顔がたるむ人とたるまない人の差

    顔がたるむ人とたるまない人の差

    同じ年齢なのに顔がたるんでいる人とたるんでない人の差は、たるみの原因を理解して的確に対策していることです。そもそも肌は表皮、真皮、皮下組織の3つの層でできています。その中でも、特に肌のたるみに大きく関わっているのが真皮です。真皮はコラーゲンやエラスチンなど繊維と繊維の隙間を水分で埋めるヒアルロン酸で構成されています。

    コラーゲンの成分は、タンパク質でできており、肌のハリを保つのに重要な役割をしています。真皮の他にも体の軟骨や靭帯などにも存在しています。またエラスチンもコラーゲンと同じくタンパク質でできており、肌の弾力の維持を担っている成分です。この2つは年齢と共に作り出される量が減り、また真皮は10代と50代の肌を比べてみると、その厚さは約1mmも違うと言われています。そのため確実に肌のハリや弾力がなくなり、たるんだ肌になっていきます。

    たるみの原因の8割は、紫外線と骨密度の低下

    たるみやシワなどの老化現象は、実は原因の2割程度と言われています。残りの8割の1つが光老化、つまり紫外線です。肌に影響を与える紫外線には、UVAとUVBの2つあり、UVBは波長が短く肌の表面しか届きませんが日焼けをすると肌がヒリヒリするのはUVBが原因によるものです。UVBは主にシミやそばかすの原因になります。

    UVBの波長は長く、皮膚の奥にある真皮や皮下組織にまで届き、コラーゲンやエラスチンなどを作る繊維芽細胞を傷つけます。そしてコラーゲンやエラスチンが作られなくなってしまうのです。

    そしてたるみの原因のもう1つが骨の減少です。頭蓋骨の骨密度が低下することで顔の土台全体が縮み、肌がたるみます。年齢と共に骨密度が低下しますが、これは頭蓋骨でも起きます。その結果、頭蓋骨と皮膚をついでいる靭帯が緩み肌はたるみます。

    そして、骨密度の低下は体の骨より先に頭蓋骨に現れます。頭蓋骨が先になるのは、それは骨の性質が関係しています。骨は体重がかかった時など刺激が加わった時に丈夫になる性質がありますが、頭蓋骨は体より負荷がかかりにくいためと考えられています。特に上顎部分は30代後半から減少が加速していくと言われており、女性は閉経前後になると骨は一気に減少していくため、40から50代の女性は顔のたるみを実感しやすくなります。

    このように閉経が関係するは、女性ホルモンが不足、欠乏していくことで骨の新陳代謝のサイクルが乱れるからです。骨には2種類の細胞が存在しており、古くなった骨を破壊する破骨細胞、そして新しい骨を作る骨芽細胞の2つがあります。この2つの細胞の働きで古くなった骨が新しい骨へと生まれ変わり、2年間で20%から30%も入れ替わると言われています。しかし年齢を重ねるごとに骨芽細胞の働きよりも破骨細胞の働きの方が上回り、その結果、骨の修復が遅くなり骨がスカスカになります。

    骨が衰えてしまう原因

    顔の骨の変化は老化の兆候として顕著に表れます。年齢を重ねると骨のミネラル密度が低下し、骨の強度やボリュームも落ちます。特に目の周囲や頬の部分で影響が大きく、顔の深いくぼみやシワの原因になります。骨は筋肉や皮膚、脂肪といった顔の組織をサポートする役割を果たしており、骨が変わるとこれらの組織も変わる必要が生じ、それが外見の老化として表れます。

    また、顎の骨は老化によって変化が起きやすい部位です。顎の骨が後退すると下顎のラインが不明瞭になり、これが顔のたるみや二重顎の原因になります。また鼻の骨や鼻骨が弱くなると鼻の形状が変わり、花の先が下に向いたり、鼻尖(びせん)が低くなります。

    鼻の骨と同じように額の骨も年齢を重ねるごとに縮小します。額の骨が弱くなり縮小すると眉間に深いシワができやすくなり、眉間に深いシワができてしまうと老けた印象を強めてしまいます。

    骨は常に再構築されていて、古い骨が再吸収されて新しい骨が形成されるプロセスが繰り返されていますが、年齢を重ねるとともに再吸収のスピードが骨形成のスピードを上回ることが増えます。その結果、骨の強度やボリュームが低下し、肌にたるみやシワを引き起こすため、骨の強度を維持することは若々しい顔を作るためにも欠かせません。

    女性ホルモンの減少

    加齢以外でも骨が衰えてしまう原因の一つがホルモンの変動です。女性ホルモンのエストロゲンは、骨を再吸収する細胞の活動を抑制する役割があります。骨が劣化、破壊される速度を遅くし、骨の質を維持させています。しかし女性が閉経を迎えるとエストロゲンの分泌量が大幅に減少します。この減少により骨を再吸収する細胞の活動が増加し、骨が再吸収されやすくなります。一方、骨を再吸収する細胞の活動は十分に促進されないため、骨の形成が減少します。その結果、骨の再吸収が骨の形成を上回るようになり、骨密度が低下してしまうのです。

    特に、閉経後の初めの数年間は骨密度の低下が速まると言われています。閉経前に比べて骨の強度が落ち、骨折リスクが高まります。閉経後の骨密度低下を予防する方法としては、エストロゲン補充療法があります。

    カルシウムやビタミンDの不足

    カルシウムは筋肉の収縮や神経伝達、血液の凝固など体内の多くの生化学的反応に必要です。カルシウムが不足すると体は骨からカルシウムを取り出してこれらの機能をサポートします。この骨からカルシウムを取り出すことが長期的に続くと骨密度が低下し骨が弱くります。ちなみに体内のカルシウムの約99%が骨と歯に蓄えられています。体内カルシウムの残りの約1%は、血液体液細胞内に分散されて蓄えられています。骨と歯以外でのカルシウムは、生体機能を サポートするために使われます。

    一方で、ビタミンDは腸からカルシウムを効率的に吸収するために必要になり、ビタミンDが不足すると食事からのカルシウム吸収率が低下してしまいます。その結果、いくらカルシウムを摂取しても、しっかり吸収されずカルシウム不足になります。カルシウム不足になると体は骨や歯から必要なカルシウムを取り出すことになり、骨の強度が下がり、顔の骨も萎縮する可能性が高まってしまいます。またビタミンDは骨形成細胞と骨再吸収細胞の両方の活動を調節する役割もあります。さらにビタミンDは、筋肉の機能をサポートする研究結果もあります。

    リンと塩分の摂り過ぎ

    特に骨をボロボロにするのがリンの摂り過ぎです。骨やエネルギー生産に必須のミネラルであり、リンは健康維持に欠かすことのできないミネラルです。体に存在するミネラルの中でカルシウムの次に多く、成人の体重の約1%を占めると言われています。

    リンは普段の食生活で足りなくなることはほとんどなく、むしろ沢山摂り過ぎてしまう方が問題になります。特に加工食品や清涼飲料水、食品添加物にも多く含まれています。リンは摂り過ぎるとカルシウムの邪魔をして骨の代謝に悪影響を及ぼし、骨密度が低くなるリスクが高くなります。特に肝臓機能が低下している人は余分なリンを排出できなくなり、血液中にリンがたまっている状態は高リン血症を引き起こし、この状態が続くと骨が脆くなります。さらに血管や腱の骨じゃない部分でカルシウムと結合して石灰化を起こし、より肝臓の働きを悪くします。

    また、余分な塩分は腎臓でろ過されて排出されますが、塩分=ナトリウムで考えると流れる際にカルシウムも一緒に流れてしまいます。この時、カルシウム摂取量が低く、ナトリウム摂取が過剰の場合は、尿中へのカルシウム喪失量が増加します。その結果、骨の中のカルシウム保持を低下する可能性が研究でも分かっています。特にスナック菓子やインスタント食品は、カルシウムの吸収を阻害する食塩が多くなっています。これらは食べ過ぎると塩分の過剰摂取に繋がり、骨密度を下げてしまいます。

    カフェインの摂り過ぎ

    普段から水を飲まず、コーヒーや紅茶を飲んでいる人は注意が必要です。カフェインには利尿作用があり、腎臓に作用してカルシウムが尿と一緒に外に出てしまいます。カフェインと骨粗鬆症についての研究では、24人を対象に2グループに分けて検証し、一方はノンカフェインのガム、片方はカフェイン入りのガムを6時間噛み続けてもらいました。

    カフェイン入りのガムを噛み続けた グループは800mgのカフェインを摂取したことになり、これはコーヒー8杯分に値する量のカフェインです。その結果、カフェイン入りのガムを食べていたグループの尿のカルシウム量が77%増加していました。尿のカルシウムが多いと体内のミネラルが補われるよりも早く、腎臓がミネラルを外に出してしまうことになります。この結果、過剰のカフェインを長く取り続けると骨密度が低下して骨が脆くなることが証明 されています。

    ちなみにコーヒーは一杯150mlには、90mgのカフェインが入っており、他にも紅茶は30mg、 烏龍茶は20mg、玉露は160mgのカフェイン量になります。1日800mg以上のカフェインを摂ると骨粗鬆症リスクが高まると言われており、アメリカでは1日最大でも400mgまで のカフェイン摂取量が呼びかけられています。

    活動量の低下

    骨は継続的に再建され、古い骨が解体されて新しい骨が形成されるプロセスがあります。この骨のリモデリングプロセスは、常に外部からの刺激やストレスに反応して調整されています。つまり骨に適切なストレスがかかると、それに対応して骨は強くなります。この骨のリモデリングバランスは運動や外部からの負荷によって促進されるものです。

    活動量が低下すると骨形成の速度が骨吸収の速度を上回ることが少なくなります。そうなると必然的に骨強度が下がり、骨がもろくなります。また運動は骨の健康をサポートするホルモンや成分の分泌を促してくれます。特に高強度の運動は、成長ホルモンの分泌を刺激します。成長ホルモンは、骨のリモデリングと新しい骨の形成を助ける重要な役割を果たします。また筋肉の成長や修復代謝の調整など多くの生理的プロセスに関与しています。さらに運動はテストステロンの分泌量も増やしてくれます。

    このテストステロンは男性ホルモンとして知られていますが、女性にも存在し、骨のミネラル密度を増加させ、骨の強度を向上させる作用があります。

    何れにせよ、長期的な運動不足や活動量の低下は、筋肉も骨も弱体化させることになります。結果的に顔の骨も弱くなり、萎縮し始めます。一方で適度運動は全身の血行を促進し、骨が必要としている栄養素をしっかり供給してくれます。カルシウムやビタミンDを摂取していても、血行不良だと骨に栄養が行き 渡らないため、運動で全身の血行を促進することは、骨の強化にも繋がります。

    重力に負けないたるみ研究

    お悩みの顔のたるみに関して、それをどうやって防いでいけば良いのかを考えてみたいと思います。お顔のたるみによって下がってくるのと、若い時の丸いハート型から四角い顔に変化しますが、これにはもちろん皮膚が垂れ下がったり、脂肪が付いたりするなどありますがやはり重力の影響が大きいです。

    横になってもまっすぐ向いても、若い時は重力に勝っていますが、年々肌の構造が重力に負けやすい構造になってきます。またファイスラインが重力で下がってくること以外にも、皮膚自体のハリがなくなって萎んだ状態になることもたるみの大きな影響です。このように肌や組織が重力で下がることに加えて、肌を支える部分の衰えがたるみの原因になります。

    一方で、この重力に私たちの顔が負けないようにする美容研究が進んでいます。例えば、資生堂は「立毛筋」に関しての論文を出していたり、ロート製薬はコラーゲン以外にも重要なのがエラスチン繊維の「オキシタラン繊維」であることを見つけています。

    たるみの原因「オキシタラン繊維」

    まず、たるみが出てくるのは、真皮にあるコラーゲンやエラスチンが壊れてしまうからです。例えばベッドのスプリングが弱くなるのと同じように、グッと肌がたるむと言われており、そのためコラーゲンとエラスチンを増やしましょうとなるわけです。

    もちろん、これらはどちらも大切ですが、実は皮膚を下から押し上げるような縦方向のエラスチン繊維「オキシタラン繊維」が重要であることが分かっています。このオキシタラン繊維がしっかりと柱になっていれば、いくら重力で下がろうとしてもこの柱が支えてくれます。しかし柱が年々折れてしまい、重力がグッとかかって下がってたるみになることが分かっています。

    また、横方向のエラスチン繊維「ロキシャラン繊維」もあります。しかし縦に走っている大きなオキシタラン繊維は、横のロキシャラン繊維よりも紫外線によるダメージが受けやすいことが分かっています。つまり同じだけ紫外線を浴びても横の繊維はあまり壊れませんが、肌の柱の役目をしている縦のエラスチン繊維は壊れてしまうのが早く、紫外線が当たるとどんどん折れてしまい、その結果たるみや深いシワになっていきます。

    ロート製薬は、この縦のオキシタラン繊維は、表皮と真皮の間にある基底膜から真皮に伸びていくことを発見し、基底膜をしっかりケアすること、つまりどうすればしっかりと真皮にエラスチンが届くようになるのかを研究しました。

    また、この縦のエラスチンの軸となるのが「フィブリン1」であり、このフィブリン1があることによって繊維がしっかりと太くなっていくことが分かっています。一方で「フィブリン5」と言うエラスチンの卵のようなものを運ぶタンパク質もあり、これらが2つあることによって、この縦の柱になるオキシタラン繊繊維ができることが分かっています。

    このフィブリン1とフィブリン5をしっかりと産生する植物成分も分かっており、それがタチジャコウソウの花と草のエキス、メディアアザシラクタ葉エキス、イザヨイバラエキスの3つのエキスです。

    肌のたるみを改善する習慣

    一方で、顔のたるみはスキンケアだけでは足りない部分があります。たるみは皮膚だけの問題ではないため、たるみを無くすための習慣が大事です。顔のたるみには段階があり、たるみ初期は、頬の位置が下がり、ほうれい線に8の字のような線が付きます。さらにたるみが進むと頬の凹凸がなくなり、平坦でのっぺりとした顔になります。ほうれい線は8の字から真直ぐな縦線に変わってしまいます。

    するとフェイスラインもたるんで輪郭は四角くなり、顔が伸びます。お年寄りの若い頃の写真を見ると顔立ちが違うことがありますが、たるみによって顔が長くなったり、目が小さくなったりしてしまうからです。

    たるみを解消するために一生懸命スキンケアをしている人も多いと思いますが、たるみは皮膚だけの問題ではありません。私たちの顔は表皮、真皮、皮下組織、筋肉、骨の5つのから成り立っており、5つすべてがたるみに影響を及ぼしています。

    365日日焼け対策を怠らない

    紫外線には、uvaとuvbがあり、uvbは皮膚の表面にある細胞を傷つけ、炎症を起こしたりシミの原因となります。そして厄介なのは uvaの方です。uvaは、波長がuvbよりも長く、肌の真皮まで到達して、ダメージを与えてしまいます。真皮はお肌の土台とも言える部分で、ハリや弾力を司っている場所です。真皮がダメージを受けるとハリも弾力も無くなり、たるみに繋がってしまいます。真皮はコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸からできています。

    コラーゲンは、1000以上のタンパク質で強い弾力性があり、エラスチンはコラーゲンをつなぎとめる働きをしています。ヒアルロン酸は、コラーゲンやエラスチンの隙間埋めるゼリー状の物質のことです。例えば、ベッドを長年使っているとスプリングが弾力が無くなるように、真皮も同じようにダメージを与えられるとハリや弾力が失われてしまいます。このような光老化の原因のほとんどが uvaによるものと言われています

    uvaは、紫外線の9割を占めており、冬でも夏の半分はあると言われています。また晴れの日を100%とすると曇りの日は60%、雨の日は30%降り注いでいます。また窓ガラスも突き抜けてしまうから家の中にでも油断はできません。

    紫外線は生まれてから浴びてきた量が蓄積していくと言われているため、毎日忘れずに塗るようにしましょう。

    糖分を摂り過ぎない

    糖を摂り過ぎると肌が透過を起こしてしまいます。透過はタンパク質と糖が結びついて細胞の劣化を促進させる現象で、体の焦げと呼ばれています。透過が進むと最終的にAGEという物質を作り出し、AGEが増えれば増えるほど肌のたるみにつながってしまいます。真皮にあるコラーゲンやエラスチンもタンパク質の一種です。透過することで細胞が劣化してしまい、伸縮性を阻害して肌の張りが失われてしまいます。透過の元となる糖分の過剰な摂取を避けることが大切です。

    寝る姿勢

    横向きで寝ていると皮膚が左右どちらかに引っ張られてしまい、うつ伏せは呼吸のために左右に顔をひねるため頬が潰れたり引っ張ったりされてしまいます。横向きやうつ伏せで寝ると肌に変形、ダメージが発生するという研究結果もあります。うつ伏せで寝ると頬が5mm以上、目元と口元は3mm以上動いています。動くことで真皮の成分である繊維芽細胞が潰れてしまいます。

    繊維芽細胞はコラーゲンやエラスチン、ヒアルロン酸を作る工場の働きをしています。繊維芽細胞が潰れるとうまく働かなくなり、肌の弾力が失われて水分が減少します。

    ストレスを溜めない

    実は、むくみはたるみにつながると言われています。一般的なむくみであれば、汗をかいたり、マッサージをすることで解消することができますが、年齢を重ねるとむくみは大人むくみに変わります。大人むくみは、フェイスラインが下に沈んだようにもたついて、頬の位置が下がったような状態になります。大人むくみは解消しづらいのが特徴で、諦めてしまうと定着してたるみにつながります。

    体の水分は、細胞の中の液体と細胞の外の液体に分けられます。細胞の外の液体は、血液、リンパ液、間質液の3つがあります。血液は血管に、リンパはリンパ管の中に回収されて全身を巡っています。間質液はむくみの主な原因になる物質と言われています。間質液は本来、毛細血管とリンパ管を行き来する物質です。血管は水分を、リンパ管はタンパク質や老廃物を回収する役割があり、その機能が低下してしまうことがあります。

    機能が低下する原因の一つがストレスホルモンと呼ばれるコルチゾールという物質にあります。体に大きなストレスがかかるとコルチゾールの分泌量が増えてしまいます。このコルチゾールは、皮膚にも存在すると言われており、皮膚には真皮と表皮の間に存在する基底膜があります。コルチゾールによって基底膜を構成するコラーゲン7型とコラーゲン5型が減少します。この基底膜は肌を支える重要な役割を担っているため、弱ってしまうとたるみにつながってしまいます。特に睡眠が足りないとコルチゾールの分泌が増えて、ストレス耐性が低下する悪循環になります。

    強いフェイスマッサージをしない

    コラーゲンは真皮だけではなくて、真皮のさらに奥にある皮下組織にもあります。組織の中には、皮下組織を柱のように支えている土台構造があります。顎周りの皮下組織は真皮よりも厚く、厚みのある組織の中に支えとなる線維を張り巡らせて、肌のハリを土台から支えています。

    しかし、強いフェイスマッサージをすると土台構造が壊れてしまう可能性が大きいと言われています。強くマッサージをした方がたるみ対策になると思うかも知れませんが、顔の皮膚は体に比べると薄くて柔らかいから強いマッサージは逆効果です。また土台構造が壊れたまま紫外線を浴びると壊れた状態のまま固まってしまいます。

    骨のエイジングケア

    骨の上に筋肉や皮下組織、真意、表皮が載っており、骨が皮膚や脂肪、筋肉を支えることができないとたるみにつながってしまいます。年齢を重ねると体だけではなく顔の骨の骨密度も減ります。体の骨よりも顔の骨の方が痩せやすいとも言われています。

    こめかみや眼窩の周りが広がり、顎の周りの骨は凹んで痩せこけ、目が凹んだり、団子鼻になってしまうこともあります。このように骨はたるみだけでなく顔の老化印象につながるため、骨のエイジングケアを意識することは大事です。また骨粗鬆症は中高年の女性がなるイメージがありますが、実はダイエットをする若い女性や生活習慣病の男性もリスクがあります。

    無表情

    顔には40種類以上もの表情筋が存在しており、目や口、鼻などを動かしている表情筋は誰かと会話をする中で様々な表情をして筋肉を鍛えています。無表情でいると表情筋が衰え、例えば口角の周りにある筋肉が使われないことで、硬くなり、筋肉が硬くなると口角が下がってたるみにつながってしまいます。

    ちなみに好奇心を持つことが、肌にハリが出るという研究結果があります。好奇心を持つと脳のメッセージ物質であるノルアドレナリンとオキシトシンが発生します。脳のメッセージ物質は真皮の繊維芽細胞に作用して、テネイシンの生産力を高めます。テネイシンは線維芽細胞が作るタンパクのことです。コラーゲンの繊維束の間を広げ、バネのように働いて弾力を生み出す働きがあるため、テネイシンが増えれば肌に弾力が増し、たるみ解消につながります。

    むくみを放置しない

    たるみを改善習慣は、むくみを放置しないことです。むくみは、冷えや便秘と並んで女性が悩まされる症状の1つです。女性がむくみやすいのは、女性の方が男性よりも筋肉量が少ないことが関係しています。筋肉は血液に酸素を運ぶポンプ機能として働くため、筋肉量が多いとリンパや静脈の流れがスムーズになります。逆に筋肉量が少ないとポンプ機能が低下し、むくみやすくなります。

    女性は皮下脂肪が多いため、スペースにリンパや組織外液がたまりやすくなり、女性に多い冷え症も血行不良を引き起こし、むくみの原因になります。さらに女性ホルモンのバランスも関係し、女性ホルモンのエストロゲンが減少すると血流が悪くなりむくみやすくなります。また妊娠中や生理中にむくみやすくなるのは女性ホルモンのプロゲステロンが増加するからです。

    また、むくみを長時間放置していると皮膚がその状態を記憶し、むくみが取れた時に風船がしぼむように皮膚がたるんでしまいます。また顔がむくんでいるということは余分な水分や老廃物が溜まっている状態なので、それを放置すると重力で下がり、頬のたるみを引き起こしてしまいます。余分な水分や老廃物が溜まることで頬だけでなくフェイスラインも重力で下がり、たるみにつながります。

    慢性的にならないためには、まずは塩分を控えることです。人間の体には体内の塩分濃度を一定に保とうとする働きがあり、塩分をたくさん摂取すると体の塩分濃度を薄めようと体内に水分を溜め込みます。それが原因でむくみやすくなってしまうため、塩分の取りすぎには注意が必要です。1日の食塩摂取量の目標は男性7.5g未満、女性6.5g未満、高血圧の予防治療のためには 6g未満が推奨されています。2020年度には、日本人の食事摂取基準が5年ぶりに改定され、以前と比べて目標量が1日あたり0.5g下がっています。しかし食塩摂取量の平均値は1日あたり10.1g、男女別に見ると男性11.0g、女性9.3gとなっています。

    塩分を過剰に摂取すると口が乾いたり、高血圧などの様々な病気のリスクが高まり、特に高血圧は、20歳以上の日本人の約半数が該当すると言われています。自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進行し、血管が厚く固くなり、本来の弾力性を失う動脈硬化という状態になります。動脈硬化になると血管が詰まったり、破れたりしやすくなり、心臓病や脳卒中など命に関わる生活習慣病を引き起こす可能性があります。

    また、塩分摂取量を減らすだけではなく、塩分を排出する働きのあるカリウムを摂ることも大事です。カリウムはミネラルの一種で、ナトリウムを体外に排出するため、カリウムを十分に摂ることで血圧低下や脳卒中を予防する効果が期待できます。カリウムを多く含む食品には、野菜類や果実類、豆類、海藻類などがあります。またカリウムは水溶性なので、野菜や果物を生のままで摂ることで効率よく補給できます。

    糖化と酸化を意識する

    糖化と酸化は、老化の原因になると考えられています。糖化とは体が焦げることで、体の中でタンパク質と余分な糖が結びついて、タンパク質が変成、劣化してしまうことです。これは糖化最終生成物(AGEs)が生成する反応で、老化物質であり悪玉物質とも言われています。このAGEsは分解されにくく、例えばコラーゲンに蓄積すると肌の弾力が失われて、たるみやくすみ、シワに発展します。さらに体調不良や様々な疾患、糖尿病、高血圧、癌などの温床となると考えられています。特に糖分や脂肪の多いファストフードを食べ続けたり、運動、睡眠不足などが重なると病的な老化が加算され、その結果、実年齢よりも体の中の老化が早く進行することになります。

    また、生体内でタンパク質や脂肪を糖化させる糖には、ブドウ糖と果糖の2 つがあります。摂りすぎて余ってしまったブドウ糖は血液に入り込んだまま全身の細胞に送り込まれます。そしてタンパク質や脂肪にくっついて糖化が進むとAGEsという悪玉物質が生まれます。果糖は、体温とすぐ反応するため、ブドウ糖に比べ10倍以上のスピードでタンパク質や脂肪を糖化させます。つまりたくさんのAGEsを作り出します。糖は生命を維持するために必要ですが、余分な糖は糖化を引き起こし、生態内に様々なトラブルを引き起こします。

    一方で、私たちは常に呼吸をし、それだけで細胞は酸化します。糖が生命を維持するためのエネルギー源なのと同じように、水と酸素も生きていく上で欠かせません。体内で酸素が他の物質と結びついて酸化し、その際に発生するものが活性酸素です。活性酸素は、体内で殺菌作用などプラスの働きをする一方、過剰に発生すると体内の細胞を傷つけ、有害物に変わります。

    活性酸素が体の細胞にダメージを与えるないように、人間の体には先天的に活性酸素に対する防衛システムが備わっています。それが抗酸化酵素で、活性酸素を消し、錆を防いでくれています。細胞内のミトコンドリアにあるコエンザイムQ10は、活性酸素と反応して無毒化してくれる働きがあります。体外から摂取するビタミンやミネラルなどで余剰に発生した活性酸素の処理をしてくれます。このように抗酸化酵素や体内にある抗酸化物質の働きで酸化を防いでいます。

    しかし、処理しきれないほど活性酸素が発生した場合は、生体内の至るところで活性酸素の攻撃にさらされ、多くの細胞が損傷を受け、壊されてしまいます。金属の表面に酸素が作用してできる酸化物を一般的に錆と呼びますが、人の体も同じように錆びてしまいます。

    残念ながら私たちは生きている限り酸化を避けることはできません。活性酸素に対する防御システムの中に抗酸化酵素があり、その主成分はタンパク質です。

    実はここで糖化が問題になり、タンパク質が糖化によって変性、劣化することにより抗酸化酵素の能力を発揮できない状態になってしまいます。よって体内に発生した活性酸素を防御する機能が低下し、生体内の多くの細胞が活性酸素の攻撃にさらされることになります。このように糖化と酸化は互いに関連が深く、この両者が揃うと老化の危険度が5倍にも10倍にもなります。

    仰向けで寝る

    肌のたるみを加速させないたためには、肌の健康状態を保つことが大切です。そのためには睡眠をしっかり取ることが欠かせません。睡眠中に成長ホルモンと呼ばれるホルモンが分泌され、全身の疲労回復に関わっています。また肌のターンオーバーの正常化やコラーゲンの生成も促してくれます。そんな成長ホルモンを分泌させるには、眠り始めの3時間に深くぐっすりことが重要になります。そのため眠る前にスマホを見続けるなど眠りが浅くなるような習慣はNGです。

    そして就寝時に同じ方向でずっといると顔に負担をかけていることにもなります。横向きで寝ると下になっている方に圧力がかかってシワでき、それがたるみの原因になります。片方の肩や腕に重力がかかり背骨が歪む原因にもなります。仰向けは胸郭が開きやすく、全身の筋肉がリラックスする姿勢なため寝付きが良くなります。

    骨活(骨を強くする)の方法

    カルシウムとビタミン Dの摂取

    骨の健康にはカルシウムとビタミンDの摂取が必要不可欠であり、カルシウムは多くの食品に含まれています。特に乳製品はカルシウム含有量が多く含まれていますが、大豆製品でもカルシウムは摂取できます。また大豆にはイソフラボンが含まれており、女性ホルモンのサポートもしてくれます。女性ホルモンを整え、骨の強度を保つという観点からも大豆製品の摂取はおすすめです。カルシウムの摂取効率を最大化するためには、鉄や亜鉛など他のミネラルとのバランスが重要です。

    ビタミンDの摂取方法については、基本的には食事から摂る必要はありません。ビタミンDは、太陽ビタミンとも呼ばれるように皮膚が紫外線にさらされることで生成されます。明るい時間帯に15分程度の日光浴をすると、ビタミンDの生成を促進することができます。ただし紫外線が強すぎる日は、涼しい朝方や夕方に日光浴するようにしましょう。また顔に紫外線を当てると肌ダメージを受け、シミやたるみの原因になることもあるので避けましょう。

    骨を作るホルモンを活性化させる

    骨を作るホルモンは、オステオカルシンと呼ばれています。オステオカルシンは骨を形成する過程で大切な役割を果たし、カルシウムと結合する力があります。この結合作用によって、骨の密度や強度が向上します。骨の健康を維持するためには骨の代謝や再構築が適切に行われることが不可欠です。

    オステオカルシンが活性化されるとこれらのプロセスが効率的に行われるようになります。オステオカルシンの量が満たされているとカルシウムの沈着が向上し、骨が丈夫になります。またオステオカルシンの活性化には、ビタミンKにも必要になってきます。ビタミンKには、オステオカルシンの活性化を促進させる栄養素で発酵食品に多く含まれています。

    一方でオステオカルシンを活性化させるためには運動も必要です。運動時に骨にかかる力や圧力は、骨を強化する刺激となり、オステオカルシンの活動を高め、また適度な運動は体内の炎症反応を減少させる効果もあります。炎症はオステオカルシンの働きを妨害し、骨の健康を害する原因になることもあります。運動で体内炎症の進行を抑えることができればオステオカルシンの活性化にもつながります。

    女性ホルモンの活性化

    女性ホルモンには主に2種類あります。女性ホルモンのエストロゲンは、骨を壊す細胞の活動を抑え、骨を作る細胞の活動を促進する働きがあります。エストロゲンが不足すると骨の再構築バランスが崩れ、骨密度が低下します。女性ホルモンのプロゲステロンは、骨に直接的な影響は与えるわけではありませんが、エストロゲンとプロゲステロンのどちらかが欠如すると正常に機能しません。

    女性ホルモンは生涯に渡り変動を繰り返しますが、一部の女性は月経の前にエストロゲンレベルが急激に下がり、PMSを引き起こします。PMSは月経前症候群とも呼ばれ、月経の約1から2週間前に身体的、精神的な不調が現れ、日常生活に支障が出ます。

    PMS自体が直接骨密度に影響を及ぼすわけではありませんが、一部の研究では持続的なエストロゲン低下が骨の健康に影響を与える可能性が示唆されています。PMSの症状を何十年も放置していると、これが骨の健康に悪影響を与えることもあります。

    また、女性は妊娠中も大きな負荷がかかり、特に妊娠後期には胎児へのカルシウム供給が増加します。母体の骨からカルシウムが溶出し、骨密度が一時的に低下してしまいます。妊娠中は骨や歯の強度が落ち、骨折のリスクも上がります。出産後に授乳をしない場合は、エストロゲンのレベルが回復し、骨の再構築が活性化されることにより、妊娠中に低下した骨密度は徐々に回復します。一方で授乳を続ける場合は、エストロゲンのレベルが低下した状態が続くことになるため、授乳中も骨密度の低下が続くことになります。

    また、40代後半から50代にかけて閉経を迎えるとエストロゲンの分泌量がグンと落ちるため、骨密度の低下や骨粗鬆症のリスクを高めることになります。

    オリゴ糖でミネラルの吸収効率を上げる

    ミネラルと一言で言っても私たちの体が必要とするミネラルは実に多岐に渡ります。中でも中高年以上で、特に重要となるのがカルシウムとマグネシウムの2つです。カルシウムは他でもなく骨を作る材料となるミネラルです。加齢による筋力の衰えや認知機能の低下と共に、特に女性の場合は閉経後に女性ホルモンのエストロゲンの分泌が低下することで一気に骨粗鬆症のリスクが高まります。

    その予防のためにカルシウムを摂っている方も多いと思いますが、骨が脆くなる原因の多くは、実はカルシウムの摂取不足ではなく、食べたカルシウムの吸収不良によるものであると考えられています。カルシウムは、非常に吸収しづらいミネラルであることが分かっています。

    そのため、たっぷりのカルシウムを食べたとしても、それが吸収されて骨の材料として使われなかったら何 の意味もありません。またカルシウムが全て骨に使われるとは限りませんし、カルシウムのうちいくらかは尿として排泄されてしまいます。その中には腎臓 に蓄積して何の役にも立たない分もあります。

    しかしオリゴ糖は、このように吸収されづらいカルシウムの吸収効率を高めて、食材から効率的にミネラルを摂取でできるようにしてくれる作用があります。これもまたオリゴ糖が持っている腸内環境の改善効果が関係しています。オリゴ糖を食べると腸内の善玉菌が増え、善玉菌の中には短鎖脂肪酸という体に良い脂肪酸を作り出してくれる善玉菌がおり、この短鎖脂肪酸がカルシウムやマグネシウムの吸収を促してくれることが分かっています。

    実際、研究によるとオリゴ糖の摂取によって、カルシウムやマグネシウムの吸収率が格段にアップしたことが報告されています。またカルシウムが主に骨の形成に重要であるのに対し、マグネシウムは私たちの脳や心に作用し、メンタルを安定させてくれる大切な働きがあります。中高年以上では骨が脆くなるだけではなく、メンタルも落ち込みがちになってしまうことが分かっています。

    たるみを改善する飲み物

    最近の研究で判明した、閉経後に骨の密度が下がりやすくなる40から50代の女性におすすめの飲み物が蜂蜜です。蜂蜜にはマルトビオン酸というオリゴ糖が豊富に含まれており、マルトビオン酸の働きは私たちの顔のたるみを引き起こす骨の減少を食い止める効果があります。具体的には骨の中にあるコラーゲン成分の流出を食い止め、破骨細胞の働きを抑制してくれることが中部大学などの研究で分かっています。

    研究では、マウスの大腿骨の骨髄細胞にマルトビオン酸を添加したところ、破骨細胞の骨を破壊する働きが抑制されたことが分かっています。また卵巣を切除して、閉経と同じ状態にしたマウスにマルトビオン酸を含んだ餌を80日間与えた実験も行われ、その結果、大腿骨中の骨密度やカルシウムの減少が抑制されたことが分かっています。

    さらに40代から60代の女性を対象に人への臨床試験も行われており、マルトビオン酸を含む顆粒を1日4g、4週間に渡って飲んでもらい、閉経後1年以上経過した33人の骨中でコラーゲン成分の流出が抑えられた結果になりました。さらに腸の調子が良くなったり、便秘改善など予想外の効果まで確認されています。

    緑茶

    緑茶には、緑茶特有の抗酸化物質のカテキンとビタミンCが豊富に含まれており、光老化を予防する飲み物です。特に茶カテキンは、数ある抗酸化物質の中でも強力な抗酸化力があり、紫外線を浴びることで増える活性酸素の発生や働きをシャットアウトします。

    また、緑茶には抗酸化物質のビタミンCも含まれており、茶カテキンとビタミンCの組み合わせが肌のたるみを引き起こす活性酸素を撃退してくれます。ビタミンCはもちろん野菜などからも摂れますが、緑茶のビタミンCの含有量は野菜の中でもビタミンCが多いとされる赤ピーマンの約1.5倍も多く含まれています。

    コーヒー

    コーヒーも抗酸化作用のあるポリフェノールの一種のクロロゲン酸が豊富で、顔のたるみを予防する抗酸化力に優れています。ただしコーヒーは、胃液の分泌を活性化させてしまうデメリットがあります。そのため胃に負担をかけてしまうため飲みすぎは注意しましょう。

    そして30歳から60歳までの健康な日本人女性244人を対象に、ポリフェノールが含まれる飲み物、赤ワイン、コーヒー、緑茶、紅茶、この4つの中でどれが1番肌の光老化を抑えるのに効果があるのか調べた研究があります。その結果、コーヒーと緑茶の両方を飲んでいた人が、最も肌の光老化の影響を受けていないことが分かっています。

    たるみを科学する最新研究

    顔の奥ではどんな変化が起こってたるむのか、を研究しているのが資生堂です。資生堂では4つに着目しており、1つ目がたるみは、真皮の変化、皮下組織に近い部分にあり、たるんでいる人とたるんでない人にここに大きな変化があったことを見つけています。2つ目が表情筋ではなく、真皮にある「立毛筋」が、たるみに重要な筋肉であることを見つけています。3つ目がコラーゲンやエラスチンの産生に関わる真皮の繊維芽細胞が、加齢とともに産生能力が低くなり、その支えが弱くなりますが、新しくどうやったら繊維芽細胞が生まれてくるのか、繊維芽細胞の元にある幹細胞は、どういう風に刺激したら増やせるのかに着目しています。最後が表情筋に刺激を与えることは、たるみにはどういう風に効くのかにフォーカスを当てて研究しています。

    真皮と幹細胞

    真皮の奥、皮下組織の近くにある真皮と皮下組織は、平行にピタッとくっついています。お顔に関しては真皮が縦に皮下組織に刺さっている楔のようになっている部分がいくつかあります。真皮の基盤の縦の構造は、柱のように刺さっているものがしっかりと構造としてあれば、たるみづらくなります。そのため、たるみがない人は、真皮が皮下組織にしっかりと楔のように打ち込まれているような構造があります。逆に加齢によって、たるみが始まった方を見てみると、楔のような構造がだんだん無くなっていることが分かります。

    資生堂の研究では、楔の部分をどういう風に再現していくかということを研究しており、この楔の部分は繊維芽細胞が作るコラーゲンとエラスチンからできているので、繊維芽細胞の元である幹細胞を増やし、楔の部分に誘導できないかと研究されてきました。

    その中でローズマリーエキスが、真皮で幹細胞の楔の部分、真皮の基盤部分に誘導できるってことを見つけています。つまり幹細胞が楔の部分にちゃんといることで、コラーゲンやエラスチンが作られて強く接着されることになります。一方で幹細胞自体は、加齢とともに少なくなりますが、皮脂腺の周りに幹細胞が多くいることが発見されており、しっかり圧で押すことも皮脂腺の近くにいる幹細胞を外に出す1つの刺激になることが分かっています。つまりお顔を押す(指圧する)ことで血流が良くなるだけではなく、実は幹細胞を誘導するにも良いことが分かっています。

    化粧品では、皮脂腺の周りにある幹細胞を刺激して、繊維芽細胞に変えていく成分で、イリス根エキスがあります。イリス根エキスで幹細胞を刺激し、ローズマリーエキスで楔に誘導するのがこの2つの成分になります。

    表皮の幹細胞も老化する

    表皮の幹細胞も老化することが資生堂、ハーバード医科大学、マサチューセッツ総合病院の共同研究で明らかになりました。この表皮の幹細胞にYBX1と呼ばれるものがあります。このYBX1が変性すると表皮の幹細胞が老化し、新しく生まれてくる細胞に異変が起こります。またYBX1は元の幹細胞とは異なる働きをし、細胞を生み出すのではなく、 周りの細胞にも悪影響を与えることも分かっています。

    これまでは、幹細胞の数が多ければ良いと考えられていましたが、YBX1が変性した幹細胞であれば質の良い細胞は作れません。そのため数の多さではなく質の良い細胞が大切になります。このYBX1の変性を抑えることで、表皮の幹細胞が老化するのを防ぎ、老化しにくい肌を保つことが大事になります。

    たるみに関わる「立毛筋」

    立毛筋は、鳥肌のように毛に直接ついている筋肉で、刺激がある時にだけ動く筋肉です。立毛は、重力とは反対の方向、重力に逆らうよう付いています。加齢とともに重力に逆らって付いていたものが、だんだん弱くなるのですが、たるみがある人は、この立毛筋の動きが悪かったり、立毛筋自体が劣化していることが分かっています。つまり立毛筋をケアすることで、たるみに抗うではないかということが分かっています。

    一方で、立毛筋そのものに対してアプローチする植物成分に、カンゾウエキスとキイチゴエキスのコンプレックスが、立毛筋にアプローチして衰えるのを抑えることが分かっています。

    表情筋への刺激

    表情筋を鍛えることもたるみケアには大切ですが、表情筋への刺激は喋るとか、笑顔を作るだけでも表情筋に刺激が入り、それによって活性化されることが分かっています。一方で表情筋に対してアプローチできる植物成分が、ワレモコウエキスです。このエキスは、表情筋の筋繊維を活性化することが分かっています。

    OBプロテイン(匂い結合タンパク質)

    資生堂の研究によって、肌にOBプロテインという匂い結合タンパク質(Odorant Binding Protein 2A)が存在することが明らかになりました。これは匂いを結合させるタンパク質で、これまで鼻の中で鼻汁にあるタンパク質として知られていました。このタンパク質は、鼻粘膜内で匂い物質を選別し、 刺激となる匂いをブロックする働きがあります。

    一方で、肌のOBプロテインは筒状の構造をしており、肌の上にあることで不要な刺激がそこに付着し、筒の中に閉じ込め、肌の内部に入れないでブロックし、ターンオーバーによって排出されます。つまり良いものは、この筒を通して肌に吸収され、要らないものは筒に閉じ込められて排除されるため、このタンパク質によって表皮で肌の健康に寄与します。

    またOBプロテインが多いと、表皮に厚みが出ることが分かっており、表皮バリア機能の一旦を担っています。この表皮の厚みは、しっかり細胞間脂質やヒアルロン酸などが生成されていることを表しています。しかしOBプロテインは年齢とともに減少するため、OBプロテインを増やすことが重要な要素であることが分かっています。

    お肌のたるみにはインディバ

    高周波治療(ラジオ波)は、高周波を照射し、真皮の奥の皮下組織に熱を与えることで、たるみを改善します。高周波治療器(ラジオ波)の代表的なものに、サーマクール、テノール、インディバなどがあります。

    サーマクールは熱によって脂肪を焼き、熱でタンパク質を縮める作用によってたるみ改善を図ります。テノールは、高周波によってコラーゲン生成を促し、肌にハリや弾力を取り戻します。インディバも同じくコラーゲン生成を促し、筋肉に働きかけて肌を活性化させてたるみ改善を図ります。

    いずれにおいても主な治療効果は、顔全体のたるみに対するものが挙げられますが、当院が導入しているインディバは、深部から温める作用によって、皮下脂肪・骨などの周囲に生じた線維化、硬化を改善して、リンパの流れや代謝を促進することができます。

    特にセルライトや皮下脂肪の質の変化に効果を発揮します。この効果は、初回、2回目以降の治療後にお肌を触っていただけると、ハリや弾力が戻り、たるみが改善されることが分かっていただけると思います。また衰えた血流やリンパの流れを促進することで、局部の基礎代謝が亢進するため、加齢で低下した新陳代謝とそれに伴って生じたたるみなどの肌質の変化を改善することができます。

    一方で、インディバは切らないたるみ治療のため痛みがありません。サーマクールのように瞬間的なエネルギーで効果を狙う機器に対して、インディバは持続的に体内の脂肪燃焼作用を誘発します。緩徐な温度上昇によって痛みが伴いません。また当院では、美容鍼灸院としての長年の経験の元、元々の脂肪の付き具合、表情筋(筋肉)の弛緩の度合いなどから、個々のお客様の状態に合わせて施術法は変えていきます。

    コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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