脳の老化は40代から水面下で進行していると言われており、若年層でも若年性認知症に至るケースがあります。ボケや脳の老化は真剣に考えなければいけない極めて重要なテーマですが、何が原因で私たちはボケてしまったり、脳の老化が起こってしまうのかはあまり知られていません。
厚生労働省が発表しているデータによると、2025年の認知症患者は730万人になると予測されており、これにMCIと呼ばれる軽度の認知障害も含めると1000万台の大台を超えてしまうということがほぼ確実になっています。なおMCIと呼ばれる経度認知障害の60%は3年以内に認知症を発症するとされています。さらに認知症とともに高齢者の脳の大敵である老人性うつ傾向の人は、抑うつ気分の人も含めると300万人はいるのではないかと言われています。この 2つの脳の病を防いで、脳の健康を保つことが高齢化社会を生き抜く大事なことになります。
認知症の誤解
まずよくある誤解は、認知症になると何もかもできなくなるという思い込みです。認知症初期は一言で言うと記憶ができなくなる病気です。認知症の初期は新しいことを覚えられなくなり、認知症中期はこれまで覚えていたことを忘れていきます。何れにせよ記憶力は衰えますが、認知症の初期中期の前半あたりまでは判断力や思考力といった知能は正常に保たれています。そのため認知症と診断されたとしても普通に暮らしていける人が多くいます。中には認知症を発症してから性格が穏やかになったと言われる人が大勢います。
また、認知症は高齢者が徘徊するというイメージを持っている人がいますが、徘徊する人はほんの一握りに過ぎません。さらに多くの人が認知症は急速に進行する病気であるという誤解を持っています。多くの場合は発症後ゆっくりと進行することになります。
大人の脳は、30代にはもう萎縮し始め、認知機能の低下も40代には既に始まっています。さらに認知症の原因となる悪玉タンパク質(アミロイドβ)の蓄積も40代には開始していると言われています。例えばアルツハイマーだと診断されたのが70代であっても、アミロイドβの蓄積は50代に始まっています。
現在の医療では認知症を根本的に治療することができません。ですが認知症は ゆっくりと進行する病気のため、その間に様々な手を打ち、発症を遅らせることは可能です。例えば軽度認知障害(MCI)の間ならば、食事、運動、生活習慣の改善の3本柱で認知症の発症を食い止められることが世界中の様々な研究調査によって明らかになっています。
老人性うつ
認知症よりも恐ろしいのが「老人性うつ」です。うつ病は心のがんとも言われ、厚生労働省のデータでは約120万人も罹患しています。これはあくまで医者にかかっている人の数のため、実際はかなり多く、国際的にうつ病の有病率は3から5%と言われています。日本の人口に当てはめて考えてみると患者数は400から600万人の計算になります。
その他うつ病とまではいかなくとも 抑うつ気分の人まで含めると多くの専門家が人口の10%近くに上っているだろうと推測しています。その内65歳以上の老人性うつの人は、現在人口の約30%が高齢者であり、かつ高齢者のうつ病発症率は若い人よりも高いということを考えれば、全患者の3分の1以上が高齢者であるということはほぼ確実でしょう。また世界的に見てもうつ病患者の自殺率は高齢になるほど上がることが分かっています。
ただし、老人性うつと認知症は初期症状がよく似ており、その区別するのが難しいのが現状です。しかしうつ病は短い間に一気に様々な症状が現れる病気であるため、外出するのが急に億劫になってしまったりなど様々な症状が1ヶ月ぐらいの間にまとまって現れることが挙げられます。
その他の判断ポイントとしては食欲や睡眠の状態や変化がうつの大きなシグナルになります。うつ病では食欲障害と睡眠障害が同時に生じることが多いです。一方で認知症の場合は、食欲は逆に増えるケースが多く、またよく眠りロングスリーパーになる傾向があります。
ボケないための栄養素
カテキンとクルクミン
カテキンというポリフェノールには、アミロイドβが固まるのを抑えて、認知機能を改善する効果があることが実験で明らかになっています。またカテキンの元になるテアニンというアミノ酸が、老人斑が持つ毒から脳の神経細胞を守ることも分かっています。実際、国立長寿医療研究センターが行った実験によると、緑茶を1日2杯以上飲んでいる人はほとんど飲んでいない人に比べて認知機能が下がりにくいという報告があります。また金沢大学の研究グループが行った研究でも緑茶を毎日飲む人は全く飲まない人よりも認知症の発症率が3分の1程度だったという報告もされています。ただし緑茶はカフェインが含まれており、午後以降に摂取すると睡眠の質の低下を引き起こす可能性があります。
一方で、70歳代から80歳代のインド人はアメリカ人に比べてアルツハイマー病の発症率が約4分の1というデータがあります。その理由にカレーをよく食べるからではないかと考えられており、カレーにはターメリックと呼ばれるスパイスが含まれています。このターメリックに含まれているのがクルクミンというポリフェノールです。クルクミンは、ポリフェノールと同様にアミロイド βを柔らかくし、溜まりにくくする効果があることが分かっています。
ただし一般的にはカレーライスは、血糖値を正常に保つという観点からは避けた方が良いメニューです。日本のカレーは小麦粉を使っており、白ご飯の上に小麦粉をかけることになるため、糖質の取り過ぎにつながります。糖質が気になる方は白米を玄米に置き換えるなどの健康的なものに置き換え、小麦粉を使用していない本格的なインドカレーを選択しましょう。
脂質(不飽和脂肪酸)
脳の約6割が資質でできており、脂質の摂り方が脳に大きな影響を与えます。脳の中には、約1000億個の神経細胞が存在し、頻繁に情報のやり取りを行っています。その通信となるケーブルを覆っている物質の約8割は資質で作られており、脂質が不足すると通信、電気信号が上手く伝わらなくなります。
また、飽和脂肪酸の量が増えると神経細胞の膜が硬くなり、不飽和脂肪酸の割合が増えると神経細胞の膜が柔らかくなるため、基本的には硬くなればなるほど情報をスムーズにやり取りすることができません。そのため不飽和脂肪酸の摂取割合を増やすことを心掛けましょう。因みに飽和脂肪酸は、常温で固体の油でありバターやラード、牛脂や豚の脂などを指します。一方で不飽和脂肪酸は、常温で液状の油であり、健康に良いと言われているオリーブオイルや魚の油などです。特に体内で作ることができない必須脂肪酸のオメガ3脂肪酸、オメガ6 脂肪酸は積極的に摂る必要があります。
このオメガ3 脂肪酸とオメガ6脂肪酸は1対1の比率で摂取することが望ましいと言われています。ですが現状は1対4以上、欧米型の食事に近い食事の場合は1対20にもなると言われています。つまり過剰にオメガ6を摂取してしまっています。そのため基本的に意識して摂取すべきなのはオメガ3です。
オメガ3脂肪酸には、DHA、EPA、αリノレン酸などがあります。特に重要な のがDHAです。なぜならオメガ3が脳を構成する脂肪酸の割合は、DHAが11%から20%であるのに対し、EPAとαリノレン酸はと少量です。つまり脳に多く使われるのはDHAであり、DHA をより積極的に摂取する必要があります。
またDHAは、その多くが神経細胞の膜に含まれおり、特に記憶や学習に司ると言われている海馬に集中しています。記憶や学習を司る海馬に含まれているということは、それだけDHAが認知機能に重要だということを示しています。
このようにDHAが脳の働きを高めるということは研究によっても示されています。その理由として挙げられているのが、DHAがシナプスを作る細胞膜の材料になるからです。DHAを摂るとシナプスが増えて、脳の働きが良くなり、逆にDHAが不足するとシナプスが劣化して情報伝達がうまくいかず、高齢者の場合は認知症の原因にもなります。
DHAを効率よく取るためにはサンマ、アジ、いわし、サバなどの青魚を食べることです。実際DHA が認知症発症リスクを抑える可能性があることは様々な研究で明らかになっています。国立長寿医療研究センターの研究によるとDHAの濃度が最も低い人たちに比べて中程度あるいは高い人たちは、認知機能が低下しにくいことが分かっています。さらにDHAには悪玉コレステロールを減らす働きがあり、脳の血管を守る効果があることも分かっています。
また、脳の血管を守るという意味ではEPAも非常に有効な成分で、血栓を防ぐ作用があります。血栓ができると血管が詰まりやすくなり、脳の血管に血栓ができれば脳血管性認知症につながる脳梗塞を引き起こす可能性があります。
ヨウ素
認知症になってしまう原因はいろいろありますが、甲状腺ホルモンの異常もその一つです。甲状腺ホルモンが少なくなることで発症する甲状腺機能低下症は認知症のリスクを高めてしまうことが明らかになっています。そして重要なのは、甲状腺ホルモンの数値が正常値の範囲内でも下限だと認知症になりやすくなってしまうことです。つまり認知症を予防するためには、甲状腺を正常に保つために食事から甲状腺を健康に保つ栄養素のヨウ素を摂取することが重要です。
ヨウ素は海藻類に多く含まれているため、食事の際には海藻類を意識して摂取していただきたいと思います。海藻類の中でもヨウ素を特に多く含んでいる食材は、海苔、わかめ、ひじき、メカブの4つが挙げられます。
ココナッツオイル
ココナッツオイルに含まれている中鎖脂肪酸は、青魚のオメガ3と並んで認知症予防のために積極的に摂りたい脂質です。この中鎖脂肪酸はエネルギーとして分解されやすいため、脂肪として蓄積されにくい特徴があります。そのためココナッツオイルに含まれている中鎖脂肪酸は、脳のエネルギー源として使われることが明らかになっています。実はアルツハイマー型認知症になると脳のエネルギー源であるブドウ糖をうまく利用できなくなるため、ブドウ糖の代用としてココナッツオイルに含まれている中鎖脂肪酸が認知機能が低下した人の脳でうまくエネルギー源になります。実際、脂肪酸が認知機能低下に及ぼす影響を8年間調査した結果、認知機能に好ましい影響を与えたという内容の論文が発表されています。
ボケないための習慣
食事、運動、睡眠、余暇の過ごし方などなど私たちの生活のあらゆる行動は脳に大きな影響を与えています。脳にとって良い生活習慣が身についていれば、脳は常に若々しく、やる気や集中力記憶力などの脳の機能を良い状態に保つことができます。逆に脳にとって悪い生活習慣を続けていると、頭が上手く働かない、意欲が湧かないといった脳の機能の劣化に悩み、あっという間に認知症やアルツハイマー病にかかってしまう恐れがあります。
まず良く噛むことが認知症を予防し進行を遅らせてくれることが数の研究から明らかになっています。特に年を取るにつれて噛む力が衰えます。そして噛む力が衰えてしまうと食事が億劫になり、肉や生野菜を食べにくくなります。その結果、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどを十分に摂取できなくなり、神経伝達物質であるセロトニンが減少し、認知症の発症リスクを高めることにもつながります。
一方で、料理は脳のトレーニングです。料理をするためには、メニューと調理手順を考え、味付けや火加減を調節するなど様々な脳の機能を働かせる必要があります。また料理をすると手を細かく使うため、脳の血流量が約10%上がることが分かっています。さらに料理をするには計画力や判断力も必要です。例えば冷蔵庫に残っている食材を組み合わせて主菜と副菜を作るにはどうすればいいかと考えるためには相当の計算力が必要になります。
さらに料理は全身運動にもなります。約10分経った状態で料理をすると700 歩歩いた時と同じカロリーを消費します。1日3度台所に立てば2000歩ほど歩いた計算になり、相当の運動量が確保できると言えます。さらに言うまでもなく、自分で料理を作ることにより健康的な食事をとることが可能です。
また、一人暮らしの方が認知症は悪化しないことが知られています。実際にも明らかに認知症の症状が出ているにも関わらず一人で元気に暮らしているお年寄りが大勢います。一人暮らしで、家族に頼ることなく自分の頭と体を使って生きるということが認知症の進行を遅らせていると考えられています。
何れにせよ、脳の老化を遅らせたいと思うのであれば、脳を普段からしっかりと使ってあげる必要があり、体の老化を遅らせたいと思うのなら普段から自分の足で歩き回って積極的に体を動かす必要があります。そういった意味で一人暮らしというのは自分の頭で考え、自分の体で動く必要があるから老化や認知症を遅らせてくれることになります。
記憶力のトレーニング
年をとって記憶力が落ちたなぁと感じている方も多いかもしれませんが、記憶力はトレーニング次第で向上する余地があります。言い換えれば記憶するという作業をしないほど記憶力は劣化します。
そもそも記憶は神経細胞同士の連結が必要で、新しい情報を記憶するためには何千もの神経細胞が関わっています。一度記憶した情報はすぐに思い出さなければ失われてしまいますが、逆に情報を何度も思い出して記憶を活用すると神経細胞の連結が強化されて記憶を固定化することができます。
一般的な人は、記憶を長期的に保存できる場所に移さないとすぐに忘れてしまうため、ある研究によると新しい情報が長期記憶に保存されるには少なくとも8秒間が必要という報告があります。つまり覚えたい情報について少なくとも8秒間考えるということが必要です。人の名前や電話番号など、何か新しい情報を記憶する必要があるときは、8秒以上集中して頭の中で繰り返してみましょう。
そして記憶の8秒ルールで記憶した人物名や電話番号などを7日後に思い出せるかを試してみるのもトレーニングです。記憶して思い出すことを繰り返すと脳が活性化するため、脳の神経細胞の連結を強化して記憶力の向上につながります。
言語学習で脳活性化
新しいことを学ぶことで脳の機能が高まることが分かっています。特におすすめなのは言語学習です。言語を学習すると新しい単語や文法などを大量に暗記する必要があり、暗記した内容を会話の練習の際に思い出して言語化する必要があります。そのため言語学習は脳の様々な領域を使用し大きな負荷がかかり ます。このような負荷や新しい学びに対する興味や意欲は前頭葉を刺激して、認知症予防にも絶大な効果があります。
また、脳を活性化させるのに効果的な習慣の一つに音読があります。モントリオール大学の研究によると、リストに書かれたものを暗記するとき声に出して読み上げた被験者は声を出さずに読んだ被験者よりも優れた暗記力を発揮し たと言います。声に出して音読すると、文字を読む口を動かして発生する声に出した自分の音を聞き取るなど、脳は様々な情報を処理する必要があります。
ウォーキングで想像力アップ
定期的な運動は体に良いだけではなく、脳にもとても良い影響を与えます。毎日少なくとも20分、できれば30分から1時間ほど運動することで集中力や意欲が高まったり、認知症予防効果も期待できます。運動には、ストレッチなどの軽いものから筋トレやスポーツなどを激しいものまでありますが、中でもウォーキングは、脳に大きな効果があると言われています。またウォーキングには、脳の創造性を司る領域や記憶力を司る領域を刺激するという研究結果もあります。
老化を防止するためには、体を動かすことが重要です。どうしても年を取ると特に病気をしていなくとも全身の筋肉が衰えるように、脳も衰えていきます。その体と脳の衰えを防ぐ方法が歩くことです。歩くことと脳は密接な関係を持っており、実際に1週間に90分つまり1日中数分程度歩く人は、40分未満しか歩かない人よりも認知機能が良好に保たれることが分かっています。また週に5回20分歩くと、認知症の発症率がなんと40%下がるという研究報告もあります。
またウォーキングだけでも脳に良い効果を期待できますが、ドイツの研究によると肉体面と頭脳面の両方を同時に刺激することで脳の機能がさらに高まる効果が得られることが分かりました。例えば新しい言語を勉強しながら歩いたりすると学んだ単語がより長く記憶に残ります。
編み物は瞑想と似ている
近年では、健康法の一つとして呼吸と思考に集中する瞑想(マインドフルネス)が身近な存在となりました。瞑想法は、記憶力や集中力、認知機能の大きな向上につながると言われています。しかし瞑想と言われてもなかなか実践するのは難しいのではないでしょうか。
そこで編み物などの手芸にはリラックス効果があり、脳の健康を促進すると言われています。医学博士のハーバードベンソン氏によると、編み物のリズミカルな反復運動により脳が自然と瞑想状態になると言います。編み物は集中力が必要ですが、作業に慣れてくると非常にリラックスできます。編み物をしていると脳内のストレスホルモンであるコルチゾールが減少することが分かって いる他、ネガティブな思考が減って気分が良くなる効果があるとも言われています。
アメリカのある科学雑誌に掲載された研究報告によると、編み物をする高齢者は新聞や雑誌を読む高齢者と比べて、記憶障害や認知障害を発症しづらい傾向にあることが分かっています。編み物により新たな神経回路が刺激されて、認知機能の衰えが防がれることから、記憶障害や認知症の予防に効果があると考えられています。
また編み物は、脳のあらゆる領域を使用するためパーキンソン病などの治療効果を期待する研究も進められています。編み物により脳のすべての部位が同時に活動することで、脳の機能の向上が見込めます。このように編み物をすることで、脳が自然と瞑想状態に入り非常にリラックスしながら認知機能を高めることができます。
インディバヘッドで脳細胞活性化
全ての生体細胞に対して細胞活性化、血行促進、新陳代謝を促すのがインディバヘッドです。さらに脳神経細胞が活性化されると脳内ホルモン(ドーパミン、セロトニン、エンドルフィン、成長ホルモンなど)の分泌を促進させるという効果も期待できます。また脳細胞に微弱な高周波でリスクなくアプローチできるため、脳細胞の活性だけでなく、自律神経バランスを整える効果も期待できます。
【本コラムの監修】
・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。