
私たちの身体が影響を受けるストレス、つまり感情が病気の原因に大きく関わることは西洋医学、東洋医学共に認められています。
西洋医学にない東洋医学の特徴として、ストレスや感情を内因あるいは七情の乱れとして分類し、それらの感情が身体のどの部位にどう作用するかを定義していることが挙げられます。
まず、感情を「怒・喜・思・悲(憂)・恐(驚)」という七情に分類し、それらを身体の五臓(西洋医学の臓器とは違いがある)と関連付けています。肝(怒り)、心(喜び)、脾(思い)、肺(悲しみ・憂い)、腎(恐れ・驚き)を司ると言われています。
感情の過度の起伏は、内臓に悪影響を与えて病を発症させ、逆に内蔵の異常は感情の不安定を引き起こします。
肝と怒の関係
人が生きる上で大切なのが「怒」です。正当な「怒」はたくましい行動力と決断力をもたらします。「肝」が座っているという言葉があるように、この「肝(経絡)」が安定している人は、有言実行でリーダーシップを発揮すると言われています。反対に強くなりすぎる人は怒りっぽく、短気、弱くなりやすい人は優柔不断という事になります。
いずれにせよ、怒り過ぎたり、我慢したりすると「肝」に関係する身体機能に異常が表れます。
心と喜の関係
心(心臓)は、喜びと深く関係し、強すぎる悲しみは身体や心に異常をきたします。また喜びが不足したでも、悲しみが心に大きく拡がり、うつ病や精神疾患を引き起こします。
一方、喜び過ぎるとやはり心臓には負担になります。例えばお酒を飲んでハイになり、調子に乗ってしまうことで、魔がさしたとしか思えないような事故に巻き込まれたりもします。
脾と思いの関係
「脾」は、西洋医学でいう消化器系全般のことです。口から喉、食道、胃から大腸までの消化器と膵臓や肝臓の働きの一部が含まれます。
「脾」は「思う」「考える」「悩む」という意識活動を司り、脾の働きが悪くなると、頭がうまく働かなくなり、考えがまとまらなくなります。そうなれば他の経絡(肝)にまで影響してイライラや怒りを生じさせることもあります。
思い悩み、考え込みは、人生の中で避けることはできませんが、過ぎると食べることさえ忘れてしまう、または食欲が異常に昂進し急激に太ってしまったりすることさえあります。
肺と悲しみの関係
「肺」は、西洋医学でいう肺と同じくに呼吸に関係していますが、と東洋医学では、「悲しみ」「憂い」を司るのが「肺」とされています。「憂い」「悲しみ」が過ぎると、息苦しさや嗚咽にも繋がります。憂鬱な時にため息が出るのも、「肺」との関係を表しています。
呼吸器の問題、鼻から喉、気管支から肺に関するすべての症状は「肺」の経絡の変動により引き起こされます。風邪を引くと、鼻水、鼻詰まり、咳やくしゃみ、こういう症状は「肺の経絡」を治療することで改善されます。
東洋医学的な病証では、「肺」は肛門と密接な関係があり、排尿障害(夜尿、排尿困難、尿漏れ、失禁なども肺経の治療でよくなっていきます.
腎と恐れ・驚きの関係
「腎」は、西洋医学でいう腎臓と似ていますが、その機能である泌尿器系だけでなく、生殖器、脳、免疫系にも関わっています。「腎」は「心」とバランスを取り合っていますが、これが崩れると、更年期のようなのぼせや頭痛、肩凝りを起こします。
「腎」は恐れ・驚きを司り、例えばストレスによって、一晩で髪毛が真っ白になったとか、胃潰瘍になることは、恐怖や不安に「腎」が犯された結果起こったものと考えます。他にも、認知症などで妄言や徘徊を起こすのも、腎と心のバランスが崩れて脳に栄養が行き渡らなくなった状態と考えられます。
これらのように、感情(七情)の乱れが身体のどの部位にどう作用するかを診るのが東洋医学の特徴です。
いずれにせよ西洋医学、東洋医学でも心と身体を分けて考えるのではなく、むしろ身体の一部が心である、あるいは身体の一つの部分が心であると考えることができます。心と身体は分けることができない、身体が疲れれば、心も疲れますし、身体が休まれば、心も休まります。
身体を大事にすることで心が健康になる。身体に無理をさせることは心に無理をさせることになります。心を健やかに保つことが万病さえ起こさせない可能性があることが分かってきています。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。