
老化を防ぐために、誰にでもでき、そして私たちの身体的にも自然な方法が成長ホルモンをしっかり分泌させることです。成長ホルモンは子供の成長に重要な役割を果たすだけでなく、成人にとっても重要な役割を果たしています。
成長ホルモンには、骨や筋肉の成長を促進し、代謝や脂肪分解を促進するという作用があり、生涯を通して組織や臓器を維持するのに役立ちます。さらには老化し傷ついた細胞を修復・再生してくれたり疲労を取ってくれるという効果もある大切なホルモンです。美容面では、皮膚の新陳代謝を活性化してくれるため肌ツヤが良くなります。
成長ホルモンは、脳の下垂体でつくられていますが、年を重ねるにつれて下垂体から分泌される成長ホルモンの量はだんだん少なくなっていきます。成長ホルモンが減少すると、疲労回復が低下、筋肉・骨量低下、肌の衰えなどが目立つようになります。つまり生活の質が低下し、病気のリスク上昇、脂肪増加、肌ツヤが低下、見た目が老けることにつながります。
成長ホルモンが減少すると肌ツヤが低下するのは、皮膚の汗腺に成長ホルモンの受け皿があるためです。つまり成長ホルモンが汗腺まで到達しないことで発汗量が減少して肌に潤いがなくなり、乾燥して薄くなります。
実はどのような食事を摂るかなどのライフスタイルの選択によって成長ホルモンの量は大きく変わります。つまり努力次第で成長ホルモン分泌量を増やして、その効果を受け取る事ができるのです。
成長ホルモンを分泌させる行動
アンチエジングという問題に限らず成長ホルモンをしっかり分泌させるというのは健康全般にとって極めて重要なことです。アンチエイジンングや美容に良い事は健康に良いことである場合が多く、健康であれば老化を遅らせることができ若々しくいられ、逆に健康を損なうと病気になり老化が進むとも言えます。
その成長ホルモンを分泌させる行動が、糖分を減らす、高強度の運動または有酸素運動をする、睡眠を最適化することです。
糖分を減らす
特に精製された砂糖を減らすというのは成長ホルモンを分泌させるために必要なことです。糖分を摂ると血糖値が上がり、それを下げるためにすい臓からインスリンが分泌します。そのインスリンの量が増えると成長ホルモンの量が減ることが研究によって示唆されています。つまり糖分を控えることが成長ホルモンの量を保つことができるのです。
研究によると、健康体の人は糖尿病の人に比べて3から4倍の高い成長ホルモンを持っていることが分かっています。過剰な糖分摂取はインスリンレベルの直接的な影響だけでなく、体重増加と肥満の重要な要因にもなります。またお腹周りの脂肪が成長ホルモンの分泌量に影響しているという研究も多くあります。このように大量の砂糖や精製炭水化物の摂取を制限することが成長ホルモンを分泌させることにつながります。
高強度の運動または有酸素運動をする
運動は成長ホルモンのレベルを大幅に上げる最も効果的な方法の1つとされています。一般的運動には筋トレのような短期間に激しい無酸素運動とランニングのような比較的長い時間行う有酸素運動があります。どちらの運動でも成長ホルモンは分泌しますが、高強度の比較的短い運動が最も成長ホルモンを分泌させることが分かっています。
高強度の比較的短い運動の代表がHIIT(ヒット)です。ヒットは高強度の負荷が高い運動と休息を短いスパンで交互に行う独自のトレーニングです。ヒットは最もコスパの良い運動と言われ、有酸素運動と無酸素運動の両方の運動効果が得られるトレーニングです。
基本は、20秒の運動、10秒の休憩、これらを8セット(合計4分間)繰り返すことです。運動には、高速スクワット、高速バービー、短距離ダッシュ、トレッド見る、エアロバイクなどの様々な運動がありますが、基本的にはどんな運動でも構いません。またランニングのような有酸素運動でも30分以上で成長ホルモンが出始めると言われています。
睡眠を最適化する
昔は午後10時から午前2時の間は睡眠のゴールデンタイムとして、この時間に成長ホルモンが最も分泌されるためしっかり寝ましょうと言われていました。しかし成長ホルモンは特定の時間帯で分泌されるものではないということが分かってきました。重要なのは時間帯ではなく、睡眠直後に訪れる深い眠りであるノンレム睡眠が重要で、このノンレム睡眠と成長ホルモンに密接な関係があることが分かっています。睡眠の質を上げて眠り始めのノンレム睡眠を深くすることができれば成長ホルモンが分泌されます。
深く眠るためには、寝る直前にスマホなどのブルーライトを浴びない、寝る90分前には入浴を済ませる、寝室を真っ暗にして眠るなど睡眠の質を上げて睡眠時間をしっかり確保することが大切です。
美肌と腸内環境
腸は摂取した食べ物や飲み物を処理し、健康を維持するために必要なビタミンやミネラルといった栄養素を一つ一つの細胞に供給す役割を担っています。そして一つ一つの細胞にしっかりと栄養が行き届き一つ一つの細胞が元気になれば、当然のことながら健康になれるのはもちろんのこと、肌や髪が自然に美しくなります。
肌や髪は、全部細胞からできており、当然美しい肌や髪を手に入れるには、腸内環境を整えることが必要です。
近年、腸の健康と肌の健康には、特に強い相関関係があることを示唆する研究が積み上がっています。例えば活性酸素は、細胞を老化させたり細胞にダメージを与える物質のことで、体内に活性酸素が過剰に発生してしまうと様々な病気が引き起こされたり、老化が加速することが分かっています。
この活性酸素は、主に腸内で発生しており、実に90%が腸内で起きていると言われています。つまり腸の状態が悪いと活性酸素が過剰に発生してしまい、肌や髪などの全身の老化につながって恐れがあります。
一方で、腸は免疫力に重要な役割を果たしているということが明らかになっています。実は腸が人体最大の免疫器官であり、体全体の免疫細胞の約60%から70%が腸に集中しています。そのため免疫力を高めるためには、腸を整えてあげることが大切なのです。
腸で分泌する幸せホルモン
腸の重要な働きの1つにホルモンを分泌があります。ホルモンは特定の臓器の働きを コントロールしており、体のある部分から別の部分に信号を送るメッセンジャーの役割があります。特に腸では消化や栄養吸収のコントロール、糖分バランスの調節、食欲の制御など様々な機能において、ホルモンが重要な役割を果たしています。
腸では腸クロム親和細胞からホルモンが分泌されており、この細胞は腸全体に存在し、セクレチン、ガストリンコレシストキニンなど様々なホルモンを分泌することができます。これらの腸で分泌されるホルモンは、消化を助けたり、インスリンや糖のバランスを保つなど様々な有益な働きをしています。
また、腸が分泌するホルモンの中で最も重要なのがセロトニンというホルモンです。セロトニンは別名「幸福ホルモン」とも言われており、名前の通りセロトニンが分泌されている時に人は幸福を感じると言われています。このセロトニンが不足してしまうと気分が不安定になることになります。
このセロトニンをしっかり分泌させてあげる方法として、一般的によく言われているのが日光を浴びる、運動する、よく噛んで食べ物を食べるといった方法があります。実はこのセロトニンのほとんどは腸で作られているとされており、受容体の90%以上は腸の中に存在しているため、多くの研究者は腸内環境の悪化がセロトニン不足の原因なのではないかと考えられています。
アンチエイジングの食事
食事は唯一、自分の意思でコントロールできるものであり、食事があなたの体の土台・根幹をなしています。心と体は食べ物を変えることによって、その調子をいくらでも変え、整えることができます。
納豆に含まれるイソフラボン
イソフラボンは女性の更年期対策として用いられ、女性ホルモンであるエストロゲンと似た構造があります。イソフラボンは、エストロゲンの分泌が多い人の場合は、その作用を減らし、少ない人の場合はエストロゲンと似た作用を担ってくるため、丁度良いバランスに整えてくれます。つまりエストロゲンが過剰な月経前症候群の人も、不足する更年期障害の人にも積極的に摂るべき食材になります。
また、体を酸化させ老化や病気を引き起こす活性酸素がありますが、例えばエストロゲンはこの活性酸素があると酸化によってエストロゲンの作用が弱まり老化を早めてしまうことが分かっています。つまりアンチエイジングで大切なことは、この活性酸素を減らして酸化を防ぐための栄養素をしっかりと摂取することです。この活性酸素の中で最も毒性が強いのがヒドロキシアラシカルで、これを消去してくれるのが体にあるグルタチオンという酵素です。このグルタチオンにしっかり働いてもらうためにはシステインというアミノ酸が必要になります。システインが多く含まれている玉ねぎ、にんにく、くるみを食べることによって最も毒性の強い活性酸素を打ち消すことができます。
アンチエイジングに欠かせないDHEA
ホルモンは現在100種類程度あると言われており、その中でもアンチエイジングに欠かせないホルモンがDHEAです。DHEAは別名「若返りホルモン」と言われ、思春期に急激に増加し、20歳頃をピークに徐々に減少し70歳ではピーク時の20%、80から90歳で5%程度になります。このDHEAの数値が高いほど見た目が若く元気である傾向があります。
このDHEAの働きは、ストレスを緩和しやる気を向上させる、アルツハイマー病を予防改善する、免疫力を高めて炎症を抑え腫瘍を予防する、筋力を維持し代謝を高め体脂肪を減らす、動脈硬化や脂質異常症を予防するなど正にアンチエイジングそのものの効果があります。
DHEAが豊富に含まれる食材は、自然薯や長芋などのヤムイモを摩り下ろした「とろろ」です。ただし市販されている「とろろ」には味付けのために添加物が多く入ったものがあるので避けましょう。
このDHEAはストレスによって分泌が減少することが分かっています。ストレスを感じて生存を脅かされると若返りホルモンをつくることを犠牲にしてでも、ストレスに抵抗しようとします。つまり強いストレスを受けているとどんどん老けていくことになります。そのためストレスを回避して副腎を休ませてあげること、副腎に必要な栄養素であるビタミンCと亜鉛、そしてパントテン酸を摂ることです。パントテン酸はビタミンB群の一種でストレスを和らげる働きがあり、鶏ささみ、鶏レバーや豚レバーなどに多く含まれています。
ホルモンバランスを調整するツボ
ホルモンバランス調整だけでなく、手足の血行促進、肩の痛みに使われることが多いツボです。
陽池(ようち):手首の甲側にある中央のくぼみ、手首の真ん中より少し小指側

【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。