東洋医学で診る「イライラする」

    自分の感情を抑えきれずに後悔してしまったという経験したことがあると思い ます。逆に自分の感情をうまくコントロールするコツを身につけられた人は、楽に楽しく人生を送ることが可能となるでしょう。何よりも感情に振り回されることがなくなれば、自律神経が整い、気持ちが楽になるはずです。

    そして感情をきちんとコントロールするのは何も難しいことではありません。 しっかりとコツさえつかめば誰でもできることです。もちろん感情は自然に発生するもので、それが起こることを止めることはできません。しかしどんなものにでも、それに対処するテクニックというものがあります。

    そのためには、心や脳のメカニズムを知り、それに対処するテクニックをあらかじめ知っておけば感情に振り回されて変な行動を取ってしまったり、感情に苦しめられるリスクは遥かに小さくなります。

    アンガーマネジメント

    アンガーマネジメントとはその名の通り、怒りの感情とうまく付き合い、怒りをコントロールすること、そのためのトレーニングのことです。アンガーマネジメントができるようになると余計なことに対して無駄にパワーを発揮しなくてよくなり、その分の時間と労力を本当に自分が集中したいことだけに注げるようになります。

    怒りという感情は多大なエネルギーを消費するものであり、怒ったり、イライラするだけで自律神経は大きく乱されます。怒った方がスッキリするというのは医学的には逆効果であり、怒りを露わにすることによってダメージを受けているのは自分自身です。重要なのは感情そのものをなくすことではなくて、自分の感情に振り回されないようにすることです。

    感情に振り回されて失敗しない秘訣

    感情的になりやすいにも関わらず感情に振り回されて失敗することが少なくなる秘訣があります。まずは自分が他人より性格の偏りがあるということを自覚することです。どんな人にも性格の偏りがあり、例えば時間に厳しい、お金に細かい、 礼儀にうるさい、せっかちであるなどの性格の偏りがどんな人にもあります。これを自覚しておくことで、怒りをセーブすることができます。簡単に言えば、例えば自分は人よりも時間に厳しい人間なんだと素直に認めてしまえば、感情的にならず他人の行動を冷静に受け止めることができます。

    また、自分の考えを絶対視せず、他の可能性も認めることです。絶対的に正しいことは、この世には存在しないことを理解し、正しさに拘るのをやめればストレスが無くなります。

    大切なのは沸き起こってくる感情そのものを無くすことではありません。むしろ世間では感情を表に出さず何を考えているのか分からない人よりも感情を表に出している人の方が好意を持たれます。また感情を表に出している人の方が人の心を動かしやすいので、リーダーなどにも向いていることでしょう。あくまでも自分の感情に振り回されないようにすること、そして感情に任せて問題行動を取らないようにすることが大事です。

    他人のミスに寛容になる

    他人のミスをついつい厳しくしてしまう方、後で言い過ぎたなと思わないためには、自分がどれだけミスをしているかをまず認めることです。普段の生活の中で私たちは本当に細かくミスをします。例えば忘れ物をする、思い違いをするとか、もうありとあらゆることに対してミスをしています。同じように他の人もそれぐらいミスしているのは、ある意味当たり前です。

    一方でコンピューターになればなるほど様々なことが正確になるのは、ヒューマンエラーの可能性が下がるからです。例えば医師のヒューマンエラー(誤診など)は、結構高い確率であることが知られています。全く同じ理由で、それこそ自動運転になるべくした方が良いという理由で、飛行機は自動着陸が標準になっています。

    このように人が介在しない方が良いのは、人が必ず間違えるからです。なぜ人は間違えるかというと創造性もあるからです。頭は同じことを毎回繰り返し行うのではなく、毎回組み立て直して行っており、その組み立て直す時に様々なエラーが生じます。逆にコンピューターの方は、同じことを繰り返すのは得意ですが、創造性は全くないわけです。

    私たちが間違えることは、ある意味一定の確率で人の仕組みとして仕方がないことであり、自分や相手も間違えることを前提とし、お互いに間違えても大丈夫な状況にするために、時間やお金などについても余裕を持つことが必要ではないかと思います。何れにせよ自分のミスも他人のミスも、とにかくみんな誰しもがヒューマンエラーを死ぬほど抱えていると思えば、いちいちイライラしなくなるのではないでしょうか。

    時間が解決する

    人は誰しもが死ぬ運命にあり、人生が無限に続く人はいません。しかし私たちは、日々の生活の中でそのことを忘れがちです。特に何か辛いことがあったり、苦しいことがあった時には、まるで時間が無限に長いように感じられて、その苦しみに押しつぶされてしまいそうになることがあるでしょう。

    しかし、私たちの人生は有限であり、何か苦しいことを悲しいことがあってもそのようなネガティブな気持ちは必ずどこかで終わります。全てのコトに終わりがあると考えることは私たちの人生のあらゆる面で役に立ちます。人生のどのような局面においても必ず終わりがあるのだということを常に意識しておくだけで人生が少しだけ楽になります。

    すべては変化する

    苦しいことや悲しいことがいつかは終わってくれる側面がある一方、同時に嬉しいことや幸せもいつか必ず終わってしまうということを意味しています。そこで知っておきたいのが、すべては変化することです。つまり「諸行無常」であるという事実です。

    「諸行無常」という言葉は、平家物語の冒頭に出てくる言葉として有名です。宇宙の全てのものは移り変わり、生まれては死ぬ運命を繰り返します。すべては変化するのが当たり前で人生山あり谷ありです。このように考えて病気や老いを受け入れることで、私たちは困難を乗り越えて前に進むことができるのです。特に健康を損なってしまった時やお金が無くなってしまった時など辛いことがあった時は、この諸行無常という言葉を思い出しましょう。

    怒ると損するのは自分

    自律神経を整える上で絶対に覚えておかなければいけないのは、強いイライラや怒りは自律神経にとってデメリットしかないということです。怒りを感じた瞬間から自律神経のバランスが急激に乱れてしまい、急激に乱れた自律神経は3時間はリカバーできずにそのまま乱れ続けることが分かっています。

    とはいえ人間ですから時に怒りの感情が湧いてしまうことだってあるでしょう。 そんな時は小さな怒りのうちに解消してしまい、自律神経の乱れを最小限にとどめることがとても大切です。具体的に言うと怒りが湧いてきそうになったらとりあえず黙りましょう。思わず怒鳴ってしまいたくなるのを抑えて、自分の自律神経を守るためにとにかく黙るのです。

    そして、呼吸を整えましょう。大きく深く呼吸をして、ゆっくり一旦クールダウンしてください。そうすれば怒りは数秒で通り過ぎます。どうしても相手に何かを伝える必要があるのならば、コンディションを整えてからゆっくり話しましょう。そうすれば怒りに任せて暴言を吐くことはありません。あるいは怒りを感じたら、ゆっくりと水を一杯飲むのも効果的です。水を飲むと副交感神経が優位になり、怒りによって過剰になっている交感神経を抑えてくれます。

    そして、こういっただけでは怒りを抑えきれない場合は、外に出て階段をゆっくり上り下りしてください。ポイントはゆっくりリズムよくやることです。リズミカルな動作の繰り返しで副交感神経が高まり、自律神経のバランスが整います。

    怒りは自律神経や健康にとって迫害あって一利なしです。とにかく怒らないと決めておきましょう。相手のためだけではなく、自分のために怒らないと決めるのです。怒ったら自分が損をします。ムカつく相手のためにその後少なくとも3 時間も自律神経が乱れてしまうなんて大損です。

    「イライラする」を抑えるツボ

    東洋医学では易怒(いど:怒りっぽい)、急躁(きゅうそう:イライラする)という言葉があり、気の滞りが強い時にみられる症状とされています。

    一方で、「怒り」はだいたい6秒間のピークがあり、その6秒間を過ぎると少し気持ちが落ち着くと言われています。そのため怒りの6秒を制御する方法として、タイプ別のツボ押しをおススメします。また最近怒りっぽいとかイライラするとか感じた場合にもおススメです。

    タイプこころからだツボ
    ストレスでカリカリする

    緊張感が強い、几帳面で責任感が強い、完全主義の人肩こり、頭痛、脇やみぞおちが張って痛く苦しい、胃痛、下腹部痛太衝(たいしょう)、内関(ないかん)
    イライラ・カッカする内弁慶、短気、じっとしていられない、礼儀正しい目が充血、顔がほてる、口が苦い、片頭痛、胸焼け、便秘行間(こうかん)、内関(ないかん)
    老化によるイライラする

    物忘れ、ポーッとする、口うるさい、文句ばかり言う、不安、頑固寝付きが悪い、浅眠で夢が多い、足腰が弱る、めまい、耳鳴り湧泉(ゆうせん)、内関(ないかん)

    太衝(たいしょう):足の親指と人差し指の骨が合わさったところの少し手前のところ

    太衝(たいしょう)

    内関(ないかん):手のひらを上にして手首のシワから指3本分上

    内関(ないかん)

    行間(こうかん):足の親指と人差し指の付け根部分

    行間(こうかん)

    湧泉(ゆうせん):土踏まずの前の方の中央にあって、足の指を曲げたときに最もへこむところ

    湧泉(ゆうせん)

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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