天気痛と偏頭痛(低気圧と台風)

    頭痛は分類(国際頭痛学会)によると350種類もあり、代表的な慢性頭痛として3つのタイプがあり、その痛みに悩む方は推定3000万人に上ると言われています。たかが頭痛ではなく、つらい痛みは確実に生活の質を低下させて、様々な悪影響を及ぼしています。

    頭痛によって勉強ができない、家事ができない、働けないなど社会生活を営むのが難しくなります。特に偏頭痛持ちの方に共通しているのが頭痛がないときには全く問題がない人が多く、頭痛に襲われると市販の鎮痛薬を利用してしのぐことが多くなっています。

    「偏頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」

    頭痛には、冷たいものを食べたり、二日酔いの頭痛などによる「一過性頭痛」、脳や全身の疾患が原因として起こる「二次性頭痛」、基礎疾患のない「一次性頭痛」があります。「二次性頭痛」は、いわば疾患を知らせる危険なサインというべき頭痛であり、専門医の受診が必要になります。

    一方で、「頭痛持ち」と言われる方の頭痛が「一次性頭痛」です。このような方の頭痛は、周期的や不定期に起こるため慢性頭痛と呼ばれ、代表的なものが「偏頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」という3つのタイプがあります。

    偏頭痛の原因

    偏頭痛の特徴は、痛みがズキンズキンと脈打つことで、片側だけでなく両側のこともあります。一次性頭痛の90%以上は筋緊張頭痛と片頭痛で、その3分の1は片頭痛であると言われています。また突発的に起こるタイプと前兆を伴うタイプがあり、後者は3割程度と見られています。偏頭痛については、以下の5つの特徴のうち4つあれば片頭痛と考えられます。

    •  P: Pulsatile(拍動性)
    •  O: One-Day(持続時間4~72時間でほとんどが1日でおさまる)
    •  U: Unilateral (片側)
    •  N: Nausea(吐き気)
    •  D: Disabling( 頭痛がひどく活動できない)

    前兆として知られているのが、視界がチカチカした光が現れる「閃輝暗点」です。片頭痛の3割には閃輝暗点(せんきあんてん)と言う片側の視野だけ数分~1時間くらいキラキラ星が出現するように見づらくなる『前駆症状』が現れます。この前兆があれば片頭痛は確定的とされています。偏頭痛は若年層(10~20代)に多く見られ、9割は40歳までに発症すると言われています。そのため40歳以降の初発の頭痛では片頭痛以外のものを疑いましょう。

    この偏頭痛の痛みには脳内伝達物質であるセロトニンが関与していることが知られていますが、その原因やメカニズムには諸説あり、まだ解明されていません。また偏頭痛は女性に多く、その理由については遺伝的な体質なども関係しているのではないかと考えられています。

    近年、頭痛のメカニズムとして広く知られているのが「三叉神経血管説」です。頭蓋骨内には、三叉神経から伸びた神経線維が張り巡らされていて、何らかの原因で三叉神経が刺激を受けると、セロトニンなどの神経伝達物質が血中内に放出されて脳の血管が拡張して、周囲に炎症が起こります。このような反応が次々に起こり、この刺激による興奮が脳に伝わり、動脈を脈打つたびにドックンドックンという痛みが起こると考えられています。

    緊張型頭痛の原因

    緊張型頭痛は、偏頭痛の倍以上、年齢を問わず幅広く起こります。特徴は頭が締め付けられるギューッという痛みがありますが、痛みはそれほどではなく、体を動かすと痛みが紛れる方も多くいます。また一次性頭痛の90%以上は筋緊張頭痛と片頭痛で、その3分の2は筋緊張性頭痛であると言われています。以下のうち2つあれば筋緊張性頭痛が疑われます。

    • 頭頸部の両側性の頭痛
    • 非拍動性(圧迫感や締め付け感がある)
    • 日常生活を妨げない程度の頭痛(軽度~中等度) 
    • 日常的動作で悪化が見られない

    緊張型頭痛の原因は、仕事やストレスなどの精神的ストレス、スマホやパソコンにより同じ姿勢や負担がかかる姿勢と続けるなどによる肉体的なストレスがあります。このような心身のストレスにより、筋肉が収縮して硬くなり、周囲の神経を圧迫するため頭痛が起こると考えられています。またギューッと締め付けられるような特徴的な痛みが起こる場合は、ハチマキのように頭をとりまく筋がストレスによって収縮するためです。よく見られる症状として、首肩のこり、だるくてやる気が出ないなどが挙げられます。

    一方で、心身のストレスだけでなく、頭の周囲の筋肉に関連痛を感じるポイント(トリガーポイント)があり、この部分の筋肉の神経が何らかの理由で刺激されていることが頭痛の引き金になっているのではないかと考えられています。実際にも、緊張型頭痛の人の頭を触診すると、頭の周囲の筋肉にトリガーポイントが確認できます。また筋緊張性頭痛の持続時間は30分~7日間と幅広いですが、片頭痛よりも長くなることが多いとされています。また片頭痛では嘔気・嘔吐はありません。

    もっとも辛い群発頭痛

    群発と言われるように群発地震のように、ある時期に集中して頭痛が起こるのが群発頭痛の特徴です。年に1回くらいの頻度で起こり、一度起こると1から2ヶ月に渡り、ほとんど毎日、ほぼ同じ時間帯(睡眠中に起こる)に激しい頭痛に襲われます。この頭痛の発生メカニズムは明らかになっておらず、毎日同じ時間に起こることから体内時計が関与しているのではないかと考えられています(中枢説)。一方で目の奥の痛みを伴うことから、その周囲にある血管や脳の太い血管に異常が起きて激しい痛みが起こるのではないかと考えられています(末梢説)。

    天気痛とは

    大型台風による急激な気圧の変化によって、頭痛だけでなく肩首こりが酷くなる方のご来院が多くなっています。特に台風が強ければ、気圧が低くなるため体の不調を感じられる方が多くいらっしゃます。

    また、天気が悪いと体調が悪い、曇りの日に頭が痛くなるという方など、その症状は「天気痛」と呼ばれています。多くの人が「天気痛」を自覚しており、自覚していない方も含めると推定1千万人以上と推定されています。

    症状が出る理由は、天気が悪くなると気圧が下がるためと考えられています。気圧を感じるセンサーである内耳には、平衡感覚を司る「前庭器官」があり、その中にリンパ液で満たされています。気圧が変わると、このリンパ液が揺れることで変化を感じ、「前庭神経」が反応することから生じます。

    つまり、気圧の変化が起きると「前庭神経」がつながる「前庭器官」がその情報をキャッチして興奮します。するとその近くにある「三叉神経」が刺激され、神経伝達物質を放出します。これに反応し、脳の血管が拡張することで炎症物質が放出され頭痛につながります。このメカニズムを世界で初めて発見して、「天気痛」と名付けたのが愛知医科大学内科医の佐藤医師です。

    天気痛になりやすい方の特徴として、内耳が敏感な人、例えば飛行機に乗った時に詰まるような感じなる人は注意です。また乗り物酔いしやすい人も気圧の変化を感じやすいそうです。また女性は男性よりも筋肉量が少なく、気温の変化を受けやすいことや、月経や更年期など女性ホルモンの乱れに影響されることが多いと言われています。

    偏頭痛も同じ原因

    天気の変化によっても生じる「天気痛」は、特に梅雨の時期、台風の上陸など急激な気圧の変化が頭痛の原因となるケースが多くなっています。一方で片頭痛は、ストレス、緊張、疲労、睡眠不足などで生じますが、はっきりとした原因は分かっていません。

    先述した佐藤医師によると「天気痛の根本治療には、自律神経の働きを整えることが重要」と述べています。つまり片頭痛も同じく、血管の拡張と神経の刺激によって引き起こされるため、血管や神経の働きを司る自律神経のバランスを整えることによって、片頭痛の症状を軽くできると考えられます。

    また、女性ホルモンの乱れ、ストレス、疲労なども、偏頭痛の誘因とされており、特に週末など心身のストレスから解放されたときに急に血管が拡張することで偏頭痛が起こることがあります。

    いずれも、天気痛のように、刺激を受けた三叉神経から、神経伝達物質が放出され、血管の周りに炎症が起こり、さらに血管が拡張して、この刺激が大脳に伝わって痛みとして認識されることで偏頭痛が発症します。

    天気痛と偏頭痛の改善

    以上から、偏頭痛に対しては、痛い頭への直接鍼をするのではなく、頭以外の場所に施術することで、頭へ血液が行き過ぎないようにします。頭の方に集まった血液を散し、血管が拡張しないようにすることで痛みを改善します。

    具体的には、まず主に首肩背中の筋肉の緊張を取り除き、血流を改善して痛みの原因にもなる体の冷えを取り除きます(お灸やラジオ波なども利用)。また東洋医学に基づいたツボの状態や反応から全体のバランスを整えることで、自律神経のバランスを整えます。このように免疫力や抵抗力を改善し、自然治癒力によって根本的な改善を目指します。全身的な治療をすることで、治療後の良い状態を保ちやすくなります。

    偏頭痛には足のツボ

    脈に合わせてズキン、ズキンとした痛みの偏頭痛は頭部の血管が拡張し、炎症を起こして痛みが発生する頭痛で、男性より女性に多いと言われます。偏頭痛を誘発する食べ物は、赤ワインやチョコレートなどのポリフェノールが豊富な食べ物。頭の血管を拡張するので控えましょう。辛い偏頭痛には、直接頭のツボを押すのではなく、足にあるツボが効果的です。

    ○陽輔(ようほ):ふくらはぎの外側、外くるぶしから親指の幅4本分上のところ

    効果:偏頭痛、冷え性や立ちくらみ、腰痛、坐骨神経痛に効果

    ○陽陵線(ようりょうせん):膝の外側で、お皿の下にある、丸く飛び出した骨の真下

    効果:筋肉や関節の炎症・熱・腫脹・痛みを抑える作用

    偏頭痛のツボ

    「陽」とは足の外側部を指し、どちらのツボも足の外側にあります。代謝を高め、体を温めてくれる陽陵線は痛みを緩和する働きがあります。陽輔は水や気の流れを良くする働きがあり、どちらも頭痛に効果的です。

    緊張性頭痛

    頭痛には種類があり、それぞれに対処法も変わり、間違えた対処法は頭痛を悪化させますのでご注意ください。今回は頭痛の中で1番多い緊張性頭痛のツボを紹介します。

    首から肩、後頭部周辺の筋肉が収縮して血行が滞ることで、溜まってしまった乳酸などの老廃物が神経を刺激して起こります。デスクワークなど長時間同じ姿勢を続けていると起こりやすい頭痛です。

    ・特徴

    頭全体が締めつけられるように痛む。
    一定の痛みが長時間続く。
    体を動かすことで痛みが軽くなる。
    目の疲れ、肩や首のこりを伴う事がある。

    ・対処法

    血管の収縮が原因で起きるので、まずは血行をよくすることが大切です。体を温めて筋肉の緊張をほぐし、血行を促しましょう。

    ・緊張性頭痛に効くツボ

    緊張性頭痛に効くツボ

    ○肩井(けんせい):乳頭から真上に手をすり上げ、肩の一番高いところを押して痛みを感じるところが肩井です。

    ○風池(ふうち):首の後ろの左右のスジに指をおき、指をすり上げていきます。髪の生え際まできたら、左右外側のくぼみでいちばんへこんでいるところが風池です。

    病気があるわけでなく明らかな精神障害もないのに体の不調がある場合は、自律神経のバランスが原因になっていることがあります。原因がはっきりわからないけれどなんとなく体調が悪い状態を不定愁訴と言い、成人の2割から3割に不定愁訴があると言われています。女性の場合は、ホルモンの乱れが原因で自律神経が乱れてしまうことがあり、PMSや更年期障害も自律神経の乱れに含まれます。

    この自律神経は全ての内臓をコントロールする神経であり、内臓を調節や血管やホルモン分泌を行う内分泌系も司っています。そのため自律神経は心身のパフォーマンスが最高に なるように体のリズムをサポートするものと言えます。

    天気痛で自律神経が乱れる

    天気と体調は密接に関わっており、天気が悪いから頭が痛い、天気が悪いから体調悪いなどの原因には、気圧、温度、湿度の3つが密接に絡まり、体の不調になると言われています。

    特に気圧の変化による頭痛などの不調は「気象病」とも言われています。人間の耳の奥の内耳に気圧を感じるセンサーがあり、このセンサーで気圧の変化を受け取ると、それが自律神経に伝わります。しかし現代人は自律神経自体が乱れやすい状態にあるため、さらに気圧の変化で体調不良を起こしやすいと言われています。

    特に梅雨の時期や台風の時期は低気圧が多く、この気圧の変化を体は敏感に感じ取ります。例えば気圧が低くなると血管が拡張しやすくなります。血管が広がりやすくなることは片頭痛などの頭痛が起こりやすくなります。なんとなく血管は収縮した方が痛くなると思うかも知れませんが、実は拡張した方が頭痛は起こりやすくなります。するとこれを縮めようとして交感神経優位の覚醒モードになり、寝れない、イライラ感などが起こり、体のリズムが崩れてきます。

    一方で気温差も体調不良の原因になります。1日の中で気温差が7度あると自律神経が乱れます。また湿度も、体に水が溜まってしまう原因になり、それによってむくみが起きたり、肩こりや頭痛も起こりやすくなってきます。

    そして湿度の高さも私たちの体は影響を受けます。例えば湿度が高いと汗がかきにくく、発汗がしにくくなると体温調整が難しくなり、それによって体調を崩すことがあります。またむくみが起こると、このむくみによってだるさや頭痛が起こってくることになります。

    このように、そもそも現代人はストレスなどによって自律神経が乱れやすい環境にあり、そこに気圧、気温差、湿度が加わり、さらに自律神経が乱れることによって様々な不調が生まれるのが梅雨の時期です。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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