東洋医学の瞑眩(めんげん)好転反応について

    東洋医学の瞑眩(めんげん)好転反応について

    施術後、家に戻ると「だるさ」を感じる、治療した部分の「痛み」が目立つようになり、「違う部位に痛み」を感じる、その他不快な症状や夜眠れないなど、施術が悪かったのかと不安になられることがあります。

    これらのような不快な症状は、鍼灸治療でごく稀に起こる「瞑眩(めんげん)」つまり東洋医学的治療の際に起こる「好転反応」のことです。鍼灸によって、血流がよくなり、体の中が巡りはじめると、溜まっていたものが流れ、不要なもの(老廃物など)が排出され、それに伴い様々な症状が出ます。

    いずれも、施術後2時間から1日、長くて3日ほどで、それら症状は消え、反応が起こる前よりスッキリして体は軽くなっていきます。

    以下の3つが主に瞑眩反応です。

    1.施術後に体全体に「だるさ」が残ることがあります。

    これは血行不良が改善し、組織細胞修復の過程で代謝が活発になるために起こります。

    2.「施術部位の痛み」が目立つようになることがあります。

    始めてご来院される方の多くに、症状が固定化され、筋肉が硬くなり、血行不良が生じているものの、痛みやこりを自覚していないことがあります。そこに刺鍼して筋肉を緩め、血行を改善し、組織細胞の修復を促すことで、体のバランスに戻す過程で痛みやこりを自覚するようになるため、局所的な痛みを感じやすくなります。

    3.「施術部位とは違う部分に痛み」を感じることがあります。

    人の意識は最も刺激が強い部分に向かうため、他の部位に痛みがあったとしても気づいていないことがあります。痛みを感じていた部分の症状が緩和されることで、2番目に痛みを生じていた部分の痛みを認識するようになるために起こります。

    これらの症状が出現した場合、多くは翌日には楽になりますが、慢性痛や慢性病を長く患っておられる方、体の反応が敏感で自覚症状がなかった方、虚弱体質の方などの場合は長くて2~4日程度続く事もあります。中には、その痛み・だるさで夜眠れないというかたも少なからずいらっしゃいます。
    このような症状が出た場合は、体が本来の健康的なバランスを取り戻そうとしている時と理解していただければご安心していただけると思います。水分を多めに摂り、休息をとる事で痛みや症状の回復が早まります。

    4. 好転反応の種類と症状(原因)

    鍼による施術後の好転反応の種類と症状(原因)についてまとめました。

    種類症状原因
    ①弛緩反応・急激な倦怠感や疲れ、発熱など  体に溜まった毒素や老廃物が流されるために身体が対応できずに不調を引き起こします。
    ②過敏反応・痛み、かゆみに加え、発汗、炎症など  血流が改善されることで、体内の組織をつくり変えようと身体が働きかけることで起こる反応。施術した箇所だけでなく、体全体に表れることがあります。
    ③排泄反応吹き出物、発疹、ニキビ、尿の色が変化、下痢体内に溜まった毒素や老廃物を、身体の外に排出しようという反応。
    ④回復反応吐き気、腹痛、発熱、怠さ、悪血(女性の場合)血流が改善されることで、起きる反応ですが、発熱や体の怠さが起こる場合もあります。

    美容鍼の好転反応

    好転反応は施術前よりも一時的に身体の状態が悪化したように感じることですが、実際には老廃物が排出されたり、細胞が活性化されたりすることで起こっている症状のため、美容鍼の効果がきちんと出ている証拠といえます。

    特に多いのが、美容鍼の弛緩反応による眠気や倦怠感の症状です。身体をリラックスさせる副交感神経の働きがよくなり、眠ってしまう人も多くいます。特にだるさを感じる場合は、美容鍼の回復反応による症状です。

    また、美容鍼の過敏反応による症状として、発熱、発汗、かゆみなどを感じる方もいます。施術を受けると代謝が上がるため、血流が促されると同時に体温も上がるため感じることがあります。特に身体の調子が悪い場合は、一時的に鼻水や喉の痛み、頭痛といった症状がでることも稀にあります。

    次に美容鍼の好転反応の中でも、少し辛い排泄反応による症状があります。デトックス効果によって、いつも以上に便や尿、生理による出血が排泄されやすくなります。またニキビや湿疹などん吹き出物が増えることもありますが、一時的な症状であり、いずれも身体が良い状態に近づいていることの現れです。 以上のような好転反応は、時間とともに治まるので心配はいりません。

    美容鍼で赤くなる(フレア現象)

    刺鍼によって、その周りの肌が赤くなることがあります。これ鍼を刺したことで血流が促進されるために起こる反応で、この反応を「フレア現象」と呼びます。お肌にフレア現象が表れる方も表れない方もいますが鍼の効果に違いはありません。

    このフレア現象には、生体反応である「軸索(じくさく)反射」が関係しています。簡単に説明すると、鍼をすると脳と神経に刺激が伝わり、神経伝達物質(CGPRとサブスタンスP)が分泌されて血管の透過性と拡張作用によって血流が促進されます。つまり鍼をすると軸索反射が起こって血流が良くなり肌が赤くなるのです。もちろん赤みは徐々に引いて消えていきます。

    余談ですが、この2つの神経伝達物質による反応には時間差があり、この時間差によって即効性だけでなく、効果が翌日などに表れることになります。そのため遅れて効果を実感されたり、その効果が長く続くのもこの時間差があるからです。

    自律神経の好転反応について

    鍼を受けると、悲しくないのに突然涙が出てくることがあります。特に自律神経が乱れた方に見られる症状です。涙と自律神経は深く関係しています。がんばるため、アクセル踏みっぱなしで走り続けている自分を守るため、自律神経が作用して涙を流し、ブレーキをかけてくれます。交感神経はアクセル、副交感神経はブレーキで、涙を流すことで心のバランスを取ろうとしています。

    鍼によって、本来の人の生体反応が正常に機能し始めるため、何かの病気でありません。リラックスや休息を担当する副交感神経が働き、涙が流れるのです。みなさん経験あるはずですが、思い切り泣いた後に、スッキリするというのもこのような働きがあるからです。

    むしろ、我慢して泣かないようにされている方で、自然と涙を流すのは自分の生活状況を見直すサインととらえ、できる範囲で対策を打っていくきっかけになると思います。

    好転反応は、悪い体の状態に慣れてしまった体が、新しい環境に適した体に戻ろうと働き出すきっかけになります。つまり長い生活習慣でつくられ、その状態に慣れた体を正常な状態に戻そうと、傷ついた細胞を修復しようと体が強く反応している状態とも言えます。

    中国古来では「瞑眩せざればその病癒えず」という諺があります。好転反応が起きても、体は必ず良い方向に向かっています。好転反応の期間は、だいたい1~3日で治るのが一般的です。

    瞑眩は不調の改善の兆し

    来院される多くの方が、体内にたまった不要なものを排泄できない状態で、様々な不調を抱えています。血流が悪くなることで、首や肩のこり、足の冷え、頭部の鬱血、自律神経の乱れなどとして現れます。

    健康な体であれば、体内の不要なものは、便や尿として、また肌や粘膜などからも排泄されていきます。しかし鍼灸治療によって瞑眩が起こると、血液中に放出された体内の不要なものを肝臓で処理しきれない場合、例えば皮膚の表面から排出されれば、湿疹やできものができたり、発汗したりします。また便や尿で排出されれば、お小水が増え、下痢になったり、血が巡り出すと、滞っていたものが月経時に塊として排出されます。

    体のだるさや眠気、発熱、下痢といった身体的な症状以外にも、イライラ、乗除不安といった精神的な症状として現れることもあります。もちろん身体的な症状と精神的な症状が同時に現れることもあります。

    根本的な不調の原因にアプローチすればするほど瞑眩が起こります。瞑眩を通じて体の不要なものを出すことでしか、根本的な不調の改善が難しいこともあります。逆に言えば、体温が高くなったり、血流がよくなって代謝が改善されるといった、その方の本来あるべき健康的な状態に近づかないと、瞑眩は起こりません。

    不要なものが出きったら、自然と瞑眩は治まります。治まるまで辛いですが、体が変化し始めた兆候、これから良くなっていくというサインでもあります。これを乗り越えると体質改善が加速します。特に、不規則な生活で滞りが強い方は、強く出る傾向があります。瞑眩を乗り越え、しっかり良くなるために、食生活、睡眠などの生活習慣を見直してみることが、とても大切です。

    また好転反応は必ず起きるものではありません。お客様の体調、症状などによっても大きく変わります。体の状態が軽度、もしくは慢性化した期間が短い方であれば瞑眩反応は起きにくい傾向があります。また好転反応がなければ治療効果がないという一律的なものでもありません。

    しかしながら、一方で瞑眩によって鍼灸治療を嫌いになる方も僅かながらいらっしゃいます。当院では東洋医学の「気血水」のバランスを上手く整えて瞑眩をなるべく起こさないようにアプローチし、治療効果を最大に行うように鍼の打ち方、本数をお客様の状態に合わせて配慮しております。ご来院される方のそれぞれの症状や体質によって、様々な対処の仕方がありますので、その都度、ご相談して頂ければと思います。

    お客様の多くは「今の症状が好転反応によるものなのか」、それとも「症状が悪化しているか」を区別することは難しいこともあります。およそ3日経過しても症状が回復しないかどうかである程度判別することができます。好転反応は最長で3日です。もし治療効果に不安を感じた場合には担当鍼灸師に相談してください。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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