歳を取るとともに、体が重い、だるくて何もする気がない、疲れが取れないなど、疲れやだるさは病気じゃないから、なんとなく毎日を疲れたまま過ごされている方が多くいらっしゃいます。
しかし、体が重だるいのが当たり前になってしまうと、疲れやだるさが慢性化してしまいます。その疲れやだるさの根深い原因を解消しなければ、どんどん疲れやすい体質になってしまいます。疲れやだるさをほっておくと、様々な症状が同時に現れるようになります。
例えば、疲れやだるさによって自律神経が乱れ、肩や首コリ、血流が悪くなって高血圧になる、心不全や不整脈、花粉症やアレルギー悪化、さらには鬱や将来の認知症の原因になります。こんな状態ではどんな治療しても改善に時間が掛かり、どんどん状況は悪化するばかりです。実は疲れたからといってゴロゴロするのは逆効果で、疲労感が増して抱えている疲れが慢性的なものになってしまいます。
なぜ人は疲れを感じるのか
日本疲労学会によれば、疲労とは過度の肉体的を呼び精神的活動または疾病によって生じた独特の不快感と休養の願望を伴う身体の活動能力の減退状態であると定義されています。
簡単には、心や体を働かせすぎたり、病気になったりした時の辛さと休みたいって言う状態の気持ちで、この状態が続くと思考力や反応 注意力が低下して行動量は少なくなり、目のかすみ、頭痛、肩こり、腰痛などを引き起こすことになります。ちなみに疲労と疲労感とは別物であり、実際には疲れているのに実感がなかったり、逆に疲労感はあるけれど健康だって場合があります。
疲労感は体が発する危険信号であり、身体に疲労が溜まりそのまま放置されるとダメージを受けます。これを回復するために体は疲労感を発進し、それを合図にして人は休息を取って体を元の健康な状態に戻しています。痛みや発熱も体の異常を訴えるサインであり、疲労感も同じ重要な生体システムです。
疲労の原因としてよく取り沙汰されるのが「乳酸」ですが、乳酸は身体の中でエネルギーを生み出す過程で作り出される物質です。このエネルギーの元となるのは食事などから摂取した糖や脂肪です。
糖は激しい運動をする場合のエネルギー源として利用されるために、筋グリコーゲンという形で筋肉に蓄えられます。この筋グリコーゲンが分解されて ATP(アデノシン酸リン酸)に変わることでエネルギーが生まれます。乳酸は筋グリコーゲンがATPに変わる過程で生じ、つまり筋グリコーゲンの元となる糖を分解すればするほど乳酸菌も大量に生成され、激しい運動をした後は体内に乳酸がたくさん溜まります。
乳酸は、最近の研究では疲労物質ではないと言われています。運動で体に乳酸が溜まったとしてもミトコンドリアを通してエネルギーとして再利用されるため、30分も経てば乳酸は元のレベルに下がります。
それどころか乳酸は、疲労を防ぐ物質だと言われています。筋肉からカリウムが漏れ出すと筋収縮を阻害するので、乳酸はこの筋収縮を防いでくれます。他にも運動時の脳のエネルギー源になったり、血管新生や傷の修復にも役に立っています。
自立神経の乱れによる疲労感
最近の研究によると疲労の原因は自律神経の乱れであると考えられています。自律神経は、自分の意志とは関わりなく体の機能を24 時間コントロールする神経のことであり、例えば体温調節のために汗をかいたり、食べ物を消化するために胃腸を働かせたりして、私たちの体を支えてくれています。そして自律神経には交感神経と副交感神経の2つがあり、交感神経は体の活動性を生み出す神経系で昼間や活発に動く時間帯に優位になります。一方副交感神経は体を休ませる神経系で夜間やリラックス中に優位になります。
かつては自立神経の働きを計測することが難しく、本格的な研究もなされていませんでしたが、近年誰もが目に見える数値として計測できる機械が開発され、自律神経に関する研究は飛躍的に進みました。その結果、疲労感と自律神経の乱れには深い関係があることが分かってきました。
ビジネスパーソンを中心に計測したデータでは、1週間のうち自立神経の働きが一番下がるのが木曜日で、それが翌日の金曜日になると具体的な対策を講じたわけでもないのに自律神経は回復するようになります。この理由は、単純に金曜日の次の日は休みになるため、明日は休みだと思うだけで心は浮き立ち、自立神経の働きは良くなるのです。
そして自律神経の働きを生み出す大きな原因となっているのがストレスです。仕事が忙しい、生活のリズムが崩れた、眠りが浅い、季節の変わり目はしんどくなる、こういう疲労感の理由には共通点があり、それは自分でコントロールできない出来事に対してストレスを感じているがあります。特に日本人は責任感が強く、人間関係や仕事のプレッシャー精神的な疲労が溜まりやすく、気疲れを肉体の疲れのように感じてしまう傾向があります。
さらに私たち日本人について言えば、その疲れのほとんどが精神的なものだとも考えられています。その証拠として日本疲労学会が行った日本の疲労状況の年代別結果では、疲れを 感じやすいのは高齢者より若い方が疲れている人が多くなっています。
このデータを見れば一目瞭然ですが、男女ともに年代が上がるほど元気な人が増え、疲れている人の割合が減少しています。また60代と70代では元気な人が慢性的に疲れている人を大幅に上回り、50代を境にして現役世代で二極化が見られます。年を取れば取るほど肉体的な機能は衰えて疲れを感じやすくなるはずなのに、実際には若い人ほど疲れている人の割合が高くなります。
つまり肉体的な疲労が日本人の感じている疲労感とはかけ離れている証拠になり、特に日本人の場合は肉体的な疲労よりも精神的な理由で疲労感を感じている事になります。
紫外線よる疲労感
冬と比べて夏の方が疲れが溜まりやすい原因に、夏の暑さによるものと思っている方が多いでしょう。実は、その原因に紫外線が関わっているということが分かってきています。紫外線は、シミ、シワなどの肌の老化に関わるだけでなく、研究では疲労感にも紫外線が関わっていることが分かっています。
資生堂の研究データによると、沖縄でされた実験で60分間外で、全速力で走って、ゆっくり歩いて、休憩を15分ワンセットにして、それを4回運動してもらいました。その1つのグループは日焼け止めを塗り、一方のグループは日焼け止めを塗らずに運動してもらいました。それぞれ運動が終わった直後、6時間後、そして24時間の体の中の疲労物質を測りました。
もちろん、運動直後が1番疲労物質が上がり、そこから徐々に落ちていきますが、日焼け止めを塗ったグループは、直後に上がるべき疲労物質があまり上がりづらく、疲れを感じにくいことが分かっています。疲労物質である乳酸は、激しい運動した時にエネルギーの元として血中に放出され、これが多いと疲労が多いことになります。また日焼け止めを塗ったグループでは、塗ってないグループに比べて体感的も疲労感が少ないというデータが出ています。これらから紫外線を浴びることが、体に何らかの疲労感を感じさせる要因になっていることが推測されています。
食後に身体がだるくなる理由
ある研究では高炭水化物・高脂肪の食事は食後の眠気につながり、食事を終えてから 1時間から1時間半後に倦怠感がピークになるということが分かっています。なぜ高炭水化物・高脂肪の食事を摂ると倦怠感を感じるのか、その理由は血糖値が急激に上がるからです。例えば昼ご飯に糖質が多い白飯、うどん、パスタなどを食べてしまえば血糖値が当然急激に上昇します。すると膵臓から急激にインスリンを分泌します。その影響で今度は血糖値が下がり低血糖状態に陥ってしまうことで眠たくなってしまいます。
一方で高脂肪の食事については、アデレード大学の研究によって脂肪の多い食事を摂取する男性は、日中は眠気を感じ、夜は睡眠障害、睡眠時無呼吸症候群に苦しむ可能性が高いことが分かっています。この研究は 1800人以上を対象に、12ヶ月に渡って行われ、参加者の食事の内容と睡眠状態を記録し分析しています。
その結果、脂肪摂取量が最も多かった人は、日中の過度の眠気を経験する可能性が高いということが分かっています。脂肪の多い食事をすることによって睡眠をコントロールしているオレキシンという脳内物質のバランスが崩れ、その結果昼間に眠たくなってしまうのではないかと推測されています。オレキシンは起きている状態を保ち、覚醒を維持する脳内物質のことで、このオレキシンに悪影響が及ぶため覚醒状態を維持できなくなり眠たくなるのではないかと言われています。
また、小腸から分泌されるホルモンのコレシストキニンも眠たくなる原因の1つだと言われています。高脂肪で高カロリーの食品であるピザなどを食べると小腸からコレシストキニンが分泌され、タンパク質や脂肪を分解するのを助けます。しかしいくつかの研究では脂肪の食事を食べた後のコレシストキニンの増加と数時間後の眠気との間に関係があることが示されています。
疲れたら動く
横になってゴロゴロしたり、仮眠を取ったりするのは肉体的な疲労を解消するのには有効ですが、しかし疲労が精神的なものだと返って逆効果です。むしろ運動不足の人が多いため、少しでも休もうとゴロゴロしたり、仮眠したりすると根本的な問題解決にはならずストレスは溜まったままになり、活動のパフォーマンスが落ち、さらにストレスが溜まっていくという負のスパイラルに陥ってしまいます。
このような悪循環を打破するためにおすすめなのがアクティブレスト、積極的休養です。例えば休み時間に職場から離れて体を動かしたり、休日にも平日と同じ時間に寝起きして運動したりするのが良いでしょう。
疲れの原因は糖質
老化のメカニズムである糖化は、タンパク質や脂質がブドウ糖で結合することで劣化する反応です。体内で糖化が起こった結果、AGEと呼ばれる物質がつくられます。AGEは糖が過剰にこびりつき、本来の機能を失ったタンパク質のことであり、この物質こそが老化させてしまう大きな原因の一つです。このAGEは、砂糖とか糖質を食べれば食べるほど体内で増え、肌のコラーゲンと結びつくことでシワ、シミ、にきびといった肌トラブルの原因にもなります。また老化を促進するだけでなく、あらゆる病気を引き起こしてしまうことも分かっています。
例えば、動脈を詰まらせる血栓の原因は炎症ですが、AGEによって傷つけられた血管の内壁に血液中を流れるコレステロールが染み込み炎症が起きます。それを防ぐために免疫細胞や血小板が集まり塊(血栓)をつくります。これが脳梗塞や心筋梗塞などの命を脅かす重篤な病気につながる可能性があります。他にも糖尿病の人は普通の人より血管が10年早く老いると言われています。なぜならAGEによって体内に炎症が起こり、血管壁が劣化してしまうからと言われています。
また、AGEは血管だけでなく、細胞や組織を攻撃し、細胞や組織に炎症を引き起こしてしまいます。炎症は様々な病気の原因とも言われ、また謎の体調不良を抱えている人ほど、体内の炎症レベルが高いことが分かっています。さらに現代人の多くは慢性的な疲労を抱えている方が多く、いつも疲れている、疲れが抜けないなどの原因が甘いものです。
これらから抜け出すためには、糖質をエネルギーとして使う脂肪燃焼型から脂質をエネルギー源として使う脂肪燃焼型の状態が理想です。脂肪を燃やしてエネルギーを取り出すエンジンは、体の中に糖質がたっぷりあると働きません。よく食べ物を食べないと体の中の脂肪が分解されると言われるのは、食べ物がないこと、つまり糖質がなくなったことで体に蓄えられていた脂肪を燃やしてエネルギーを取り出しているからです。
実は私たちの体は本来、糖質を燃やしてエネルギーを取り出すことに適した状態につくられていません。もともと脂質を燃やしてエネルギーを取り出すように設計されており、精製された炭水化物や砂糖が手に入るようになったのは、人類の歴史からすれば極めて最近の話です。結果として糖質をエネルギーとして使う脂肪燃焼型になり、様々な病気の原因、炎症、疲れなどの不調が起こっています。
疲れやだるさの原因
人によって疲れやだるさの原因は人によって異なりますが、
- 血糖値の乱れ
- 自律神経の乱れ
- コレステロール不足
- コルチゾール(気の源)というホルモン分泌の乱れ
が大きく影響しています。
また、これらの原因とは別に、ほとんどの人に共通するのが、ミトコンドリアの量や働きの低下が慢性的な疲れやだるさの原因となっています。つまりミトコンドリアを改善すれば疲れやだるさをはじめとした様々な不調の解消につながります。
ミトコンドリアは私たちの体内の全ての細胞に存在しており、生命活動を維持するために欠かせないATP(アデノシン三リン酸)というエネルギーの元になる物質をつくり出します。ミトコンドリアは、年齢とともに、その質や量が低下していきます。研究ではミトコンドリアの数は40代ごろから緩やかに減少し、80代では2/3まで減少します。
ミトコンドリアの質や量が減少すれば、ATPの数が減少し、体を動かすエネルギーの量が減少することになります。その結果、すぐに疲れるなどの体力低下につながります。
一方で、質や量の減少によって、体内では酸化ストレスが増加し、様々な不調、病気、老化が引き起こされると言われています。その理由は、ミトコンドリアはエネルギーをつくり出すだけでなく、活性酸素を除去してくれる働きも担っているからです。
以上のように様々な不調、病気、老化を予防するためには、ミトコンドリアを活性化することが重要になります。同じ年齢にも関わらず老けて見える人は、個人の生活習慣が大きく影響していますが、それはミトコンドリアの質や量に大きく影響した結果なのです。だからこそ食事や生活習慣の改善によって、ミトコンドリアの急激な減少を防ぎ、意識的に活性化することが大切なのです。
ミトコンドリアを増やす食事
ミトコンドリアを増やすことや、機能を改善することがアンチエイジングにつながります。なぜならミトコンドリアは細胞のアポトーシスを誘導する働きがあるからです。アポトーシスとは、細胞が老化してしまったり、機能不全になった時に、細胞自体が死ぬという機能ですが、これを指示しているのがミトコンドリアではないか言われています。つまりミトコンドリアの数が足らなければ、古い細胞が体に残り続けて、老化につながります。またミトコンドリアの機能不全によって、本来死ぬべきでない細胞が死んでしまうということもあります。つまりオートファジーに似たような働きがミトコンドリアにもあるのです。
このミトコンドリアに最も影響が大きいのが食事です。ミトコンドリアにとって悪影響を及ぼすのが、過剰な精製糖や炭水化物です。なぜ悪影響を及ぼすのかと言うと、これらがフリーラジカルやその他の中間毒素の産生を増加させるからです。例えば果糖たっぷりの食事をラットに8週間与えると、果糖を処理する肝臓に存在しているミトコンドリアのDNAに重大な損傷があることが分かっています。さらに果糖たっぷりな食事は、DNAの損傷を修復して新しいミトコンドリアを作る能力を大幅に低下させることも分かっています。
また、減らした糖を補うためにも脂質を十分に摂る必要があります。ただし脂質を大量に摂る場合は、摂る脂質の質が重要です。アボガド、オリーブオイル、マカデミアンナッツ、グラスフェッドバターなど、健康的な脂質を選んでください。またグラスフェッドビーフ、天然の青魚、有期鶏卵などの健康的なタンパク質、野菜を食べることも大切です。いずれにせよ糖質制限したのであれば、質の高い食べ物を食べることを心がけてください。
鶏の胸肉(イミダペプチド)
目の疲れ、身体の疲れなど様々な疲労を感じるのは、元を辿れば疲労は、自律神経が疲れてしまっているサインです。自律神経の疲れの原因は、神経細胞が酸素を大量に消費する際に生じる活性酸素にあります。そのためこの活性酸素を除去することが、自律神経の疲れを取り、疲れにくい身体となります。
そこで、自律神経を活性酸素によるダメージから守ってくれるのが、疲労を軽減する「イミダペプチド」です。イミダペプチドは強力な抗酸化物質で、1日200mgのイミダペプチドを2週間摂り続けると、抗疲労効果が現れることが明らかになっています。このイミダペプチドが豊富に含まれている食材が鳥の胸肉です。胸肉100gで、200mgのイミダペプチドが補給できるため、疲れが強い人は積極的に食べましょう。
疲れにくくなる習慣、ミトコンドリア
体には約37兆個の細胞があり、ミトコンドリアは、その一つ一つの細胞の中に数百〜数千個含まれています。体が活動するために必要なエネルギーの大部分が、ミトコンドリアから供給されています。細胞内のミトコンドリアの量や質が高まると、細胞全体の機能が上がるため、ミトコンドリアが元気な人は、疲れにくく、健康であるための大変重要な要素です。
例えば、始めは運動すると、息を切らすのはミトコンドリアがエネルギーを生み出すのに必要な酸素を無駄するからです。しかしミトコンドリアが増えることで、呼吸で取り込む酸素量が同じでも、次第に効率的に酸素を使えるようになるため、エネルギー代謝がよくなり、息を切らさずに運動できるようになり、疲れにくくなります。
ミトコンドリアが活性化して、疲れにくくなる習慣は以下です。
- 体に蓄積した毒を出すこと
- ファスティング
- 筋肉量をキープする
- サウナ(水風呂)
体に蓄積した毒を出す
年齢を重ねるにつれて、体内には長年蓄積した毒素(化学薬品、重金属、食品添加物、カビ毒など)が、ミトコンドリアがエネルギーをつくるのを邪魔する働きがあると言われています。これらを避けることは難しいですが、食事ですぐにできることの一つがよく噛むことです。よく噛むことで唾液にある様々な毒を排出してくれる物質によって毒消し作用は、一番手軽な毒出し方法です。
ファスティング
食べ過ぎない生活が大切で、ファスティングによって古くなったミトコンドリアを除去することが可能です。細胞には自身の細胞内の一部を分解する作用を持っています。それがオートファジーです。
外部からの栄養が不足し、飢餓状態になると細胞内にある古いタンパク質やミトコンドリアを食べてリサイクルします。特にミトコンドリアに起こるオートファジーは、マイトファジーと呼ばれ、古くなったり、傷ついたミトコンドリアはマイトファジーに分解、除去されます。このスイッチを入れるのがファスティングになります。食事の量を少し控える日を時々つくるだけでも効果があります。
カロリー制限すると、ミトコンドリアの産生が促され、古いミトコンドリアの分解が促進、長寿遺伝子にも影響して寿命が伸び、あらゆる病気に罹患しにくくなります。この根拠となる実験で有名なのが人の組織とよく似ているアカゲザルによる実験です。
この実験では、長期に渡って、カロリーを70%に制限したサルは、圧倒的に見た目が若々しく、生活習慣病や老年病で亡くなる数が1/3まで減少し、平均寿命もカロリー制限した方が圧倒的に長くなりました。この結果、人でも同じような効果があるのではないかと言われています。
筋肉量をキープする
ミトコンドリアは、赤血球を除く全ての細胞に存在していますが、特に筋肉や神経細胞に集中して存在しています。筋肉を動かさなければ誰でも筋肉量は減っていきます。つまりミトコンドリアも同時に減っていきます。
ただし、効率的に増やすためには有酸素運動が必要です。ミトコンドリアはウォーキングやジョギングに使われる遅筋(赤い筋肉)に多く含まれるため、筋トレよりも効果が高くなります。
一般的には、体が脂肪燃焼を始める有酸素状態になるまでに、運動してから30分程度必要と言われていましたが、短時間で有酸素運動状態に入る方法もあります。それが、初めに、30秒ほど小走りで走り、次に、脈が整うまで1分ほど歩き、そして30秒ほど小走りする、これを繰り返すと汗が出てくるタイミングあるので、その状態になると有酸素運動に入ることができます。
サウナ(水風呂)
ミトコンドリアは間を置いて繰り返し刺激を与えることで活性化します。サウナに入った後に水風呂に入り刺激を与えると、エネルギーをつくり出すため活性化します。なぜなら寒さの刺激によって体は「エネルギーが必要」と判断して、ミトコンドリアを増やそうとするからです。ただし水風呂は、高血圧や心臓に異常がある方は避ける、などの注意が必要です。
またサウナなどの寒冷療法は、長寿遺伝子が活性化することが最新の研究によって判明しています。特に寒冷療法によりテストステロンと成長ホルモンが増えことが分かっています。
例えば、冷水シャワーを浴びたり、アイスパックを使ったりして体温を下げると、体温を生み出す必要に迫られます。これを熱発生と言います。この熱発生は、脂肪を燃やし、タンパク質を放出させる刺激を与えるプロセスであり、寒さが刺激となって放出されるタンパク質によって、筋肉に蓄えられたグリコーゲンが燃やされることになります。筋肉のグリコーゲンが使い果たされると、体はテストステロンと成長ホルモンの生成を増加させるようにシグナルを受け取ります。
この一連の好循環が、体内の炎症を減らし、インスリンの感受性を高め、自食作用を促して、弱くて損傷された細胞を死なせ、新しい健康な細胞の入る余地を作ります。テストステロンは、加齢と共に減少し、中高年の体調不良はテストステロンの低下にあると指摘している本や論文も数多くあります。
一方で、寒冷療法は成長ホルモンの分泌も促進します。成長ホルモンは疲労回復ホルモンとも呼ばれ、寝ているときに多く分泌されるホルモンです。成長ホルモンは美容にも大きな効果をもたらすアンチエイジングホルモンです。
高血圧の方はNG
ただし、高血圧の方は注意する必要があります。怖いのがサウナの後に入る水風呂です。サウナと水風呂を何度も往復するような入り方はいわゆるヒートショックを招いてしまいます。体が急激な温度の変化を感じ取ると交感神経が強く刺激されて血圧が一気に上がり、脳や心臓の障害を引き起こす可能性があります。また入浴後に扇風機の風に当たったり、冷房の前で体を冷やしたりする行為も同じです。さらに体温が高い状態で冷たい飲み物を一気にたくさん飲むのもNGです。体を内部から急激に冷やすことも神経を刺激して血圧が上昇する危険性があります。
また、入浴すると汗をかいて体の水分が少なくなり、血圧が濃くなって血管が詰まりやすくなる恐れがあります。これがサウナなどで脳梗塞を起こす大きな原因の一つです。入浴に伴う心筋梗塞や脳梗塞を防ぐためにも、入浴の前後に必ずコップ1杯の水を飲むようにしましょう。
ただし、正しい方法でお風呂に入れば、むしろ血圧を下げる効果が期待できます。例えば体に負担がかからない39度から40度のぬるま湯であれば心身ともにリラックスして、副交感神経が刺激されます。
高周波でATPの産生増加
インディバやラジオスティムなどの高周波温熱治療器は、高周波を体内に電通させてジュール熱を発生させます。この深部加温により、体表面からの熱伝達とは違い体内に熱源を作ります。血液、リンパ液の循環が促進され、組織の代謝を活発にするので免疫機能も亢進します。
高周波で細胞を活性化させるというメカニズムは、温熱効果で促進された血流により大量の酸素が細胞(ミトコンドリア)に運ばれます。その細胞はATPと酸素を使って活性化し、大量のATPが生産されます。
また、温熱によりヒートションクプロテイン(HSP)も再生されます。HSPは、傷んだ細胞を修復する働きを持つタンパク質です。熱ストレスにより体内で作られる量が増加します。このHSPが私たちの持つ自己治癒力や自己回復力を手助けしてくれるのです。
【本コラムの監修】
・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。