
実は、腸とタンパク質には深い関係にあり、なんとなく不調の方の多くがタンパク質不足に陥っています。タンパク質は、体を構成する細胞の材料となる重要な栄養素で、それが不足してしまえば、当然のことながら体の元気を保つのは難しくなります。
実は、タンパク質不足が広がっている理由の一つが腸の健康状態にあります。例えば未消化の食べ物が腸の壁にこびりついていたり、腸が真っ黒になって動きが悪くなっている人も珍しくありません。暴飲暴食をしているわけでもなく健康的な生活を送っているはずの人であっても、腸に問題が生じているケースがあり、このように腸にトラブルが起きているような状態では必要な栄養素が吸収されにくくなり、様々な不調の原因となってしまいます。そのためタンパク質をきちんと吸収できる腸を作っていく必要があります。
タンパク質不足について
日本人の8割以上がタンパク質不足に陥っています。厚生労働省の調査データ によるとタンパク質の平均摂取量は、1995年をピークに減少を続け、2019年には約70gまで低下、これは戦後間もない1950年代とほぼ同じ水準です。
タンパク質は体を構成する細胞の材料で、筋肉や内臓、肌、髪、骨、血液などの全ての組織に不可欠です。またホルモンや酵素、免疫を支える抗体の材料にもなります。これが不足すれば不調の原因になってしまいます。例えば、肌が荒れる、髪がパサつく、内臓の動きが鈍る、骨が脆くなるなど、こういったことは全てタンパク質不足の影響が現れている可能性があります。
また、私たちの細胞は常に新しく生まれ変わっており、ターンオーバーを繰り返していますが、タンパク質が不足しているとこのターンオーバーがスムーズに進まず、細胞が老化しやすくなります。
さらに、タンパク質は精神やメンタルの健康にも深く関わっており、メンタルの調子を崩す人が激増している現代において、タンパク質不足がその大きな原因の1つであることは間違いないでしょう。例えば幸福感をもたらすホルモンであるセロトニンの材料もタンパク質です。これが不足すればイライラしたり、落ち込んだり、やる気が出なくなったりと心の不調を引き起こします。
また、セロトニンが減ると睡眠ホルモンのメラトニンの分泌量も減少し、不眠や生活リズムの乱れを招いてしまいます。最近メンタルの調子が悪い、気分が落ち込む、よく眠れないという人はタンパク質不足に陥っている可能性が高いので、タンパク質の摂取量を増やしてみれば、その辛い症状から解放されるかも知れません。
さらに、タンパク質不足は体温の低下や代謝の悪化にもつながります。食べたタンパク質の一部は消化吸収の過程で熱エネルギーを生み出します。この熱は食事誘発性熱産生と呼ばれ、体温を上昇させて代謝を高める働きがあります。しかしタンパク質が不足すれば、この熱産生が減少し、冷え症や太りやすい体質を招いてしまいます。
また、私たちが気をつつけるべきは、ただタンパク質を摂るのではなく、摂取したタンパ質をしっかりと吸収できる体作りが必要です。そのためには腸内環境を整えることが必要です。腸内環境を活性化させる発酵食品や食物繊維を積極的に摂ることで、腸の働きを良くすること必要です。
健康診断から考える未病
未病とは、健康でも病気でもなく健康と病気の間にある状態のことです。具的には自覚症状はないけれども検査で異常が見つかる場合や自覚症状はあるもの の検査で異常が見つからない状態のことを指します。
例えば健康診断などの検査では、検査数値の上下を合わせて5%を異常値と呼び、残りの95%を基準値とします。実はこの基準値の中には、タバコを吸っている人、肥満の人、偏食で痩せている人なども全部含まれています。そのうちの2/3はいずれ病気になる未だ病気でない人達となり、そのような状態を未病と言います。
そして未病の範囲内の値のことを未病値と呼び、本当の理想の値は基準値から、その未病値を引いた範囲内に入らなくてはならない非常に狭き値です。そのため食事指導や運動指導などの生活指導をして、体の状態を理想値に近づけようとしています。そのため検査伝票で今までとは全く違った未病値の読み方をしていかなくてはいけません。つまり未病のうちに病気を見つけられるような読み方が必要だということになります。
未病とは健康と病気の間の状態のことであり、早期発見と予防が大切であることは言うまでもなく、検査伝票を詳しく読み取り、未病の段階で病気を予防することも重要です。そのため、特に血液検査伝票を読みこむことで、未病のうちに病気の予防を行うようにしましょう。
健康診断で総タンパク質量(TP)を確認する
まずは総蛋白をチェックしてみましょう。TPはトータルプロテインの略で、血液中に存在している全てのタンパク質の総和ことです。TPの数値が6.5を切っていればタンパク質が少し足りないという証拠です。そのような人は肉や乳製品を避けているのではないかと疑われます。
そしてTPは、アルブミンとγ-グロブリンの2 つに分けられ、アルブミンは総TPの約60%を占める最も多いタンパク質です。役割は、水分を血管内に保ったり、血管内の物質の運搬や保持する働きを持っています。一方でγ-グロブリンは、細菌やウイルスから体を守る免疫機能において重要な役割を持っています。アルブミンとγ-グロブリンがTPの主成分でアルブミンは約60%、γ-グロブリンは約20%を占めています。
具体的にどのくらいの量のタンパク質を摂取すれば良いか。一般的に1日に体重1kgあたり1から1.5gのタンパク質が最低減必要とされており、2gぐらいまでは摂っても問題ないと言われています。そして一食あたりのタンパク質量の目安は、男性の場合1食あたり30から40g、女性の場合は25から30gのタンパ質を摂取していくということを意識しましょう。また1度に大量のタンパク質を摂っても意味がなく、1度に食べるタンパク質は多すぎても少なすぎても非効率なので、毎食適量補うという考え方が重要です。
タンパク質不足の大きな原因
いくらタンパク質を摂っていても、腸がその栄養を吸収できていない原因に「腸漏れ」があります。これは医学的にリーキーガット症候群と呼ばれる状態を指しています。通常、小腸は必要な栄養素を吸収しながら不要な物質、例えばウィルスや細菌、有害物質を体の外に排出します。しかし腸の粘膜が炎症を起こすと、その細胞同士の間に隙間が生じて、本来通過させるべきではない物質が体内に侵入します。
この現象が腸漏れで、腸漏れが発生してしまえば、タンパク質やその他の重要な栄養素の吸収が阻害され、タンパク質を十分摂取しているにも関わらずタンパク質不足に陥ってしまうだけでなく、未消化の栄養素や毒素が体内を循環し全身に悪影響を及ぼします。その結果、疲労感や集中力の低下、肌荒れ、お腹の不調など様々な症状が現れます。腸漏れが引き金となって慢性的な栄養不足が進行し、体全体の健康を損なう負の連鎖が生じてしまいます。
実際に、日本人の約7割が腸漏れの可能性を抱えていると指摘されており、これは日常的な食生活や生活習慣が直接的に腸漏れを引き起こしているからです。ストレス過多、睡眠不足、糖質やアルコールの過剰摂取、小麦や乳製品に含まれる特定の成分のグルテンやカゼインが腸内環境を悪化させ、腸漏れを招くリスクを高めます。
腸漏れの原因は、タンパク質不足や腸内環境の悪化と密接に関連しています。タンパク質は腸の粘膜を構成する細胞の材料であり、不足するとこれらの細胞のターンオーバーが滞ってしまいます。その結果、腸のバリア機能が低下し、腸漏れが発生します。
同時に腸内環境が悪化すると悪玉菌が増殖し、腸の粘膜を直接傷つけます。このような腸漏れが進行すると体全体に様々な不調が現れるようになり、疲労感が抜けない、集中力が続かない、肌の調子が悪い、消化不良や便秘下痢を繰り返すなど、こういったことは全て腸漏れが原因となっている可能性があります。さらに腸漏れが悪化してしまうと体内で炎症が広がって慢性的な病気のリスクも高まることが分かっています。
不調をなくす方法
未消化の炭水化物の存在
腸漏れの主な原因の1 つとして、糖質の摂り過ぎや未消化の炭水化物の存在が挙げられます。多くの人は、うどんやご飯、パンといった炭水化物は、他のタンパク質などに比べて消化が良いと考えています。しかし胃カメラで観察してみるとこれらの食品が胃の中に未消化のまま長時間残っているケースが頻繁に確認されています。
炭水化物は胃での消化が進まず、小腸での吸収を待つため、胃の中に留まる時間が長く、一方でタンパク質は胃から分泌される消化酵素によって分解が進み、意外にも早く消化されます。未消化の炭水化物が腸に及ぼす悪影響は多岐に渡り、消化器官全体が過剰に働くことで疲弊し、腸の粘膜が炎症を起こしやすくなります。
また、未消化の炭水化物が腸内で異常発酵を起こして腸内環境が乱れ、悪玉菌が増殖します。これがさらに腸漏れを悪化させる原因になります。また早食いや食べ過ぎも腸への負担を増大させるため、食事はゆっくりとしっかり噛んで食べることで消化酵素の分泌が促進され、胃や腸の負担を軽減できます。
さらに糖質を摂り過ぎると血糖値が急上昇し、それを下げるためにインスリンが大量に分泌されます。この状態が続くと太りやすくなるだけでなく、腸内の炎症を助長する原因にもなります。
そして炭水化物よりタンパク質の方が大事であるため、腸の健康を取り戻すためにはタンパク質の摂取を再優先する、タンパク質ファーストの食生活が重要です。例えば朝食には、卵や納豆、昼食には鶏肉や魚介類、夕食には豆腐や赤身肉を取り入れることでタンパク質をバランスよく摂取できます。さらにタンパク質と一緒にビタミンB群や亜鉛、ビタミンCを摂ることでタンパク質の代謝と吸収が促進されます。また厚生労働省の食事摂取基準では糖質の最低必要量を1日あたり約100gとし、これはご飯は2杯分に相当します。
小麦グルテンを避ける
一部のタンパク質については、むしろ腸に悪影響を与える可能性があるため要注意です。そしてその代表例が小麦粉に含まれている小麦グルテンです。小麦グルテンは、小麦粉に含まれるグルテニンとグリアシンという2 種類のタンパク質が絡み合ってできる編み目状の成分のことです。パンのふわり感や麺のもちもち感を生み出す要素で、この粘りこそが腸にとっては問題の種となります。
小麦グルテンは胃で消化されにくく、腸内でべたつきを残します。さらに乳製品でよく知られている乳糖不耐症に似た小麦グルテン不耐症という体質も存在します。この体質を持つ人は小麦グルテンを消化できず、腹痛や下痢、さらには疲労感や肌荒れ、集中力の低下といった全身的の不調を引き起こすことがあります。
また、小麦グルテンには依存性があることも知られています。これは長期間に渡ってパンや麺類、ピザなどを常食していると、体が無識に小麦グルテンを欲するようになり、食事から排除するのが難しくなってしまいます。この依存性のために食生活を変えたくても変えられないという人も少なくありません。小麦グルテンの摂取が続くと腸漏れのリスクが高まり、さらに慢性的な炎症状態に陥る可能性があります。
このような腸内環境の悪化は栄養の吸収率を低下させるだけでなく、免疫力の低下や肌のトラブル、メンタル面での不調などを引き起こすことにも繋がります。
小麦グルテンが自分の体に悪影響を与えているかどうかを知るための簡単な 方法は、5日間小麦を絶つことです。これは普段の食生活からパン、パスタ、うどんなど小麦粉を使った食品を一切排除してみるという試みです。この短期間で自分の体調や腸の状態がどのように変化するのかを観察することで、疲れが取れやすくなった、集中力が高まった、肌の状態が良くなったなど、ご自身の体で実感できればグルテンフリーの食生活を継続するのが良いでしょう。
乳製品は体に良い!?
腸にはヨーグルトが良いことはかなり有名ですが、しかし日本人の約9割は乳製品をうまく消化できない乳糖不耐症と言われています。つまり乳製品と日本人の腸は、はっきり言って相性が良くありません。
乳糖不耐症は、乳製品に含まれている乳糖を分解するための消化酵素であるラクターゼが十分に作られなかったり、その働きが弱かったりする状態のことです。このため乳製品を摂るとお腹がゴロゴロしたり、下痢になったりする人が多くいます。また症状が軽いと気づかない人もおり、そのためヨーグルトを食べると便通が良くなると感じる人がいるかもしれません。しかし実際には軽くお腹を壊しているだけという可能性も高いことが指摘されています。
そして、それだけではなく乳製品に含まれているカゼインというタンパク質も 厄介で、この成分は消化されにくく、未消化のまま腸に届くことがあります。そして腸内の細胞に炎症を引き起こし、腸の壁に小さな穴が開いてしまうことがあります。これがいわゆるリーキーガット(腸漏れ)と呼ばれる状態です。腸漏れが起こると食物の断片や毒素が腸壁を通過し、血液中に入り込んで全身に炎症を広げる原因になると言われています。
さらに乳製品は遅延型フードアレルギーの原因にもなりやすい食品です。このタイプのアレルギーは摂取してから数時間から数日後に症状が現れるため、自分が何に反応してアレルギーが出ているのかを気づきにくいというのが特徴です。これによって慢性的な疲労感や肌荒れ、さらには集中力の低下など様々な不調が引き起こされることがあります。遅延型アレルギーは一見軽い症状に見えることが多いですが、放置すると全身の炎症を招いて、長期的には深刻な健康問題を引き起こす可能性があるので要注意です。
まず試しに牛乳、ヨーグルト、チーズなど普段の食生活から一旦取り除いてみて、そして体の変化をじっくりと観察して、肌の調子が良くなった、胃がすっきりした、体が軽く感じるといったポジティブな変化が現れたら、それは乳製品があなたの体に合っていなかった証拠かもしれません。
腸漏れを防ぐビタミンD
近年の研究では、ビタミンDが腸内環境を整えて腸粘膜の細胞を強化すること が明らかになっています。ビタミンDは、腸粘膜の細胞同士をつなぐ結合力を高め、腸漏れを防ぐ役割を果たし、これによって体に必要な栄養素をしっかり吸収し、不要な物質の侵入を防ぎます。その結果、アレルギーや炎症のリスクを軽減し、腸内細菌の多様性を保つことが可能になります。
しかし、日本人のビタミンD摂取量は十分とは言えません。厚生労働省が推奨している摂取目安量に多くの人が達しておらず、特に都市部ではビタミンD不足が深刻で、東京都民の98%がビタミンD不足、または欠乏状態にあるという調査結果もあります。
また、ビタミンDは腸内細菌の中でも特に重要な酪酸菌の増殖を助けてくれることが分かっています。酪酸菌は腸内環境を整えるスーパー善玉菌と呼ばれ、腸粘膜の修復や炎症の抑制に寄与します。またビタミンDは、タンパク質の代謝にも関与し、摂取したアミノ酸を体内で新しい細胞や組織に変える役割も果たしてくれます。
また、ビタミンDは免疫力を高めるだけでなく、免疫の過剰な反応を抑えることで自己免疫疾患の予防にも役立つとされています。さらにうつ病やストレスへの耐性向上、カルシウムの吸収促進による骨の健康維持にも効果があります。
ビタミンDの1日の目標摂取量を達成するために簡単で実践しやすい方法が1日1個のたまごを食べることです。たまご1個には約2.2μg(80IU)のビタミンDが含まれており、普段の食事に加えるだけで不足分を補うことができます。またサケやサバといったお魚、椎茸などのキノコ類もビタミンDを多く含む食品として知られています。
バランスよく食物繊維を摂る
食物繊維は、腸内細菌の善玉菌の餌となる重要な栄養素で、腸漏れの改善やタンパ質の吸収を促進する役割を果たします。しかし現代の日本人の食生活では食物繊維の摂取量が不足しており、厚生労働省が推奨する1日あたりの目標量、男性では21g以上、女性では18g以上に達していない人がほとんどです。特に水溶性食物繊維が不足しがちであることが課題になっています。
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があり、それぞれ異なる役割を持っています。水溶性食物繊維は腸内の善玉菌の餌となり、腸内環境を整える効果が高く、一方で不溶性食物繊維は腸内を刺激し、腸の動きを活発にする働きがあります。この2つの物繊維を1対2のバランスで摂取することが理想とされています。
水溶性食物繊維を多く含む食品は、納豆や海藻、果物などを積極的に摂り入れましょう。また不溶性食物繊維を急激に増やすと便が硬くなって便秘を引き起こす場合があるため注意が必要です。体の反応や便通時の様子を確認しながら調整することで体に負担をかけずに効果を得ることができるでしょう。さらに食物繊維を摂る場合には、同じ食品ばかりに偏らず様々な食品から摂ることも重要です。腸内細菌は食物繊維を餌にしてエネルギーを生み出し、発酵と呼ばれるプロセスを行います。この発酵が腸内環境を整える鍵となり、腸内細菌が活発に働くことで腸漏れの改善や予防につながります。
健康診断の大切さ
健康診断の目的は生活習慣病を始め、様々な病気の早期発見、早期治療はもちろん病気そのものを予防することです。自分では自覚できない症状や忍びよる病気を見逃さないためにも定期的な受診が必要で、それぞれの検査項目が何を調べているのかを理解することが大切です。
例えば、血圧を測ることで高血圧や心臓の健康状態が分かります。また血液検査では貧血や糖尿病、脂質異常などが分かります。またがん検診でがんの早期発見が可能です。このように健康診断は病気を早期に発見して治療するだけでなく、生活習慣を見直し、健康的な生活を送るきっかけにもなります。
そして健康診断で確認できるのは基本的なデータで、さらに細かく体の健康状態を調べるには人間ドックを受けなくてはいけません。人間ドッグの方が多くの検査があるからより細かいところまで調べられます。人間ドッグは、一般的には40歳以上が推奨されており、その理由は加齢などで体調の変化が40代から出始めるからです。
また、30代はストレスや生活習慣の影響を受けやすく、生活習慣病のリスクが高まる年代なので、例えば脂質異常症や糖尿病、肝機能障害、高尿酸血症、感染症など、それに胃関連や大腸関連の病気、肺炎や肺がん、さらには乳がんや前立腺がんなどの将来のリスクを考えて血液検査や胃カメラ、便潜血反応検査を受けておくことがお勧めです。
そして、女性特有の疾患である乳がんは、40代後半から発症のピークを迎えるデータがあり、最近では30代から発症する人も増加しています。早期発見のためには、30代から乳腺超音波検査や視触診などの検査を受けるのが重要だと言われています。また子宮頸がんも若年層で増加しているデータもあります。そのため早い年代からレディースドックや婦人科検診を受けた方が良いでしょう。
健康診断の数値から考える
尿素窒素(BUN)
尿素窒素(BUN)は、尿素窒素というのは数値が高いと腎臓が悪いと言われています。しかし血液栄養解析では、尿素窒素の数値が低い場合タンパク質が足りないと読みます。この尿素窒素は、タンパク質が分解された最終産物のため、体の中のタンパク質が足りなければ尿素窒素も低くなってしまい、尿素窒素が低いのは要注意だということになります。つまり値が高い場合と低い場合の両方を考える必要があります。
総コレステロール(TC)
総コレステロールはTCやT-CHOとも表記されます。コレステロールとは血液中に含まれる全てのコレステロールの量のことで、総コレステロール=HDLコレステロール値+LDLコレステロール値+中性脂肪値の1/5で算出されます。総コレステロールが高いと心筋梗塞にも繋がりやすく、逆に低い場合はタンパク質が足りないと読むべきです。コレステロールもタンパク質から作られています。
γ-GTP
γ-GTPが高いとお酒の飲みすぎや脂肪肝を疑うべきです(基準値は50U/I以下)。また脂肪肝もお酒以外の原因である非アルコール性脂肪肝は特に注意が必要です。これも低い時にはタンパク質が足りないという見方ができます。
タンパク質は、血、肉、ホルモン、神経伝達物質、酵素になるため、タンパク質は高く維持しておく必要があります。
特に男性の場合には年齢が高くなって血圧が高くなってコレステロールの値が高くなると心筋梗塞の死亡率が上がります。また女性の場合にはコレステロールが高くても心筋梗塞の死亡率とは関係ありません。つまり女性の場合は、コレステロールが高いからと言ってあまり気にしなくても良いでしょう。
またコレステロールは細胞膜の重要な成分であり、コレステロールが高いというのは体内で炎症が起きている兆候であり、不摂生で細胞が傷つくと肝臓が修復のためにコレステロールを生成します。しかし薬でコレステロールを下げると細胞の修復が妨げられてしまうことにもなります。炎症の原因が生活習慣にあるなら、その点を反省してコレステロールの数値を下げる努力が必要になります。
またγ-GTPが高い人は、お酒以外で別の理由で肝機能が問題になっている場合があり、それが菓子パンの食べすぎの場合です。つまり糖質の摂り過ぎで肝臓に負担がかかっていることが挙げられます。このような非アルコール性脂肪肝は、通常はASTよりもALTが2くらい低くなります。ところがASTよりALTの方が高い場合には脂肪肝という風に読みます。この時にコリンエステラーゼが高ければ、脂肪肝の時に同時に上がってくるため、間違いないということになります。
コレステロールが高いということは肝臓が傷ついてコレステロール修復のために一生懸命作ってくれているということなので炎症があると読み、炎症があれば非アルコール性脂肪肝(NASH)と読みます。そして将来は肝硬変になる可能性があります。
クレアチニン
クレアチニンは、筋肉が運動するための重要なエネルギー物質が代謝された後にできる、いわば老廃物のことです。クレアチニンが高い時には、腎臓に障害があると読みます。クレアチニンの正常値は男性で1.0mg/dl以下、女性で0.7mg/dl以下なります。
クレアチニンが基準値よりも高い場合は、腎臓の機能の低下が疑われます。また値が0.65を切るような人の場合は、運動不足と読みます。運動していない人は毎日30分歩くことでクレアチニンが正常な値になるでしょう。
ALP(IFCC)
次はミネラルのチェックで、ALP(IFCC)がアルカリフォスファターゼの訳です。この値は普通は80くらいがちょうど良く、ALPの値がそれより低いと亜鉛やマグネシウムが足りていないということになります。亜鉛が正常値の100程度であればマグネシウム不足であったと読むべきです。
マグネシウムが不足するとこぶら返りを起こしたり、顔や指が痙攣し、ひどくなってくると肩こりからさらに心臓にまで影響を及ぼして不正脈を起こします。また銅(Cu)の値は、100程度がちょうど良く、亜鉛が100、銅が100で合わせて200くらいが丁度良く、銅の値が以上に高い時には、体の中に炎症が起きているという風に読みます。
フェリチン
フェリチンは、体の中に蓄える貯蔵鉄というもので、通常の値は80くらいです。これ以上の値だと体の中で炎症が起きていることになります。フェリチンは貯蔵鉄なので、今は使わないけれども将来に使うために体に蓄えている鉄で、いわば鉄の貯金になります。
逆に今使う鉄は、血清鉄(FE)と言い、値は100から120くらいが理想で120くらいあれば安心です。これが半分しかないとやがては貧血になります。鉄は緑黄色野菜や赤い肉に含まれています。
ヘモグロビン(Hb)
血液に関するものに血色素量、ヘモグロビン(Hb)があります。ヘモグロビンが高い場合は多血症や脱水症などの疑いがあり、その他に喫煙やストレスなどによっても数値が上昇します。それらの中でも特に気をつけなければならないのは多血症です。多血症は血液中の赤血球の量が異常に増加してしまう病気のことで、多血症の症状は頭痛、めまい、息切れ、疲労感、手足のしびれ、腕や足のむくみなどが挙げられます。
コレステロールと中性脂肪
コレステロールと中性脂肪が要注意になったとしても、その健康診断をむやみに信じない方が良いこともあります。健康診断を全て信用しないことではなく、結果だけを鵜呑みにしないようにして、1つ1つの数字の意味を自分で知って分析することが大事です。特にコレステロールと中性脂肪の数字をきちんと見ましょう。
健康診断の脂質検査は、血液を採取して脂質の濃度を調べたものです。脂質はコレステロールや中性脂肪に分類され、通常その値が書かれており、コレステ ロールは体の細胞の膜やホルモンの材料になります。また中性脂肪は、エネルギー源でお腹や内臓の周りに蓄えられ、そして脂質はリポ蛋白というタンパ質に包まれています。リポ蛋白は水に馴染みやすい性質があり、脂質はリポ蛋白に包まれた状態で血液の中に存在しています。
通常の血液検査では、リポ蛋白に含まれる脂質の量を測定するんだし、リポ蛋白には、低非重リポ蛋白(LDL)と高比重リポ蛋白(HDL)などの種類があり、LDLに含まれるコレステロールをLDL コレステロール、HDLに含まれるコレステロールをHDLコレステロールとして測定します。また中性脂肪は数種類のリポ蛋白に入っている中性脂肪を一まとめで測定します。
一般的な健康診断では、 LDL、HDLコレステロール、中性脂肪の3 項目を測定することが多いです。またLDLは悪玉、HDLは善玉と呼ばれています。なぜ悪玉と言われるかと言うと、LDLは肝臓にある脂質を全身に運ぶ働きをしており、それが過剰になると血管の壁に蓄積して動脈硬化のリスクが高まるからです。
一方、HDLコレステロールは、血液の中の余分なコレステロールを回収して肝臓へと運ぶ働きがあり、HDLが多いとコレステロールが処理され、動脈硬化のリスクが低くなるから善玉と言われています。このLDL コレステロールの基準値は、過去に説が変わる度に色々値も変わってきた歴史があり、最近の基準であれば139以下なら安心と思って良いでしょう。
LDLコレステロール
健康診断のLDLコレステロールの値が高くなると良くないと言われますが、実際のところ健康診断の結果で基準値以下になっていても安心して良い場合もあれば、良くない場合もあります。また結果が悪くても良い場合と安心して良い場合もあります。
実は、基準値と言っても色々な考え方に基づいた数値があり、臨床的判断値、診断基準、治療目標という3つの目安があります。まず臨床的判断値は、医者が判断する基準のことで動脈効果のリスクが高くなってきた時にどのくらい 注意が必要かを示す数値になります。次に診断基準はその数値が一定以上になると医者がある程度の問題があると判断する基準です。例えばLDLコレステロールが、その値以上になると動脈硬化が進行して心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高まると判断される値です。
そして最後の治療目標は、医者が患者ごとに設定する目標値のことで、リスクの高い人はより低い数値を目指すように設定されます。例えば心筋梗塞を経験した人は再発を防ぐために一般的な基準よりさらに低い数値が目標になります。つまり単純に健康診断で一般的な基準値の範囲内に収まっていても、全員がその値で良いわけではなく、個人個人でその値が違うため、それぞれが自分の数値を見てどの基準に当てはまるかを考慮しないといけません。一般の健康診断での基準値は病歴がない一般的な人における健康リスクが低くなる安全基準にすぎないことになります。
例えば LDLの値が高く、HDLの値も高ければ余分なコレステロールを回収できるため動脈効果のリスクが下がります。つまり2つのコレステロールの値の差が大きい時が実はリスクが上がっていることになります。そしてその差は個人個人で違うため一般的な数値で表すのが難しく、それぞれの体調などを考慮して数値を吟味する必要があります。
小型化LDLコレステロール
通常のLDLコレステロールよりサイズが小さいLDLコレステロールは、サイズが小さいので血管の隙間に入り込みやすく、さらに酸化されやすい特徴があります。その結果、血液中に長く留まり、つまり通常サイズのものより小型LDLコレステロールは動脈硬化のリスクが高い悪玉コレステロールの一種です。
これまでは小型化LDLコレステロールは正確に測るのが難しかったのですが、2021年の10月から新しい検査薬で測れるようになりました。ただし小型化LDLコレステロールの値を測定できる検査は、まだ全般的に保険適応されておらず、一般的な健康診断には普及していません。
一般的な健康診断の結果があれば、ざっくりとセルフチェックもできます。健康診断の結果を見ながら総コレステロールの数値からHDL コレステロールの数値を引いて、その値を求め、その数値が170mg/dl以上だったら小型LDLコレステロールが高い可能性があります。例えLDLの値が一般的基準値の139mg/dl以下であっても計算結果が170以上になっていれば医師に相談するか、別の病院でセカンドオピニオンを受けるか、小型化LDLコレステロールの再検査を受けることをお勧めします。
中性脂肪
LDLコレステロールの値が基準値以下でも、中性脂肪が基準値を超えていれば注意が必要です。実際のところ中性脂肪は直接的に動脈効果の原因にはなりません。しかしエネルギーとして使われないで余った分は、皮下や内臓の周辺に蓄えられてしまい、皮下脂肪が増えすぎると肥満やメタボになり、内臓脂肪が増えすぎると内蔵型肥満になります。そして最近では中性脂肪が増えると悪玉コレステロールのLDLが増えて、善玉のHDLが減りやすくなる研究もあります。
さらに、最新の研究では中性脂肪が増えると体内の脂質代謝が乱れてしまうことが分かってきています。それがLDLの小型化を促進し、当然動脈硬化のリスクも上がってしまいます。そのため中性脂肪の増加は脂質異常症の1つで放置してはいけないものです。また最新の研究では中性脂肪を減らすと小型LDL化コレステロールが普通のLDL コレステロールに戻ることも分かっており、逆に言えばLDLの値が高くても中性脂肪の値が低く維持されているなら、小型化LDLコレステロールも少なくなるので動脈効果リスクが少なくなります。
健康診断前にやってはいけないこと
数日前から食べる量を減らすことは体に必要な栄養が足りなくなる可能性があり、逆に数値を悪化させることもあります。また一時的に禁酒や禁煙をすることも逆効果になります。なぜなら健康診断の前に急に止めると体がストレスを感じ、その結果数値に悪影響を与えることもあります。さらに健康診断前に急に運動を始めるのも要注意です。普段運動してない人は、筋肉痛や怪我のリスクがあり、適切な運動でなければ数値も逆方向に出てしまいます。また健康診断前にビタミン剤などのサプリメントを多めに摂ると、過剰な栄養摂取になり、体内のバランスを崩すリスクがあるため、当然健康診断の数値で異常値が出る可能性があります。
このようなNG行動や特別な行動を避けて、ありのままの診断結果を受け止めることが大事で、正直に自分の生活習慣を反映させた方が医師に正確な情報を伝えることができ、結果的には健康のためになると思います。
そして多くの人が、健康診断では全ての病気が見つかるわけではないし、受けても変わらないと考えています。実は独立行政法人経済産業研究所の論文「日本の健康診断受診及びその効果に関する実証分析」では健康診断の効果について実際のデータに基づいた研究を報告しています。この研究は短期的な効果を分析した限定的なものですが、良い点も悪い点も確認できなかったと言う結果になっています。しかし健康診断で異常が見つかって早期発見、早期治療につながっているケースが多くあるのも1つの現実で、健康診断を受けないで手遅れになって後悔するより、受けて自分の健康状態を定期的にチェックするのは決して無駄ではありません。
人間ドックは必要!?
人間ドッグは、長期的スパンで考えると受けるメリットよりも受けることによるデメリットの方が大きいという考え方があります。ただし胃カメラや便潜血などは、一般的に厚生労働省ががん検診として推進している検査・検診も人間ドックの中に含まれています。人間ドッグを受けたことによってがん検診以外の検診で見つからないがんが見つかって、手術することによって寿命が伸びた人も一定数はいます。
しかし、人間ドックを受けたことによって必要のない医療を受けることになったり、必要ない医療を受けたがために、かえって寿命が縮んだり、後遺症が残ったというデメリットを受けている人も多数います。このようなデメリットを受けた人は、そもそも人間ドックを受けていなければ、何の体の支障もなく生きていた可能性もあります。
また、人間ドックには科学的根拠が不明確、それなりのエビデンスがない検査 が多いと言われています。一方で厚生労働省が一般的に推進しているがん検診は、日本人にとってはエビデンスが十分あると言われています。そのため受けた方が大きなメリットがあることになります。男女共通で胃がん、大腸がん、肺がん、女性は子宮頚がんと乳がんが挙げられます。
ただし、胃がんのバリウムに関しては、賛否両論あり、見つからないこともあり、得られる情報が少ないと言われています。また大腸がんは、便潜血で引っかかれば、大腸内視鏡をします。また肺がんに関しても色々意見あり、喫煙がない人が胸部のX線を撮る意味があるのか、様々な意見があります。
また、日本ではHPVワクチンが普及しておらず、過去に日本で間違った報道がメディアでされてしまった部分もあり、子宮頸がんのリスクは高いままになっています。一方で乳がんも食習慣の変化による動物性タンパク質や動物性脂肪を摂ることによって乳がんの発生率は上がってきているため、マンモグラフィー等の検査をするメリットはあると日本の医学会では考えられています。
話が逸れましたが、人間ドックは受けるメリットはなく、むしろデメリットが大きい部分として、CTやMRIなどの放射線の被爆が大きいことが挙げられます。また前立線の腫瘍マーカーは、むしろ受けて何か病気が見つかってしまって、見つかった以上は精密検査をして、よく分からないまま手術して、結果的に手術しなくて良かった場合や、その手術や検査による合併症や後遺症が残ることがあり、総合的に考えてデメリットも大きいのではないかと考えられています。
例えば、韓国の有名なデータがありますが、甲状腺のがんを積極的に探して見つけ、それを手術した群と、それをしなかった群では有意差がなく、結局甲状腺の悪性度の低い腫瘍まで手術することになったということになります。前立腺のマーカーは、がんでなくても高い人もいれば、がんでも上がらない人もおり、また悪性度の高いものもあれば、低いものもあります。つまりがん手術をした方が良いのか、しなくて良いのかは、はっきりその段階で分からないことがあります。今後そのがんがどれくらい進行してくのかがはっきり分からない場合、とりあえず手術しましょうという流れになってしまいます。
お医者さんも発見した以上は、ある程度積極的に手術をしないといけないと考えるし、患者も心配で結果的に手術してくださいという流れになってしまいます。そして結果的に必要のない手術を受けて、合併症や後遺症が残ることがあります。また人間ドックは、それ自体がビックビジネスである側面も考えると厚労省が推進するがん検診、健康診断で十分と考える人も多くいます。
実は、ノルウェーオスロ大学の報告、乳がんのマンモグラフィー、大腸がんの内視鏡検査、前立腺がんのPSAマーカー、肺がんの胸部CTを撮った場合など、S状結腸の検査以外は、それを受けた人と受けなかった人で寿命の差が無かったというデータがあります。これは厚労省が推進しているがん検診とも共通しており、これと同じようなデータは世界中にあります。
このように人間ドックを受けたことによって、そのメリットを享受した人もいますが、これらのデメリットを受けてしまった人もおり、自分でしっかり考えて必要なものを選ぶことが大事です。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。