東洋医学的に診る「体の不調を治すツボ」

    東洋医学的に診る「体の不調を治すツボ」

    ツボの健康効果は科学的根拠がないとされていましたが、数多くの臨床や研究で、その効果が認められてきています。ツボの周辺には毛細血管や神経が集中していることが判明しており、ツボを刺激すると免疫活性化物質のサブスタンスPや血行促進物質のCGRP、神経伝達物質のβエンドルフィンが分泌されることも確認されています。βエンドルフィンは鎮痛効果があり、頭痛や関節痛などの様々な痛みを緩和してくれます。またツボ刺激は自律神経を整え、PTSDやうつ病などにも有効とされています。

    良く知られているように足の裏のツボは、多くの内臓と繋がっていますが、それは経絡と言われる気の流れる道が体中に張り巡らされているからです。気は東洋医学における生命エネルギーそのもののことであり、気が経絡を通って体の内部で臓器の動きを助けたり、皮膚を守ったりしています。ツボはこの経絡上にあり、内臓と足の裏のツボは経絡でつながっているため、離れていてもしっかりと効果があるのです。ツボはこの経絡上にあり、WHOにも医学的有効性が認められており、その数はなんと361穴あります。名称が決まっていて治療にも使われるツボ以外にも、押すと痛くて気持ちの良いツボで名称もないものを合わせると千穴以上のツボがあると言われています。

    ツボの押し方

    ツボを押すときは押しやすい指の腹で垂直に押すのが基本です。強さは痛気持ちいいと感じるくらいで5秒かけてゆっくり押して、ゆっくり戻すのがポイントです。1日3から 5回ツボ押しをする良いでしょう。

    筋肉の疲労、体の冷えやむくみなどによって老廃物が溜まるとその箇所がしこりのように固くなり、痛みを伴いやすくなります。ちなみに痛ければ痛いほど効果があるという科学的なデータはありません。ただ押し方が弱すぎるとツボへの刺激が足りず、体の不調のケアにもつながらないため、ある程度は力を入れた方が良く、痛気持ち良いを意識しましょう。ツボの大きさは大きいものでも米粒くらいで、場所は絶対にこことは限りません。体の個人差もあるし、同じ人でもその日の体調によって微妙に変わる可能性があります。ツボの見つけ方はあくまでも目安であり、自分で押してみて気持ちよく感じる場所を探すようにすると良いでしょう。

    一方でツボ押しは高血圧、糖尿病、腎臓病、心臓病、妊娠中の人、食後、飲酒前後は避けた方が良いとされています。それでもツボ押しをしたい人は、担当医師に相談をしてから行うようにしましょう。

    体の不調を直す効果があるツボ

    自律神経を整えるツボ

    ストレスを普段から溜めやすく、自立神経が乱れやすい人におすすめが、合谷(ごうこく)のツボです。合谷は手の甲を上にして、親指と人差し指の骨が交差したところで、人差し指の方向に押すのがポイントです。自律神経の乱れ以外にも、頭痛、肌荒れ、花粉症、歯の痛みなど様々な症状に効くため、万能のツボとも呼ばれています。

    合谷(ごうこく)

    天柱(てんちゅう)は首の後ろの筋の髪の生え際の部分にあり、ツボに指を当てて頭を後ろに反らすとツボにしっかりと圧力がかかります。

    天柱(てんちゅう)

    不眠を和らげるツボ

    安眠(あんみん)は、耳の後ろの骨が出っ張ったところから指1本分後ろにある凹みです。

    安眠(あんみん)

    失眠(しつみん)は、かかとの中央の少し凹んだ場所にあります。親指で押す以外に握りこぶしで叩くだけでもツボの刺激になります。20回ぐらいを目安に叩くと良いでしょう。

    失眠(しつみん)

    百会(ひゃくえ)は、左右の耳の穴を結んだ線と顔の真ん中を通る線が交わる場所にあります。触ってみると少し凹んでいると感じる人も多いです。

    百会(ひゃくえ)

    心を落ち着かせるツボ

    イライラした時などは、膻中(だんちゅう)と郄門(げきもん)のツボを押しましょう。膻中は左右の乳頭を結んだ線の中央にあります。ここは肋骨が近いため、強く押しすぎないように気を付けましょう。痛みが強い人は、摩るだけでも良いです。郄門は手首のシワと肘のシワの真ん中にあります。

    膻中(だんちゅう)
    郄門(げきもん)

    気分の落ち込みに効果があるツボ

    気分の落ち込みに効果があるツボが、神門(しんもん)と鳩尾(きゅうび)です。これらはイライラを抑える効果もあるツボです。実は、この効果しかないというツボの方が珍しいです。

    神門は手のひらを上にして手首の横皺の小指側にあるくぼんでいるツボです。一般的にみぞおちと呼ばれる部分で肋骨が交わる骨から指1本分下がった位置にあります。鳩尾は、みぞおち部分にあるツボで、交感神経が集まっているため痛覚が敏感な部分であるので強い刺激は厳禁です。

    神門(しんもん)

    やる気のツボ

    エネルギーが湧いてくるツボが気海(きかい)と湧泉(ゆうせん)です。気海はへそから指2本分下がった位置にあり、刺激することでエネルギー代謝が高まり、脂肪を燃焼する効果も期待できます。

    気海(きかい)

    湧泉は足の裏にあって足をグーにした時に凹む場所になります。足の人差し指と中指の間にあって上から約3分の1のところにあります。

    湧泉(ゆうせん)

    頭の症状に効果のあるツボ

    薄毛予防や白髪予防の髪の健康に関わるツボです。髪の悩みは食事、血行不良、ストレスが原因とすることが多いです。ツボ押しで改善できる血行不良とストレス緩和のツボは、先ほど紹介した天柱、百会、湧泉、合谷も抜け毛や白髪に効果があるツボです。

    さらに通天(つうてん)と完骨(かんこつ)は健康な髪の毛の生え変わりを促し、頭皮の血行促進し、髪のトラブル全体に効くツボです。またツヤ・コシも与えてくれるから美髪のツボとも呼ばれています。

    通天は百会の 1から指2本分下がった斜め前にあります。左右にあるから押すときは頭の中心に向かって左右同時に押すと効果的です。

    通天(つうてん)

    完骨は、ストレス性の抜け毛や白髪がある人におすすめのツボです。血液を巡らせ自律神経に働きかけて潤いのある髪を育てます。完骨の位置は両耳の後ろにある出っ張った骨の後ろのくぼみにあります。

    完骨(かんこつ)

    頭痛を和らげるツボ

    おすすめは頷厭(がんえん)と太陽(たいよう)のツボです。頷厭は髪の生え際から1cm程度後ろのこめかみの部分にあるツボです。食べ物を噛むと筋肉が動くから分かりやすいです。太陽は目尻と眉尻の真ん中から2cm程度、後ろ側にあります。

    頷厭(がんえん)と太陽(たいよう)

    実は、頭痛には300種類以上の様々なタイプに分けられ、対処法も異なります。代表的な偏頭痛と緊張型頭痛について対処法を憶えておきましょう。血管が拡張して頭痛と拍動性の痛みを生じる偏頭痛は、冷やすことで痛みを軽減することができます。

    心身の緊張から起こり、頭全体がグーッと締め付けられるような痛みの緊張型頭痛は、温めることや体を動かして緊張をほぐすことで痛みが緩和されます。つまり頭痛の種類で冷やすか温めるか選ばないといけません。また、あまりにも頭痛がひどく長引く人は病院を受診することも忘れないようにしましょう。

    疲れ目や眼精疲労を和らげるツボ

    スマホやパソコンなど長時間使用することが多くなり、目も疲れやすくなっています。また目の症状以外にも、頭痛、肩こり、吐き気などの全身に症状が現れることもあるため、疲れ目を感じたら放っておかずに休息を取ることも大事です。

    疲れ目や眼精疲労を和らげるツボが、晴明(せいめい)と瞳子髎(どうしりょう)です。また疲れ目だけでなく、涙目、充血、まぶたがピクピクする痙攣など様々な症状に効果が期待できます。

    晴明(せいめい)は、目頭と鼻の付け根の間にあり、自然に親指と人差し指で左右両方のツボをしていることもあるでしょう。晴明(せいめい)は、鼻の機能を整える効果もあり、花粉症の症状、鼻水、鼻づまりにも良いでしょう。

    また他のおすすめのツボは迎香(げいこう)と鼻通(びつう)があります。迎香(げいこう)は、小鼻のすぐ横のくぼんでいるところ、鼻通(びつう)は迎香(げいこう)の少し上にあり、小鼻の付け根の部分にあります。

    晴明(せいめい)と瞳子髎(どうしりょう)

    一方で瞳子髎(どうしりょう)は、目尻から親指の幅半分、外側のくぼみにあるツボです。目のクマや目尻のシワを取るのにも効果的と言われています。

    口内炎に効くツボ

    ストレス性の口内炎は自立神経を整えるツボも効果がありますが、他に効果のあるツボは二間(にかん)と太白(たいはく)が挙げられます。

    太白(たいはく)

    二間(にかん)は人差し指を曲げてできた第2関節の端にあり、太白(たいはく)は土踏まずから親指に向かって指をスライドさせて、骨に引っかかる部分にあります。

    二間(にかん)

    ビタミンB2やB6の摂取不足が口内炎を引き起こすこともあるため、しっかりと食事を摂ることも大事です。ビタミンB2はレバー、赤身肉、鯖、ぶり、納豆、たまご、きのこ類、海苔などに含まれています。ビタミンB6は、レバー、鳥ささみ、カツオ、マグロ、鮭、バナナ、さつまいもなどに含まれています。

    喉のイガイガに効くツボ

    おすすめのツボは天突(てんとつ)、人迎(じんえい)、水突(すいとつ)です。

    天突(てんとつ)は、左右の鎖骨を結んだ中央部のくぼみにあり、胸骨に向かって押し込むのがポイントです。喉の痛みを和らげ、咳にも効果が期待できます。

    人迎(じんえい)は、喉仏の左右両脇に指幅2本離れたところにあるツボで、喉の不快感や血行を良くする効果があります。人差し指で軽く触れるだけで自律神経の働きが整い、血圧を下げる効果もあるツボです。

    水突(すいとつ)は、人迎のツボの少し下にあるツボで喉の腫れに効果があります。喉が苦しくならない程度の力で軽く押しながら揉むのも効果があります。

    天突(てんとつ)、人迎(じんえい)、水突(すいとつ)

    お顔の美容効果が高いツボ

    肌が綺麗になるおすすめのツボは地倉(ちそう)と巨髎(こうりょう)です。

    地倉(ちそう)は、口角の端とほうれい線の延長線を結んだところにあるツボです。巨髎(こうりょう)は、前を向いた時の瞳から小鼻の縁と同じ高さまで真下に降りた場所にあるツボです。

    地倉(ちそう)と巨髎(こうりょう)

    肩こりに効くツボ

    肩こりに効くツボは、肩井(けんせい)と後渓(こうけい)です。肩井(けんせい)は、首の骨の根元と肩先を結んだ線の中間あたりにあるツボです。肩が痛いと自然と揉んでしまう場所にあり、ツボの位置を理解して効果を高めましょう。

    肩井(けんせい)

    後渓(こうけい)は、手を握った時に小指側の小指の付け根のシワの先端部にあるツボです。小指の少し出っ張った骨の下あたりにあります。

    後渓(こうけい)

    胃もたれや胃痛に効くツボ

    食べ過ぎた時におすすめのツボは中脘(ちゅうかん)と内関(ないかん)です。中脘(ちゅうかん)は、へそとみぞおちを結んだ線の真ん中にあるツボです。

    中脘(ちゅうかん)

    内関(ないかん)は曲げた時にできるしわから指3本分の肘側のとこにあり、縦2本の筋の間にあります。内関(ないかん)は、乗り物良い、二日酔いにも効くため、吐き気を沈めたい時にもおすすめのツボです。

    内関(ないかん)

    血糖値を下げるツボ

    おすすめのツボは膵兪(すいゆ)と腕骨(わんこつ)です。膵兪(すいゆ)は、背中にあり、左右の肩甲骨の一番下を結んだところから背骨1個分下の高さで、そこから指2本分ほど両外側にあります。このツボは膵臓の機能を活性化してくれるツボです。

    膵兪(すいゆ)

    腕骨(わんこつ)は、手の甲の小指側の側面から手首側にスライドさせ、骨の切れ目と手首の骨の間にあります。インスリンなどの内分泌系の働きを促進して、糖の代謝を助けるツボです。

    腕骨(わんこつ)

    尿トラブルに効果があるツボ

    40歳以上の3人に1人は尿トラブルに悩んだ経験があると言われており、中高年なら誰にでも起こりうる可能性があります。具体的には、頻尿は朝起きてから就寝までの排尿回数が8回以上、夜間1回以上と言われています。ただしトイレに行く回数が7回以下でも、本人が日常生活に支障があると感じているなら頻尿と言えます。膀胱癌や前立腺がんなどが尿トラブルの原因という場合もあるため、セルフケアで直らない場合は医療機関で早期発見、早期治療を行うことも大切です。

    尿トラブルに効くおすすめのツボは、中極(ちゅうきょく)と三陰交(さんいんこう)です。中極(ちゅうきょく)は、へそから指幅4本分下にあり、泌尿器系全般に効果が期待できます。

    中極(ちゅうきょく)

    三陰交(さんいんこう)は、足のうちくるぶしから指4本上で、骨の際にあります。押すと少し痛みを感じる人が多く、冷え性やむくみ、更年期症状にも効くツボです。

    三陰交(さんいんこう)

    便秘解消のツボ

    人によっては即効性があるため、押すタイミングには気をつけましょう。おすすめのツボは、天枢(てんすう)と大巨(たいこ)と大腸兪(だいちょうゆ)です。

    天枢(てんすう)は、へそに人差し指を置いて、指幅3本分外側の薬指が当たっているところにあります。大巨(たいこ)は、天枢のツボから指幅3本分下側のところにあります。どちらもお腹が軽く凹む程度押すと良いでしょう。大腸兪(だいちょうゆ)は、骨盤の上の高さで背骨から指2本分外側に行った場所にあります。腰痛にも効果があるツボと知られています。拳を作って押したり、リズミカルに叩くのも効果があります。

    天枢(てんすう)と大巨(たいこ)と大腸兪(だいちょうゆ)

    膝の痛みを和らげるツボ

    膝は体を支えるだけでなく、立ったり、座ったり、階段の上り下り、歩行といった日常生活を行うだけで負担がかかるため痛みを起こしやすい関節です。また膝の痛みは、血行不良や冷えが原因になっていることもあるため、お風呂に浸かって体を温めたり、カイロで温めたりすることも一つの改善方法です。

    おすすめのツボは、内膝眼(ないしつがん)と外膝眼(がいしつがん)、血海(けっかい)と梁丘(りょうきゅう)です。

    内膝眼(ないしつがん)と外膝眼(がいしつがん)は、膝を曲げた時に痛みがある人におすすめのツボです。膝の痛みが外側にある場合は外膝眼、痛みが内側にある場合は内膝眼を重的に刺激すると効果的です。場所は膝を曲げた時にできる皿のすぐ下のくぼみにあります。

    内膝眼(ないしつがん)と外膝眼(がいしつがん)

    血海(けっかい)と梁丘(りょうきゅう)は、膝を伸ばした時に痛みがある人におすすめのツボです。血海(けっかい)は、膝の皿の上の端の内側親指2本分上にあります。梁丘(りょうきゅう)は、血海の反対の外側にあります。

    コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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