
アレルギーは、免疫系がアレルゲンという物質に過剰反応したときに発生します。アレルゲンには花粉、ダニ、特定の食品や金属、薬などがあり、アレルギー疾患は年々増加傾向にあります。その中で最も多いのが、花粉症を含むアレルギー性鼻炎と喘息などの吸入性アレルギーです。このアレルギーと腸内環境には密接な関係があり、食べ物をしっかり選んで腸内環境を良くすることがアレルギーの発症や症状を抑えることができます。自分にアレルギーのある食べ物を徹底的に食べないことが大切ですが、アレルギーを撃退してくれる食べ物を食べることも大切です。
アレルギーで酸化する
体の老化や不調の原因は細胞が炎症すること、つまり酸化です。私たちの体を構成している細胞は、細胞膜によって包まれていますが、炎症は細胞膜が傷ついた状態であり、そこから細胞内に大量のフリーラジカルが侵入して体を錆びつかせて老化や不調の原因を作り出します。
ある食べ物を食べてアレルギーが直ぐに表れる急性型アレルギーは、自分でも判断しやすいですが、慢性型アレルギーの場合は症状が少ししか出なかったり、気づきにくい側面があります。特に慢性型アレルギーは腸の炎症を引き起こし、細胞膜を傷つけ、酸化を引き起こします。こういった慢性型アレルギーを引き起こす食べ物を特定して、避けることが体の酸化を防止する上で大切です。
アレルギーの検査は保険適用外になってしまいますが、慢性アレルギーになる食材がはっきりさせることができます。しかし検査をしなくてもある程度であれば特定することは可能です。なんとなくこの食材を食べると調子が悪くなる、だるくなる、おならが臭くなるなどは、知らない間に体に酸化が起きているサインです。
アレルギーを撃退する食べ物
最近の研究では、特定の食品がアレルギーの根底にある炎症を抑え、アレルギーを軽減してくれることが示唆されています。
生姜とターメリック
まず一つ目が生姜とターメリックです。いずれもアレルギー症状を緩和するのに役立つと言われており、生姜はアレルギー症状の原因となるヒスタミンを抑える作用があります。一般的に売られているアレルギーの薬には、抗ヒスタミン薬が多くあり、生姜にはほぼ同じような効果が得られることが分かっています。
一方で、ターメリック(うこん)に含まれるクルクミンは、アレルギー鼻炎によって引き起こされる腫れや炎症を最小限に抑えるのに役立つことが示唆されています。また抗酸化作用によって、老化や多くの病気の原因となる酸化から体を守る効果もあります。
プロバイオティクス
プロバイオティクスは、腸内フローラのバランスを改善することにより人に有益な作用をもたらす生きた微生物を含む食品やサプリのことです。食品であれば、ヨーグルト、甘酒、乳酸菌飲料、ぬか漬け、みそ、キムチ、納豆などの発酵食品に含まれています。
2017年に発表された論文(フロリダ大学)によると、プロバイオティクスは季節性アレルギーのある健康的な個人のアレルギーシーズン中の生活の質を改善すると示唆されています。その理由として、プロバイオティクスは制御性T細胞(Treg)の割合を増やし、耐性を誘導することにより、アレルギーシーズン中の生活の質を改善する可能性があると考えられています。またプロバイオティクスが医学的な治療法が存在していないアレルギー性鼻炎に有効であるとの可能性を示した論文(2013年プロバイオティクスによるアレルギー性鼻炎の治療:代替アプローチ)もあります。
またアトピーなどの皮膚のトラブルにも有効であることが明らかになっています。例えば2013年に発表された研究論文よれば、プロバイオティクスによって湿疹、アトピー性皮膚炎、ニキビ、アレルギー性炎症などの皮膚疾患を防ぎ、また治療できる可能性が示唆されています。そして過敏性皮膚疾患や紫外線のダメージや傷から皮膚を守ってくれる可能性も指摘されています。さらにメンタルを健康にする、体重を減らす、リーキーガットを改善するなど様々な効果が確認されています。
野菜や果物
食生活を改善するために最も効果的なのが、野菜や果物の摂取量を増やすことです。様々な健康効果のある食べ物やサプリが世の中にはありますが、最もシンプルでアレルギーに良いのが野菜や果物であることには変わりません。
例えば12ヶ月に渡って、4000人以上の子供たちの食事を調べた研究(イタリア)によると、野菜や果物の摂取量を増やすと、喘息、息切れ、その他のアレルギー性鼻炎の症状が軽減し、パンやマーガリンを多く摂取した子供は、喘息を起こしやすくなりました。野菜や果物が炎症を抑えてくれる効果と沢山の食物繊維によって腸内環境が整ったことが軽減した理由として挙げられています。その他にも、血圧を下げる、目や消化器系のトラブルを減らす、血糖値の改善などの効果も確認されています。
ビタミンCが豊富な食べ物
ビタミンCがアレルギーにも効果的であるという論文があります。韓国ソウルで4,554人の子供たちを対象に行われた研究では、抗酸化物質とアレルギー性鼻炎との関連が調べられました。その結果によると、ビタミンCの消費量が増加した子供たちのグループは、アレルギー性鼻炎の症状が少ないことから、ビタミンCを多く含む食品を食べることがアレルギー性鼻炎を減らすことが推測されています。
また、ビタミンCはヒスタミンを調節することでアレルギー症状を緩和することができることが分かっています。ヒスタミンは、アレルギー、感染、障害による体の炎症反応の一部として生成される化学物質です。例えば花粉などのアレルゲンに晒されると、皮膚、鼻、喉、肺の細胞がヒスタミンを放出し、その結果、痛み、かゆみ、鼻水、喘息などのアレルギー症状を引き起こします。研究によれば、高レベルのビタミンCが炎症を起こしている細胞のヒスタミン放出を阻害し、さらには放出されたヒスタミンを分解することを補助して、アレルギー症状を緩和してくれることが明らかになっています。
マグネシウムが豊富な食べ物
マグネシウムが気管支を拡張し、ヒスタミン作用を抑制することが分かっています。例えばブリンガムヤング大学の研究によるとマグネシウムが不足している動物は、適切なマグネシウムの動物よりもアレルゲンに晒されると血中のヒスタミンレベルが高いことが分かっています。
他にもマグネシウムが不安を軽減してくれることが研究で示唆されています。2017年に異なる研究を調べたレビューによると、マグネシウムが神経伝達物質の調整に重要な役割があるため、脳の視床下部に影響を与えてストレスや不安を軽減することが挙げられています。
腸内環境を整える「グルタミン」
一般的に腸内環境を整える食品として、発酵食品や食物繊維が挙げられますが、グルタミンも腸の健康を維持するために有効な成分であることが分かっています。グルタミンというと旨味成分である「グルタミン酸」と混同しがちですが、これらは異なる物質です。グルタミンは生肉(ユッケ)、生魚(刺身)、生卵、発芽玄米などに多く含まれています。いくつかの研究では、グルタミンを摂取することによって腸が健康になる可能性が示されています。
例えば、グルタミンが腸のバリア機能を改善し、炎症やリーキーガットのリスクを軽減するのに役立つことが分かっています。また腸内の善玉菌の増殖を促進することも分かっています。
さらに、グルタミンは酸化ストレスを軽減することも示唆されています。グルタミンは抗酸化物質であるグルタチオンの材料となることによって、体に負担がかかった時に酸化ストレスを軽減して、細胞やDNAなどが傷つくのを防いでくれます。つまり老化防止にも効果が期待できます。
アレルギーと鍼灸
西洋医学では、アレルギーに対してステロイド薬や抗ヒスタミン剤などで症状を軽減させます。一方で東洋医学では、症状を緩和させる対処療法と根本的な原因の改善治療に分けて考えます。また東洋医学では、アレルギーの多くは臓腑のバランスが崩れた時に様々なアレルギー症状が起こると考えます。特に肺・脾・腎に異常が現れます。これらの臓腑のバランスを整えながら、その他の症状に対しても治療を行なっていきます。例えばアレルギーと併発する症状として、食欲不振、不眠、冷え、肩こりなどの症状があります。
さらにアレルギーの基本的な原因は体質以外にも、生活習慣や生活環境などにもあると考えます。体の内側にあるものを「内傷」、外側にあるものを「外感」として、アレルギーの原因となる「外感」には『風、湿、暑、熱、燥、寒(六淫)』で分類し、これらを総称して『外邪(西洋医学のアレルゲンにあたる)』としています。
風邪 | 症状の進行が早まり、発症部位の転移がみられる |
湿邪 | 化膿が伴うこともあり、涙眼なったり、鼻水も増える |
暑、熱邪 | 患部が熱を帯び、冷やすと緩和するが、温めると進行する |
寒邪 | 患部周辺が冷たく、温めると治まり、冷やすと進行する |
燥邪 | 乾燥して酷い痒みを伴う |
当院では、東洋医学的体質診断で症状を見極め、脈診や舌診などから『外邪』のどの影響が大きいのかを見極めていきます。特に現状の症状の緩和を第一に考え、その後の治療状況を判断しながら、体の内側にある「内傷」にアプローチしていきます。
アレルギーは、体質や生活習慣、生活環境の影響などが複雑に絡み合い、なかなか有効な治療法が確立されていません。しかしながら鍼灸によって、人の持つ自然治癒力を高めて、体の内側にある原因に直接アプローチすることで、体質を改善し、アレルギーに悩まない体づくりが必ずできるはずです。
【最新 佐賀大学医学部】アトピー“かゆみ”解明
アトピーのかゆみの原因が解明され、薬の開発に向けた治験の準備が進んでいます。佐賀大学の研究チームは、2023年1月12日にアトピー性皮膚炎のかゆみに、ペリオスチンというタンパク質が関わっていることを解明したと発表しました。このペリオスチンは、アトピーを持つ人の体内では過剰につくられており、さらに別のタンパク質と結びつくことで痒みを引き起こすことが突き止められました。マウスで行なった実験では、ペリオスチンが通常の量のマウスと少ないマウスを比較すると、後者では体の痒みが改善したことが認められています。既に薬の開発が進んでおり、企業と連携して治験の準備が進んでいることが発表されました。

【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。