不定愁訴(ふていしゅうそ)と鍼灸

不定愁訴(ふていしゅうそ)と鍼灸

首肩こり、腰痛、頭痛、頭重、めまい、眠りが浅いなど多彩な症状を訴えられる患者様が沢山いらっしゃいます。しかし病院を受診しても「特に問題はないです」と診断されてしまいます。こういった検査を行っても特に健康上の問題が見当たらず、けれども様々な症状があらわれるものを「不定愁訴(ふていしゅうそ)」といいます。

例えば、月経直前に体調を崩したり、イライラしたり、落ち込んだり、手足が冷えるなど一過性の症状は多くの女性が経験していますが、これが年がら年中出ている状態が「不定愁訴」です。多くは、女性ホルモンのバランスの乱れや強いストレスが原因になっています。

また、女性の社会的な活動が増えていくことに合わせて、認められたい、出世したいなど強い状況がある一方で、ジェンダーギャップに悩まれる方も多くいらっしゃいます。症状を悪化させる要因であるストレスを軽減するためには、いっしょに考えて理解を示すことが社会全体に求められています。

不定愁訴の主な症状と原因

不定愁訴の原因は、ホルモンバランスが崩れから生じるものですが、それに社会的要因や心理的なストレスが重なることで、症状を悪化させます。

体の不調とストレスの関係

女性ホルモンのバランスが崩れることで、様々な不調があらわれます。特にストレスと女性ホルモンは大きく関係し、生理前に不調があわわれるPMS(月経前症候群)は、ストレスを感じやすい人がなりやすいと言われています。人の体は、ストレスを感じると、ストレスホルモン(コルチゾール)が分泌され、ストレスに戦おうとします。このホルモンによって身を守ろうとするのですが、コルチゾールが必要となると女性ホルモンよりもコルチゾールの生成を優先してしまうため、女性ホルモンのバランスが崩れる原因となります。

一方で、強いストレスは、自律神経のバランスも乱します。自律神経のバランスを調整しているのが脳の視床下部ですが、女性ホルモンも脳の視床下部から脳下垂体を通して、その分泌量が調整されています。いずれも脳内でコントロールされているため、過度なストレスが体の不調の原因になってしまいます。

さらに、ストレスは腸内環境・腸内細菌のバランスまで崩してしまいます。ストレスを感じると下痢気味になるのは、脳と腸が迷走神経を介して繋がっているため、ストレスによって腸内環境(腸内フローラの変性)が乱れることから起こっているのではないかと考えられています。さらに腸の働きが鈍くなると、その情報は脳に伝達されてさらにストレスを感じるようになり悪循環を招きます。

体の不調と腸の関係

なんとなく気分がすぐれない、落ち込んでしまうなど、そのような心(脳)の調子を整えるために腸が重要な役割を担っていることが分かってきています。例えば腸内細菌のバランスを整えて、腸内フローラの働きを調整することで心の状態が良くなり、逆にストレスに脳に負荷がかかると腸に影響を与えることになります。腸内フローラには大きく分けて善玉菌、日和見菌、悪玉菌があり、偏った食事や運動不足などの影響で腸内細菌の種類の多様性が失われることで、体に悪影響を及ぼすケースがあります。

実は、幸せホルモンのセロトニンはその9割が腸でつくられています。セロトニンは幸福感を感じたり、前向きな気持ちになるために必要な物質ですが、それだけでなく腸管の蠕動運動を活発にしたり、自律神経のバランスを整える作用があると言われています。また興奮物質であるノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑える効果があるため、イライラなども起こしにくくなります。

また、腸は全身の臓器と繋がり、お互いに影響を及ぼしあっていることが分かってきています。例えば、うつ病の患者には便秘や下痢が多いというデータが報告されていたり、腸内細菌が生み出した有害物質が脳に達して認知症を招いているとも言われています。つまり腸内環境の悪化が脳に影響し、心の問題を引き起こす可能性が示唆されています。

一方で、腸が乱れることで様々な疾患につながることが分かっています。腸はできるだけ多くの栄養素が吸収できるように絨毛という突起物があり、一定以上の大きさのものは通さないふるい構造(フィルター)になっています。このような腸壁の粘膜細胞の防御機能をタイトジャンクションと言います。しかし腸が炎症を起こし、腸壁の粘膜が破壊されると、このタイトジャンクションが緩んでしまうため、未消化物や異物(悪玉菌が出した毒素など)が血中に入り、アレルギー反応などを起こしやすくなります。これを「リーキーガット症候群」と呼びます。このことによって肌荒れ、アレルギー、花粉症、便秘、肥満、生活習慣病、精神病、自己免疫疾患など、様々な不調の原因になります。

鍼灸で身体の機能をメンテナンス

このようにストレス、女性ホルモンや腸内環境(腸内細菌)の変化が心身に大きな影響を与えています。特にストレスが原因の場合、自律神経のバランスが崩れた結果、体調不良、疲れやすい、気分がすっきりしないという自覚症状があらわれるものの、検査をしても異常が見つからない「不定愁訴」となります。

まず鍼灸治療は、自律神経のバランスを整えることができます。さらに刺鍼刺激を通して、脳の視床下部に作用し、ホルモン分泌のバランスを整えることができます。研究では、刺鍼による刺激によって脳内のβエンドルフィン等の神経ペプチドの分泌が活性化し、自律神経の機能を正常化させる働きがあることが示唆されています。つまり鍼や灸によって治療を受けると、気持ちが楽になったり、リラックス効果が得られるのは、このような自律神経の働きが整える働きがあるからです。

一方で、腸内環境の乱れは「不定愁訴」の大きな要因になっているとされます。胃腸の調子が悪い、疲れやすい、気分の落ち込みなど、忙しい生活に心身の悩みを抱える方の症状の出方はそれぞれ違います。いずれにせよ腸内環境を整えるために、食生活の改善、生活習慣の改善が必要になります。当院では、腸内環境を整えるための食生活のアドバイスも重点的に行います。問診でも、食生活などについても慎重に汲み上げます。

最後に、当院ではお悩みの症状を「きちんと見て、しっかりと聴き、丁寧に触れる」ため、四診という伝統的な診察方法を取り入れております。四診とは、望診(見る)、聞診(聴く・嗅ぐ)、問診(お話をうかがう)、切診(触診)の4つの方法です。これらから得られた情報から「気・血・水」の状態を分析することで不調の原因を探っていきます。

この中で、「気」を重点的に考えていきます。なぜなら自分の気持ちを動かすのは自分の心であり、自分の気の流れや自分の身体の機能の動きが深く関与しているからです。病は「気」からという言葉があるように、この「気」は「気合い」や「気持ち」ではなく、生命の基となるエネルギーの「気」です。もちろん女性ホルモンや腸内細菌の変化を促すことも大切ですが、身体の機能をメンテナンスすることで身体を変え、それが「気」と整え、心や身体を整えていくこととに繋がると思います。

このように鍼灸により、身体が本来持っている「自然治癒力」を引き出すお手伝いをさせて頂ければと思います。鍼灸によって変化していく身体を感じていただけたら幸いです。

【本コラムの監修】

恵比寿院長

HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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