
昨今の最新遺伝子研究の中で、腸内細菌と病気・老化との関係が次々と明らかになっています。その中で腸内細菌は体質、性格などに左右する全身の司令塔の役割があることが分かっています。心の不安、高血圧、肥満、糖尿病、アレルギー、感染症、認知症、肝臓病、子宮内膜症などまで、腸内細菌との密接な関係があります。
私たち現代人は、高脂肪食(食生活の欧米化)、食物繊維不足、抗生物質、食物添加物、下剤、ストレスの増大、運動不足などの影響で腸内(細菌)フローラが乱れから、腸内の慢性炎症に悩まされ、それらが病気の発生要因や悪化要因になっています。
腸には人体に存在する免疫細胞のおよそ7割が集中しており、ウイルスやがん細胞から私たちの体を守ってくれています。それだけでなく腸と脳、腸と心には繋がりがあり、「脳腸相関」という言葉があるように、腸はあらゆる臓器には密接な関係があります。
健康とは、肉体的な健康と精神的な健康が保たれている状態です。自分らしく生きるためには、身体と心の健康を保つことが重要です。そして心の健康が肉体的な健康に及ぼす影響が大きく、その健康を保つ重要性が高まっています。
心の健康の重要性
肉体的な健康に対して、メンタルの健康への意識は疎かになりがちです。メンタル的な健康は、肉体的な健康に対して、目に見えないし、症状も分かりにくく、気づきにくい特徴があります。また強いストレスやメンタルの状態が悪くなると食生活が乱れる傾向にあり、加工食品などで手っ取り早く食べることで食事を済ませることになります。
こういった食事は、中毒性が高く、脳内のドーパミンをお手軽に増やすことができます。特に甘いお菓子などは、脳内のセロトニンを一時的に増やすことができ幸せな気分になるという状態になりますが、その後さらに気分が凹むことになり、長期的に見れば肉体的な健康に悪影響を与えてしまいます。
アメリカ栄養士協会によると、人々は落ち込んだり、ストレスを感じたりすると食べ過ぎてしまう傾向があると分かっています。ストレスで暴飲暴食してしまうことは経験上理解できると思います。このようにメンタルが悪化すると食生活が乱れ、ますますメンタルが悪化するという悪循環を生じてしまいます。さらには眠れない、寝付けない、夜中途中で目が覚めるなどのように睡眠にトラブルを抱えている状態になりメンタルに悪影響を及ぼす負のサイクルが始まってしまいます。
不安になりやすいのは脳の構造にある
そもそも女性は不安になりやすい傾向があり、その理由は脳の構造の違いにあります。私たちは不安を感じると脳からCRHというホルモンが分泌されますが、男性よりも女性の方がこのホルモンへの感受性が強くストレスを感じやすいと言われています。これは赤ちゃんを産む女性は外敵に襲われるリスクを避けるため、長い年月をかけて進化した結果でもあります。
また、女性は生理によって大量の血を失い貧血になります。血の主な材料は鉄分ですが、鉄分は幸せホルモンのセロトニンを作り出すための不可欠な物質でもあるため、生理及び貧血によって鉄分が不足するため、この幸せホルモンが少なくなって不安感が強くなってしまうのです。逆に血流を改善することで貧血を改善して幸せホルモンを産生して不安を和らげることができます。
また、自分自身を後回しにして他人の都合を優先してストレス溜め込んでしまう傾向が多くあります。ストレスが溜まると、自然と体が緊張して、常に肩や首に力が入り血流が悪くなり体のこわばりやこりに悩まされます。
脳と腸の繋がり「脳腸相関」
脳の状態が腸に影響を及ぼし、腸の状態が脳に影響を及ぼす「脳腸相関」という言葉があります。脳と腸は自律神経やホルモン、サイトカインなどの液性因子を介してお互いに密接に繋がりあっており、腸と脳が神経系、内分泌系、免疫系の3つの系統を解して、お互いに密接な影響を及ぼし合っています。そこには腸内フローラも関わっており、腸には第2の脳と呼ばれる迷走神経が走っており、腸内フローラの状態が脳に伝えられ、逆に脳が感じたストレスも腸に伝えられ影響を与えます。
例えば強いストレスを受けたり、緊張するとお腹が痛くなるなどは脳と腸の繋がりから生じる症状です。このような「脳腸相関」によってメンタルは腸から強い影響を受けることが分かっています。一方で、幸福ホルモンと呼ばれているセロトニンは、腸内でほとんどが作られ、リラックス効果があると言われるGABAも腸内細菌が作っています。また食物繊維を分解して作られる短鎖脂肪酸も脳にプラスの影響を与えます。つまり腸内環境を整えることが脳を返して全身の状態に良い影響を与えます。
気分を前向きしたり、精神を安定させたりするセロトニンやドーパミンなどの脳神経伝達物質は腸内細菌によって大腸でつくられ、さらに腸内細菌の状態が脳に影響し、私たちの感情や性格をも左右すると言われています。
実は腸を整えれば思考行動が変わり、うつや気分障害、慢性疲労症候群などにも腸内フローラが関係していることが分かっています。例えば無菌で育てられたマウスは、普通のマウスに比べてストレスに弱く、臆病な傾向がありますが、このマウスに腸内フローラを与えると行動も普通のマウスのようになります。また活発なマウスと引っ込み思案なマウスの腸内フローラを交換すると行動パターンも交換されることも観察されています。
また人の実験では、ヨーグルトを食べ続けたグループは、そうでないグループより も悲しいことがあっても気分が落ち込みにくい結果が出ています。この分野は まだ研究途上ですが、思考パターンや行動など、腸内フローラとの相関関係についてこの先明らかになってくるでしょう。
さらに腸の働きはホルモンを分泌があり、ホルモンは臓器の働きをコントロールするメッセンジャーとしての働きをします。腸には腸クロム親和性細胞が分布しており、その細胞でセクレチン、ガストリン、コレシストキシンなどの様々なホルモンが分泌されて、消化を助けたり、インスリンや糖のバランスを保つ役割をしています。
腸内環境と便秘とうつ
腸内細菌は脳に影響を与えて、精神においても影響を与えていると言われています。脳と腸は自律神経やホルモンを介して互いにつながっています。そのため腸に何らかの異常があると結果として、脳に対しても悪影響が生じてしまいます。
実際、便秘とうつ病が併発しやすいことが分かっています。便秘が続いていることは腸内環境が悪化しているということになり、腸内環境の悪化がうつ病を引き起こしていると考えられています。また逆に、うつ病になると自律神経の活動力が落ち、その結果腸の働きが低下し、便秘になってしまうという場合もあります。
このように脳と腸は相互に関係し、影響し合っています。さらに腸内細菌の状態が脳にまで影響を起こし、感情や性格を左右することを示した研究もあります。実際セロトニンやドーパミンといった脳の神経伝達物質は、腸内細菌によって作られていることが分かっています。つまり腸内細菌のバランスが乱れは、これらの神経伝達物質の生産が乱れてしまい、感情や性格にまで影響を及ぼすわけです。さらに便秘がちで腸内環境が悪化している人は、物忘れが増加したり、記憶力が低下していることも明らかになっています。
一方で加工食品の摂取が増えたり、ストレスが多い生活を送っていると腸内環境が悪化していきます。そしてリーキーガットと称される状態に陥ってしまいます。リーキーガットとは腸の壁が破損し、普段通過させない物質が体内に入ってしまう状態のことです。リーキーガットは腸の細胞に微細な開口部が生じる現象で、腸内で食物を消化し、吸収する際に必要な栄養素だけを通すバリア機能がうまく機能しなくなる現象です。
通常、腸の粘膜は細菌や食物の不純物を防ぐバリアとして働いていますが、バリアが弱まると体内に有害な物質が入ってきてしまいます。リーキーガットが発生すると、これらの微細な開口部から消化されていない食物やエンドトキシン(内毒素)などが血流に浸透します。
エンドトキシンは特に悪玉菌が産生する有害な物質で、これが血流に入ることは体にとって非常に良くない状態です。これに対して人体は免疫システムを活性化させ、体内の多くの領域で持続的な炎症を引き起こします。体は有害物質を攻撃しようとして免疫反応を起こしますが、これが過剰になると炎症を起こし、それが慢性化すると健康に悪影響を及ぼします。
この状態に陥ると健康的な生活を心がけていても、体内の炎症が持続しているため、通常の健康維持の努力だけでは抑えることが難しいとされています。例えば野菜を摂取したり、毎日8時間の睡眠をとっても腸内環境が悪いままだと、 腸の防壁を突破した有害物質が体内で暴れ続け炎症は治まりません。リーキーガットの場合、根本的な腸の問題が解決されない限り、体中で巻き起こっている炎症を止めることはできません。
リーキーガットはアレルギーや認知機能の衰えなど、多くの症状を引き起こしますが、特に注目すべきは疲労感との相関です。リーキーガットにより体内の炎症が起こると体が常に戦っている状態になり、これが人を疲れやすくします。 現代社会では解明されていない疲労に悩む人々の数が急増しており、その正確な数字は不明ですが、厚生労働省の調査では回答者の38.7%が慢性的な疲労感を報告しています。
実際こういった現代人が経験する未解明の疲労は、複数の研究において腸内細菌と深く関連していることが明らかになっています。腸内細菌のバランスが崩れたり、リーキーガットが起こると、精神的健康、特に疲労感に関連していることが示され続けています。これはリーキーガットの影響で体内に侵入した毒素が脳に到達し、そこで激しい炎症が生じることが不安、抑うつ症状および疲労感の増加につながっているのではないかと考えられています。
食事と心の関係
肉体的な健康だけでなく、メンタルの健康のためにも食べ物は大変重要です。メンタルの調子が悪い場合、栄養をしっかり摂ることが大切です。例えば鉄を補うことで、メンタルの調子が改善することも多くあり、その場合は単に栄養素が不足していたことになります。
栄養は、ただ沢山食べれば満たされるものではありません。ただ食べれば栄養が得られるわけではなく、沢山食べても必要な栄養素が不足してしまうと体は 栄養失調の状態になります。精神的に不安定な人々の中には、この状態に陥っている人が少なくないと言われています。
このように体を分子レベルでチェックして、細胞が正しく働くように整えて、病気を防ぎ、老化を遅らせるようにするのが「オーソモレキュラー栄養医学」です。栄養素がきちんと取れているかを血液でチェックして足りないものを補っていくものです。
このように食事や栄養素がメンタルに大きく関係しており、幸せホルモンのセロトニン、やる気のドーパミン、安らぎのオキシトシンは全て肉や魚や豆に含まれるタンパク質からつくられます。つまりイライラ、不安、無気力は単にタンパク質が不足しているのです。
小麦の糖質とグルテン
糖質の中でも特に小麦は脳や体に対して悪影響の多い食材です。その理由は、血糖値に悪影響を与えるからです。精製された小麦から作られた食品は、お米よりも急激に血糖値を高くすることが分かっています。
血糖値の急激な乱高下は、血管を傷つけたり、動脈硬化の原因となったりするリスクの高い現象です。もちろんこの乱高下はお米でも起きますが、それ以上に小麦では起きやすいです。
さらに小麦には、タンパク質からできたグルテンと呼ばれる成分が含まれています。グルテンは良い食感を食品に与えてくれますが、その粘り気ゆえに消化しにくく腸粘膜を炎症させやすいことが分かっています。
この腸粘膜の炎症が、いわゆるリーキーガット症候群で、腸の粘膜に損傷ができて、腸内にあるべき物質が腸から漏れ出してしまいます。このリーキーガット症候群は様々な疾患の原因ではないかと考えられています。
実際、小麦を食べるとその直後にお腹が張ったり、頭が鈍くなったりすることを実感する方が多くいらっしゃいます。お腹が張るというのは、腸内環境が悪化している現れです。そして腸内環境が悪化することで、セロトニンなどの脳に必要なホルモンの産生も減ってしまうと考えられています。
心の健康に良い食べ物
メンタルは食べるものによって非常に大きな影響を受けます。特に腸内環境を整える上で、おすすめが以下の食べ物です。
- プレバイオティクスとプロバイオティクス
- クルミ
- 全粒穀物
プレバイオティクスとプロバイオティクス
プレバイオティクスは、ビフィズス菌などの有用菌の餌になり腸内環境を整えてくれる食品のことです。代表例はオリゴ糖(玉ねぎ、アスパラガス、バナナ、大豆)や水溶性の食物繊維(果物と野菜、きのこ、豆類など)です。
プロバイオティクスは、腸内フローラのバランスを改善することにより、人に有益な作用をもたらす生きた微生物を含む食品やサプリのことです。例えばヨーグルト、キムチ、みそ、納豆などの発酵食品で、乳酸菌、ビフィズス菌、酵母菌、麹菌など有用菌が含まれる食べ物です。定期的に食べるのが難しい場合は、ビオフェルミン、ラクトーンA、ラクトビフィプロバイオティクスといったサプリを活用しましょう。
まずプレバイオティクスで腸内菌に餌を与えて、腸に良い菌を増やしつつ、プロバイオティクスで生きた腸に良い菌を届けてあげることで腸内環境を整えましょう。
クルミ
ナッツの中でも特に健康効果が高いのがクルミです。ナッツとクルミは不飽和脂肪酸が豊富に含まれており、この不飽和脂肪酸によって不安を感じる可能性が低いことが分かっています。
全粒穀物
全粒穀物の摂取量を比べた研究があり、適量な量を食べている女性は、少ない女性に比べて不安を感じる可能性が低いことが明らかになっています。一方で白米、パン、白麺、焼き菓子といった精製された穀物を摂取した女性は不安を抱える可能性が高くなることが分かっています。
全粒穀物は精白などの処理で、糖となる果皮、種皮、胚、胚乳表層部といった部位を除去していない穀物やその製品のことです。代表例は玄米、全粒粉パン、十割そば、全粒小麦、オーツ麦、オートミール、全粒ライ麦、キヌアなどです。
また全粒穀物はメンタルへの良い影響だけでなく、健康寿命を延ばす効果が分かっています。イギリス医師会雑誌に発表された論文によると、全粒穀物の生活習慣病に対する影響を調査した結果、心臓病やがんなどの発症率または感染症などの病気による死亡のリスクを減らすことが証明されています。この研究によると、1日90g以上の全粒穀物を食べることで、心臓血管系の病気は役20%減少し、全てのタイプのガンは約15%減少していることが分かりました。
これは全粒穀物に含まれる食物繊維、ビタミン、ミネラルによるものと考えられています。日本の玄米はおにぎり一個で約90gなので気軽に摂取できます。
全粒穀物のデメリット
パスタや白米などの精製穀物は高GI食で体に悪いというのが一般的ですが、現在では少しずつですが精製穀物の価値が上がってきている現状があります。
全粒穀物は外側の糠や胚芽が取り除かれていないので一見、体に良さそうに見えます。しかし市販されている全粒粉を使ったクラッカーやマフィンなどは、粉にするために細かく挽かれており、全粒穀物の持つ健康効果がほとんど失われています。また低GIというメリットも、血糖値の上昇速度も細かく砕かれたものでは精製穀物とほぼ変わらないことが分かっています。さらに細かく挽くことで、穀物に含まれる天然の油の酸化スピードが速まり、健康に害を及ぼすこと示されています。
日本人にとって未精製穀物の代表は玄米ですが、玄米にもデメリットがあります。食物は元来、動物から食べられないように毒素を持ちます。その毒素は適量であれば健康効果が高いものもあり、一方でマイナスの影響しか与えないものもあります。
こうした毒素は外側な糠やふすまに含まれており、精製の過程で取り去ることができます。また玄米の糠には土壌汚染の影響で大量のヒ素が含まれていることがあります。ヒ素は肝臓と腎臓に悪影響を与え、デトックス機能を破壊することになります。玄米は栄養素の面では白米より優れているものの、良い栄養に加えて植物毒や重金属といった悪い栄養の含有量が多いことが欠点になります。
他にも全粒穀物のデメリットとして、ビタミンDの体内値を低下させることや、オメガ6脂肪酸による酸化、炎症レベルを高めることも挙げられます。もちろん栄養素が多く含まれるメリットがありますが、それを上回るデメリットがあることを理解するべきです。事実世界を見ると、日本を含めた長寿国のほとんどが主食として精製された炭水化物(白米、パスタなど)を食べており、全粒穀物を滅多に食べていません。
心の健康と睡眠
睡眠の質が低下するとメンタルにも大きな影響を与えます。睡眠不足だと不安になったり、イライラが止まらなかったり、感情の起伏が激しくなるのは、脳の扁桃体が睡眠不足で制御できなくなるからです。睡眠の質を向上させるためにメラトニンは導入を考えてみる価値はあるサプリです。
栄養素は食事から摂取することが基本ですが、メラトニンサプリは睡眠の質の向上に大変役に立たちます。睡眠の質が悪い人は、ホルモンバランスが乱れ、食欲ホルモンが過剰に分泌されており、暴飲暴食で身体を健康に保つことができていない方が多くいます。
メラトニンは、脳の松果体において生合成されるホルモンの1つであり、健やかな眠りにとても重要であると言われています。メラトニンがしっかり分泌されていれば、睡眠の質が向上し、寝つきが良く、中途覚醒が少なくなります。さらにメラトニンは、多くの慢性疾患において抗炎症作用を発揮してくれるということを示す研究も数多くあります。
怪我をすれば傷を治すために急性炎症が起こり、一方で炎症状態が持続する慢性炎症は、生体組織の機能や構造に異常が起こり、様々な疾患の原因になる炎症です。また老化もこの慢性的な炎症によって進行するのではないかと考えられています。また学習能力や記憶力、注意力を損なうことも分かっています。2017年にカロリンスカ研究所のチームが行なった約5万人を対象とした調査では、謎の体調不良を抱えている人は、体内の炎症レベルが高いということが分かっています。
この慢性炎症が引き起こる原因に睡眠不足があります。研究では毎晩6時間以下の睡眠で1週間を過ごした場合、炎症や免疫系、ストレス反応に関連する711個の遺伝子の発現に影響が出たとの報告があります。一方で内臓脂肪も慢性炎症の原因と言われています。内臓脂肪は内臓の毛細血管近くにあり、脂肪が分泌した炎症物質は血液を通して全身に巡ってしまいます。
睡眠が不足しがちな方は、メラトニンを摂り入れることで、睡眠の質の向上や体内の炎症を抑えるという効果が期待できます。もちろん睡眠時間を確保して、サプリを頼る前に生活改善をすることが大切で、あくまで補助としてのサプリを使いましょう。
残念なことにサプリを利用する場合は、日本のドラックストアなどで販売されていないため海外サイトから購入するしかありません。メラトニンは5mg以下であれば耐性もつきにくく副作用が出る可能性も低いと言われていますが、0.3mg程度からスタートして効果がなければ少しずつ増やすことにしましょう。また既に不眠症などで通院されている方は必ず担当医師に相談してから検討して下さい。
自律神経と更年期の関係
自律神経の乱れも更年期も女性ホルモンのバランスが崩れることによって心身に様々な不調を引き起こします。特に心身に悪影響があらわれる状態が「更年期障害」と言われるものです。一方で「自律神経失調症」と「更年期障害」の症状はよく似ており、いずれも女性ホルモンのバランスの崩れから、自律神経のバランスも崩しやすくなります。このように自律神経と女性ホルモンは、お互いに影響を受けやすい関係にあると言えます。
この女性ホルモンの中でも、エストロゲンというホルモンは40代半ばから急激に減少するため、更年期に大きく影響します。さらに大きく「ゆらぎ」ながら減少するため、脳が混乱して自律神経が乱れ、ホットフラッシュ、イライラ、憂鬱などの典型的な自律神経失調症状を引き起こします。
この「ゆらぎ」は、脳から卵巣にエストロゲンを分泌する指令されますが、たくさん分泌できる日とできない日があり、そのギャップにより生じます。「ゆらぎ」は30代後半から始まり、まず月経の乱れがあらわれます。そして更年期になれば、誰にでも女性ホルモンの急激な減少がみられ、症状が軽い方もいれば、日常生活に支障をきたすほど強くあらわれる方もいます。
ホットフラッシュを改善する食生活
更年期を迎える女性に現れる症状として、ホットフラッシュがあります。例えば周りは暑く感じていなくても、自分だけ暑く感じたり、汗を感じてしまう症状です。このホットフラッシュは食生活を気をつけることで改善することが知られています。
少なくとも1日2回程度の中等度から重度のホットフラッシュの自覚がある84人の閉経後の女性を対象とした研究があります。この中で食生活に介入を行うグループと、通常の食事のままのグループに分けられ、前者の方には低脂肪のビーガン食とし、動物由来の食品は避けて油やナッツ、アボガドなどの脂肪分の多い食品は最低限に抑え、食事毎に半カップ約86gの大豆を食べるように指示されました。
結果として、ビーガン食としたグループのホットフラッシュの頻度が12週間で78%減少しました。この結果からホットフラッシュには、動物性脂肪が関連していることが考えられ、特に更年期症状が強く出る場合には、動物性脂肪を減らすことが効果が高いと考えられています。
心の健康に良い栄養素
メンタルにおすすめ栄養素は以下の3つです。
- タンパク質
- コレステロール
- ビタミンB6
メンタルとタンパク質
こころの不調の原因がタンパク質不足にあるとも言われています。髪や皮膚、筋肉や骨、ホルモンや酵素免疫に関わる抗体でさえその材料はタンパク質であり、また脳内神経物質を作る大元の栄養素もタンパク質でできています。タンパク質が不足するとメンタルに影響が出るのは、セロトニンが不足してしまうからです。うつなどのメンタル疾患の多くはセロトニンの不足であると考えられています。また間違ったダイエットでタンパク質を摂らない生活を長く続けた結果、ダイエットに成功したにも関わらず気分が落ち込んでしまうこともあります。
セロトニンはトリプトファンというアミノ酸で脳内でつくられており、セロトニンが不足すると不安や抑うつ症状が出ます。つまりトリプトファンが足りなくなると十分なセロトニンが作られません。トリプトファンをつくるためにはアミノ酸の一種であるタンパク質を摂る必要があります。トリプトファンを多く含む食材は、大豆製品、卵、肉類、カツオ、マグロ、サンマなどの赤身肉の魚、ナッツ類です。またこのトリプトファンは睡眠ホルモンのメラトニンの材料にもなります。
メンタルとコレステロール
2015年に厚生労働省はコレステロールの食事での摂取制限を撤廃しています。実はコレステロール値が私たちの精神状態に大きな影響を及ぼしています。コレステロールは、細胞を守る細胞膜やホルモンをつくる材料であり、神経細胞や脳細胞もコレステロールを多く含んでいて必要なものです。
私たちの体にあるコレステロールの3分の1は脳にあると言われ、このコレステロールの割合が低くなると、脳の活動も低下してうつや認知症が引き起こされることが分かってきています。このコレステロールはセロトニンを脳まで運搬することを担っており、コレステロールが低下するとセロトニン不足になりうつなどになってしまうことになります。
コレステロールを多く含む食材は、肉類です。栄養の面から見れば野菜中心になるとタンパク質不足に陥っていることが多く、肉類も食べてバランスの良い食事を心掛けましょう。
一方で鉄不足もメンタルの不調を引き起こすことがあります。鉄分は、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、メラトニンなどの脳内神経伝達物質の合成に欠かせない栄養度であり、鉄不足によってこれらの物質の機能を低下させてメンタルの不調につながります。特に女性は生理があるため、鉄分を意識して食べ物から摂取しましょう。
メンタルとビタミンB6
鉄分と並んで現代人に不足しているのがビタミンB群です。特にビタミンB6がメンタルの健康にとって非常に重要なビタミンです。ビタミンB6は脳内神経伝達物質を合成するために重要な栄養素であり、セロトニン、ドーパミン、GABAを合成するにもこのビタミンB6が必要です。GABAはγ-アミノ酸と言い、これが不足すると不安やホットできないことが多くなると言われています。にんにく、唐辛子、ゴマなどには、このビタミンB6が多く含まれているため、メンタルの安定に欠かせない食べ物です。
心の不調とビタミン
メンタル疾患に関してはいろんな研究があり、メンタル疾患を引き起こす原因は1つでないことが分かっています。メンタル疾患の1番の原因は環境要因であり、家族や友達、恋人といった大切な人との死別や別れ、職場での人間関係のトラブル、仕事や財産などの喪失、さらには会社での昇進や降格、結婚や出産など社会的家庭的な立場の変化などが要因になります。
他に性格傾向というのもあり、メンタル疾患は脳の科学物質のバランスが崩れることで起こるとされおり、そのため義務感が強かったり、完璧思考、几帳面、人との関係に気を配りすぎたりする性格だと普通の人よりも脳の化学物質のバランスが崩れてエネルギーが低下すると言われています。
脳の科学物質には、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンの3 種類の脳内神経伝達物質があり、脳が正常な状態ならバランスよく存在しますが、うつ状態になると3物質とも欠乏して働きが不足します。また遺伝的要因に癌や糖尿病のような慢性的疾患、妊娠出産や高年期障害などの内分泌の変化も、メンタル疾患の発症要因に含まれています。
メンタル疾患急増の理由
心の病気のガイドラインとして日本に導入されたのが、アメリカの精神医学会がまとめた診断手引き「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)」です。この手引き書は1980年に発表されていますが、それが日本でも導入され、それまでうつ病と診断されなかった人もうつ病に含まれるようになりました。
かつてのうつ病は非常に稀で、精神科でも滅多に見ない病気でした。当時の認識のうつ病は、何の理由もないのに感情が消失してしまうというものでした。これに対して、そもそもうつ状態というのは家族が死んだり、仕事を失ったり、そういう心が病みそうな状態になって気持ちが落ち込む状態も含め、両方を合わせてうつ病ということになったのが現在です。
そしてDSMは、基本的に病気の原因を考慮に入れず、症状の特徴や重さだけをチェックリストのようにして診断し、例えば気分の落ち込みや興味の消失と言った症状が5種類以上、毎日1日中2週間続けばうつ病と診断されます。つまり落ち込んだ原因を問わず、症状だけで判断されるようになったため、かなり広い範囲がうつ病と呼ばれるようになったのです。
また、心の病気はそれぞれの医者が自己流で診断していたところ、DSMに従うことで同じ基準で客観的に診断できるようになっています。この世界的な広まり(標準化)と同時に、うつ病の患者も増加して、1996年の日本におけるうつ病患者数は43万3000人に対し、約10年後の2008年には104万1000人にまで増え、さらに2020年には172万1000人にまで達しています。
また以前よりは気軽に心療内科に行く人が増えており、そこで自動的に出てくる薬が抗うつ剤で、その結果使用量が劇的に増えています。例えば日本の抗うつ剤の市場規模は1997年で150億円、2010年には 1100億円にもなっています。世界だと2019年に116億 7000万ドル、2022年に143億ドル、2030年には206億ドルに達すると見込まれています。
一方で、世界5大医学雑誌の1つであるアメリカの医学総合ジャーナル「JAMA:2018年6月12日号」に掲載された研究によると、副作用でうつ病を起こす可能性がある処方薬を少なくとも一剤以上服用しているアメリカ人は、1/3以上です。うつ病の副作用が起きる可能性のある薬の処方数が増えると当然、うつ病がある人の割合も高くなります。具体的には、うつ病の有病率は処方なしで4.7%、1剤処方で6.9%、3剤以上の処方だと15.3%となっています。
また1982年に登場し、1999年に導入された抗うつ剤にSSRIという薬があります。SSRIは、一度放出されたセロトニンの細胞内への再取り込みを阻害することで脳内のセロトニン濃度を上昇させ、神経伝達をスムーズにし、抗うつ作用及び不安作用を示すと考えられています。しかしそのSSRIには副作用があり、SSRIの大量使用で起きたことを列挙すると、薬剤性難治性うつ病、薬物依存、薬剤性躁うつ病、薬剤性統合失調症、積極的自殺、他害、猟奇的事件などです。
特に薬剤性難治性うつ病は、薬のせいで長期間に渡って再発を繰り返すうつ病であり、薬で誘発されたうつ状態であり、典型的なうつ病とは異なることが多くなります。典型的なうつ病であれば、うつ気分や興味、喜びの喪失などが中核症状ですが、薬剤性うつ病だと表層感や不安感、幻聴などが重要な指標になります。
薬物依存はよく知られているように薬の摂取で快感や刺激を体験した結果、その刺激がないと精神的、肉体的に不快になることあり、うつ病とは症状とうつ症状を安定した時期を挟みながら症状の出現を繰り返す病気です。
メンタル疾患の治療
薬物療法では主に抗うつ剤が使用され、この薬はセロトニンやノルアドレナリンなどのバランスを整えることで気分を改善し、メンタル疾患を軽減します。しかし副作用が発生する可能性があります。一方で薬物を使用しない方法の非薬物療法には認知行動療法、対人関係療法、運動療法、心理教育、TMS療法などがあります。これらの方法は薬を使わずに治療する方法で、副作用のリスクを減らしながらうつ症状の改善を目指します。
薬物療法と非薬物療法のどちらが良いかは、非重度のメンタル疾患治療における運動介入と薬物療法の比較研究があります。これは運動介入が抗うつ薬治療と同じ効果があると示しています。また心理療法と専門的薬物療法の効果を比較した研究もあり、これには9301人の参加者を含む58の論文が分析されています。
その結果、心理療法と専門的薬物療法は、通常の治療や無治療よりも明らかに効果的であることが明らかにされています。つまりメンタル疾患治療においては薬物療法だけでなく非薬物療法も重要な役割を果たします。そのため薬物療法と非薬物療法のどちらが適しているかは患者の状態や好み、副作用への耐性などによって変わります。
例えば、重症のうつ病の場合は薬物療法の方が効果的な場合もありますが、軽症の場合や薬に抵抗がある場は非薬物療法が選択されることもあります。最終的には医師との相談の上で患者にとって最適な治療法を選択することが重要です。
メンタル疾患の人へのケア
どんな風に対処したら良いのか、適切な対応はその人の症状や状況によって異なりますが、以下のポイントを心がけると良いでしょう。
まずは話を聞いてあげることです。メンタル疾患の人が話したい時は否定せず、話を聞いてあげましょう。ただし話したくない時には無理じして聞き出すようなことはせず、話したくなったら話してくれと伝え、そっと見守るが重要です。
次のポイントは、本人のペースを尊重することです。メンタル疾患の方は、体調の波があり、本人が自分で決断できるまで仕事や行動に関して本人のペースを尊重し見守ることが大切です。また決断を迫らないことも大切です。メンタル疾患の人は、決断をすることが負担になることがあり、大きな決断を迫らず、本人が自分で決定できるまで待つ必要があります。そして当然、相談機関に相談するのも大切です。メンタル疾患の人の家族や周りの人間が、不安や心配を抱え込まないように専門の相談機関に相談することも重要です。
また、メンタル疾患の方が安心して休める環境を整えることが回復に向けて効果的です。メンタル疾患が心の病気であることの基本的な対応を理解するのも重要で、メンタル疾患に対する基本的な理解を持ち、家族や友達、周りの人間の協力が重要であることを認識することが大切です。
基本的には、相手を労りながら見守ることが第一であり、例えば原因探しをしないこと、メンタル疾患の原因は特定できないことが多いからです。そのため今できることを中心に考え、本人がストレスを感じることがあれば取り除くようにすることが大事です。そして励まさないこと、頑張りすぎてメンタル疾患になっている可能性があるため、励ますことは本人を追い詰める恐れがあります。
最後に無理に特別なことはしないで、心のエネルギーが消耗している状態だと普段楽しめることが楽しめない場合があるので、無理に活動を促さず、本人の状態に合わせた対応をすることが大事です。
精神的不調
メンタル疾患の中でも精神的不調については、自律神経が乱れる理由を理解することが大事です。
自律神経とは
自律神経は抹消神経の1つで、全身のほとんどの器官を支配しており、運動神経や感覚神経とは違って大脳からの意識的な命令から独立して働いています。その他にも無意識に呼吸をしたり、食べ物を消化したり、心臓が休みなく動いており、これらは全て自律神経の働きによるものです。そして自立神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、この2つの神経はシーソーのようにバランスを取りながら働いています。
交感神経は脊髄から出ていて興奮や緊張時に優位になり、副交感神経は脊髄と脳から出ていて睡眠時やリラックスしている時に優位になります。私たちの体には様々なところに臓器の状態を感知するセンサーが備わっており、このセンサーが感知した情報は感覚神経を伝って自立神経の中枢に届きます。自律神経がそれに反応することで自動的に臓器を制御し、体温、呼吸、心拍などを無意識に調整しています。
自律神経が乱れる理由
自律神経は交感神経と副交感神経がバランスよく働くことがとても大切であり、この2つの神経のバランスが崩れると徐々に心身に支障をきたし始めて不調が現れます。これがいわゆる自律神経の乱れた状態で、不安や吐き気、全身のだるさ、頭痛、肩こり、動機、めまい、不眠など様々な症状が現れます。
自律神経が乱れる原因は色々ありますが、何と言ってもストレスが原因であることが多いです。自律神経とストレスは密接があり、私たちの体は何らかのストレスを受けた時、いつも通りの状態を保つために様々な反応をします。その1つが交感神経の活性化であり、体を正常に保とうとし、例えば呼吸を整えて酸素より摂り入れようとしたり、全身へ血液が行き渡るように心拍数を上げたりします。そして長期間に渡ってこのような状態が続くと心身が耐えられる限界を超えてしまい、自律神経のバランスが崩れて不快な症状が現れてしまいます。
一方で自律神経が乱れる原因には、日々の生活も大きく関係していると言われています。私たちの体の機能は地球の時点周期に合わせて約24時間のリズムでは働いており、睡眠や食事など昼夜の変化に合わせて体温やホルモンの分泌などを変化させています。そして自律神経も例外ではなく同じリズムで働いています。基本的には朝目覚めると交感神経が優位になり、夕方から夜間にかけては副交感神経が優位になります。このバランスが整っていれば、日中は活発に動いて夜間はゆっくりと休むことができます。
そのため、乱れた生活が慢性化することで体内時計が狂って自律神経のバランスが崩れてしまうため、自律神経が乱れていると感じたら、現在のライフスタイルを見直すことが大切です。
その他の自律神経が乱れる原因で挙げられているのは、季節の変わり目と加齢です。季節の変わり目は気候が不安定だったり、移動や進学期など環境面でも変化が多いためストレスを感じやすく、気候への適応による身体的な負荷や不安環境が変わることのプレッシャーなど心身へのストレスによって、自律神経のバランスが乱れる原因になります。
そもそも加齢によって自律神経の機能が衰えるため、気温の寒暖差に体がついていけなくなり、交感神経と副交感神経の切り替えがしにくくなることで発汗や排泄、胃腸の動きが追いつかなくなります。それが体の不調につがって、よりストレスを感じてしまうことになります。
加齢が原因の中で、特に注意したいのが女性の40歳過ぎからの高年期障害です。女性ホルモンは脳の視床下部という場所から司令を受けて卵巣で分泌されていますが、しかし卵巣の機能が衰えると司令が出てもその通りにホルモンを分泌することができなくなります。すると脳が混乱し、もっとホルモンを出すように必要以上の指令を出してしまいます。自律神経も視床下部でコントロールされているため、混乱の影響を受けて乱れてしまい、その結果高年期障害の症状が現れます。
また、加齢による自律神経が乱れる症状は男性にも現れ、男性の場合は何らかの理由によってテストステロンの分泌量が減少してしまうことが原因です。男性の場合は、自立神経失調症に似た症状が現れることが多く、報告されているテストステロンの分泌量が減少する理由は、加齢によってテストステロンを作る細胞が減ること、視床下部からの司令が減ることなどが指摘されています。女性も男性も等しく加齢の影響を受けてしまい、どの原因も結局のところ精神面でのストレスが大きく関わっています。
心身がストレスを受けると急激に分泌が増えるコルチゾールは、ストレスホルモンとも呼ばれており、またストレスを感じると自律神経を解してアドレナリンやノルアドレナリンが放出されます。これらの分泌は、ストレスから身を守ろうとして起きる現象であり、ストレスに対処できるように体や脳を戦闘モードへと切り替えるために必須のホルモンです。短期のストレスであればホルモンの働きにより私たちの体はストレスに負けずにいられ ます。例えば緊張する場面では10分から20分間の間にコルチゾールが2倍から3 倍にまで増加します。
また脳にかかったストレスは副腎に影響を与え、過剰なストレスがかかると様々な代謝のバランスが崩れ、心と体のバランスが崩れ始めると言われています。ただ瞬間的なストレスによるコルチゾールの増加は、それほど心配する必要はないとされている一方で、長期間ストレスを感じていると記憶を司る脳の海馬を委縮させることが分かっています。またコルチゾールの過剰分泌は、免疫系、代謝系など体の様々な機能に影響を及ぼし、研究の結果からもうつ病患者はコルチゾールの分泌量が多いことが分かっています。
ストレス対策のビタミン
ストレスを感じにくくする栄養素はビタミンC、ビタミンE、ビタミンB群です。ストレス軽減食材が野菜であり、特に栄養素が豊富な緑黄色野菜には大量のビタミンCが蓄えられています。ただし過度なストレスがかかると急激にその量が減ってしまい、それは高ストレスホルモンのコルチゾールなどの生成に、ビタミンCが大量に使われるためです。ビタミンCが不足すると高ストレスホルモンが必要量作られず、ストレスに対抗する抵抗力が弱まります。ただしビタミンCは一気に摂ってもストックできず、大概に排出されてしまいます。
緑黄色野菜にはストレス軽減以外にも嬉しい効果がたくさんあります。そもそも緑黄色野菜には国が定めた定義があり、新鮮な野菜100g中にβカロチンを600㎎以上含んでいるものが緑黄色野菜です。βカロチンは、体内に摂取されるとその一部がビタミンA に変化し、ビタミンAは皮膚の新陳代謝を促して肌荒れを防ぐ働きがあります。
またβカロチンそのものに体内の活性酸素を減らす作用があり、多くの美肌の栄養素が多く含まれている中でもビタミンEは若返りのビタミンと言われているほどアンチエイジング効果が栄養素です。ビタミンEは強い抗酸化作用を持つビタミンで、体内の脂質の酸化を防いでくれるため、ストレスと老化の対策を同時に行うことができます。特にかぼちゃやブロッコリーはスーパーで気軽に変えて、食事に取り入れやすく、栄養化も高いからお勧めです。
また、ビタミンB6が豊富な食材は、アドレナリン、ノルアドレナリン、GABAなどの主要な脳内物質の生成に必須のビタミンです。ビタミンB6は、神経ビタミンとも呼ばれており、ビタミンB6が足りなくなると高ストレスホルモンの生成が間に合いません。もちろん神経ビタミンが不足してもすぐに病気になったり、寿命が縮んだりすることはないと言われていますが、脳の働きが下がる可能性は極めて高いとされています。ビタミンB6は、エストロゲンの代謝に関わり、ホルモンのバランスを整える働きもあります。また赤血球の合成にも役立つため、月経前症候群の症状を軽減する働きもあります。
ビタミンB6が豊富な食材は、赤身の魚やヒレ肉、ササミなどの油が少ない肉類です。また植物性の食品では、バナナやパプリカ、さつまいも、玄米などにも比較的多く含まれています。
ビタミンB6の1日あたりの摂取目安は、男性で平均1.26mg、女性で平均 1.09mg、ビタミンB6は、水溶性ビタミンの一種で体液に溶け込み、過剰分は尿として排泄される性質があります。そのため一気に摂取せずに毎日の食事に取り入れるのがおすすめです。そしてビタミンB6にも美容効果が期待できます。ビタミンB6には、皮膚の新陳代謝であるターンオーバーを促す作用があると言われています。ターンオーバーが乱れると肌荒れやくすみ、ハリの低下などを招きます。そのためビタミンB6は、美しい肌作りに欠かせない成分だと言えます。また皮脂の量を調節する作用もあり、皮脂の過剰な分泌などで起こるニキビの予防にも役立ちます。
このビタミンB6が働く時には、ビタミンB2が必要になるため合わせて摂るようにすると効果的です。その他にもヨーグルトやチーズなどの乳製品もおすすめです。乳製品にはセロトニンの材料であるトリプトファンが豊富に含まれており、自律神経が乱れる主な原因であるストレス軽減だけでなく、美容効果が期待できます。
肉体的不調
単に不調と言っても、そのカテゴリーは3つに分けることができ、肉体的不調、精神的不調、内臓疾患が挙げられます。精神的不調の原因が自律神経の乱れが挙げられ、肉体的不調に関しては、主に7つの原因があります。
睡眠不足
肉体不調の原因1つ目は睡眠不足です。人間の体は睡眠中に細胞の修復、記憶の整理、免疫系の調整などが行われています。何日も連続で睡眠不足が続くと体のメンテナンスが十分に行われず疲労が蓄積されてしまいます。日常のパフォーマンス低下は、もちろん倦怠感や苛立ちを感じやすくなります。長期的な睡眠不足は、免疫機能や代謝機能の低下を引き起こします。寝不足の時に体が必要としているビタミンは、ビタミンB群とビタミンCです。ビタミンB6、B12、葉酸、ニアシンなどのビタミンB群は、エネルギー賛成や神経伝達に関与しています。寝不足時にはこれらのビタミンを十分に取ることでエネルギーの低下を和らげることができます。
一方で、ビタミンCは抗酸化作用があり、免疫機能のサポートやストレスに対する体の反応を助ける働きがあります。寝不足だと神経が過敏になり、普段よりストレスを強く感じることが多くなります。ビタミンCを摂取することで、このストレス反応を緩和することができます。
栄養不足
バランスの良い食事は、健康を維持するためにとても重要です。体の機能を維持するためにはビタミン、ミネラル、タンパク質などを適切に摂取する必要が あります。食事のバランスが偏ると栄養が不足し、体の機能が低下してしまいます。これが肉体的な不調や免疫の低下を引き起こすことになり、栄養不足の場合、何の栄養素が欠乏しているかによって体が必要としているものが変わってきます。
例えば歯肉の出血や傷の治りが遅いなどの症状がある場合はビタミンC の摂取が必要です。体力の低下や骨が脆くなる、筋力の低下などの症状がある場合は、ビタミンDを補給した方が良いでしょう。疲れやすさ、集中力の低下などの症状が見られる場合はビタミンB群の不足が考えられます。ビタミンB1、B6、B12、葉酸、ニアシンなどを摂取することで肉体不調を緩和できます。
過度な運動
適切な運動は健康の維持に役立ちますが、過度な運動は体に負担をかけ、肉体不調を引き起こします。また筋肉疲労や関節の痛みを起こし、日常生活に支障が出ることもあります。さらに過度な運動は体の免疫力を下げ、感染症などの病気のリスクを上げることもあります。
過度な運動による肉体不調には、ビタミンEがおすすめです。ビタミンEは脂溶性のビタミンで強力な抗酸化作用を持っています。運動や日常活動中に体内で生成される活性酸素は、細胞の構成要素にダメージを与える可能性があるため、ビタミンEはこれらの活性酸素を中和することで筋肉や細胞の酸化ストレスを減少させます。またビタミンEには筋肉の修復もし、過度な運動や重労働による筋肉の微細な損傷は筋肉痛や疲労感の原因になるため、ビタミンEを摂取すると全体的な回復が早くなります。
ストレス
ストレスは精神面だけでなく、肉体的な不調も引き起こします。例えば頭痛や肩こり、腰痛、胃の不調などです。ストレスを感じ続けると交感神経が過度に刺激され、筋肉が緊張した状態にもなります。長期的なストレスは細胞劣化、免疫機能の低下、ホルモンのバランスの乱れなど様々な問題を引き起こします。ストレス状態では、ビタミンB群の消費が激しくなることが分かっており、特にビタミンB1、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸などはストレスで多く消費されます。そのためこれらを摂取するようにすると疲労やイライラを軽減する効果が期待でき、葉酸やビタミンB12には心血管系関係の健康もサポートするため動悸の症状が出ている人にもおすすめです。
過度な画面使用
長時間の画面使用は視力の問題だけでなく、眼精疲労を引き起こす要因になります。デジタルデバイスから放出されるブルーライトは、目の網膜にダメージを与える可能性があります。さらにスマートフォンやタブレットの使用時に前屈みの姿勢になる人も多くなります。この姿勢が長時間続くと、首や肩の筋肉に負担がかかり、筋肉疲労や筋肉の硬直を引き起こします。背骨のS字カーブが乱れることで腰痛や背中の痛みも生じることもあります。
また、長時間の画面の使用は目、首、腰だけなく脳にも負担をかけます。定期的な休憩を取らないで画面を見続けると集中力が散漫になり、情報量が多すぎて脳が疲弊してしまいます。
過度な画面使用による肉体不調には、ビタミンAを摂取しましょう。ビタミンAは、網膜や結膜の健康を維持するのに必要不可欠な栄養素です。ビタミンA不足は、涙腺の正常な機能を妨げる可能性があり、例えば涙の生産量が減少し、目が乾燥した状態が続いてしまいます。
環境要因
環境要因には、主に温度、湿度、照明、空気の質の4つがあります。特に体を過度に冷やすことは筋肉の緊張や冷え症の原因になります。また長時間、同じ場所にとまることで、特定の部が冷えて関節痛を引き起こすこともあります。さらに体の内部の温度調節が乱れると免疫機能が低下し、風邪を引きやすくなります。また乾燥した環境は皮膚の乾燥やひび割れ喉や鼻の乾燥を引き起こし、風邪やインフルエンザなどの感染症リスクを高めることになります。
高湿度な環境では、汗の蒸発が遅れ、体温調節が難しくなり、脱水症状を引き起こす可能性もあります。また強い照明は目の疲れを引き起こし、頭痛や集中力の低下を招くことがあります。逆に十分な光が得られない場所での読書や作業は目の疲れや眼精疲労を引き起こすことになります。そして排気ガス、家具や建材からの揮発性有機化合物の放出も肉体不調につながります。さらに動物の毛やダニなどはアレルギー症状や呼吸器疾患のリスクを増加させることもあります。
環境要因による不調には、ビタミンDとビタミンCの摂取がおすすめです。ビタミンDは、免疫系の正常な機能をサポートし、感染症の予防効果が期待できます。ビタミンCは抗酸化作用で免疫機能を強化します。
鉄不足でエネルギー不足
私たちの細胞でエネルギーがつくられる時に呼吸から取り込んだ酸素が使われます。酸素は血液中のヘモグロビンという物質と結びついて全身の細胞に届けられます。ヘモグロビンは血液を赤くする赤血球の主成分で、全身の細胞に酸素を届けるヘモグロビンの材料が「鉄」です。つまり鉄が不足すれば、全身の細胞に届けられるはずの酸素が不足することになります。すると当然、細胞の活動が減少し、エネルギーの産生量が落ちます。
このような鉄不足になった場合、よく見られる症状として朝起きるのが辛い、疲労感、顔色が青白い、ニキビ、湿疹、冷え性で足がむくみやすい、胃の不快感、立ちくらみやめまい、頭痛、月経不順で生理の出血量が多いなどが挙げられます。
このような鉄不足を解消するためには、鉄を豊富に含むものを積極的に食べることです。鉄は動物性から植物性まで様々な食品に含まれますが、その鉄の種類にはヘム鉄と非ヘム鉄の2種類があります。
ヘム鉄は動物性の食品に多く含まれる鉄で、非ヘム鉄は植物性の食品に含まれる鉄です。そしてヘム鉄の方が非ヘム鉄よりも5倍ほど吸収効率がいいと言われています。鉄を大量に含む動物性食品としてはレバーやカツオなどの赤身肉、チヂミなどの貝類があります。
ただし、これらの食品を大量に取ったからといって必ずしも全てが体に吸収されるわけではありません。鉄はビタミンCを一緒に取ることで吸収効率が高まることが知られているため、ビタミンCが豊富な食物を一緒に摂るように心がけましょう。
サプリとして補う
サプリメントを使う上で重要な考え方があります。サプリメントのサプリという言葉は、「補足する」「補う」という意味です。あくまで不足しているものをサプリとして補うという意味なので、何の栄養素が不足しているか分からない状態でむやみにサプリに頼ってしまうと逆に副作用が出て、逆効果になることがあります。
ビタミンEサプリ
ビタミンEは、強い抗酸化作用のあるビタミンなので若返りのビタミンと言われています。確かにビタミンEの働きは、体の中の脂が酸化してしまうのを防ぐ働きがあります。それによってコレステロールが低下したり、血圧が低下する、動脈効果を予防できると言われています。
しかし、このビタミンEを摂りすぎてしまうとがんを持っている方は科学療法の作用を低下させてしまったり、死亡率が増加したり、男性の方は前立腺がんのリスクが上がったという報告があります。有名な研究によると19施設で行われた研究をまとめて約13万人の方を対象に、ビタミンの摂取量とその死亡リスクを解析した研究があります。
高容量のビタミンEを摂っていた11試験のうち9試験で死亡率が増加していることが確認されました。サプリメントでビタミンEを摂取しすぎてしまうと、血液をさらさらにしすぎてしまって出血のリスクが増え、脳出血が起きたり、脂肪率が上がっているのではないかと考えられています。
そもそも、日本や米国において普通の食生活を行っている方であれば、ビタミンEが足りなくなることはほとんどありません。ビタミンEを不足しているからサプリで補った方が良いという方はほとんどいません。このビタミンEは、脂溶性のビタミン、つまり油に溶けるビタミンと言われていて、多く摂ってしまえば体の脂肪などに蓄積されてどんどん体の中の濃度が上がっていきますので注意してください。
ビタミンAサプリ
ビタミンAは、お肌や目に良いと言われますので、お肌をケアしたい方に人気です。一般的な歌い文句は、体のバリア機能を高めて、乾燥肌、シミ、ニキビ、皮膚の痒みの予防になりますと言われています。
しかし、ビタミンAも天然の食品に多く含まれているため、日本でこのビタミンAが欠乏している方は少ないです。お肌にも良いならビタミンA飲んどいた方がいいかなと思った方は、それ危険な可能性もあります。ビタミンAを過剰に摂取してしまうと気持ち悪くなったり、頭痛が起こったりします。そして特に注意が必要なのが妊婦さんです。
妊婦さんがビタミンAを過剰に摂取しすぎてしまうと生まれてくる赤ちゃんに異常をきたしてしまうことがあります。特に妊婦さんは、つわりがひどくて全くご飯が食べれないからマルチビタミンを摂取しなきゃ、いろんなサプリを取らなきゃと頑張りすぎてしまうちに、ビタミンAの摂取量が増えていることがないようにしないといけません。
天然のコラーゲンサプリ(コンドロイチン)
天然のコラーゲンと言われるといかにも体の害は全くなくて体のコラーゲンが増えていくそのような期待を抱かせてしまいます。ですがコラーゲンやコンドロイチンが健康に良いといった科学的根拠はありません。これらの物質は極論を言うとタンパク質です。コラーゲンなどのタンパク質を口から摂取しても、胃で消化酵素が発生して、消化分解されて全身に吸収されていきます。都合よくコラーゲンの物質が、顔のお肌だけに届いたり、コンドロイチンが膝に局所的に届いたりすることは考えられません。また、コンドロイチンやコラーゲンは、安全性のデータは乏しく、妊婦の方、授乳中の方は使用を避けるべきとも言われています。
特に天然素材使用、ナチュラルフードという言葉は注意です。天然素材であれば、人工物が入っていないから安心と思っている方は注意が必要です。この天然というフレーズが安全を保証するわけではありません。天然に存在する物質でも体に悪影響を及ぼすものはたくさんあります。
その有名なものがハーブです。日本や海外ではハーブの製品が天然のものとして売られていますが、一部のハーブ製品は肝臓に重大な障害をきたすことだってあります。そしてナチュラルとか天然と書いているサプリメントも、成分表を見れば化学物質が10種類以上含まれていることもあります。
サプリの副作用
薬治療は多くの病気や症状改善に役立ちますが、一部の薬は副作用で体の不調を引き起こすことがあります。例えば抗生物質は細菌由来の感染症の治療に使用されますが、腸内の善玉菌も減少させてしまう欠点があります。腸内フローラは消化、免疫応答の調整、ビタミンの生成など多くの生体機能に関与しています。抗生物質の服用で、このバランスが乱れると悪玉菌が増加してしまうことになります。腸内フローラのバランスが崩れると下痢、便秘、ガスの生成、腹痛などの消化器系の不調が起こります。さらに一部の抗生物質は、クロストリジウムディフィシルという細菌を過度に増殖させてしまうことが指摘されています。この細菌は重度の下痢や炎症性の大腸炎を引き起こす可能性があります。
薬にはたくさんの種類がありますが、抗生剤の副作用で悩んでいる場合には、ビタミンB群を摂取すると良いでしょう。ビタミンB群は、エネルギーの代謝を促進し、体全体のエネルギー水準を上げる助けとなります。腸内の善玉菌の減少が関連する消化不良の症状や、それに伴う疲労感にも有益と言えます。特に神経の健康や機能をサポートするためにはビタミンB1、B6、B12が必要になります。
ビタミンの注意点
ビタミンの種類によっては他の成分と一緒に摂取すると吸収が阻害されるものがあり、例えばビタミンKとビタミンEを一緒に摂取するのは推奨されていません。ビタミン Eの高凝固作用がビタミンKの効果を打ち消し、血液の凝固能力が低下する可能性があります。ビタミンB12と葉酸の組み合わせもあまり良くなく、葉酸がビタミンB12欠乏症の症状を一時的に改善することができますが、その結果、B12欠乏症の症状を軽度に感じ放置してしまう可能性があるため、実際の問題が存在しているにも関わらず、それが早期に発見されず治療が遅れるリスクがあります
同様に、服用している薬の種類によってはビタミン剤と相互作用する可能性があるため、服用薬がある場合は独断でビタミン剤を飲むのは止めましょう。医師や薬剤師に相談してからビタミン剤を摂取するかどうか決めるようにすることが必要です。
ビタミンを摂取するタイミング
朝食時の摂取には、ビタミンB群とビタミンCがおすすめです。ビタミンB群は8種類の水溶性ビタミンからなり、エネルギーの産生や神経のサポートする役割があります。特にB1、B2、B3は食事から摂取したエネルギー変換に関与しています。朝にこれらのビタミンを摂取することで、日中の活動力をサポートできます。ビタミンCは強力な抗酸化作用を持つ水溶性ビタミンで、体内の酸化ストレスを中和して細胞を守ります。朝と昼は紫外線や大気汚染といった外部からのストレスを受ける可能性が高いため、朝からビタミンCを摂取して抗酸化作用を利用すると良いでしょう。
また、体が受ける外部ストレスを緩和し、心身ともに負担を減らす効果が期待でき、食事後の摂取に向いているのが、脂溶性ビタミンのビタミンA、D、E、Kです。これらのビタミンは、脂質と一緒に取ると腸での吸収率がアップします。つまり脂質を含む食事後に摂取することで効率的にビタミン摂取をすることができます。オリーブオイルやアボカドなどの脂質と脂溶性ビタミンは、相性が良いでしょう。
就寝前の摂取におすすめなのはビタミンB群です。ビタミンB6は神経伝達物質の生成に関与し、セロトニンという神経伝達物質の合成をサポートします。セロトニンは気分や行動に影響を与える重要な神経伝達物質の1つであり、セロトニン分泌量が多いと幸福感を感じやすく、ストレス耐性も向上します。またメラトニンという睡眠ホルモンの量も増え、眠りたい時にぐっすり眠れるようになります。そのため就寝前にビタミンB6を摂取すると、自然な形で睡眠の質を向上させることができます。
また、ビタミンB5は副腎脂質ホルモンの合成に必要で、ストレス応答や体のリズムの調整に必要な栄養素です。ストレス管理と睡眠の質は、つながりが深く、ストレスが蓄積すると不眠症になることもあります。ビタミンB5の適切な摂取は、ストレスの軽減や良質な睡眠をサポートすることが期待できます。
また、ビタミンB12もおすすめで、ビタミンB12には神経系の健康を維持する役割を持っており、神経の伝達機能の正常にし、寝つきを良くしてくれる効果が期待できます。ビタミンB12の欠乏は、特に高齢者に多く、これが原因で不眠や睡眠の浅さを感じることも多くなります。不眠症になるとすぐに病院へ行って睡眠薬をもらいに行く人もいますが、まずは体が必要としている栄養素に目を向けることも大事です。また健康を考えるなら自身の体調や症状を正確に理解することも大事です。原因を特定しなければ、適切なビタミン剤を選ぶことができません。適当な選択は意図しない副作用や不調を引き起こすリスクがあります。そのためビタミン剤の知識を深め、安全かつ効果的に利用することが必要になってきます。
メンタルに最適な食べ物
タンパク質不足はトリプトファン不足
心の不調の原因にタンパク質不足があると指摘されています。髪や皮膚、筋肉、骨だけでなく、ホルモンや酵素免疫に関わる抗体でさえその材料はタンパク質です。また脳内神経伝達物質をつくる大元の栄養素もタンパク質です。
なぜタンパク質が不足すると心の不調になるのかは、それはセロトニンが不足するからです。例えばうつの原因はセロトニン不足であると考えられています。セロトニンはトリプトファンというアミノ酸を材料に脳で作られるため、トリプトファンが足りなければ十分なセロトニンは作られません。トリプトファンはアミノ酸であり、結局タンパク質がなければ十分に作られないのです。因みにトリプトファンは睡眠ホルモンのメラトニンの材料にもなります。
トリプトファンは、大豆製品や卵、肉類、カツオ、マグロ、秋刀魚などの赤みの魚、ナッツ類に多く含まれています。
コレステロール不足でセロトニン不足
肉類などに含まれるコレステロール値が高いことは健康に悪いと言われていましたが、欧米人に比べて日本人はコレステロールが低すぎるというが問題になっています。それを受け2015年に厚生労働省はコレステロールの食事での摂取制限を撤廃しています。
コレステロール値が私たちの心に大きな影響を与えていることがわかっており、細胞を守る細胞膜やホルモンをつくる材料になるだけでなく、神経細胞や脳細胞もコレステロールを多く含んでおり、健康に欠かせない必要なものです。私たちの体にあるコレステロールの1/3は脳にあり、脳に必要なコレステロールが低下すれば脳の活動も低下して心の不調につながっていることが分かっています。さらにコレステロールはセロトニンを脳まで運搬するのに一役買っており、コレストレールが低下するとセロトニン不足につながり心の不調を引き起こします。
また肉類に多く含まれる鉄分が不足すると、ドーパミン、ノルアドレナリン、セロトニン、メラトニンなどの脳内神経伝達物質の合成を低下させてしまうことも分かっています。つまり鉄が不足するとメンタルの不調につながります。特に女性は肉類などから鉄分を意識して補給する必要があります。肉には肉の良さがあり、野菜には野菜の良さがあるので、この2つ合わせてはじめてバランスの良い栄養素が摂取できます。
ビタミンB6不足でGABA不足
ビタインB6は鉄分に匹敵するぐらい脳内神経伝達物質を合成するために重要な栄養素です。セロトニン、ドーパミン、GABAを合成するためにもビタミンB6が必要になります。特にGABAは、y-アミノ酪酸とも呼ばれメンタルの健康に重要な栄養素です。ビタミンB6が豊富に含まれている食材として、ニンニク、とうがらし、ゴマなどが挙げられます。
不定愁訴と自律神経
不定愁訴と自律神経には密接な関係があります。自律神経の乱れが様々な体の乱れにつながり、代表的な症状として、以下の症状が挙げられます。
- 慢性的な睡眠不足(不眠)
- 急な動悸・胸のしめつけ
- 慢性的な首肩コリ
- 集中力の低下
- 不安な気持ちに襲われる
- 些細なことでイライラする
- 感情の起伏が激しい・抑えられない
- ちょっとしたことでひどく落ち込む
- 季節に関係なく手足が冷える
- 体が重だるく疲れがとれない
- 耳鳴りや頭の重さを感じる
- しびれを感じる場所がある
自律神経を整える鍼灸治療
自律神経の乱れが、頭痛、不眠、首肩こり、婦人科系の疾患などの様々な不調の原因になります。自律神経は意識してコントロールできない呼吸、代謝、消化を調整する役割がありますが、加齢、ストレス、生活習慣などからホルモンバランスが乱れ、自律神経のバランスが崩れやすくなります。
特に女性は生理に伴い、女性ホルモンのエストロゲン分泌量が大きく増減するため、自律神経のバランスも崩れやすくなります。また自律神経のバランスが乱れると、女性ホルモンのバランスにも影響して、生理前後の不快な症状を悪化させることもあります。
女性ホルモンの減少で起こる様々な症状を、総称として不定愁訴(ふていしゅうそ)と呼びます。その代表例が自律神経失調症状であり、上半身が急に熱くなる(ホットフラッシュ)や発汗などが挙げられます。
そのほかにも肩こり、腰痛、皮膚の乾燥、手のこわばりなどもよくみられます。さらに社会的・心理的なストレスも重なり、情緒が不安定、気分の落ち込みなどが誘発するケースもあります。不定愁訴と自律神経には密接な関係があり、自律神経の乱れが様々な体の乱れにつながります。代表的な症状として、以下の症状が挙げられます。
肩こり | 肩こりを改善することで、不定愁訴の症状が改善することあります。肩こりがあると自律神経のバランスが働きにくくなります(頚髄と呼ばれる脳から続く脊髄)。 肩こりは、スマホやパソコンなどで前傾姿勢になり、筋肉の負担が増え、血流の流れやリンパ液の流れも悪くなることから生じますが、その症状はゆっくりのため、肩こりが原因で起きている症状ではないと、見過ごされている事が多くあります。 鍼灸治療で血液循環を促進して、深部のこりを緩めていくことが症状緩和になります。 |
頭痛 | 特に40代以降に起こる頭痛は、脳血管の血管壁の痙攣や収縮によって起こっているのではないかと考えられています。またエストロゲン分泌量の減少が関係しているとも言われています。 頭痛の症状は様々ですが、目の疲れが伴う場合には、頭の鍼が症状の緩和に効果的です。 |
のぼせ・ほてり・発汗 | ホットフラッシュは、不定愁訴の代表的な症状のひとつです。自律神経のバランスが崩れ、血管の収縮・拡張のコントロールが上手くできなくなることが原因です。 一方で頭部は熱を持つものの、足元は冷えている方も多く、その場合はのぼせと冷えを同時に治療することができる鍼灸治療が効果的です。 |
不眠 | 女性ホルモンのエストロゲン分泌量が大きく増減するため、自律神経のバランスも崩れやすくなります。その結果、寝つきが悪くなる、眠りが浅い、夜中に何回も目覚めるといった症状があらわれます。 鍼灸治療によって自律神経の乱れを鎮めて、全身調節を行うことによって、身体のリズムを正常な状態に取り戻すようにします。そのため鍼灸治療をした夜はぐっすり眠ることができたという方が多くいらっしゃいます。 |
イライラ・うつ状態・不安感 | イライラしたり、不安になったり、怒りやすくなるなどの感情の起伏が大きくなるのも不定愁訴の症状のひとつです。これはホルモンの変化やゆらぎが大きく感情の起伏に影響しているからと言われています。 鍼灸治療では、自律神経の乱れを整えて、副交感神経を少し優位にすることで感情のコントロールができるように導いていきます。 |
動悸・息切れ | 動機・息切れは、エストロゲンが大きく「ゆらぎ」ながら減少するため、脳が混乱して自律神経が乱れることで起こります。 鍼灸治療によって、呼吸に関係する筋肉(胸鎖乳突筋や肩甲骨内側の筋肉)を調節することで、自律神経を整えます。 |
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。