
疲労の原因は体の歪みから来ていると考えられています。猫背の人や左右の型の高さが違う人だけが原因ではなく、足を組んで座る、バッグをいつも片方の型にかけるといった体のバランスを崩すような生活習慣の積み重ねが体の歪みの大きな原因になっています。疲れにくい体になるためにも体を歪ませる生活習慣は見直しましょう。
身体と疲労の繋がり
体の歪み
体が歪むと体の動きをコントロールする中枢神経からの指令が手や足などにうまく伝達されなくなります。それによって体を思うように動かせない状態になり、体がだるい、重いといった疲れを感じる原因になります。脳と脊髄からなる中枢神経は体の中心を通っているため、体が歪むことで中枢神経も一緒に歪み、中枢神経の働きが悪くなることになります。しかも体の歪みは疲れだけではなく、自律神経失調症にも繋がります。
自立神経失調症は交感神経と副交換神経からなる自律神経のバランスが崩れることで起こります。つまり中枢神経と同じように体の中心を通る脳と脊髄がスタート地点になっている自律神経も体の歪みによって一緒に歪んでしまい、伝達がスムーズに行われなくなり、自律神経が乱れ余計に疲労を感じやすくなってしまいます。
また、大阪市や大阪市立大学、食品、医薬品メーカーなどが進めている疲労に関する共同研究の疲労プロジェクトによると、疲労の原因は交換神経が活発に働くことで神経細胞内に活性酸素が大量に発生し、細胞にダメージを与えることが原因と考えられています。体が歪むことで筋肉が緊張し、それがストレスとなって交感神経が働くことも分かっています。これを考えると体が歪めば歪むほど神経細胞内で活性酸素が溜まっていき、それが引き金となって神経伝達もスムーズにいかなくなり、体がどんどん疲れやすい状態になってしまいます。
活性酸素
疲れを感じる主な原因の1つは活性酸素と言われています。活性酸素は、体内に入った酸素が通常よりも活性化された状態のことを示します。厚生労働省の提供しているEヘルスネットでは、活性酸素は細胞伝達物質や免疫機能として働く一方で、過剰な酸性は細胞を障害し、心血管疾患並びに生活習慣病など様様な疾患をもたらす要因とされています。しかしながら強い酸化力を生かして細菌やウイルスを撃退したり、細胞間の伝達を担っています。
まず欠かさず取って欲しいものはビタミンです。活性酸素の働きを抑えるビタミンを抗酸化ビタミンと呼ばれており、特に有名なのがビタミンCです。ビタミンCを含む食材にレモンが有名ですが、ピーマンやブロッコリー、パセリといった緑色の野菜にもビタミンCは多く含まれています。また野菜にはビタミンAやビタミンE、それ以外にもポリフェノールといった色素成分など抗酸化力のある栄養が他にも含まれています。
不規則な睡眠
不規則な睡眠だと疲れが取れないのは、不規則な睡眠によって体内時計が乱れることで疲れが取れにくくなってしまうからです。体は一定のリズムに合わせて機能されており、体内時計は体の中にある昼と夜を認識している時計のようなものです。その時計によって体の中では様々な生理的なプロセスを調整しており、例えば体温やホルモンの分泌睡眠と覚醒のサイクルを調整しています。体内時計が正常に機能していれば、これらのリズムが安定し、健康な状態を保つことに役立ちます。
体内時計と睡眠は深く関係しており、体内時計が昼夜を正確に認識できると夜 に睡眠を取るように調整されます。不規則な生活習慣や夜更かしは体内時計の乱れを引き起こし、それが疲れやストレスの原因になります同じ時間に寝て、同じ時間に起きれるように努力することが大切です。
過度なストレス
ストレスによって疲れが取れにくくなるのは、そもそもストレスというのは体に様々な影響を与え、例えばストレスホルモンの分泌が増えることで心拍数と血圧が上昇し、体が緊張状態になるため疲れが取れにくくなります。ストレスホルモンは、コルチゾールやアドレナリンが該当しますが、体が環境に適応するために分泌されるものであって、これが長期的に分泌されると体内で悪影響を及ぼします。またストレスが原因で夜に眠れず、体が回復できずに疲労を蓄積してしまうケースもあります。
ストレス解消には、趣味を楽しむこと、スポーツや旅行など息抜きすることが大切です。そして様々なリラックス法を試してみて自分が合うと思ったリラックス法を続けてみましょう。他にもビタミンCやマグネシウムもストレス軽減に役立つため、積極的に摂取しましょう。
水分不足
水分は体を作る上でとても大事、水分不足は疲労に繋がります。まず成人で体の中の水分量は約60%と言われており、当たり前ですが体の中を流れる血液もリンパなどにも水が必要です。水分が不足すると血液はドロドロになってしまい、また汗もかけないため体温調節も上手くできません。そうなると疲労感だけでなく頭痛、めまい、集中力の低下便秘など様々なところで不調が発生します。体の調節機能がうまく働かなくなるため、至るところで不調が起きてしまいます。
疲労を回復する方法
IAP呼吸法
体の歪みを直して疲労を回復する方法は、最低でも 1日1回IAP呼吸法をすることです。IAPとは、イントラアブドミナルプレッシャーの略で、復活という意味があります。つまりIAP呼吸法とは、復活呼吸法のことで復活を高く保ったままで呼吸をする方法です。
複式呼吸は、息を吐く時にお腹もへこませて呼吸をしますが、この時膜が上がり腹圧も一緒に落ちてしまいます。腹圧呼吸では息を吐く時にお腹をへこまさず、そのまま腹圧を保って呼吸します。こうすることで腹部を取り囲んでいる横隔膜、内臓を支えている骨盤底筋群を支えているインナーマッスルが強化され、これらの筋肉がコルセットのように機能して内臓のずれや骨の歪みを改善してくれます。そして体の中心が定まれば無駄な動きがなくなり、同時に中枢神経の伝達、自律神経の乱れが改善し、疲労の予防や回復に繋がっていきます。
IAP呼吸法のやり方は、まず耳と肩のラインが真っすぐになるようにリラックスした状態で椅子に座ります。次に肩を上げずに5秒かけて鼻から目いっぱい息を吸いながらお腹を膨らませます。そして次が大事で、お腹に力を入れてお腹を膨らませたまま5から7秒かけて口から息を吐き切ります。この一連の流れを繰り返すのがIAP呼吸法です。特に寝る前に2分程度IAP呼吸法をすることで自律神経とホルモンのバランスが整い、睡眠時の疲労の回復率が上がるとされています。
体を動かす動的回復法
大量に汗をかくほどのきつい運動は、さらに疲労を貯めることになるため20から30分程度の動的回復法をするのがベストです。しかも軽めの運動は、疲れを解消するだけではなく、体の変な癖や歪みも直してくれます。
スウェーデンのカロリンス研究所で研究者として活躍したアンダースハンセン氏は人間の脳を始めとする中枢神経は原始時代から体を動かすための構造になっており、動き続けることが人間本来の姿だと言っています。
どうして軽めの有酸素運動をすると疲労の解消につがる理由は5つあります。①睡眠が深まる、②成長ホルモンが分泌される、③疲労物質が押し流される、④セロトニンが分泌され精神的疲労が回復する、⑤コルチゾールが低下し、ストレスが軽減される、です。
成長ホルモンは代謝を促す効果があるため疲労回復には、すごく大切なホルモンです。また寝ている間に分泌されることもあって睡眠も疲労の解消には欠かせない要素になっています。そして運動をすると血流が促進され、脳と筋肉にたくさんの酸素を送ることができるため、疲労物質が体の中に溜まるのを防ぐ ことができます。一方、幸せホルモンとも呼ばれるセロトニンの分泌が促され、ストレスホルモンとも呼ばれるコルチゾールの分泌が抑制されることによって心のバランスを整えてくれることになります。
動的回復法は、疲労の解消が目的であるため、少し汗をかくぐらいの強度がベストで、ストレッチやウォーキング、入浴がおすすめです。動的回復法の入浴は、冷水シャワーとお湯に浸るのを交互に繰り返す交互浴と呼ばれるものです。具体的な方法は、1分間の冷水シャワー後にバスタブに30秒、冷水シャワー30秒の1 分間1セットの交互浴を約10回繰り返して、最後にまた冷水シャワーを1分間ほど浴びるというものです。これによって交感神経と副交感神経が交互に刺激され、自律神経が整います。
この入浴をする時には3つ注意して欲しいことがあり、まず1つ目は交互浴の前後にコップ1杯程度の水を飲むことで脱水症状を防ぐことです。2つ目は、長時間やりすぎないようにすること、3つ目はお湯を熱くしすぎないようにすることです。これは暑いお風呂に長時間入ると交感神経が優位になって、夜に寝られなくなるからです。大体40度くらいを目安にすると良いでしょう。
やっぱり睡眠も大事
スタンフォード大学では運動部の全選手にアイトラッキングテストっていう 小さな黒点を目で追わせることで脳の動きを計測するテストをさせています。寝不足状態の脳は思っている以上に活動レベルが低下することが分かっており、疲れの原因になります。
まずは時間の確保が大事で、最低7時間は寝るようにした方が良いでしょう。またこれ以外にも次の4つのポイントを抑えておきましょう。①就寝時間、起床時間、睡眠時間は極力変えずに体のリズムをできるだけ一定にする、②休日に寝だめして体内時計を狂わせない、③就寝直前の交互浴は避け、寝る90分前までには入浴を済ませる、④IAP呼吸法を行う、です。
大学病院に勤務する交代勤務を行う看護師390人を対象に行ったアンケート調査を分析したところ、連休中に外出したり、散歩やドライブに行ったりする外出思考タイプに分類された交代勤務看護師では、2度寝をしたり朝ゆっくり起きたりする睡眠思考タイプや家でボーっとしたり、テレビ鑑賞をしたりする在宅思考タイプの人たちよりも有意に早い疲労回復、低い疲労度が示されています。
それに対して睡眠思考の交代勤務看護では優位に遅い回復を示しています。また2交代に比べ、3交代に従事する睡眠思考タイプの人で高疲労度を示していました。中でも外出思考タイプの人たちの疲労回復が早いことは、じっとしているより体を動かした方が疲労回復の効果があることを示しています。それに睡眠思考の交代勤務看護士で有意に遅い回復を示していたことから、休日の寝すぎが疲労の回復につながらないことの証明にもなっています。
この研究の疲労の回復についての判断は、疲労の回復状況については蓄積疲労度チェックリストを使って、簡単な質問で判断されています。つまり何か検査をした数値の結果ではなく、看護師の主観で疲労の度合が決められています。
鍼灸治療の疲労回復効果
鍼灸治療は、幅広い症状に対して効果が確認されており、WHO(世界保健機関)もその効果を認めています。特に疲労を引き起こす様々な原因に対して、根本的な改善が期待できるため、疲れが中々取れないなどに悩まされている方にもおすすめの治療法です。疲労回復効果を期待できる理由は、以下の3つが挙げられます。
免疫力アップ
疲労が溜まっている場合は、免疫力が下がっており、そのため外部からの刺激(細菌、塵埃、大気汚染等)に適応できず、体調不良を引き起こす原因となります。通常であれば体内に細菌などの異物が侵入すると、免疫機能が働き、その異物を排除しようとします。鍼灸治療では、このメカニズムを利用して、ツボを刺激することで免疫機能の働きを促進させることができます。
血行促進
身体に疲労が溜まると、筋肉がコリ、筋肉の役割である血液を送り出すポンプ機能が有効に働きません。そのため筋肉がコリ固まると血行が悪化し、その結果、全身の細胞に十分な栄養素が届けられなくなるだけでなく、老廃物を回収及び排出することもできなくなって、されに疲れが溜まっていきます。鍼灸でコリを解消し、血流をよくさせることで、血行不良によって引き起こされる様々な体調不良の原因を解消することができます。
自律神経を整える
過度なストレス、睡眠不足が続くと交感神経が過剰に働き、副交感神経が上手く機能しません。副交感神経が働かなければ、身体が休養できない状態になります。その結果、疲れているのに眠れない、イライラしてしまう、頭痛や耳鳴りなどの体調不良の原因になります。鍼灸には過剰に働いた交感神経を抑制し、副交感神経を活発にする効果があり、自律神経のバランスを整えることができます。
【コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。