老化の加速を予防する

    老化の加速を予防する

    老化はなぜ起こるのかをご存知でしょうか。体の機能が衰えは、その速度と度合いに大きな個人差があります。同じ年齢でも若々しい人、老けている人の違いには、その老化の起こる原因が深く関わっています。老化の原因には、細胞寿命説、慢性炎症、酸化・糖化、DNA損傷、腸内環境の悪化など諸説があり、これらが一緒に進むためと考えられています。

    老化が進むタイミング

    老化が進んでしまうタイミングで特に気をつけるべきは40、50代です。実は、人間には老化が加速するタイミングがあるという研究があります。一般的には、女性は7の倍数、男性は8の倍数で老化が強まると言われています。特に男女とも56歳で老化のタイミングが強まるため、若いうちから対策しておくことが大切です。

    この倍数の根拠となるのが、女性は7年の周期で体に変化が起こっていることです。7歳で永久歯に生え変わる、14歳で初潮を迎える、21歳で体が出来上がる、28歳で体の機能が最も充実する、35歳で容姿の衰えが見え始める、42歳で心身の不調が起こりやすくなる、49歳で閉経して子を授かることが難しくなる、56歳で体力低下が起こりやすくなるといったように7年周期になっています。

    また男性では、8歳で永久歯に生え変わる、16歳で精通を迎える、24歳で体が出来上がる、32歳で体が最も充実する、40歳で衰えが見え始める、48歳で体の変わり目で疲れが抜けにくくなる、56歳で生殖能力が衰えるといったように老化していきます。

    今までの研究では老化は一定のペースで、継続的に進行すると言われていました。しかし米スタンフォード大学の研究チームでは、18から95歳までの4,263名の血液を用いて血中のタンパク質を分析した結果、生理的老化は34歳の青年期、60歳の壮年期、78歳の老年期という3つのポイントで急激に進むことが分かっています。ちなみに生理的老化とは加齢による老化を示します。

    老化はタンパク質の栄養状態が良いと老化速度が遅く、疾病リスクも低いと考えられています。なぜならタンパク質の栄養状態が悪いと骨格や筋肉量が減少し、老化を早めてしまう可能性があるからです。一方で紫外線に対する間違った対策やスキンケア などで見た目も急激に老けてしまいます。そうならないためにも今からしっかり対策していくことが大切です。

    ヘイフリック限界とテメロア説

    老化の原因の1つである細胞寿命説は、細胞分裂に終わりがあり、それが老化や寿命と関連しているというものです。例えば肌の細胞は何度も分裂して生まれ変わりますが、この細胞分裂は永遠に続くものではなく、その回数には限界があります(ヘイフリックの限界)。また人の細胞は約50回で限界を迎えると言われています。

    この細胞分裂に一定回数以上できない理由の1つが、テメロアの短縮という現象です。テメロア(細胞の末端)は、染色体の構造を安定させる役割がありますが、細胞分裂してDNAが複製されるたびにテメロアの端っこのほうから徐々に短くなることが分かっています。つまり複製されるたびに染色体の構造が不安定になり細胞分裂ができなくなります。実際に赤ちゃんのテメロアは長く、高齢者のテメロアは短くなっているため、命の回数券とも言われます。

    以上から、テメロアの短縮を予防することができればヘイフリックの限界も延長できるのではないかと考えられるのです。

    酸化防止でアンチエイジング

    テメロアの短縮を予防するためには酸化防止を心がけることです。テロメアは酸化によって短縮は早まると言われており、このことから酸化防止が大切と言われる所以です。また老化の原因として最も影響が大きい活性酸素による細胞の酸化があります。

    私たちは呼吸によって酸素を取り込み、肺から毛細血管を通じて細胞の中のミトコンドリアに運ばれてエネルギー代謝が行われてATPが生成されます。このエネルギー代謝で利用される酸素の内、約3%が活性酸素になることが分かっています。この活性酸素による酸化ダメージで細胞が傷つき老化が促進されることになります。

    具体的には、酸化は細胞のサビであり、細胞膜が酸化することで、サビである過酸化脂質が生じて硬くなり細胞の機能が落ちてしまいます。このサビによってシワやシミ、生活習慣病のリスクが高まり老化に影響を与えてしまいます。また活性酸素は加齢とともに体内で発生する量が増えることも分かっています。20代から抗酸化力は減少し始め、40代からは老化スピードが加速すると考えられています。これら活性酸素を増大させるのが、ストレス、タバコ、アルコール、睡眠不足などになります。

    活性酸素を減らす抗酸化物質

    酸化を防止するビタミンとしてビタミンC,E,Aがありますが、ビタミンCの摂り過ぎは、ビタミンCの突出という酸化が起きることが知られています。そのため酸化を防ぐためにビタミンEが必要になり、単純にビタミンCだけ摂るのではなく、バランス良く摂取すること大切です。また玉ねぎなどに含まれるケルセチンというビタミンP(ビタミン様物質)もビタミンCの働きを助けてくれる効果があります。さらにシャケ、エビ、カニ、卵に含まれているアスタキサンチンは、活性酸素の中でも毒性の強い「一重項酸素」を除去する力や、過酸化脂質を抑制する力に優れていると言われています。

    一方で、体内にもともと存在している抗酸化物質が働きやすい環境をつくることも大切です。体内で合成される強力な抗酸化酵素として、カタラーゼ、SOD(スーパーオキサイドディスムターゼ)、グルタチオンペルオキシダーゼの3つがあります。それぞれの原料となる物質が、鉄、亜鉛やマンガン、セレンやNACがあり、これらをしっかりと摂取することが大事です。

    老化する食べ物

    健康的に過ごすためにはちょっとした努力と工夫が必要です。私たちが健康的に過ごせるがどうか、体内の老化スピードだけでなく、見た目の老化は食べ物によって大きく左右されます。つまり健康や老化のスピードは食事で変えられ、毎日の食べ物の選択にかかっています。

    特に避けなければならないのが油で揚げた食べ物です。その理由は、高温調理することにあります。高温で調理することで、食品に含まれるタンパク質や脂質が糖質と結びつく「糖化」反応が起こり、その時にAGEという老化を促進させる物質を作り出します。シミやシワも、このAGEが肌のコラーゲンに結びつくことによって生まれます。そして肌だけでなく、全身の血管にも大きなダメージを与えます。さらに老化を促進するだけでなく、あらゆる病気を引き起こすことが分かっています。

    また、揚げ物に使われている油にも大きな問題があります。一般的に利用されるサラダ油にはオメガ6脂肪酸が含まれ、人体に炎症を引き起こすことが知られています。本来、オメガ6脂肪酸は健康維持に欠かせない栄養素ですが、摂り過ぎが問題であり、あらゆる食材に含まれているため何も考えずに食事していると簡単に摂り過ぎになってしまいます。そしてショートニングを加えたカラッと揚がった揚げ物には、トランス脂肪酸が多く含まれているため外食には注意しましょう。

    米国の約107,000人の50から79歳の年配女性の約20年分のデータを分析した研究によると、1日少なくとも1サービング揚げ物を食べた女性は、何も食べなかった女性に比べて、早期に脂肪する可能性が約8%高くなることが示されています。そして揚げ物を食べる参加者は、すべての原因による死亡リスクが高いことが分かっています。

    特に油で揚げたじゃがいも料理を毎週2から3回食べている人は、死亡リスクが1.95倍に上昇するということも研究によって分かっています。その理由として知られているのが、じゃがいもを高温で加熱すると一部の成分が、発がん性物質のアクリルアミドに変わるからです。

    特にじゃがいもは、絶対に冷蔵庫に入れてはいけません。実はじゃがいもは、長時間冷やした後に熱を加えることでアクリルアミドという有害物質が大量に発生することが知られています。アクリルアミドとは工業用の接着剤などに使われている非常に体に悪い発がん物質です。アクリルアミドは食品に含まれる還元糖という糖が120℃以上の高温で加熱されることによって生じます。冷蔵したじゃがいもにはこのようなアクリルアミド発生の原因となる還元糖が豊富に含まれているため、ポテトチップスやフライドポテトなどの高温で調理するじゃがいも料理は、健康上のリスクが高いと言えます。

    糖化の焦げを減らす

    糖化は、摂り入れた余分な糖質と体内のタンパク質が結びついて変質して細胞を劣化させるAGEsを作り出す反応のことです。肌のシワ・たるみ・くすみ(STK)などのお肌の老化にも大きな影響を与えるのが糖化という現象です。肌の老化は、コラーゲンの劣化によるシワ、糖化と酸化によるシミです。つまり糖化でAGEsが蓄積し、酸化で過酸化脂質(リポフスチン)というシミの元が蓄積してしまいます。また肌の表面だけでなく血管や内臓にも悪影響を与え、様々な不調の原因になります。

    この糖化を阻止する方法は、砂糖、小麦、白米などの精製された糖質を控えることです。特にジュースに含まれる果糖ブドウ糖液糖(異性化糖)はブドウ糖の10倍以上の糖化リスクがあると言われており、さらに肝臓にダメージを及ぼすのではないかとも考えらており、絶対に避けるべきものです。現代人の食生活は、低タンパク+高糖質食と言われており、これらを改善することが何よりも大切です。

    ミネラルの大切さ

    ミネラルは私たちの体内に存在する鉱物のことで、5大栄養素の一つに数えられます。ミネラルは人の臓器や組織の反応を円滑に働かせるために必要な栄養素です。このミネラルは体の中で作ることができないため、食物から摂取する必要があります。ミネラルをしっかり摂ることができているかが、私たちの健康を大きく左右することになります。

    またビタミンと同様に他の栄養素がスムーズに働けるようにサポートしてくれたり、体内の器官や組織が正常に機能するように調節したりといった役割があります。例えば海草やバナナなどに含まれるカリウムには、体内の水分量を整える役割があります。藻類に含まれるクロムにはインスリンの分泌を助け、血糖値を下げる働きがあります。

    体を構成する要素は、酸素、炭素、水素、窒素で約96%を占めています。残りの4%が元素を総称してミネラル(無機質)になります。このミネラルの中でも健康を維持するのに欠かせない16種類の必須ミネラルがあります。必須ミネラルは、主要ミネラル(ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リン、硫黄、塩素)と微量ミネラル(鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、コバルト)の2つに分けられます。

    このうち必要量が多い7種類を多量ミネラル、少ない9種類を微量ミネラルとして分類しています。さらにこの16種類の内の13種類については厚生労働省より摂取量の基準が示されています。

    健康のためには、これらのミネラルをしっかりと摂る必要がありますが、農業のやり方の変化、環境汚染などによって土壌のミネラルが減少しており、ミネラル不足の野菜が多くなっています。例えばほうれん草に含まれている100mg中の鉄分は、1950年には13mgあったものが、2015年には2mgへと減少しています。そのほかの人参や大根などの野菜でも80%も減少していることが分かっています。実際に現代人の栄養解析をすると鉄、亜鉛、マグネシウムなどのミネラルが不足している人が多くいることが分かっています。さらに農作物のミネラル不足だけでなく、加工食品の蔓延も問題視されています。

    ミネラル不足を解消する塩

    これらを解消するため非常に身近で、かつ豊富にミネラルを含んでいるものが塩です。塩は生活習慣病の元凶のように扱われていますが、減塩も行きすぎると、ナトリウムの欠乏につながり、低血圧や無気力につながります。そもそも血圧が高くなるのを防ぐために減塩するのは、ナトリウムの過剰を防ぐためです。つまり大切なのは減塩ではなく、塩の選び方です。

    食塩のほとんどはナトリウムであり、一方で海水からつくられる自然塩には「にがり」が含まれており、マグネシウムやカリウムなどが豊富です。そのほかにも、亜鉛、鉄、銅、マンガン、ホウ素、クロムなどが含まれている自然塩もあります。これらの微量なミネラルが豊富に含まれた自然塩は、体内のミネラルバランスを整え、ホルモンバランスの乱れを修復してくれます。

    さらに生物がエネルギー代謝のために最初に使われたミネラルが鉄です。その後の進化の過程の中で、マグネシウムやビタミンB,Cを利用してエネルギー代謝ができるようになっていきました。つまり鉄はすべての生物のエネルギー代謝において根幹になるため、鉄が不足すると、他のミネラルを使った代謝も滞ってしまいます。

    またマグネシウムは、体のすべての細胞や骨に存在して、代謝をはじめとするあらゆる生命活動に関与している重要なミネラルです。神経系や筋肉の収縮、健康な骨や歯の形成などの役割を担い、体内の酵素反応に欠かせません。そして人の活動エネルギーであるATPをミトコンドリアで作る上での最重要ミネラルです。鉄はもちろん、マグネシウムが不足している状態ではエネルギーが生み出せません。

    カルシウムのイライラを和らげる作用

    カルシウムはマグネシウムやリンとともに骨と歯を作り、丈夫に育てるミネラルです。体内ではカルシウムの99%が骨と歯に貯蔵され、残り1%は血液や細胞の中に存在します。血液や細胞の中にカルシウムが含まれているのは、心臓をはじめ全身の筋肉を正常に収縮させるというとても大切な働きをしています。

    実は、血液中のカルシウム不足が生じた場合、骨や歯に貯蔵されているカルシウムが溶け出して不足分を補うという優れた仕組みがあります。また小魚や海藻類、大豆製品などに豊富なカルシウムですが、実はそのままでは体への吸収があまりよくありません。そのためカルシウムの吸収を助ける働きをするビタミンDと一緒に摂取することがお勧めです。ビタミンDは、キノコ類や魚などの食事から補いことができますが、15分間の日光浴により体内で合成することも可能です。

    カルシウムは緊張やイライラを和らげる作用もあり、多機能で優れたミネラルです。しかし過剰に摂取してしまうと、高カルシウム血症よる便秘、吐き気、尿結石、急性腎不全などを引き起こす原因となりかねません。食事から摂りすぎてしまった場合は心配しなくても大丈夫ですが、健康のためにとカルシウムのサプリとビタミンDのサプリを一緒に取る習慣があるような場合は、過剰摂取になっていることもあるため要注意です。

    カルシウム不足には牛乳ではなく運動

    健康のために牛乳を飲む理由に、毎日カルシウムを補うことを考えている人が多いでしょう。しかし最近の研究では骨密度を増やすために重要なのは、カルシウムをたくさん摂ることではなく、運動であることが分かっています。

    特に日本人は戦前から野菜、海藻、小魚からバランスよくカルシウムを摂っていたため、丈夫な骨になるようにと不自然な牛乳という飲み物に頼る必要はありませんでした。しかし戦後粉ミルク育児や学校給食により牛乳を強制されるようになり、牛乳を飲み続けた人に骨粗鬆症が激増しました。

    そもそも日本人は、ラクターゼという酵素を持っていないことにより牛乳を飲んでも過剰なカルシウムは吸収されず、体内で様々な悪さを働いたり、排泄されるだけです。また残念ながら牛乳を飲めば飲むほど体内からカルシウムが脱落、骨密度が低下し、骨がもろくなってしまうと言うデータがあります。

    例えば、世界で最も牛乳の消費量が多かったノルウェーの骨粗鬆症患者は日本人の5倍にも上ります。他にもアメリカ、スウェーデン、フィンランド、デンマークなど日本の何倍も牛乳を飲む国では、それに比例して骨粗鬆症が多いのが事実です。

    牛乳が骨粗鬆症を引き起こしてしまうのは、主に二つの理由があります。一つは、牛乳は体内で酸性になり、それを中和するために骨からカルシウムが溶け出すからです。

    一方で、血液は弱アルカリ性に保たれており、動物性タンパク質を多く含む牛乳や乳製品を過剰に摂取すると体内で大量の酸性物質が生じ、血液が酸性寄りに傾いてしまいます。すると体は生命の危機を感じ、それを中和するためにやむを得ず骨や歯にストックされたアルカリ性であるカルシウムイオンを溶かして血液中に送り込みます。つまり体を丈夫にしようと牛乳を飲めば飲むほど血液が酸性 に傾き、カルシウムが骨から持って行かれてしまうのです。

    またカルシウムを骨から引き出す時、カルシウムは尿中にも排出されます。大量のカルシウムが血中に侵入し、血液中のカルシウム濃度が急激に上がってしまうと様々な害が出てくるため、体は速やかに余分なカルシウムを腎臓から尿として排出します。

    こうしてカルシウムを摂るために飲まれているはずの牛乳が、返って体内のカルシウムを減らしてしまうのです。もちろんカルシウムは、全く摂らないのもいけないため、摂りたい場合は牛乳ではなくて、体に悪さをせずにゆっくりと吸収できる大豆製品、野菜、海藻類、魚介類といった自然な食物を食べるようにするのが良いでしょう。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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