東洋医学的に診る「カイロを貼る場所」

    東洋医学的に診る「カイロを貼る場所」

    カイロを貼るだけで痩せるだけではなく、便通改善やむくみ改善、冷え症改善を期待でます。一方で貼るのがNGポイントもあります。実はカイロは貼る場所によって得られる効果も全然違います。

    東洋医学的に診る「カイロを貼る場所」

    お腹を温める

    体の真ん中は内臓が集中している場所のため、おへその下5から9㎝あたりにある丹田(たんでん)を温めることで内臓を温めることができます。免疫細胞の70%が腸に存在しているため、温めることで免疫力が上がったり、お通じが良くなったりします。他にも太さ約3㎝の太い血管の大動脈が心臓から出て体の真ん中を通っており、ちょうどお腹あたりに分岐ポイントがあります。そのため、ここを温めることで下半身も温まります。

    実は体が冷えていると脳が危機を感じて女性ホルモンの分泌が抑制されます。女性ホルモンが少なくなると生理不順や便秘などの体調不良に繋がってしまいます。カイロで体を温めると逆に体が女性ホルモンを分泌してくれるようになり、女性ホルモンの分泌を促すことで脂肪燃焼促進や体調改善、生理痛の緩和も期待できます。

    おまたを温める

    実は生理用ナプキンは、経血をゼリー状に固める吸収性ポリマーが入っており、これは保冷剤にも使われている素材で、経血を閉じ込めた紙ナプキンは保冷剤を肌に密着させているような状態になります。尿を吸収する尿取りパッドも同じことが言えます。これが子宮の冷えを誘発して、子宮動脈の血液を滞らせ、熱を運べずに体全体の冷えに繋がっています。

    子宮が冷えることで子宮内膜症、子宮筋腫、膀胱炎、月経前症候群、生理痛、過多月経などが誘発されてしまいます。子宮の血行不良が続くことで良性のコブができる子宮筋腫や子宮内膜の組織が子宮の内側以外の場所にできる子宮内膜症を引き起こす原因になります。膣も子宮も血流が多い場所であるため、おまたを温めることで血行良くすることができます。

    おまたカイロのメリットは他にも、頻尿や更年期障害の改善にも良いとされています。冷えるとトイレが近くなるのは膀胱組織が冷えて硬くなって膀胱が尿を溜められないのが原因です。おまたにカイロをすることで、この熱が膀胱に伝わって本来の機能が高まり、残尿感や排尿回数の軽減が期待できます。

    また、更年期障害は下半身を温めることで血液の流れを整えるのが良いです。閉経することで子宮に流れていた血液の生き場がなくなり、上半身に留まりやすくなり、全身のバランスが崩れて様々な不調が現れます。おまたにカイロをして、下半身を温めることで血液や栄養素を運ぶ血が全身をスムーズに巡るようになれば症状の改善につながります。

    生理痛を和らげる

    カイロを貼る場所は、仙骨(せんこつ)です。仙骨はちょうどお尻の割れ目の部分の上にあり、骨盤の中心で重要な骨になります。健康で若々しく美しくあるためには、お腹の中が温かいことは必須です。仙骨の近くには腹部大動脈から枝別れした血管が走っており、これらの血流が悪くなると便秘、下痢、消化不良、頻尿、生理痛、ED障害、不妊、腰痛、手足の冷えと様々な不調に苛まれます。

    仙骨を温めると血流が良くなり、お腹の周りや太ももをはめとした全身の血流が良好になります。生理痛対策でお腹を温めると症状が和らぐ方は、お尻の割れ目の部分の上にある仙骨にカイロを貼りましょう。骨盤の中にある臓器の機能も高まるため、頻尿や生理痛、不妊対策にも効果が期待できると言われています。

    特に、現代人は座っている時間が長く、お尻回りが常に圧迫されて仙骨も圧迫されていることが原因で、足のむくみや冷え、太ももや下腹部に脂肪が付きやすくなっています。そのため仙骨を温めれば血流の増進や代謝がアップし、さらに全身の血流がしっかりと回ることによって心筋梗塞や脳梗塞のリスクまで減すことができるため、健康や美容ダイエットなど多くの改善ができるツボです。

    脂肪を燃焼させる

    カイロを使って体を温めるには血流が集まっている部分を的確に狙うことで効果的に脂肪を燃焼させることができます。カイロで体温が1度上がるだけでも基礎代謝は12%も向上します。基礎代謝は体温維持の他、心臓や呼吸など人が生きていくために最低限必要なエネルギーのことです。つまり生きているだけで消費されるエネルギーで、1日に消費するエネルギーのうち約70%を占めています。脂肪を減らすにはエネルギー消費量が大事なため、その基礎代謝がカイロを貼って温めることで12%も上がるため、カイロを正しく貼ることでダイエット効果も期待できます。

    カイロを貼るのはおへその下です。おへそから指3本分下の部分(大巨(だいこ))にカイロを貼ることで、より効果的に便秘を解消してくれたり、体の痛みを軽減してくれます。おへその下には腸が集まっていて、腸内環境が整っていればセロトニンというホルモンが分泌され、このセロトニンは精神を安定させる効果があり、また食べすぎの抑制効果も期待できます。セロトニン が日中に活発に働くと睡眠を得られやすくなるため、高年期障害とも関わりがあることが 知られるようなっています。

    またセロトニンは、痛みも止めてくれる物質で腸が温かくなることで腸内環境が改善され、腰痛や膝痛などの痛みを感じにくくする作用もあります。さらにおへその下の部分は、心臓から出ている大きな血管が足の血管へと変わる大きなバイパスのような部分でもあるため、ここを温めることで老廃物がしっかり流れてくれ、血流を足の先までしっかり送ってくれます。このように毎日温めると全身のコンディションが安定すると言われているのが、おへその下です。

    肝臓を温める

    カイロを貼る場所は、肝臓です。肝臓という臓器は体の右側の部分に1つだけあり、食べたものは胃や腸で吸収されやすい形に変えられた後、肝臓へ送られます。つまり肝臓は栄養素の生産やリサイクルの中心となっている場所のため、カイロで温めることで老廃物を効果的に排出してくれるようになります。肝臓の調子が悪いとむくみの原因になったり、肌の色が悪くなり、さらに内臓全体の機能が下がるため、しっかりと温めてあげる必要があります。

    ただし温める場所には注意が必要です。肝臓の前の部分に貼ってしまうと心臓に近くなってしまうため、背中の部分や横の部分を温めるなど、右肋骨ちょうど胸の下の部分(京門(けいもん))にカイロを貼ると効果的に温かくできます。

    仙骨からは自立神経の一種の副交感神経の束が下腹部に向かって伸びており、体の外側から自立神経を刺激できる部位です。仙骨を温めると仙骨周りの血流も良くなることで胃腸や骨盤内の臓器の血行も回復します。副交感神経は、夜間やリラックスしている時に活発に機能する神経のことで、副交感神経の機能には、血管拡張、血圧降下、心拍数低下、筋肉の弛緩、発汗抑制などが挙げられます。男性は30歳以降、女性は40歳以降、副交感神経の働きが低下します。

    血液は酸素や体内で作られた酵素などを全身の各器官に運び、二酸化炭素や老廃物を回収して体外へ排出する役割をしています。細菌やウイルスと戦って体を守る免疫細胞の移動 を助けているのも血液です。血流が良くなると様々な不調や病気が改善されます。

    とにかく全身を温める

    首にある大椎(だいつい)は、首を軽く前屈して首の後ろで背中との境目にボコと骨が出てくる、その骨のすぐ下の小さな隙間にあります。ここには太い血管があり、首を温めることで全身が効率よく温めることができます。肩甲骨と肩甲骨の間にカイロを貼って温めるのも効果的です。ここも太い血管が通っており、全身の血行が良くなり冷え症改善が期待できます。

    また、身体のコンディションを整えるツボとして、おへそから指2本分下にある気海(きかい)というツボにカイロを貼ると、お腹だけではなく首から背中にかけても温かくなることを感じられます。そして足が冷えて困るって人には、太渓(たいけい)がおすすめです。うちくるぶしの後ろでアキレス腱との間のくぼみにあるツボです。冷えに良いとされているツボで、アキレス腱を中心に足首の後ろを包むような感じで貼ると良いでしょう。また足首周りには重要なツボがいくつかあるため、頭痛や腰痛、冷えから来る頻尿などに効果的です。

    風邪の対策

    風邪の対策のツボが風門(ふうもん)です。この門を熱で塞ぐことで風という寒い敵の侵入を防いで風邪を予防できます。風門は、下を向いた時に首の裏に大きく出っ張る骨があり、背骨に向かって数えて下2つ目の突起で、ちょうど指で3本分くらい下のあたり、そして左右外側の指2本分ほど離れた位置にあります。

    今日は寒いなと感じたら、風邪予防にカイロ貼ってみましょう。肩や肩甲骨の血流も良くなって体のこりも和らぎます。また予防だけではなく、風邪を引いた後にも効果的で、風門のツボに回路を貼って温めると早く治ります。

    腰痛の対策

    おへその真裏には命門(めいもん)というツボがあります。そしてそこから指2本分外に腎兪(じんゆ)というツボがあります。命門は命の門と書く通り、とても重要なツボで、まず腰を手に当ててのポーズをし、ちょうど脇腹に手があって4本の指が前(腹)、母指が後ろとなり、そのまま母指を脊柱のところまで持っていきます。骨と骨の間にあるのが、命門のツボで、そこから指幅2本分外が腎兪のツボです。

    腹痛、下痢、お腹の冷え対策

    お腹を温めることができる関元 (かんげん)というツボがあります。下腹部でおへそから指幅4本分ほど下にあるツボです。腹痛や下痢などの冷えによる胃腸のトラブルは、関元のツボを温めると早い回復が期待できます。

    肩こりの対策

    肩こりの場合は、肩に直接カイロを貼るのではなく、首の少し下で肩甲骨の上あたりに貼りましょう。肩から背中にかけては僧帽筋という大きな筋肉があるため、肩甲骨の間の背骨沿って2枚並べて貼るのがおすすめです。ただしカイロが有効なのは慢性的な肩こりの場合のみで、肩の筋肉痛や四重肩、五十肩の場合はカイロの使用です。

    急性期以外の昔から痛む場所

    生活習慣の乱れや誤った体の使い方、ストレスなどで体がダメージを受けるとプロスタグランジンという物質が増えます。このプロスタグランジンの分泌が増えることで血液循環が良くなり、ダメージの場所を修復する仕組みがあります。この時に炎症として痛みが出て、修復が完了すると無事に痛みも消えます。しかし体温が低く、血流が悪いとダメージの修復作業が長くかかり、痛みが長引いてしまいます。それに加えて体温が低い人は、体も硬くて柔軟性も低いため、修復箇所が多くなり、原因不明の全身の痛みが現れることがあります。

    カイロを貼ることで体温を上げ、修復作業を促すことができます。

    カイロを貼るNGポイント

    心臓付近や男性の生殖器の付近は、カイロを貼るNG ポイントです。心臓の近くにカイロを貼ると倦怠感や疲労感の原因になります。心臓はパソコンのバッテリーのような部分であり、心臓は元々体の中で体温が高く、この部分をカイロなどで余計に温めると血流が良くなり過ぎたり、心臓がより熱くなってパソコンのバッテリーのように処理速度が落ちたり、大きな負担がかかって眩暈や倦怠感の原因になります。

    また頭や脇の下も温めはNGです。頭や脇の下は熱を逃がして体温を調節する役割があります。カイロを当てることで熱がこもり、酷い時は発熱することもあります。一般的な注意点としては、寝る時に貼らない、肌に直接貼らない、マフラーなどできつく圧迫しないことが挙げられます。

    コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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