![メンタルの不調とビタミン](https://harriny.jp/wp-content/uploads/2023/11/evelin-tomic-kSauWc_ABxU-unsplash.png)
メンタル疾患に関してはいろんな研究があり、メンタル疾患を引き起こす原因は1つでないことが分かっています。メンタル疾患の1番の原因は環境要因であり、家族や友達、恋人といった大切な人との死別や別れ、職場での人間関係のトラブル、仕事や財産などの喪失、さらには会社での昇進や降格、結婚や出産など社会的家庭的な立場の変化などが要因になります。
他に性格傾向というのもあり、メンタル疾患は脳の科学物質のバランスが崩れることで起こるとされおり、そのため義務感が強かったり、完璧思考、几帳面、人との関係に気を配りすぎたりする性格だと普通の人よりも脳の化学物質のバランスが崩れてエネルギーが低下すると言われています。
脳の科学物質には、セロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリンの3 種類の脳内神経伝達物質があり、脳が正常な状態ならバランスよく存在しますが、うつ状態になると3物質とも欠乏して働きが不足します。また遺伝的要因に癌や糖尿病のような慢性的疾患、妊娠出産や高年期障害などの内分泌の変化も、メンタル疾患の発症要因に含まれています。
メンタル疾患急増の理由
心の病気のガイドラインとして日本に導入されたのが、アメリカの精神医学会がまとめた診断手引き「精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM)」です。この手引き書は1980年に発表されていますが、それが日本でも導入され、それまでうつ病と診断されなかった人もうつ病に含まれるようになりました。
かつてのうつ病は非常に稀で、精神科でも滅多に見ない病気でした。当時の認識のうつ病は、何の理由もないのに感情が消失してしまうというものでした。これに対して、そもそもうつ状態というのは家族が死んだり、仕事を失ったり、そういう心が病みそうな状態になって気持ちが落ち込む状態も含め、両方を合わせてうつ病ということになったのが現在です。
そしてDSMは、基本的に病気の原因を考慮に入れず、症状の特徴や重さだけをチェックリストのようにして診断し、例えば気分の落ち込みや興味の消失と言った症状が5種類以上、毎日1日中2週間続けばうつ病と診断されます。つまり落ち込んだ原因を問わず、症状だけで判断されるようになったため、かなり広い範囲がうつ病と呼ばれるようになったのです。
また、心の病気はそれぞれの医者が自己流で診断していたところ、DSMに従うことで同じ基準で客観的に診断できるようになっています。この世界的な広まり(標準化)と同時に、うつ病の患者も増加して、1996年の日本におけるうつ病患者数は43万3000人に対し、約10年後の2008年には104万1000人にまで増え、さらに2020年には172万1000人にまで達しています。
また以前よりは気軽に心療内科に行く人が増えており、そこで自動的に出てくる薬が抗うつ剤で、その結果使用量が劇的に増えています。例えば日本の抗うつ剤の市場規模は1997年で150億円、2010年には 1100億円にもなっています。世界だと2019年に116億 7000万ドル、2022年に143億ドル、2030年には206億ドルに達すると見込まれています。
一方で、世界5大医学雑誌の1つであるアメリカの医学総合ジャーナル「JAMA:2018年6月12日号」に掲載された研究によると、副作用でうつ病を起こす可能性がある処方薬を少なくとも一剤以上服用しているアメリカ人は、1/3以上です。うつ病の副作用が起きる可能性のある薬の処方数が増えると当然、うつ病がある人の割合も高くなります。具体的には、うつ病の有病率は処方なしで4.7%、1剤処方で6.9%、3剤以上の処方だと15.3%となっています。
また1982年に登場し、1999年に導入された抗うつ剤にSSRIという薬があります。SSRIは、一度放出されたセロトニンの細胞内への再取り込みを阻害することで脳内のセロトニン濃度を上昇させ、神経伝達をスムーズにし、抗うつ作用及び不安作用を示すと考えられています。しかしそのSSRIには副作用があり、SSRIの大量使用で起きたことを列挙すると、薬剤性難治性うつ病、薬物依存、薬剤性躁うつ病、薬剤性統合失調症、積極的自殺、他害、猟奇的事件などです。
特に薬剤性難治性うつ病は、薬のせいで長期間に渡って再発を繰り返すうつ病であり、薬で誘発されたうつ状態であり、典型的なうつ病とは異なることが多くなります。典型的なうつ病であれば、うつ気分や興味、喜びの喪失などが中核症状ですが、薬剤性うつ病だと表層感や不安感、幻聴などが重要な指標になります。
薬物依存はよく知られているように薬の摂取で快感や刺激を体験した結果、その刺激がないと精神的、肉体的に不快になることあり、うつ病とは症状とうつ症状を安定した時期を挟みながら症状の出現を繰り返す病気です。
メンタル疾患の治療
薬物療法では主に抗うつ剤が使用され、この薬はセロトニンやノルアドレナリンなどのバランスを整えることで気分を改善し、メンタル疾患を軽減します。しかし副作用が発生する可能性があります。一方で薬物を使用しない方法の非薬物療法には認知行動療法、対人関係療法、運動療法、心理教育、TMS療法などがあります。これらの方法は薬を使わずに治療する方法で、副作用のリスクを減らしながらうつ症状の改善を目指します。
薬物療法と非薬物療法のどちらが良いかは、非重度のメンタル疾患治療における運動介入と薬物療法の比較研究があります。これは運動介入が抗うつ薬治療と同じ効果があると示しています。また心理療法と専門的薬物療法の効果を比較した研究もあり、これには9301人の参加者を含む58の論文が分析されています。
その結果、心理療法と専門的薬物療法は、通常の治療や無治療よりも明らかに効果的であることが明らかにされています。つまりメンタル疾患治療においては薬物療法だけでなく非薬物療法も重要な役割を果たします。そのため薬物療法と非薬物療法のどちらが適しているかは患者の状態や好み、副作用への耐性などによって変わります。
例えば、重症のうつ病の場合は薬物療法の方が効果的な場合もありますが、軽症の場合や薬に抵抗がある場は非薬物療法が選択されることもあります。最終的には医師との相談の上で患者にとって最適な治療法を選択することが重要です。
メンタル疾患の人へのケア
どんな風に対処したら良いのか、適切な対応はその人の症状や状況によって異なりますが、以下のポイントを心がけると良いでしょう。
まずは話を聞いてあげることです。メンタル疾患の人が話したい時は否定せず、話を聞いてあげましょう。ただし話したくない時には無理じして聞き出すようなことはせず、話したくなったら話してくれと伝え、そっと見守るが重要です。
次のポイントは、本人のペースを尊重することです。メンタル疾患の方は、体調の波があり、本人が自分で決断できるまで仕事や行動に関して本人のペースを尊重し見守ることが大切です。また決断を迫らないことも大切です。メンタル疾患の人は、決断をすることが負担になることがあり、大きな決断を迫らず、本人が自分で決定できるまで待つ必要があります。そして当然、相談機関に相談するのも大切です。メンタル疾患の人の家族や周りの人間が、不安や心配を抱え込まないように専門の相談機関に相談することも重要です。
また、メンタル疾患の方が安心して休める環境を整えることが回復に向けて効果的です。メンタル疾患が心の病気であることの基本的な対応を理解するのも重要で、メンタル疾患に対する基本的な理解を持ち、家族や友達、周りの人間の協力が重要であることを認識することが大切です。
基本的には、相手を労りながら見守ることが第一であり、例えば原因探しをしないこと、メンタル疾患の原因は特定できないことが多いからです。そのため今できることを中心に考え、本人がストレスを感じることがあれば取り除くようにすることが大事です。そして励まさないこと、頑張りすぎてメンタル疾患になっている可能性があるため、励ますことは本人を追い詰める恐れがあります。
最後に無理に特別なことはしないで、心のエネルギーが消耗している状態だと普段楽しめることが楽しめない場合があるので、無理に活動を促さず、本人の状態に合わせた対応をすることが大事です。
精神的不調
メンタル疾患の中でも精神的不調については、自律神経が乱れる理由を理解することが大事です。
自律神経とは
自律神経は抹消神経の1つで、全身のほとんどの器官を支配しており、運動神経や感覚神経とは違って大脳からの意識的な命令から独立して働いています。その他にも無意識に呼吸をしたり、食べ物を消化したり、心臓が休みなく動いており、これらは全て自律神経の働きによるものです。そして自立神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、この2つの神経はシーソーのようにバランスを取りながら働いています。
交感神経は脊髄から出ていて興奮や緊張時に優位になり、副交感神経は脊髄と脳から出ていて睡眠時やリラックスしている時に優位になります。私たちの体には様々なところに臓器の状態を感知するセンサーが備わっており、このセンサーが感知した情報は感覚神経を伝って自立神経の中枢に届きます。自律神経がそれに反応することで自動的に臓器を制御し、体温、呼吸、心拍などを無意識に調整しています。
自律神経が乱れる理由
自律神経は交感神経と副交感神経がバランスよく働くことがとても大切であり、この2つの神経のバランスが崩れると徐々に心身に支障をきたし始めて不調が現れます。これがいわゆる自律神経の乱れた状態で、不安や吐き気、全身のだるさ、頭痛、肩こり、動機、めまい、不眠など様々な症状が現れます。
自律神経が乱れる原因は色々ありますが、何と言ってもストレスが原因であることが多いです。自律神経とストレスは密接があり、私たちの体は何らかのストレスを受けた時、いつも通りの状態を保つために様々な反応をします。その1つが交感神経の活性化であり、体を正常に保とうとし、例えば呼吸を整えて酸素より摂り入れようとしたり、全身へ血液が行き渡るように心拍数を上げたりします。そして長期間に渡ってこのような状態が続くと心身が耐えられる限界を超えてしまい、自律神経のバランスが崩れて不快な症状が現れてしまいます。
一方で自律神経が乱れる原因には、日々の生活も大きく関係していると言われています。私たちの体の機能は地球の時点周期に合わせて約24時間のリズムでは働いており、睡眠や食事など昼夜の変化に合わせて体温やホルモンの分泌などを変化させています。そして自律神経も例外ではなく同じリズムで働いています。基本的には朝目覚めると交感神経が優位になり、夕方から夜間にかけては副交感神経が優位になります。このバランスが整っていれば、日中は活発に動いて夜間はゆっくりと休むことができます。
そのため、乱れた生活が慢性化することで体内時計が狂って自律神経のバランスが崩れてしまうため、自律神経が乱れていると感じたら、現在のライフスタイルを見直すことが大切です。
その他の自律神経が乱れる原因で挙げられているのは、季節の変わり目と加齢です。季節の変わり目は気候が不安定だったり、移動や進学期など環境面でも変化が多いためストレスを感じやすく、気候への適応による身体的な負荷や不安環境が変わることのプレッシャーなど心身へのストレスによって、自律神経のバランスが乱れる原因になります。
そもそも加齢によって自律神経の機能が衰えるため、気温の寒暖差に体がついていけなくなり、交感神経と副交感神経の切り替えがしにくくなることで発汗や排泄、胃腸の動きが追いつかなくなります。それが体の不調につがって、よりストレスを感じてしまうことになります。
加齢が原因の中で、特に注意したいのが女性の40歳過ぎからの高年期障害です。女性ホルモンは脳の視床下部という場所から司令を受けて卵巣で分泌されていますが、しかし卵巣の機能が衰えると司令が出てもその通りにホルモンを分泌することができなくなります。すると脳が混乱し、もっとホルモンを出すように必要以上の指令を出してしまいます。自律神経も視床下部でコントロールされているため、混乱の影響を受けて乱れてしまい、その結果高年期障害の症状が現れます。
また、加齢による自律神経が乱れる症状は男性にも現れ、男性の場合は何らかの理由によってテストステロンの分泌量が減少してしまうことが原因です。男性の場合は、自立神経失調症に似た症状が現れることが多く、報告されているテストステロンの分泌量が減少する理由は、加齢によってテストステロンを作る細胞が減ること、視床下部からの司令が減ることなどが指摘されています。女性も男性も等しく加齢の影響を受けてしまい、どの原因も結局のところ精神面でのストレスが大きく関わっています。
心身がストレスを受けると急激に分泌が増えるコルチゾールは、ストレスホルモンとも呼ばれており、またストレスを感じると自律神経を解してアドレナリンやノルアドレナリンが放出されます。これらの分泌は、ストレスから身を守ろうとして起きる現象であり、ストレスに対処できるように体や脳を戦闘モードへと切り替えるために必須のホルモンです。短期のストレスであればホルモンの働きにより私たちの体はストレスに負けずにいられ ます。例えば緊張する場面では10分から20分間の間にコルチゾールが2倍から3 倍にまで増加します。
また脳にかかったストレスは副腎に影響を与え、過剰なストレスがかかると様々な代謝のバランスが崩れ、心と体のバランスが崩れ始めると言われています。ただ瞬間的なストレスによるコルチゾールの増加は、それほど心配する必要はないとされている一方で、長期間ストレスを感じていると記憶を司る脳の海馬を委縮させることが分かっています。またコルチゾールの過剰分泌は、免疫系、代謝系など体の様々な機能に影響を及ぼし、研究の結果からもうつ病患者はコルチゾールの分泌量が多いことが分かっています。
ストレス対策のビタミン
ストレスを感じにくくする栄養素はビタミンC、ビタミンE、ビタミンB群です。ストレス軽減食材が野菜であり、特に栄養素が豊富な緑黄色野菜には大量のビタミンCが蓄えられています。ただし過度なストレスがかかると急激にその量が減ってしまい、それは高ストレスホルモンのコルチゾールなどの生成に、ビタミンCが大量に使われるためです。ビタミンCが不足すると高ストレスホルモンが必要量作られず、ストレスに対抗する抵抗力が弱まります。ただしビタミンCは一気に摂ってもストックできず、大概に排出されてしまいます。
緑黄色野菜にはストレス軽減以外にも嬉しい効果がたくさんあります。そもそも緑黄色野菜には国が定めた定義があり、新鮮な野菜100g中にβカロチンを600㎎以上含んでいるものが緑黄色野菜です。βカロチンは、体内に摂取されるとその一部がビタミンA に変化し、ビタミンAは皮膚の新陳代謝を促して肌荒れを防ぐ働きがあります。
またβカロチンそのものに体内の活性酸素を減らす作用があり、多くの美肌の栄養素が多く含まれている中でもビタミンEは若返りのビタミンと言われているほどアンチエイジング効果が栄養素です。ビタミンEは強い抗酸化作用を持つビタミンで、体内の脂質の酸化を防いでくれるため、ストレスと老化の対策を同時に行うことができます。特にかぼちゃやブロッコリーはスーパーで気軽に変えて、食事に取り入れやすく、栄養化も高いからお勧めです。
また、ビタミンB6が豊富な食材は、アドレナリン、ノルアドレナリン、GABAなどの主要な脳内物質の生成に必須のビタミンです。ビタミンB6は、神経ビタミンとも呼ばれており、ビタミンB6が足りなくなると高ストレスホルモンの生成が間に合いません。もちろん神経ビタミンが不足してもすぐに病気になったり、寿命が縮んだりすることはないと言われていますが、脳の働きが下がる可能性は極めて高いとされています。ビタミンB6は、エストロゲンの代謝に関わり、ホルモンのバランスを整える働きもあります。また赤血球の合成にも役立つため、月経前症候群の症状を軽減する働きもあります。
ビタミンB6が豊富な食材は、赤身の魚やヒレ肉、ササミなどの油が少ない肉類です。また植物性の食品では、バナナやパプリカ、さつまいも、玄米などにも比較的多く含まれています。
ビタミンB6の1日あたりの摂取目安は、男性で平均1.26mg、女性で平均 1.09mg、ビタミンB6は、水溶性ビタミンの一種で体液に溶け込み、過剰分は尿として排泄される性質があります。そのため一気に摂取せずに毎日の食事に取り入れるのがおすすめです。そしてビタミンB6にも美容効果が期待できます。ビタミンB6には、皮膚の新陳代謝であるターンオーバーを促す作用があると言われています。ターンオーバーが乱れると肌荒れやくすみ、ハリの低下などを招きます。そのためビタミンB6は、美しい肌作りに欠かせない成分だと言えます。また皮脂の量を調節する作用もあり、皮脂の過剰な分泌などで起こるニキビの予防にも役立ちます。
このビタミンB6が働く時には、ビタミンB2が必要になるため合わせて摂るようにすると効果的です。その他にもヨーグルトやチーズなどの乳製品もおすすめです。乳製品にはセロトニンの材料であるトリプトファンが豊富に含まれており、自律神経が乱れる主な原因であるストレス軽減だけでなく、美容効果が期待できます。
肉体的不調
単に不調と言っても、そのカテゴリーは3つに分けることができ、肉体的不調、精神的不調、内臓疾患が挙げられます。精神的不調の原因が自律神経の乱れが挙げられ、肉体的不調に関しては、主に7つの原因があります。
睡眠不足
肉体不調の原因1つ目は睡眠不足です。人間の体は睡眠中に細胞の修復、記憶の整理、免疫系の調整などが行われています。何日も連続で睡眠不足が続くと体のメンテナンスが十分に行われず疲労が蓄積されてしまいます。日常のパフォーマンス低下は、もちろん倦怠感や苛立ちを感じやすくなります。長期的な睡眠不足は、免疫機能や代謝機能の低下を引き起こします。寝不足の時に体が必要としているビタミンは、ビタミンB群とビタミンCです。ビタミンB6、B12、葉酸、ニアシンなどのビタミンB群は、エネルギー賛成や神経伝達に関与しています。寝不足時にはこれらのビタミンを十分に取ることでエネルギーの低下を和らげることができます。
一方で、ビタミンCは抗酸化作用があり、免疫機能のサポートやストレスに対する体の反応を助ける働きがあります。寝不足だと神経が過敏になり、普段よりストレスを強く感じることが多くなります。ビタミンCを摂取することで、このストレス反応を緩和することができます。
栄養不足
バランスの良い食事は、健康を維持するためにとても重要です。体の機能を維持するためにはビタミン、ミネラル、タンパク質などを適切に摂取する必要が あります。食事のバランスが偏ると栄養が不足し、体の機能が低下してしまいます。これが肉体的な不調や免疫の低下を引き起こすことになり、栄養不足の場合、何の栄養素が欠乏しているかによって体が必要としているものが変わってきます。
例えば歯肉の出血や傷の治りが遅いなどの症状がある場合はビタミンC の摂取が必要です。体力の低下や骨が脆くなる、筋力の低下などの症状がある場合は、ビタミンDを補給した方が良いでしょう。疲れやすさ、集中力の低下などの症状が見られる場合はビタミンB群の不足が考えられます。ビタミンB1、B6、B12、葉酸、ニアシンなどを摂取することで肉体不調を緩和できます。
過度な運動
適切な運動は健康の維持に役立ちますが、過度な運動は体に負担をかけ、肉体不調を引き起こします。また筋肉疲労や関節の痛みを起こし、日常生活に支障が出ることもあります。さらに過度な運動は体の免疫力を下げ、感染症などの病気のリスクを上げることもあります。
過度な運動による肉体不調には、ビタミンEがおすすめです。ビタミンEは脂溶性のビタミンで強力な抗酸化作用を持っています。運動や日常活動中に体内で生成される活性酸素は、細胞の構成要素にダメージを与える可能性があるため、ビタミンEはこれらの活性酸素を中和することで筋肉や細胞の酸化ストレスを減少させます。またビタミンEには筋肉の修復もし、過度な運動や重労働による筋肉の微細な損傷は筋肉痛や疲労感の原因になるため、ビタミンEを摂取すると全体的な回復が早くなります。
ストレス
ストレスは精神面だけでなく、肉体的な不調も引き起こします。例えば頭痛や肩こり、腰痛、胃の不調などです。ストレスを感じ続けると交感神経が過度に刺激され、筋肉が緊張した状態にもなります。長期的なストレスは細胞劣化、免疫機能の低下、ホルモンのバランスの乱れなど様々な問題を引き起こします。ストレス状態では、ビタミンB群の消費が激しくなることが分かっており、特にビタミンB1、B6、B12、ナイアシン、パントテン酸などはストレスで多く消費されます。そのためこれらを摂取するようにすると疲労やイライラを軽減する効果が期待でき、葉酸やビタミンB12には心血管系関係の健康もサポートするため動悸の症状が出ている人にもおすすめです。
過度な画面使用
長時間の画面使用は視力の問題だけでなく、眼精疲労を引き起こす要因になります。デジタルデバイスから放出されるブルーライトは、目の網膜にダメージを与える可能性があります。さらにスマートフォンやタブレットの使用時に前屈みの姿勢になる人も多くなります。この姿勢が長時間続くと、首や肩の筋肉に負担がかかり、筋肉疲労や筋肉の硬直を引き起こします。背骨のS字カーブが乱れることで腰痛や背中の痛みも生じることもあります。
また、長時間の画面の使用は目、首、腰だけなく脳にも負担をかけます。定期的な休憩を取らないで画面を見続けると集中力が散漫になり、情報量が多すぎて脳が疲弊してしまいます。
過度な画面使用による肉体不調には、ビタミンAを摂取しましょう。ビタミンAは、網膜や結膜の健康を維持するのに必要不可欠な栄養素です。ビタミンA不足は、涙腺の正常な機能を妨げる可能性があり、例えば涙の生産量が減少し、目が乾燥した状態が続いてしまいます。
環境要因
環境要因には、主に温度、湿度、照明、空気の質の4つがあります。特に体を過度に冷やすことは筋肉の緊張や冷え症の原因になります。また長時間、同じ場所にとまることで、特定の部が冷えて関節痛を引き起こすこともあります。さらに体の内部の温度調節が乱れると免疫機能が低下し、風邪を引きやすくなります。また乾燥した環境は皮膚の乾燥やひび割れ喉や鼻の乾燥を引き起こし、風邪やインフルエンザなどの感染症リスクを高めることになります。
高湿度な環境では、汗の蒸発が遅れ、体温調節が難しくなり、脱水症状を引き起こす可能性もあります。また強い照明は目の疲れを引き起こし、頭痛や集中力の低下を招くことがあります。逆に十分な光が得られない場所での読書や作業は目の疲れや眼精疲労を引き起こすことになります。そして排気ガス、家具や建材からの揮発性有機化合物の放出も肉体不調につながります。さらに動物の毛やダニなどはアレルギー症状や呼吸器疾患のリスクを増加させることもあります。
環境要因による不調には、ビタミンDとビタミンCの摂取がおすすめです。ビタミンDは、免疫系の正常な機能をサポートし、感染症の予防効果が期待できます。ビタミンCは抗酸化作用で免疫機能を強化します。
サプリとして補う
サプリメントを使う上で重要な考え方があります。サプリメントのサプリという言葉は、「補足する」「補う」という意味です。あくまで不足しているものをサプリとして補うという意味なので、何の栄養素が不足しているか分からない状態でむやみにサプリに頼ってしまうと逆に副作用が出て、逆効果になることがあります。
ビタミンEサプリ
ビタミンEは、強い抗酸化作用のあるビタミンなので若返りのビタミンと言われています。確かにビタミンEの働きは、体の中の脂が酸化してしまうのを防ぐ働きがあります。それによってコレステロールが低下したり、血圧が低下する、動脈効果を予防できると言われています。
しかし、このビタミンEを摂りすぎてしまうとがんを持っている方は科学療法の作用を低下させてしまったり、死亡率が増加したり、男性の方は前立腺がんのリスクが上がったという報告があります。有名な研究によると19施設で行われた研究をまとめて約13万人の方を対象に、ビタミンの摂取量とその死亡リスクを解析した研究があります。
高容量のビタミンEを摂っていた11試験のうち9試験で死亡率が増加していることが確認されました。サプリメントでビタミンEを摂取しすぎてしまうと、血液をさらさらにしすぎてしまって出血のリスクが増え、脳出血が起きたり、脂肪率が上がっているのではないかと考えられています。
そもそも、日本や米国において普通の食生活を行っている方であれば、ビタミンEが足りなくなることはほとんどありません。ビタミンEを不足しているからサプリで補った方が良いという方はほとんどいません。このビタミンEは、脂溶性のビタミン、つまり油に溶けるビタミンと言われていて、多く摂ってしまえば体の脂肪などに蓄積されてどんどん体の中の濃度が上がっていきますので注意してください。
ビタミンAサプリ
ビタミンAは、お肌や目に良いと言われますので、お肌をケアしたい方に人気です。一般的な歌い文句は、体のバリア機能を高めて、乾燥肌、シミ、ニキビ、皮膚の痒みの予防になりますと言われています。
しかし、ビタミンAも天然の食品に多く含まれているため、日本でこのビタミンAが欠乏している方は少ないです。お肌にも良いならビタミンA飲んどいた方がいいかなと思った方は、それ危険な可能性もあります。ビタミンAを過剰に摂取してしまうと気持ち悪くなったり、頭痛が起こったりします。そして特に注意が必要なのが妊婦さんです。
妊婦さんがビタミンAを過剰に摂取しすぎてしまうと生まれてくる赤ちゃんに異常をきたしてしまうことがあります。特に妊婦さんは、つわりがひどくて全くご飯が食べれないからマルチビタミンを摂取しなきゃ、いろんなサプリを取らなきゃと頑張りすぎてしまうちに、ビタミンAの摂取量が増えていることがないようにしないといけません。
天然のコラーゲンサプリ(コンドロイチン)
天然のコラーゲンと言われるといかにも体の害は全くなくて体のコラーゲンが増えていくそのような期待を抱かせてしまいます。ですがコラーゲンやコンドロイチンが健康に良いといった科学的根拠はありません。これらの物質は極論を言うとタンパク質です。コラーゲンなどのタンパク質を口から摂取しても、胃で消化酵素が発生して、消化分解されて全身に吸収されていきます。都合よくコラーゲンの物質が、顔のお肌だけに届いたり、コンドロイチンが膝に局所的に届いたりすることは考えられません。また、コンドロイチンやコラーゲンは、安全性のデータは乏しく、妊婦の方、授乳中の方は使用を避けるべきとも言われています。
特に天然素材使用、ナチュラルフードという言葉は注意です。天然素材であれば、人工物が入っていないから安心と思っている方は注意が必要です。この天然というフレーズが安全を保証するわけではありません。天然に存在する物質でも体に悪影響を及ぼすものはたくさんあります。
その有名なものがハーブです。日本や海外ではハーブの製品が天然のものとして売られていますが、一部のハーブ製品は肝臓に重大な障害をきたすことだってあります。そしてナチュラルとか天然と書いているサプリメントも、成分表を見れば化学物質が10種類以上含まれていることもあります。
サプリの副作用
薬治療は多くの病気や症状改善に役立ちますが、一部の薬は副作用で体の不調を引き起こすことがあります。例えば抗生物質は細菌由来の感染症の治療に使用されますが、腸内の善玉菌も減少させてしまう欠点があります。腸内フローラは消化、免疫応答の調整、ビタミンの生成など多くの生体機能に関与しています。抗生物質の服用で、このバランスが乱れると悪玉菌が増加してしまうことになります。腸内フローラのバランスが崩れると下痢、便秘、ガスの生成、腹痛などの消化器系の不調が起こります。さらに一部の抗生物質は、クロストリジウムディフィシルという細菌を過度に増殖させてしまうことが指摘されています。この細菌は重度の下痢や炎症性の大腸炎を引き起こす可能性があります。
薬にはたくさんの種類がありますが、抗生剤の副作用で悩んでいる場合には、ビタミンB群を摂取すると良いでしょう。ビタミンB群は、エネルギーの代謝を促進し、体全体のエネルギー水準を上げる助けとなります。腸内の善玉菌の減少が関連する消化不良の症状や、それに伴う疲労感にも有益と言えます。特に神経の健康や機能をサポートするためにはビタミンB1、B6、B12が必要になります。
ビタミン剤の注意点
ビタミンの種類によっては他の成分と一緒に摂取すると吸収が阻害されるものがあり、例えばビタミンKとビタミンEを一緒に摂取するのは推奨されていません。ビタミン Eの高凝固作用がビタミンKの効果を打ち消し、血液の凝固能力が低下する可能性があります。ビタミンB12と葉酸の組み合わせもあまり良くなく、葉酸がビタミンB12欠乏症の症状を一時的に改善することができますが、その結果、B12欠乏症の症状を軽度に感じ放置してしまう可能性があるため、実際の問題が存在しているにも関わらず、それが早期に発見されず治療が遅れるリスクがあります
同様に、服用している薬の種類によってはビタミン剤と相互作用する可能性があるため、服用薬がある場合は独断でビタミン剤を飲むのは止めましょう。医師や薬剤師に相談してからビタミン剤を摂取するかどうか決めるようにすることが必要です。
ビタミン剤を摂取するタイミング
朝食時の摂取には、ビタミンB群とビタミンCがおすすめです。ビタミンB群は8種類の水溶性ビタミンからなり、エネルギーの産生や神経のサポートする役割があります。特にB1、B2、B3は食事から摂取したエネルギー変換に関与しています。朝にこれらのビタミンを摂取することで、日中の活動力をサポートできます。ビタミンCは強力な抗酸化作用を持つ水溶性ビタミンで、体内の酸化ストレスを中和して細胞を守ります。朝と昼は紫外線や大気汚染といった外部からのストレスを受ける可能性が高いため、朝からビタミンCを摂取して抗酸化作用を利用すると良いでしょう。
また、体が受ける外部ストレスを緩和し、心身ともに負担を減らす効果が期待でき、食事後の摂取に向いているのが、脂溶性ビタミンのビタミンA、D、E、Kです。これらのビタミンは、脂質と一緒に取ると腸での吸収率がアップします。つまり脂質を含む食事後に摂取することで効率的にビタミン摂取をすることができます。オリーブオイルやアボカドなどの脂質と脂溶性ビタミンは、相性が良いでしょう。
就寝前の摂取におすすめなのはビタミンB群です。ビタミンB6は神経伝達物質の生成に関与し、セロトニンという神経伝達物質の合成をサポートします。セロトニンは気分や行動に影響を与える重要な神経伝達物質の1つであり、セロトニン分泌量が多いと幸福感を感じやすく、ストレス耐性も向上します。またメラトニンという睡眠ホルモンの量も増え、眠りたい時にぐっすり眠れるようになります。そのため就寝前にビタミンB6を摂取すると、自然な形で睡眠の質を向上させることができます。
また、ビタミンB5は副腎脂質ホルモンの合成に必要で、ストレス応答や体のリズムの調整に必要な栄養素です。ストレス管理と睡眠の質は、つながりが深く、ストレスが蓄積すると不眠症になることもあります。ビタミンB5の適切な摂取は、ストレスの軽減や良質な睡眠をサポートすることが期待できます。
また、ビタミンB12もおすすめで、ビタミンB12には神経系の健康を維持する役割を持っており、神経の伝達機能の正常にし、寝つきを良くしてくれる効果が期待できます。ビタミンB12の欠乏は、特に高齢者に多く、これが原因で不眠や睡眠の浅さを感じることも多くなります。不眠症になるとすぐに病院へ行って睡眠薬をもらいに行く人もいますが、まずは体が必要としている栄養素に目を向けることも大事です。また健康を考えるなら自身の体調や症状を正確に理解することも大事です。原因を特定しなければ、適切なビタミン剤を選ぶことができません。適当な選択は意図しない副作用や不調を引き起こすリスクがあります。そのためビタミン剤の知識を深め、安全かつ効果的に利用することが必要になってきます。
【本コラムの監修】
![恵比寿院長](https://harriny.jp/wp-content/uploads/2021/11/14519860225670.jpg)
・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。