アメリカ、ロシア、ドイツ、フランスなど断食は世界的に一つの治療法として確立されています。世界各国で断食療法を科学的に解明するための様々な研究が行われています。
現代人の病気の大部分が、食べ過ぎが原因で病気を発症しています。肥満、高血圧、動脈硬化、糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、がんなど様々な生活習慣病は、過食や変色が大きな原因であり、食事を控えることで様々な病気を予防することができます。
週1断食は、週にまる1日食事を摂らない日をつくる「24時間断食」です。長期間に渡る断食や間違った断食で脱水症状を起こして体調が悪くなることがありますが、週1断食は初心者にもある程度安全に断食できることがメリットです。
断食は最強の健康法とも言われ、ダイエット効果だけでなく、様々な病気の原因となる過食や偏食を防ぐことで体を健康に変えていくことができます。世界で広く断食が宗教の垣根を越えて実践されていた歴史があります。科学的に断食の効果が研究される以前から、人は断食の健康効果を知り行なっていました。医学の祖であるヒポクラテスは、「満腹が原因の病気は、空腹によって治る」という言葉通り、過食と偏食によって様々な不調や病気が引き起こされている現代では、断食によって体調が良くなる可能性がとても高くなっています。
断食の健康効果
現代の不調や病気の背景に、過食と偏食があります。糖尿病、高血圧、心疾患、肝硬変、腎不全、がんなどの生活習慣病は不健康な食事によって発症リスクが劇的に上がります。特に過食になった原因が1日3食の習慣が定着したことです。農業が中心だった頃は1日2食の生活でしたが、トーマスエジソンがオーブントースターを発明して使ってもらうために朝食(朝食文化)を推奨したことが1日3食の始まりと言われています。実は朝食の健康効果は科学的には解明されておらず、朝食を抜くことで不健康になるという事実もありません。人の体は満腹であることを想定しておらず、間食なども含めて1日3食は体にとっては負担となってしまいます。
過食によって引き起こされるのは腸の免疫異常であり、アレルギーの原因になっているとも言われています。一方偏食においても、栄養不足(ミネラル)によって神経伝達物質が少なくなり、脳機能の低下、うつ症状につながってしまいます。また糖分の過剰摂取によって血糖値を下げるためにインスリンが体内で過剰分泌されてしまうと、自律神経が乱れて心や体にも様々な症状を引き起こしてしまいます。
内臓を休ませる
断食による大きな効果の1つが内臓を休ませることです。食べ物は胃や十二指腸で消化分解し、小腸や大腸で栄養素を吸収、毒素を排出します。アルコールや脂肪、糖や栄養素の分解に肝臓や膵臓が関わり、体中の臓器が働くことになります。
現代人は食べ過ぎにより常に臓器が働いており、オーバーワークで疲れているため、本来の機能を取り戻すためには休ませる必要があります。食べ過ぎだけでなく、処理できなかった食べ物の残りが排出されず腸の中に溜まって便秘を引き起こします。この場合は断食によって腸を活発にさせるホルモンを分泌させることで、腸内の運動を促進することになるため腸内の便が排出されることになります。
また、腸の機能が弱まると栄養吸収ができなくなり、体調不良や生活習慣病を引き起こすことになります。このように断食の効果は、腸の働きを良くすることをベースにしており、それだけ腸は全身の健康状態に大きく影響を与えています。さらに断食で血糖値が上がらなければ膵臓が休息し、毒素を排出することもの必要なくなるので肝臓も休むことができます。
一方で、ファーストフードや加工食品には有害な添加物が多く含まれています。代表的な食品添加物である防腐剤や殺菌剤はあらゆる加工食品に含まれています。これらの有害物質が体の中で蓄積すると腸内の善玉菌や悪玉菌を死滅させてしまいます。医学的には悪玉菌から発生すると言われており、そうなると腸の環境が悪化して小腸での栄養素の吸収や消化吸収、排泄機能が弱まります。
免疫力がアップ
病気に対する抵抗力に欠かせないのが免疫機能です。免疫力を司るのは血液細胞のリンパ球で、その約7割は腸管に存在しています。過食や偏食で腸内環境が乱れると腸壁のバリアが脆くなり、異物が血液にたくさん流れ込み常にリンパ球が働くことになります。筋肉や内臓と同じく、働き過ぎると疲れていまい本来の免疫力も保てなくなります。また健康的な腸の粘膜は、胃や十二指腸で細かく分解された物質しか通しません。しかし腸内環境が乱れると、腸粘膜の目が粗くなり未消化の物質を通すようになります。これをリーキーガット症候群と言い、腸のバリア機能が壊れている状態のため異物や有害物質が血中に入りアレルギーや自己免疫疾患を引き起こします。
何れにしても、週1断食によって腸に溜まったものを排出して有害物質の発生を最低限に抑えることが大切です。腸内環境が回復すれば免疫システムも回復して、病気への抵抗力がアップします。
血糖値を抑える
白米、パン、麺類などの炭水化物の摂取によって、短時間に血糖値が急激に上昇し、それを下げるために大量に膵臓からインスリンが分泌され、今度は急激に血糖値が減少します。このような乱高下が自律神経のバランスを乱して様々な不調や病気を引き起こします。一方で過剰なインスリン分泌は低血糖症状を引き起こし、イライラ、不安感、集中力の欠如など精神的な不調に繋がります。
また、過食によって常に膵臓からインスリンが分泌し続けることでどんどん疲弊していきます。血糖値が上がらなければ膵臓は休息を取ることができ、血糖値が安定すれば自律神経のバランスが整います。また体内炎症が原因となる炎症性の腸疾患、皮膚炎、肝炎などにも断食には有効です。
細胞の活性化
断食を行うことは細胞老化を遅らせ、寿命を延ばすことにつながります。私たちの体は約60兆個の細胞が集まっており、その細胞は日々老化しています。老化の原因は、加齢によって発生する活性酸素による酸化ダメージや糖質の過剰摂取による体の糖化、不要な脂肪の蓄積などがあります。しかし断食は細胞を老化させる原因を取り除く働きがあることが研究で分かってきています。
例えば、飢餓状態になると細胞を保護するヒートショックプロテインというタンパク質が増え、壊れたタンパク質の分解や正常なタンパク質への再生が活発化します。その結果、体を若々しい状態に保つことができるようになります。また老化の原因となる活性酸素を除去するスーパーオキシドディスムターゼ (SOD)という酵素の量が増加することで細胞を老化から守る働きが強化されるといった結果も出ています。
また、南カリフォルニア大学の研究チームによると、断食を3日間行うことで古い免疫細胞が除去されて、新しい細胞が再生され始めるという結果も出ています。免疫細胞が再生されれば血管の状態も良くなるため、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞などの生活習慣病の改善や体内の炎症が収まるといった効果も期待できます。
代謝エネルギーの消費
断食を行えば外から栄養を摂取することができなくなるため、必然的に体内の物質をエネルギーに変換する作業に入ります。体内でエネルギーに変わる物質は大きく分けて3つあります。それは糖質、筋肉、脂肪です。体の栄養素が足りていない時は、まずは優先的に糖質が消費されます。糖質はブドウ糖に変化して血液中を巡り、肝臓の中に蓄えられていますが、断食を始めて12時間から24時間が経過すると血液中のブドウ糖は20%ほど低下して、肝臓にあるブドウ糖も少なくなります。このような状況で起こるのがインスリンの現象です。
インスリンは食事をして血糖値が上がると分泌されて、肝臓にブドウ糖を蓄えるように働きかけます。ですが断食中は血糖値が上がることがないためインスリンの分泌量も減ります。このインスリンは細胞の老化を抑えるタンパク質の働きを抑制してしまうことが分かっています。つまり炭水化物や甘いものを食べ過ぎな人は、毎食後血糖値が急上昇してインスリンも過剰分泌されるため、老化が促進されることになります。
逆に断食するとインスリンの分泌量が減少して、老化を抑えるタンパク質の働きが活性化します。その結果細胞の老化を遅らせることができます。また断食と関わりが深い物質として、ケトン体の存在も重要です。1日3食の生活をしていると私たちの体は常にエネルギー源で満たされている状態となります。ですが断食によってブドウ糖が使い果たされた時、体は脂肪酸とケトン体をエネルギー源として使い始めます。ケトン体はブドウ糖の代わりにエネルギーを提供するだけでなく、健康状態の改善や加齢の進行を防ぐ役割があるとされています。つまり断食によって体内で使用するエネルギー源の切り替えが行われることが老化防止や健康効果をもたらしてくれます。
オートファジー
断食によって栄養を外から取り込めなくなると体はあらゆる方法でエネルギー源を確保しようとします。一つの働きが2016年にノーベル生理学医学賞を受賞した大隈先生の言及テーマであるオートファジーです。
オートファジーは細胞の中にある不要なタンパク質を分解する現象と言えます。人間に限らず、生物が生きていくためには様々なタンパク質の働きが欠かせません。断食によってタンパク質の材料となるアミノ酸が不足すると必要なタンパク質を体内で生成することができなくなります。そこで体内にある不要なタンパク質を分解して、アミノ酸を作り出し、そのアミノ酸を使って生命維持活動に必要なタンパク質を生成する働きが生まれます。このようなオートファジーの働きは、飢餓状態に陥ることで発動する応急措置のようなものです。本来は栄養素を取り込むことを前提として体は活動していますが、断食によりオートファジーが発動することで細胞の不要なタンパク質が除去されることになり、結果として病気の予防、老化の防止につながるという効果が期待できます。
例えば、アルツハイマー型認知症の引き金となるのはアミロイドβと呼ばれる タンパク質が脳に蓄積するからです。アミロイドβは生命維持活動に必要なタンパク質ではありません。私たちの体にとって優先順位の低い不要なタンパク質であると判断されたアミロイドβが、もっと必要なタンパク質を生成するために分解されることでアルツハイマーの予防につながります。つまり認知症の原因となるタンパク質がオートファジーで除去され、脳を健康的な状態に保つことができるのです。また認知症に限らず不要なタンパク質は老化や疾患を引き起こす可能性があります。断食によるオートファジー発動により細胞内の環境が改善されることで大きな健康効果が期待できます。
ダイエット効果
太る原因は過食です。私たちの体は余分な糖質を中性脂肪に代えてエネルギーを蓄える機能が備わっています。そのため私たちの体は必要以上に食べて体にエネルギーを蓄積しようとします。肥満は脂肪肝や脂質異常症へと繋がる恐れがあり、コレステロールが蓄積すれば動脈硬化のリスクも高まります。週1断食によって新たなエネルギー吸収を抑えて、蓄積したコレステロールを消費し、その後脂肪を溶かしてエネルギーへと変換することでダイエットにも繋がります。
正しい断食のルール
水断食は危険
断食は健康的に体のメンテナンスをする手段であり、断食をして体を壊していては本末転倒です。そのため必要な栄養素を取りながら断食をする必要があります。確かに水断食という方法もあり、短期間水だけを摂取する断食方法で実際に水断食を採用している断食施設もあります。ですが栄養面を考えても、医学的に見ても水断食は明らかに体に負担がかかる方法です。
栄養不足から疲労や不安感、血圧低下などの症状が出てきます。さらに酷い場合は不整脈や発作湿疹などを引き起こす可能性もあります。水断食は水しか摂らないため、当然体重は減り、一時的には見た目もすっきりするでしょう。しかしそれは体内の塩分が排出されて、むくみが取れたことによる体内の水分量の減少でしかありません。また栄養不足のため筋肉が分解されるため、筋肉分の体重減少になり、健康的な体重減少ではありません。水断食を止めれば水分量は元に戻り、基礎代謝を上げる筋肉が減っているため、むしろ太りやすい体質になっています。
また、油分やビタミン、ミネラルなどの補給もできないため、肌がカサカサになって見た目にも悪影響が出てしまいます。基本的には、ある程度のカロリーを取りながら栄養管理をしっかりと考えてゆっくりと行う断食がおすすめです。
栄養補給は必須
断食は絶食ではありません。あくまで食事制限の一種です。特に水分は必要不可欠です。断食中は胃腸が空になっているため、コーヒーや濃い緑茶などの刺激の強い飲み物は避けるべきです。断食の一番の目的は、腸を休ませて腸内環境を整えることです。腸内環境を整える善玉菌を食べなさ過ぎると、むしろ腸内環境は悪くなってしてしまうため、断食中でもある程度のカロリーが必要と なります。
一般的な断食施設ではビタミンやミネラル、必要最低限のカロリーを摂取するため、酵素ジュースやリンゴジュース、野菜ジュースなどを断食期間中に飲むようにしているでしょう。酵素ジュースや野菜ジュース、果物のジュースは腸を休めながら善玉菌を増やして悪玉菌を減らすことができます。発酵食品という観点からビフィズス菌を摂取できるヨーグルトやお味噌汁も断食としてお すすめです。
回復食の重要性
断食後から普通食に戻すまでの食事を回復食と言います。断食後にいきなり普通食に戻したり、断食成功祝いで食べ過ぎたりしてしまうと、かえって体調を崩してしまうかもしれません。
断食をすると胃腸はすっきりと綺麗になります。断食明けのまっさらな胃に負担のない食べ物を与える必要があります。また断食をしてしばらく食べ物を食べていなかった体は、ある種の飢餓状態であるため、このまま食べ物を取れなかったら大変だと考えています。そのため断食明けの食事の栄養素を全て吸収しようとするため、断食明けの食事の時にいつもと同じような食事をしてしまうと栄養素を一気に吸収してリバウンドしてしまいます。断食明けの回復食は、断食期間の長さにもよりますが断食日数×2/3の食事がおすすめと言われています。
長寿遺伝子が活性化する「カロリー制限」
私たちが持っている遺伝子の中には、細胞の老化の原因となる活性酸素を除去してくれたり、免疫細胞を正常化するサーチュインという酵素を作りするものがあります。この長寿遺伝子と呼ばれる特定の遺伝子を活性化させれば、人間の寿命 は10年延びることが分かってきました。その機能を最大限に引き出すことができれば、動脈硬化やアルツハイマー病など加齢に伴う病気の発症を遅らせることでき、さらには認知症や難聴、シミやシワなどの進行も抑制する効果があると言われています。
この機能を最大限に引き出す方法として、カロリー制限が挙げられます。例えばアメリカウィスコンシン大学で20年以上にわたり実施されているアカゲザルの実験では、研究チームはアカゲザルを2群に分け、一方のグループに与える食事量は、通常よりも30%減らし、互いの比較データを取り続けています。現在アカゲザルは、人間でいえば70歳を超える高齢となっているそうですが、一般的なカロリー量を与えられたグループは、その半数が死んでしまいましたが、カロリー制限をされたグループは、まだ8割以上が生存しているそうです。このことから小食の人や、1日1食の人が若々しく見えるというのは、この長寿遺伝子が活性化されているからと考えられています。
一方で、マサチューセッツ工科大学では、カロリー制限がマウスの脳細胞に影響を与えるかを調べる実験を行いました。その結果、30%のカロリー制限を行うことで長寿遺伝子が作り出す酵素が増えるということが分かっています。この酵素は神経細胞の損失を防ぎ、それに伴う脳の機能低下を防ぐ働きをしてくれます。このように、長寿遺伝子は記憶力の強化や脳活動の活性化にも重要な役割を果たしている可能性が高いと言われています。
東洋医学で診る「週1断食」
断食の目的は病気の改善と健康維持の2つあります。病気の改善であれば断食によって血糖値を下げる時間を作ることを意識しましょう。一方で健康維持が目的であれば、腸を含めた内臓を休ませること大事です。
週1断食は1日1食、週に1回、24時間体に食べ物を摂らない時間を作ることです。理想は朝食を抜くことです。東洋医学では、朝の4時から昼の12時までは排泄の時間として考えます。食事をすると便が出ますが、腸内に溜まった便の1部が押し出されているだけで、腸内がキレイになっているわけではありません。そのため朝食を摂ってしまうと、排泄したところにまた食べ物が腸に届いてしまうためいつまでも腸内に食べ物が溜まっている状態となってしまいます。排泄の時間である午前に断食をすることで、腸内に溜まった老廃物を排出するためにも、できれば午前中は断食しましょう。
断食する曜日は、ダイエットが目的であれば月のリズムに合わせて行うことが効果的です。新月から月が満ちていく時期は「増える」エネルギー、満月から月が欠けていく時期は「減る」エネルギーです。そのため脂肪を減らすのは満月からスタートして1週間ごとに4回続けてみましょう。「減る」エネルギーが満ちている場合は食欲も抑えられます。
NO砂糖こそが大事
砂糖を止めると体に起こる変化として挙げられるのが若返る効果です。老化を引き起こす糖化は、タンパク質と脂質がブドウ糖と結合することで、劣化する反応です。糖化によって体内では糖が過剰にこびり付いて本来の機能を失ったAGEが産生されます。このAGEが老化させる大きな原因であり、あらゆる病気を引き起こしてしまうことが明らかになっています。つまり砂糖とか糖質を食べれば食べるほど体内で増えて老化や病気が促進されます。またAGEは肌のコラーゲンと結びつくことでシワ、シミなどの外見トラブルの原因にもなります。
一方で、AGEは細胞や組織を攻撃し、細胞や臓器に炎症を引き起こしてしまうことが近年の研究で明らかになってきています。例えば動脈を詰まらせる血栓の原因は炎症であり、AGEによって傷つけられた血管の内壁に血液中に流れるコレステロールが染み込み、炎症が起きます。それを防ぐために免疫細胞や血小板が集まり血栓をつくります。この血栓が脳梗塞や心筋梗塞などの命を脅かす重篤な病気につながりかねません。また炎症は様々な病気の背後にある原因とも言われています。糖尿病の人は普通の人より血管が10年早く老いるとも言われており、それはAGEが体内に沢山存在して炎症が起こって血管壁が劣化してしまうからだとされています。さらに謎の体調不良を抱えている人ほど、体内の炎症レベルが高いことも分かっています。
また、現代人の多くが慢性的な疲れに悩まされており、その原因に甘いお菓子やジューズなどを食べていることが挙げられます。この慢性的な疲れを取るためには、糖質をエネルギー源として使う糖質燃焼型から、脂質をエネルギーとして使う脂肪燃焼型の体に変えていく必要があります。私たちの体は、本来糖質を燃やしてエネルギーを取り出すのに適した状態につくられていません。そもそも精製された炭水化物や砂糖が手に入るようになったのは、人類の歴史から見ればごく最近のことです。糖質から取り出したエネルギーを使うことで、体に炎症が起こり、疲れやすくなったりします。そのため砂糖断ち、タンパク質や脂質を摂ることで圧倒的に疲れにくくなることです。
最後にNO砂糖にすることで、メンタルが安定するメリットが挙げられます。複数の研究では、甘いお菓子や砂糖の入ったジュースによって抑うつ症状やうつ病のリスクを高めることが示唆されています。例えばジュースなどは、胃で消化する必要がないため、糖分が小腸ですぐに吸収されます。血糖値が急上昇すると脳内ではセロトニンやドーパミンなどの幸福物質が放出され幸せな気持ちになります。しかし幸せになれるのは一瞬であり、膵臓から血糖値を下げるためにインスリンが分泌されて低血糖状態に一時的に陥ります。この低血糖状態になるとイライラ、不安感、眠気、吐き気などに襲われることになります。この不快な症状に耐えられず、あの幸せな気持ちを求めて糖質を求めてしまいます。このような状態を一般的に糖質中毒と言い、血糖値が1日に何度も乱高下して、いずれ血管がボロボロになり、インスリン分泌能力は衰え、インスリンの効き目も悪くなり、糖尿病をはじめとした様々な生活習慣病のきっかけになります。
さらに甘いジュースを飲むと死亡リスクが上昇するという研究があります。2019年に発表された研究によると、砂糖が添加された甘い飲み物の摂取量が1日あたり約350ml増えることに全ての原因による死亡リスクが11%高くなったことが明らかになっています。また1日に飲むフルーツジュースが約350ml増えるごとに死亡リスクが24%も高くなることが分かっています。
断食のデメリット
1日のうちの16時間は断食し、8時間は好きなものを食べて良いというダイエット方法が16時間断食です。これが流行っているのは、2016年にノーベル賞を受賞したオートファジー研究を初め、最新医学エビデンスをもとにした断食方法です。
このシンプルな食事法を実践するだけで体内では脂肪が分解され、肥満による様々な問題が改善される、内臓の疲れが取れ、内臓の機能が高まり免疫力がアップする、細胞が生まれ変わり体や皮膚の不調や老化の進行が改善される、血糖値が下がり血管障害が改善されるなど様々な健康効果が期待できます。
一方で、デメリットも存在します。16時間断食を行うと脂肪とともに筋肉も落ちてしまいます。確かに16時間断食は体重の減少に役立ちますが、その際に脂肪が分解され、同時に必要な筋肉まで落ちます。これは外部から食べ物というエネルギーが入らなくなると、体は脂肪だけでなく筋肉も燃やしてエネルギーに変えようとするからです。また16時間断食で自然に糖質の摂取量が減ることによっても筋肉量は減ってしまいます。これは脂肪やタンパク質を構成しているアミノ酸を糖に作り替えエネルギーにしようとするからです。
また、筋肉量が減少すると基礎代謝量も減ってしまうため、太りやすくなります。さらに筋肉に蓄えられている糖質や脂質の量も減るため中性脂肪が増えやすくなるという好ましくない影響もあります。
そのため無理のない範囲で筋トレを行う、食事可能な時間にタンパク質をしっかりと摂取するということを意識しましょう。また断食後にいきなり食事を摂ると血糖値が急上昇してしまうということも挙げられます。16時間断食では睡眠時間も活用するため、多くの方が朝食を摂らないようにしていると思います。そのため昼食後に血糖値が上がりやすくなってしまいます。この話が発端となり、朝食は食べるべきなのか、食べないべきなのかという論争も巻き起こっています。また朝食を食べないと胆石ができやすくなるという研究もあります。
その対処法としては朝食を摂る形で16時間断食をするのが良いでしょう。なぜなら、私たちの体にはサーカディアンリズム(体内時計)が備わっており、基本的には昼間に活動し夜間は休むというサイクルがあります。昼間は交感神経が優位になって体温が上がり、身体を元気にするホルモンが分泌し活動モードになります。一方夜になると副交感神経が優位になって体温が下がり、睡眠ホルモンなども分泌され体は休息モードになります。これを考慮すると16時間断食もできれば夜に行うのが最も理にかなっています。つまり体が活動モードに入ってエネルギー消費量の多い昼間に食事を摂り、体が充足モードになる夜間は食べるものを控えるというリズムが大切です。このパターンだと朝8時に朝食を食べたら16 時までは食事可能時間になります。
【本コラムの監修】
・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。