
脂質の一種である脂肪酸には3つの分類があります。一つは脂肪酸の長さによる分類です。この分類では飽和脂肪酸や不飽和脂肪酸を含む長鎖脂肪酸、MCTオイルの主成分である中鎖脂肪、酸菌が作り出す短鎖脂肪酸の3つに分けられます。もう一つの分類は、炭素と水素の二重結合の有無による分類です。二重結合がないものを飽和脂肪酸、二重結合が一つのものを一価不飽和脂肪酸、二重結合が複数あるものを多価不飽和脂肪酸と言います。
そして最後の分類が不飽和脂肪酸の二重結合の位置による分類です。二重結合の位置によってn-3系やn-6系のようにオメガ3やオメガ6といった脂肪酸の名前が付けられます。
この中で体に良い脂質は短鎖脂肪酸と中鎖脂肪酸、そして長鎖脂肪酸の中で不飽和脂肪酸の3つです。このうち短鎖脂肪酸だけが食事から取ることができません。逆に摂取してはいけない体に悪い脂肪酸は長鎖脂肪酸の中の飽和脂肪酸だけです。しかし食事から摂取するほとんどの脂肪酸は長鎖脂肪酸のうち体に悪い飽和脂肪酸です。
飽和脂肪酸はなぜ体に悪いのか
食事からとった脂肪酸は、リンパ管や血中に入り、主に肝臓において代謝されます。この代謝の過程で飽和脂肪酸は悪玉コレステロールという物質を増やしてしまう働きがあります。コレステロールは細胞の膜を形成するために不可欠な物質であり、細胞に栄養や酸素を受け渡す毛細血管の細胞である血管内脂細胞にとって細胞膜は非常に大事なものです。そのような毛細血管にコレステロールを運んでくれるものがLDLです。コレステロールは血液には溶けることができず、コレステロールはLDLやHDL といった水に溶けやすい物質と一緒に血液中を流れていきます。
これらのうち血中から肝臓へ戻るコレステロールをHDLコレステロール、肝臓から血液中に出ていくコレステロールをLDLコレステロールと言います。しかしLDLコレステロールは、傷ついた血管壁を修復する過程で繊維化させ硬化させてしまいます。このように血管が硬化することを動脈硬化と言います。
最近では、悪玉コレステロールよりも小さい超悪玉コレステロールが問題になっています。超悪玉コレステロールは悪玉コレステロールよりさらに小さく血管壁の内側に潜り込んでアテロームという粥状のプラークを作ります。このプラークが血管を細くし、そこに詰まった血液の塊がアテローム血栓となって様々な病気を引き起こします。つまり代謝されることで悪玉コレステロールや超悪玉コレステロールを上げてしまう飽和脂肪酸は、間接的に動脈硬化やアテローム血栓のリスクファクターとなります。
このような飽和脂肪酸を多く含む食材の1つが牛タンで、100gあたりの飽和脂肪酸量はおよそ7.5gで、これはホイップクリームとだいたい同じぐらいの飽和脂肪酸量が含まれています。そしてあん肝は海のフォアグラとも呼ばれており、カロリーは100gで400kcalもあり、フォアグラと同じようにあん肝の持つ脂肪酸のほとんどが飽和脂肪酸です。またカマンベールチーズに含まれている飽和脂肪酸は100gあたり15gです。これは牛タンのおよそ2倍です。
悪玉コレステロールと酸化LDL
悪玉コレステロールが動脈硬化を促進するというのが定説でしたが、最近では毛細血管に関する細胞レベルのミクロな研究によって実は私たちの動脈硬化の 原因は悪玉コレステロールではなく、酸化LDLという別の物質であることが分かってきました。
従来、心筋梗塞や脳血管疾患などの原因となる動脈硬化は、血中の悪玉コレステロールが増えることだと考えられてきました。私たちの細胞に栄養や酸素を届けている毛細血管は髪の毛の1/10ほどの細さしかなく、その中を塩分や老廃物など様々な物質が流れています。そのため毛細血管の内壁には微小な傷がついています。そのような毛細血管内の傷を修復するために体ではコレステロールが用いられます。コレステロールは血管内壁に存在する血管内皮細胞の細胞膜の原料となるため毛細血管にとってコレステロールは一種のバンドエイドの役割を担います。
そしてそのようなコレステロールを肝臓から血管へと運んでくれるのがLDLです。私たちの血液は水からできており、当然油は溶けることができません。そのため血液中では LDLやHDLという運び屋と一緒に存在しています。このうち肝臓から血液に運ばれるものをLDLコレステロール、その逆をHDLコレステロールと呼びます。
従来は、LDLコレステロールが血管にコレステロールを沢山運ぶことで血液がドロドロになり動脈硬化が促進されると言われてきました。このためLDLコレステロールは悪玉コレステロールと呼ばれていました。しかし最新の研究により動脈硬化の原因となるのはLDLコレステロールではなく酸化LDLという別の物質であることが分かっています。
酸化LDLとはその名の通りLDLコレステロールの運び屋であるLDLが酸化してしたものです。酸化というのは一言で言うと物質が錆びてしまうこと、つまり何らかの原因によってLDLが錆びつくことで毛細血管において動脈硬化が促進されてしまうのです。
体のミクロな機能を観察する最新の研究により、酸化LDLが発生する要因には内因性と外因性の要因の2つがあることが分かってきました
LDLコレステロールには様々な大きさのものがあり、中でも非常に小さいものをsd-LDLと呼びます。sd-LDLは非常に小さく血管の壁を通り抜けて血管壁の内側に入り込みます。sd-LDLは血管壁の中に本来存在してはいけないものであるため、それが血管壁内に入り込むことで大量の活性酸素が発生します。この活性酸素は非常に強い酸化力を持っており、血管壁内に忍び込んだsd-LDLを一瞬で錆びつかせてしまいます。こうしてできるのが内因性の酸化LDLです。
一方で外因性の酸化LDLは、私たち自身が酸化コレステロールを食事から摂取することで増加すると考えられています。この酸化コレステロールは、酸化LDLとは別の物質です。そもそも食品には沢山のコレステロールが含まれていますが、例えば卵にはコレステロールが沢山含まれているから体に悪いと言われたことがありましたが、実は食物中のコレステロールは血中脂質にあまり関与しないことが明らかになっています。
そのように私たちの体にとって本来、害のないコレステロールはあくまで酸化されていない場合です。食物の中で酸化されてしまった酸化コレステロールは外因性の要因によって酸化LDLを上昇させるため、通常の食品中のコレステロールと違い危険な物質です。酸化コレステロールはコレステロールが食品の加工中に加熱処理を受けて酸化したものであり、食品加工の段階で酸化するため、インスタントラーメンやレトルト食品などの加工食品に大量に含まれています。このような加工食品に含まれる酸化コレステロールを摂取すると、体内に入った酸化コレステロールは正常なLDLまで酸化させてしまいます。
このようにして内因性と外因性の2つのメカニズムによって血管壁内に侵入した酸化LDLを体の免疫システム、主にマクロファージという免疫細胞によって除去されます。このマクロファージは抗体によって外敵を攻撃するB細胞や細胞を直接攻撃することで外敵を排除するT細胞と異なり、外敵を丸ごと飲み込んでしまう貪食作用という免疫機構を持っているのが特徴です。
しかし、酸化LDLは敢えてマクロファージに食べられることで血管にさらなる害を及ぼします。なぜなら酸化LDLを食べたマクロファージは泡沫細胞という別の物質に変化するからです。泡沫細胞とは大量の酸化LDLを取り込みすぎた マクロファージが泡状に変化してしまった細胞のことで、泡沫細胞は過剰な活性酸素を産生するのに加え、アテロームと呼ばれるドロドロの塊を形成します。そしてこのアテロームが血管の内壁に沈着することで動脈硬化が進むというのが最新の研究で分かっています。
スイカの種とミカンの筋
スイカの種は全部噛み砕いて食べましょう。実はスイカの種にはα-リノレン酸という不飽和脂肪酸の一種が豊富に含まれています。α-リノレン酸はn-3系の不飽和脂肪酸で青魚に含まれているDHAと同じオメガ3の一種です。このオメガ3には善玉コレステロールを増やしてくれる働きがあります。善玉コレステロールは血液中の増えすぎたコレステロールを肝臓に戻してくれる働きがあるため間接的に悪玉コレステロールや超悪玉コレステロールによるタメージを食い止めてくれます。
ミカンの白い筋には、細胞の中から若返る物質の「ヘスペリジン」が含まれています。スイカの種を吐き出すのがNGであるようにこのようにミカンの筋を取ってしまうのも大きな間違いです。むしろミカンが持つ栄養素の主役はこのヘスペリジンにあります。ヘスペリジンは、血中の悪玉コレステロールや超悪玉コレステロールを下げてくれる以外にも、細胞内の活性酸素を除去して細胞を若返らせる抗酸化作用や血圧の上昇を抑える効果、また抗アレルギー作用まであると言われています。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。