて、どこがダメなのかをこの脈診で診ていきます。この脈の取り方も4つあり、例えば怒張しているような脈なのか、それともペコンペコンと凹んでいるのか、ほとんどないのかを取り、それぞれにこの6箇所に当てはめて最後は「切診」で直接臓器を触ります。

    例えば、この人は胃が悪いのだろうと、そして目を見たら血走っているから怒っているんだろう、そして怒っているが故に肝臓のエネルギーがどんどん心臓の方に流れているんだろうと、このように当たりをつけ、肝臓を右の肋骨の下とからぐーっと押して、痛いのであれば診断が当たっていたことになります。

    また、確認するために、例えば肩には怒りや血圧が高い場合に用いる肩井(けんせい)と言うツボに鍼を打つと、そうするとあらなんかちょっとイライラしたのが治ったんですけどなれば、診断が的確だったことになります。

    八綱弁証とは

    五行の先の診断方法を八綱弁証と言います。この五行タイプを、さらに8つのタイプに分けます。その人がどんな人なのかを診ていくのですが、これを個体医療と言い、これは東洋医学に関わらず伝統医学は一番大事にしているところです。それによってなる病気も違うし、出す薬も違う、あるいは同じ薬であったとしても全く別に作用します。

    有名な葛根湯は乳房から上の炎症を全部取る処方ですが、風邪引いた時に咳が出る、頭が痛い、肩が凝るなどに効き、風邪もその中の症状がいくつかあり、それぞれに効く漢方薬です。他にも乳腺炎とか乳房炎、さらにはお乳が出過ぎる人、全くでない人にも効いたりします。

    一方で西洋医学には、1症状1薬剤の原則があり、いろんな症状に組み合わせて使う使い方をします。しかし漢方薬の場合は1つの薬がいろんな作用に使えるため、そのために八綱弁証を使って診ていきます。八綱弁証は、まず体力がある場合を「実証」と言い、体力がない場合を「虚証」とします。そして体温が高いのが「熱証」、反対に体温が低い人のが「寒証」で、これらの4つタイプができます。さらに「陰」「陽」、あるいは「表」「裏」の概念を当てはめます。

    例えば、アトピー性皮膚炎になっている場合は「表証(ひょしょう)」です。このアトピーと全く同じようなことが大腸に起きている潰瘍性大腸炎は「裏証(りっしょう)」になります。実は皮膚も口腔から始まって食道、胃、十二指腸、小腸、大腸、肛門、これらは竹輪のような関係なので、竹輪の中側も表になります。

    竹輪の中身は、初めて竹輪を包丁で切った時に見えるが随質なので同じ組織です。ところが皮膚の側が表で、消化器の出ているところが裏になるため、アトピー性皮膚炎で潰瘍性大腸炎の人はあまりいません。その逆で潰瘍性大腸炎の人は、アトピー皮膚炎はすごく少なくなります。簡単に言うと毒を外に出しているか、中に捨てているかの違いになります。これが「表証」と「裏証」の考え方になります。

    また、1番分かりやすいのは熱証かつ実証で、体温がものすごく高くて、そして体が強いという人、例えば格闘家が挙げられます。当然、虚証で格闘家の人はいません。また熱証の方がエネルギーをたくさん使えるため体が大きくなったりします。またそういう人が試合をすると頭から湯気が出ているような時あり、体温が高い温度なるとたくさん白血球を作り、赤血球もたくさんあるから呼吸して酸素をどんどん摂りこんで、体の隅々まで届けられます。当然、白血球も血小板もたくさんあると攻撃されたところに細菌感染しても白血球がちゃんと攻撃して細菌をバクバク食べて、血小板でペタペタ埋め傷口が塞がりやすくなるわけです。そのため怪我に強く、出血に強く、感染に強くなります。

    しかし、実証で熱証の人に多いのは脳梗塞、心筋梗塞です。つまり若い時は、傷口があっても血管とかどんどん修復しますが、無理が効くから無茶なことしてしまい、そうするとある時ギュっと詰まってしまって心筋梗塞とか脳梗塞になってしまいます。

    また、同じ実証でも寒証の人、つまり体温が低い人はがんになりやすいと言われています。なぜならがん細胞は38.5℃以上になるとほぼ死滅しますが、格闘家やスポーツ選手などの実証の人は、エネルギーが強いためがん細胞も増殖するスピードが速く、また体温が低いため増殖に歯止めが効かなくなることが挙げられます。

    一方で、虚証で体温が低い人はうつ病になりやすく、このタイプは甘いものや清涼飲料水が好きな方が多く、特に糖分を摂ると体温が低くなります。そもそも砂糖をたくさん摂ると短鎖脂肪酸を作る腸内細菌がすごく少なくなり、短鎖脂肪酸が少なければ少ないほどうつ症状になります。

    そして熱証で虚証は、現代では最も少なく、虚証は元々体温の調節が上手くできない人で、虚証の熱証の人は強弱体質なのに高体温になるため、体がどんどん乾きます。例えば口腔内感染症などが挙げられます。今はエアコンつけて夏は涼しく冬は温かくするため、季節がいつだか分からないと人間は体温を低く設定します。例えば冬山に遭難して仮死状態になっても生きを吹き返すことがあり、体温を下げておく方が安全なわけです。

    東洋医学では「中庸」と言って真ん中が良く、体力は普通が良い、体温も高くも低くもないのが良いのが中庸です。そのためエネルギーがあり過ぎる、体温が高過ぎるのであれば下げましょうということができるのが東洋医学です。例えば西洋医学では、下熱鎮痛剤があっても体温上昇剤はなく、免疫抑制剤があっても免疫上昇剤はありません。つまり西洋医学では実証が虚証になることはあっても虚証から実証にすることはできません。

    東洋医学では、補中益気湯と言うよく使う漢方薬がありますが、これは虚証を実証にする漢方薬です。さらに体温を上げる漢方薬は7種類か8種類ぐらいあります。例えば実証で熱証の人であれば、この人は循環器の機能が強すぎる、つまり肝気亢進であり肝の機能が我慢していることが多いと、それはエネルギーがどんどん心臓の方の作用を強くしてしまいます。そこで「火」を打つ「金」によって、体温が高いのであれば体温を下げるために、例えば唐辛子(カプサイシン)は摂ることで汗かきますが、実は体温を下げる漢方薬でもあります。このようにして体質改善を図ることができる東洋医学に対して、西洋医学の概念には全くありません。

    さらに表と裏があり、そして縦横で実証、虚証、熱証、寒証で新たな軸を作ると、例えば甘いものを摂っている、摂っていないを考えることができます。他にも食品添加物や乳製品を入れたりすると複雑になってきますが、それによってこの人がどんな病気になりやすいか、東洋医学の概念があれば八綱弁証で組み合わせていくことができます。ただし基本は八綱弁証で表証、裏証で取ります。

    例えば表証の悲しみっていう概念は、皮膚に強く現れる表証であり、例えば失恋したのでニキビができるのは代表例です。そのニキビがどこにできるのかを診るのは東洋医学では得意で、思いニキビや思われニキビが表に出て、逆に悲しみが裏証で出ると小腸に出ます。つまり悲しみは下痢を引き起こし、その症状で分かりやすいのが過敏性腸症候群です。このような場合で、消化器クリニックに行くと抗うつ薬と下痢止めで治すことになりますが、東洋医学を知っている人であれば、その原因である「悲しみ」を考えます。

    東洋医学的に診ると、例えばリュウマチは、先ほどの軸で言うと中庸から実証の間ぐらいのやや体力のある人がなりやすく、また砂糖、植物性油を多く摂っていると発症率が上がってきます。特に自己免疫疾患は昔ほとんどなかった病気ですが、砂糖や甘いもの、それから乳製品、植物性油、食品添加物の3つが組み合わせると増えていきます。このような人には、その人たちにどんなものを食べていましたか、エネルギーがある方かない方ですか、それシャワー浴びていますか、風呂入っていましたかなどを聞いて問診していきます。一方で西洋医学では、東洋医学的な問診をせず、食事の耳診、入浴の問診はしません。

    東洋医学は、まず木火土金水から始まって八綱弁証を診て、そしてなぜその八綱弁証でいう体力があるのか、体温が低いのか、どのような生活をしているのか、何を食べているのかを診ていきます。元のタイプと生活習慣を診て、そしてこの人はどうやったら原因除去できるのかを考えます。そうやって人を診るのが東洋医学の診断の基本になります。

    「人を診る」ことが最も大切

    西洋医学では、痩せてる人、太っている人、エネルギッシュな人、無気力な人も、数値が同じであれば、人括りにされて、風邪を引けば、風に対する薬を処方されて、皆同じ薬を飲みます。しかし実際は同じ症状でも、体質によって最適な治療方法は変わりますし、体質に合わない間違った治療をすれば、思うような結果がでないこともあります。

    世の中には美容法が溢れており、ある方に最適な方法だったとしても、他の方にとっては効果が全く得られない、むしろお身体の不調を加速してしまうこともあります。だからこそ、このようにお客様の体質を把握して、最も有効な施術を行っていかなければならないのです。

    東洋医学の「全息理論」

    東洋医学には「全息理論」があります。舌、頭部、手、足、耳、目の虹彩などの身体の一部が、内臓や各器官と関連し、投影されているという考え方です。つまり、部分が全体を表し、全体は部分を表すということです。足裏と内臓の関係などはこの「全息理論」に基づいています。

    「全息理論」では、足や手のひらだけでなく、耳や舌、目の虹彩からも内臓は覗けると考えています。それだけではなく、爪や歯肉などにも全身の症状が現れると考えます。

    ハリニーでは、悩みの局所だけに注目せず、東洋医学の「体質診断」「全息理論」をベースに、お客様の顔診、脈診、舌診、腹診、問診で全体を診ていきます。例えば頬の毛穴が目立つ方は東洋医学でいう脾の機能が低下しているなど、顔色や表情、脈、舌などから症状がわかります。

    東洋医学で診る「ぎっくり腰」

    具体的に身近なぎっくり腰を東洋医学的な見方を考えてみましょう。まず西洋医学は症状があるところとその原因が同じ場合は非常に強い治療効果を発揮します。ぎっくり腰で整形外科に行き、CTやMRIで画像上は問題なければ、大抵の場合は鎮痛剤あるいは痛みが出て炎症がある場合はステロイドが処方されたりします。

    一方で東洋医学では全く違う見方をし、八綱弁証(表・裏・寒・熱・虚・実・陰・陽)と陰陽五行説で考えます。八綱弁証で腰が悪くなる人は実証にあたると考えます。八綱弁証では、体力がある人が実証、体力のない人が虚証、体温の高い人が熱証、体温の低い人が寒証で考えますが、まずこの虚証の人はぎっくり腰はならないと考えます。

    例えば喘息、うつ病、虫歯も虚証になります。また実証の体温が高い人では脳、循環系疾患の脳梗塞、心筋梗塞など、体温が低いとがんになります。ぎっくり腰は実証、すなわち体力がある、あるいは活動的な人、エネルギーがある人たちがなりやすくなります。

    次に陰陽五行で考えますが、陰陽五行(木火土金水)の概念は、木の象徴は下から上に伸びていく、繁栄するにあたり、その木を燃やすのが火です。木を燃料にして燃やすことは情熱、上昇するなどの概念に当たります。次の土は、その燃えたものは土に戻り、この燃えカスが灰で、灰の成分のミネラルが金です。そして雨(水)が降ってこれが地面に染み込んでいくと、その地面の中にそのミネラル成分が入り、それがまた次の木の素になります。このような大きな流れ、宇宙の流れ、人の気持ちの流れ、そして臓器を当てはめて考えるのが東洋医学です。

    例えば、木はエネルギーを作るので肝臓、つまりグリコーゲンを作るなど色々な物質を作り出します。火はエネルギーを消費する心臓にあたります。土は溜まるところである胃袋にあたります。金は古い分ける概念になり、肺は酸素を吸って二酸化炭素を出す、あるいは大腸、糞便と水を分ける概念になります。そして水を作るところは腎臓や膀胱、さらにここに感情が入ってきます。

    また、木はエネルギーを使うので忍耐という概念、火は道徳感、倫理感、燃えさかるエネルギーがないと使えない感情あるいは恋愛にあたります。土は、ここは溜まっているという概念のため、嫉妬、仕返し、サボりたい、甘えたいなど下の方に溜まっている腹の底にあるような概念です。金は悲しみや喪失感、人の別れ、命の別れの概念で、水は環境適応能力があると考えます。

    そして実証の人で、腰は土の概念にあたり、嫌なこと、やりたくない、行きたくない、会いたくないなどの概念になります。こういう感情がある時には現実に想定される物事よりも前に起こります。

    このように陰陽五行に当てはめて問診し、何か嫌なことがないですか、何のお仕事してますか、どういうポジションですが、どういう性格ですかなど、そういう事態や背景、社会状況を聞いていきます。そして単にストレスがあるとかないとかではなく、木火土金水のどのストレスに当たるのかを聞き、その結果として漢方薬の選定や鍼灸治療をします。

    例えば腰が痛い場合の漢方薬には、体を温める成分や痛みを取る成分が入っている漢方薬を選びますが、木火土金水の相生で考えれば土の対角にあるのが木(木克土)です。つまり強い滋養作用がある漢方薬を考えたり、あるいはその木の1個前の火を考え、これがエネルギーが強すぎると腐るため、やってられるか、おかしいじゃないかという概念が強すぎてエネルギーがこちらに行ってしまいます。そして火が強すぎると水で火を消す、この水の部分を受容するような漢方薬を考えます。これは基本的には全て利尿系のものになり、例えば五苓散、猪苓湯、紫苓湯などの漢方薬は冷静沈着になるという作用があり、結果として水を促すので利尿作用もあります。

    このように五行をきちんと理解し、社会状況、その人が抱えているストレスの種類を診ていくのが東洋医学で診る治療法です。腰に原因がない場合で、腰という概念の場所が悪くなった原因を探すのが東洋医学の得意なところです。そのため原因不明の疾患、西洋医学で原因不明の疾患が東洋医学で診ると良いのは、それは原因を特定して除去するからです。

    怪我や病気だけではなく、心の問題、忍耐の問題、冷静沈着になるなど、こういう要素も診ていきます。例えば、あなたが行きたくないところはどこですか、これからしたくないんだけどやらないといけないことは何なんですか、あなたが一体やりたくないけど我慢してることは何なんですか、このような聞き方をするのがぎっくり腰の治療に入る時の問診のスタートラインになります。

    お客様のお悩みや体質は、一人ひとり異なるため、肌と心と身体の状態を的確に把握し、その上で最適な施術を行います。お身体の不調、美容のお悩みをお客様と一緒に解決してまいります。どうぞご相談くださいませ。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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