
世の中には美容・健康に関する本が沢山あり、本によってまるっきり正反対なことを言っていることもあります。糖質制限をしているのに思ったほど体重が落ちない、ジムに通っているのに健康診断で引っかかったなど、健康思考に気つけて努力しているにも関わらず、なぜかあまり成果が得られない方が多くいらっしゃいます。健康的に痩せられる方法や病気や老化を予防する方法など試しても一向に効果が出ないのは、正しい知識と正しい情報に基づいた美容・健康法を選んでいない可能性があります。
医学の世界は日進月歩であり、新しい発見に合わせて私たち自身の知識もアップデートしていく必要があります。時代遅れの健康法や誤ったダイエット法など、過去の常識が今は非常識になっていることがあります。
正しい知識を身に付ける
私たちの身の回りには間違った食の常識が溢れかえっています。朝ごはんを食べないと元気が出ない、牛乳を飲むと骨が丈夫になる、果物をデザートに食べるのは健康的、栄養不足はサプリメントで補おう。このような根拠のない食の常識が世の中に溢れかえっているのは、残念ながら政府や食品業界のプロパガンダに流されているからに他なりません。
例えば、朝ごはんを食べる習慣がつけばそれだけ多くの食品が売れることになります。またアメリカは日本に向けて家畜の餌となる穀物や肉や果物を多く輸出したいという意図があるため、日本人が肉食となって乳製品を積極的に摂取し、果物をたくさん食べてほしいと考えています。このような意向に日本政府は従い、日本には遺伝子組換えされた穀物を餌にして育った牛肉や農薬防腐剤まみれの果物が大量に輸入されています。
また、日本における健康サプリメントの市場はもはや年間1兆円とも言われています。日本人がサプリメントを飲めば飲むほど儲かる企業が存在するわけです。何が言いたいのかと言えば、私たちの食生活は人間の健康ではなく、食糧生産のシステムと結びついています。巨大企業が私たちの健康を食い物にして儲かっているというのは日本に限らず世界で見られる縮図です。
私たちは自分の健康は自分で守らなければなりません。自分の健康を守るためには世の中に広まっている食の常識に流されるのではなく、正しい知識を持って自分の頭で考えて、日々の食生活を自分で決めることがとても大切です。
菜食主義とサプリメント
牛肉のような赤み肉は、大腸がんや高コレステロール血症の原因として体に悪いと言われていますが、一方で肉を全く食べない菜食主義の人は、様々な栄養素が不足しやすく骨が衰えて歯の状態が悪くなる危険性があります。栄養学的にはビタミン、タンパク質、カルシウムが不足しやすく、体全体の不調の原因になることが指摘されています。野菜だけでなくそのほかの食物もバランスよく摂ることが大切です。何れにせよ極端な菜食主義、肉食主義はそれ相応のデメリットがあり、何事もバランスよく食べることを心がけましょう。
またサプリで栄養を補充しようと考える方がいますが、24種のサプリの健康へ影響を評価した最新の研究では、ほとんどのサプリは飲んでも飲まなくても健康への影響はなかったという結論が出ています。それだけでなく私たちの健康を害するサプリも存在しています。
その1つがカルシウムです。カルシウムをサプリで摂取すると腎結石になりやすいことが分かっています。食事では野菜などに含まれるシュウ酸がカルシウムの吸収を調節します。しかしサプリの場合は、この調整機構が働かずに過剰に吸収されて腎結石のリスクとなってしまいます。またビタミンには水溶性と脂溶性ビタミンがあり、後者は水に溶けずに尿として排出されないため過剰症の恐れがあります。過剰症になる恐れのあるビタミンがビタミンDやEです。
短期集中ダイエット
1ヶ月に1kgを超えるペースでのダイエットは、基礎代謝量の低下やリバウンドなどの弊害があります。さらに短期集中ダイエットで、脳内にある満腹感のスイッチが壊れ、長期間に渡り食欲が増進することが分かっています。私たちの体は飢餓状態になると、満腹ホルモンが抑えられ食べ過ぎやすい状態になります。たまに食事にありつけたときに沢山食べて蓄えておけるように体が変化するのです。
そしてこのような飢餓モードになると、その後は中々元の状態に戻りません。例えばある調査では、10週間の厳格な摂取カロリー制限を行い、カロリー制限終了一年後に調査したところ、依然として食欲ホルモンの高値と満腹ホルモンの低下が確認されています。
朝食とPFCバランス
朝ごはんを抜くと脳のエネルギーが不足して、イライラしたり集中力が欠けると言われていました。しかし朝食が必ず必要であるという科学的なエビデンスはありません。また朝食を食べると代謝がアップするということも科学的に否定されています。
PFCバランスとは、プロティン(タンパク質)、ファット(脂質)、カーボンハイドレート(炭水化物)の3大栄養素のバランスで、厚生労働省は2:3:5が理想的なバランスと定めています。これも時代遅れの考え方で、脂質の摂りすぎが動脈硬化を引き起こすというのは否定され、むしろ脂質摂取は大に推奨されています。さらに様々な研究により、タンパク質の摂取が腎臓に悪影響を与えるという説の根拠が揺らいできています。また炭水化物を5割というのも明らかに糖質の摂りすぎになります。つまりこのようなPFCバランスには拘らず、糖質摂取を減らし、その分脂質の摂取を増やすことを意識しましょう。
果物は朝に
体に悪い食習慣の一つに朝ごはんをしっかりと食べることが挙げられます。人間は太陽の昇り降りに合わせた一日24時間の体のリズム、サーカディアンリズムがあります。太陽の光を浴びれば目が覚め、日中は交感神経が働いて活力が増し、太陽の光が落ちて暗くなると副交感神経が働いてリラックスし、だんだんと眠くなるという自然なリズムが備わっています。
この24時間の自然なサイクルに従うと午前4時からお昼の12時頃までは、排泄の時間となります。前日の夜までに食べたものの老廃物を体外に排泄し、体内をリセットする時間帯が午前中です。しかし朝食を摂取すると余計な食べ物をまた体内に入れることになり、老廃物が排泄されて体内がリセットされるタイミングが無くなります。つまり常に胃腸が働き老廃物が胃に残っている状態が続いてしまいます。
そこでおススメなのが果物の摂取です。多くの果物は水分量が80%から90%を占めているため、果物を摂取することで胃腸が緩やかに刺激されて、排泄行為を促してくれます。また果物は30分から40分程度で消化されるため、胃腸の負担も大きくありません。体内のリセット機能を高めると同時に、ビタミンやミネラルなどの栄養成分を補給することができます。
食後は果物NG
果物は栄養価が非常に高い優秀な食材です。ビタミンやミネラル、食物繊維、ポリフェノール、カロテノイドなどのヒトケミカルなどを健康のために欠かせない栄養成分が多く含まれているのが果物の特徴の一つです。
デザートとして果物を食べることで、さらに栄養バランスがとれた食事になりそうですが、実は食後に果物を摂取することが、健康に悪影響がある説があります。そもそも食後のデザートに果物を食べるという習慣が広まったのは、フランス料理から始まっています。フランス料理といえば、本来は野菜を使った料理が多く、クリーム系の肉料理は少ないです。日本のフランス料理は特別な記念日に作られるような豪華なメニューばかり取り入れられています。その結果バターや生クリームがたっぷりと使われたフランス料理が日本に広まっています。これらの料理を食べると、口の中が油っぽくなるため、口の中をすっきりさせたいということで果物がデザートとして出されるようになりました。
果物は最も消化しやすい食材で、本来果物を食べると胃で約30分から40分で消化され腸へと流れていきます。しかし食後はまだ肉や魚、ご飯やパン、パスタなどの消化が遅い食べ物が胃に残っています。肉や穀物類は、胃で消化するのに3時間から4時間ほどかかり、消化されやすい果物が後から胃の中に入ってくると先に食べた肉やご飯、パンなどが腸への通り道を塞いでいるため、消化された果物は腸に進むことができません。
その結果、果物に含まれている酵素が胃の中で発酵を始めます。果物が発酵を始めると、肉やご飯などの発酵も連鎖して進み、場合によっては腐敗が進むケースがあります。この果物や肉、穀物類の発酵や腐敗の過程で人にとって毒性のある有害物質が発生してしまい、有害物質の分解のために肝臓に余計な負担をかけてしまうことになります。しかも肝臓で分解しきれなかった毒素は、肝臓や皮下脂肪に蓄積され、疲れやだるさといった体の不調に繋がります。
歩き方が大切
歩くことは良いということで、美容・健康のために日常生活の中で歩くことを心掛けている方も多くいらっしゃると思います。しかし美容・健康効果は単に歩くだけでは得られません。特に歩数や時間を基準にしている場合、実は歩いた歩数や時間は美容・健康にあまり関係ありません。
なぜなら、筋トレを思い浮かべて頂くと分かりやすいですが、ある程度負荷がなければ筋肉は鍛えることはできません。例え1万歩を歩いたとしても、ゆっくり歩いていただけなら体に負荷はかかっていません。運動したと思っていてもそれは単に歩き疲れただけで、美容・健康にあまり効果がないのです。効果を得るためには体に負荷をかけた歩き方が重要で、歩き方には「速度」が大変重要な要素であり、欠けてしまうと効果が半減します。
「速度」を意識した歩き方の一つがインターバル早歩きです。この歩き方は、早歩き3分、ゆっくり歩き3分、これを1日5セット、週4日を目安に行う方法です。中高年の方々がこのインターバル早歩きを5ヶ月間行ったところ、体力年齢で10歳も若返ったという結果が報告されています。その他で効果的なのが、ややキツイと感じる速度で歩く方法があります。いずれにせよある程度負荷をかけることが大切になります。
また「姿勢」も歩き方に重要な要素です。体をしっかり使えていないと、猫背歩き、反り腰歩き、ガニ股歩きになっており、体全体の筋肉を正しく使うように姿勢にも注意しましょう。
アンチエイジングのメカニズム
外見や美容に関するアンチエイジングは、その正確なメカニズムは良く分かっていません。老化は人によって進み方が異なります。だだし老化は病気であると捉える考え方は、医学会では常識になりつつあります。老化は原因を突き止めて、ある程度は予防や対策ができる時代になってきています。
老化の原因は「酸化」「糖化」「慢性炎症」の3つです。特に「酸化」と「糖化」は、私たちの細胞の劣化の引き金になっていると考えられています。
私たちの体に欠かせない「酸素」は、その一部が「活性酸素」に変化して、細胞の主な成分であるタンパク質を傷つけ、劣化させてしまいます。次に「糖化」は、体の中でタンパク質がブドウ糖に結合して起こる反応であり、この反応により「終末糖化産物(AGE)」がつくられ、これが肌のシミやシワの最大の原因になります。また見た目の問題だけでなく様々な病気の原因になります。
一方で「酸化」と「糖化」は、細胞の劣化を引き起こすだけでなく、「慢性炎症」を引き起こし、様々な病気や不調の原因なってしまいます。
これら原因の対策には、食生活と運動の習慣を変えること以外あり得ません。「酸化」を防ぐ食べ物は、ビタミンA,C,Eなどの抗酸化ビタミンやポリフェノール、カロテノイドといった成分を含む食品です。具体的には、人参、かぼちゃ、ピーマン、パプリカ、ブロッコリーなどの色の濃い緑黄色野菜を積極的に食べましょう。また果物、ワカメや昆布などの海藻類、キノコ類などもおすすめです。
「糖化」を防ぐためには、まずはできるだけ高温調理されたお肉やお魚は避けることが対策の一つです。なぜならAGEは高い熱を加えた調理によって大量にできてしまう特徴があるからです。具体的には肉や魚を揚げたもの、直火で高温で焼いているものです。そして悪性のAGEはブドウ糖からつくられることが分かっているため、血糖値が上がる糖質やタンパク質の過剰な摂取は控えましょう。具体的にはお菓子、ジュースは絶対に控えましょう。沢山食べることで、血糖値が急激に高まり、この急激な変化がAGEを体内に貯めてしまう原因になることが指摘されています。
プチ断食
プチ断食をして夜にまとめて食べる方は、時間栄養学の観点では間違った食べ方になります。プチ断食をしても効果を感じられない方は、夜にまとめて食べている方が多く、朝食べたものはエネルギーとして燃やされやすいことや、夜食べたものは脂肪として溜め込まれやすいという体の仕組みを無視している可能性があります。
私たちの体には体内時計という仕組みがあり、朝は体温や血圧を上げて活動の準備をし、夜になると体温や血圧を下げて眠りにつくリズムがあります。この体内時計リズムに合わせた食べ方を考える「時間栄養学」という概念が注目されています。
最近発表された16時間断食の効果を調べた研究では、朝を主体としたグループ、昼から夜を主体としたグループ、時間制限を設けない時間帯自由のグループで食べる時間帯を制限した場合、朝を主体としたグループが最も効果が高かったことが分かっています。このグループでは、インスリン抵抗性、空腹時血糖値、体重、体脂肪量で最も高いダイエット効果が得られています。
同じく13時間断食の効果を調べた研究でも、朝を主体とした時間帯に食べた方が効果が高いという結果になっています。余談ですが断食時間が長くなりすぎると、オートファジーが過剰になり、分解された脂肪が肝臓に取り込まれて脂肪肝になったり、高齢者では筋肉が減少するサルコペニアのリスクが高まったりするなど健康を害する可能性も指摘されています。また16時間断食で、食べる時間帯が短くなるとタンパク質不足に陥りやすく、筋肉量が減るためタンパク質を意識して摂る必要があります。
また、糖質は朝食べることで速やかにエネルギーで消費されるため、血糖値の上昇を余り気にしなくても良いということも言われています。そして遅い時間に沢山のものを食べないようにしましょう。このようにプチ断食をするのであれば、体内時計のリズムを理解し、そのリズムにあった方法で行いましょう。
脳トレより運動
脳の研究が進んだことにより、脳は思いのほか柔軟であることが分かってきています。脳の中では絶えず新しい細胞が生まれ、互いに繋がったり離れたりします。特に体を動かすことが脳に大きな影響を与えており、運動すると気分が晴れやかになるだけでなく、記憶力、集中力、ストレス抵抗性、創造性が高まり、情報処理能力(思考の速度)が上がることが分かっています。
一時期、パズルや脳トレのような学習能力を高めるメソッドが人気になりましたが、戦略的に運動する方が遥かに効果的であることが研究で明らかになっています。
脳は運動することでドーパミンを分泌し、気分が爽快(多幸感)になります。その理由は、人は狩りし、猛獣から逃げ、住みやすい場所を探すことで生存の可能性を高めることが記憶に刻まれているからです。脳は1万年前から進化はしていないため、現代の私たちにもこのメカニズムが残っており、祖先と同じ行動をすることで脳は快楽を与えてくれる物質を分泌し、多幸感を与えてくれます。
他にも、狩りをする時には集中力を高め、素早く行動する必要があります。また新しい住処や環境を探すのには記憶力も必要です。つまり運動することで集中力を高め、記憶力を必要として脳の働きを高めさせるのです。
油・脂の選び方
油はダイエットの天敵であるという共通認識がありますが、一方で脂質は三大栄養素の一つです。脂質は体を動かすエネルギーだけでなく、体をつくる材料でもあります。脂質はビタミンA,D,E Kなどの脂溶性ビタミンの吸収を助ける働きもあります。そのため脂が不足すると肌ツヤがなくなり、髪がパサつくことになります。
アブラには様々な種類があり、無自覚に摂り続けると健康を害してしまう可能性があります。肉の脂身やバターなどの常温で固体の「脂」とサラダ油やオリーブオイルなどの常温で液体の「油」があり、また動物性のものよりも植物性のものがヘルシーであるというイメージがあります。
しかし、アブラの性質を決めているのは、その構成成分である「脂肪酸」です。この脂肪酸には以下の4つがあります。
脂肪酸名 | 含まれる食材 | 内容 |
飽和脂肪酸 | 牛脂やバターなど常温で固体の油に多く含まれる | コレステロール値を上げて動脈硬化のリスクを高める作用がある。 一方で摂りすぎないと、脳出血の発症率が高まるという報告がある |
n-3系脂肪酸、オメガ3系脂肪酸 | 魚(DHA,EPA)、えごま油、亜麻仁油などに多く含まれる | DHAは脳の血流を良くして活性化させ、EPAは動脈硬化や心筋梗塞のリスクを下げる |
n-6系脂肪酸、オメガ6系脂肪酸 | コーン油や大豆油、お菓子、インスタント食品、加工食品にも多く含まれる | 摂りすぎるとアレルギーや動脈硬化を起こすリスクが高くなる |
n-9系脂肪酸、オメガ9系脂肪酸 | オリーブオイルや菜種油などに沢山含まれている | コレステロールを下げる作用を持つ |
どんなアブラもこれらの複数の脂肪酸で構成されていて、その割合がアブラによって違います。例えば植物油で有名なパーム油はオメガ9系よりも飽和脂肪酸が多く含まれています。そのため摂り過ぎるとコレステロール値を上げて、動脈硬化のリスクを高めてしまう作用があります。このように単に動物性だから健康に悪い、植物性だから健康に良いとは限りません。
いずれにせよ脂は、魚などからオメガ3系を中心に摂り、その他は摂りすぎが健康に良くないため程々にしましょう。ポイントは悪い油が使われている加工食品はなるべく控えましょう。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。