
味噌の香りでダイエット
味噌を香りが、ダイエットに有効であることが分かっています。その匂いによって分泌されるのが減量ホルモンです。この減量ホルモンとは「オキシトシン」というホルモンのことです。オキシトシンは別名、愛情ホルモンや幸せホルモンとも呼ばれます。そしてホッとする香りを嗅いだ時にも分泌されやすくなることが分かっています。
2017年福島県立医科大学を中心としたチームが行った研究で、オキシトシンに内臓脂肪の減少を促す効果があることが判明しました。この研究では太らせたマウスにオキシトシンを含む餌を食べさせた結果、10日間で皮下脂肪が15%から20%減少しました。さらに太ったマウスほどを皮下脂肪の減少率が大きくなりました。
一方で味噌汁の出汁に使われる鰹節にも心を落ち着かせるセロトニンを作る 元となる栄養素「トリプトファン」が含まれています。また旨味成分の一つのグルタミンは、副交感神経の働きを促進、緊張を緩和するなどのリラックス効果もあります。
旨味成分でダイエット
特に味噌の魅力は旨味成分あり、その感じる味は全部で5種類あります。それは甘味、酸味、塩味、苦味、そして旨味です。これを五原味と言います。従来味は4種類で、味の四面体と呼ばれていましたが、最後に加わった旨味は1908年に東京帝国大学の池田教授によって出汁昆布の中から発見されました。この 旨味にもダイエット効果があることが分かっています。
味を感じるのは舌だけでなく、脳や胃腸などの消化管にも味覚センサーがあることが分かっています。例えば胃の味覚センサーは、グルタミン酸という旨味成分にだけ反応し、消化を開始したことの合図を脳へ送っていると考えられています。また胃の味覚センサーでキャッチした情報が脳の基礎代謝に関わる場所に送られることで食欲を抑制しているとも言われています。
発酵食品である味噌には、このグルタミン酸が多く含まれており、加えて出汁の元になる昆布にも味噌以上にグルタミン酸が含まれています。さらに出汁に使われる鰹節もダイエット効果を発揮するヒスチジンというアミノ酸成分が含まれています。このヒスチジンは酵素の働きで脳内で食欲を抑える働きがあるヒスタミンに変わり、満腹中枢を刺激して食欲を抑えてくれます。
旨味成分とダイエットの関係については、イギリスのサセックス大学でも研究が行われています。ここでは27人をAとBのグループに分けて、昼食の45分間にAのグループには旨味成分のグルタミン酸とイノシン酸を入れたスープを、Bのグループには旨味なしのスープをそれぞれ4日間飲んでもらいました。その結果、旨み入りのスープを飲んだAのグループは満腹感を覚えやすく、約 446kcalの食事で満足できました。一方でグループBは満足を感じるまでに約 480kcalの食事を摂っていました。1日で考えればその差はわずか 34kcalですが、これが半年続けば約1kg、1年後には約2kgも体重に差が出ることが分かっています。
味噌の主な栄養素とその働き
味噌の主な栄養素とその働きは大きく以下の5つが挙げられます。
- 吸収されやすい必須アミノ酸が含まれている
- ビタミンB群が代謝をアップ
- 腸まで届く植物性乳酸菌
- 大豆レシチンなどがコレステロールを下げる
- メラノイジンが血糖値の急上昇を抑制
吸収されやすい必須アミノ酸が含まれている
大豆が味噌になる過程で酵母の働きで必須アミノ酸が発生します。この必須アミノ酸は体に吸収されやすいことが特徴です。
ビタミンB群が代謝をアップ
麹菌の働きで大豆が味噌になるとビタミンB群の量が増えます。このビタミンB群は糖質や脂質、タンパク質を燃焼させてエネルギーへ変換するときに使われます。具体的にはビタミンB1は糖質の燃焼、ビタミンB2は脂質の燃焼、ビタミンB6はタンパク質の燃焼の際に働きます。実はビタミンB1、ビタミンB2 ビタミンB6だけでは食事で取った脂質を燃焼させることしかできず、既に体に付いた体脂肪を燃焼させるためには、ビタミンB1、B2、B6に加えてビタミンB12が必須です。そして味噌には、この4つのビタミンBが全て揃うことで、糖質と脂質、お腹に付いた体脂肪の燃焼を促すことができます。
腸まで届く植物性乳酸菌
味噌には植物性乳酸菌が含まれており、納豆や漬物といった植物性発酵食品を取ってきた日本人の腸には植物性乳酸菌が合っていると言われています。腸内環境は、糖質や脂質の代謝とも関係しているため、乳酸菌が腸内環境を改善することで肥満を抑制してくれます。
大豆レシチンなどがコレステロールを下げる
味噌に含まれている大豆レシチンや大豆サポニン、大豆ペプチド、リノール酸、食物繊維などが血液中の悪玉コレステロールを減らし、脂質代謝の改善を促します。
メラノイジンが血糖値の急上昇を抑制
味噌が発酵の過程で色が濃くなる反応過程で働いている栄養素がメラノイジンです。メライジンは食物繊維と似た働きをし、血糖値の急激な上昇を抑える、インスリンの過剰分泌でブドウ糖が中性脂肪になるのをブロックする、乳酸菌の増殖を促進させる、脂質消化酵素の働きを阻害して脂質の消化吸収をコントロールする、血中のコレステロールを低減する働きがあります。
唐辛子の健康効果
生活習慣病や認知症、老化など様々な原因として慢性炎症が挙げられます。その対策として、スパイシーフード持つ美容・健康効果が再注目されています。スパイシーフードが美容や健康に良いということは、昔から言われていましたが、それが統計的な裏付けがなされてきています。例えば50万人もの中国人を調査した大規模な研究では、日常的に唐辛子などの辛い食べ物を摂取している人々は辛いものを食べない人たちよりも4%も死亡リスクが下がるということが分かっています。唐辛子などの辛い食べ物を食べる人はガンや心臓病などの疾患にかかるリスクが大幅に減少し寿命が延びました。
さらに、16000人のアメリカ人を対象として6年間に渡って行われた別の研究では、唐辛子を日常的に摂取する人の死亡率は唐辛子を食べない人よりも12% 低いということが明らかになっています。
唐辛子のカプサイシン
なぜスパイシーフードを食べると寿命が延びるのかは、その唐辛子にあります。唐辛子の辛味成分である「カプサイシン」が持つ健康効果には様々なものが存在しており、特に抗炎症作用が挙げられます。私たちの体はTPRV1という痛み刺激に反応する受容体が存在しており、このTPRV1に酸や熱い物質が結合することで痛みを感じるようにできています。
カプサイシンが持つ抗炎症作用は、カプサイシンがTPRV1に結合すると 一時的に非常に強い刺激を感じます。このような強烈な刺激の後に一時的に感覚神経の感度が下がるため、むしろ長期的に見ると炎症が緩和されるということが分かってきています。まだ全てのメカニズムが解明されてはいないものの、カプサイシンが免疫細胞によるサイトカインの過剰な分泌を抑えてくれる可能性も示唆されています。
サイトカインは免疫細胞が発するシグナルのようなもので、このサイトカインによって熱や痛みなどの炎症反応が引き起こされます。サイトカインの分泌を抑えることでカプサイシンは間接的に免疫反応を抑えて、慢性炎症による様々な健康上の問題を予防してくれます。
唐辛子でダイエット
カプサイシンの効能は炎症を抑えるだけではありません。カプサイシンには、抗炎症作用の他にも褐色脂肪の生成を促し、痩せやすい体を作る「アディポネクチン」によって、血糖上昇を抑える作用、発汗促進によるデトックス作用、細胞のがん化を食い止める作用、血流改善による冷え防止作用など様々な健康効果が実証されています。
まず、褐色脂肪の生成を促し、痩せやすい体を作るという効果については、カプサイシンを摂ることによって、褐色脂肪の生成が促されるということが分かってきています。褐色脂肪は、体の中でエネルギー消費を促してくれる作用があります。脂肪には大きく分けて白色脂肪と褐色脂肪があります。白色脂肪はブヨブヨしたお腹を作る脂肪のことで、褐色脂肪というのはエネルギー消費を促して肥満を予防する脂肪です。
カプサイシンを摂取し、褐色脂肪を優位にすることで、スリムな体型を維持することができます。またラットを使った研究によれば、カプサイシンがTPRV1受容体と結びつくことで「アディポネクチン」というホルモンが上昇するということが分かっています。このアディポネクチンは、血糖値の上昇を抑えてくれるホルモンです。アディポネクチンは、体の中で唯一血糖値を下げてくれるホルモンであるインスリンの働きを正常化してくれる働きがあることが知られています。
私たちが糖質の含まれる食べ物を食べると、その糖質が吸収されることで血糖値が上がります。血糖値は通常インスリンの作用によって細胞内に取り込まれ 血糖値が正常化するようになっています。しかし生活習慣の乱れなどによって 膵臓が疲弊したり、インスリン受容体の作用が弱まると、インスリンの効目が弱くなります。このようにインスリンの効きが弱くなった末期が糖尿病です。多く人が前段階でも生活習慣の乱れによって血糖値が上がりやすくなってしまっているため、カプサイシンを摂取することによって分泌されるアディポネクチンには、弱ったインスリンの作用を正常化してくれる作用があります。
さらに、カプサイシンの効能として、発汗を促すことによるデトックス効果があります。カプサイシンはトTPRV1受容体に結合することで痛みや熱を錯覚させますが、熱さを感じると気化熱によって体の表面温度を下げようとし発汗が促されます。つまりカプサイシンがTPRV1受容体に結合すると、自ずと汗が出ます。スパイシーフードを食べると大量の汗が出るのはこのようなメカニズムがあるからです。この発汗によって毛穴に詰まった皮脂や汚れなどの不純物が排出されるデトックス効果が期待できます。
一方で、様々な研究によってカプサイシンには細胞のがん化を食い止める効果があることが分かってきました。細胞のがん化は、細胞が無秩序に増加するような状態のことですが、がん化した細胞は分裂と増殖のために大量の栄養や酸素を必要とします。そのため周囲から大量の毛細血管を引っ張り、新しい血管を作り出そうとします。このようながん細胞を栄養する血管を新生血管と言います。ラットを使った実験によって、カプサイシンにはこのようながん細胞の血管新生を防ぐ効果があることが分かっています。
がん細胞と言えども、血液が届かなければ増殖することもできません。カプサイシンを摂取して、がん細胞の血管新生を抑制することで、がんの増殖を抑制することができると期待されています。
冷えの防止
スパイシーフードを摂取することによって体温が上がり、冷え性を改善することができます。カプサイシンには炎症を錯覚させる作用があり、体の熱を上げるのと同時に、炎症と同じく血管を拡張させる作用もあります。冷えは体の組織に血液が行き届かなくなっている状況のため、カプサイシンが血管を拡張させることで血液が手足の末端に流れます。その結果冷えの改善・防止すること ができます。
カプサイシンの摂り方
カプサイシンを取りすぎてしまうと胃腸が荒れて、むしろ腸内環境が悪化し、健康上のデメリットが増えてしまう可能性もあります。そのため当然食べ過ぎはNGであり、適量摂取するということを心がける必要があります。
また、スパイシーフードを食べなくても、サプリメントの摂取によって健康効果が得られることが分かっています。サプリによって期待できるカプサイシンの健康効果には、新陳代謝の上昇が挙げられます。カプサイシンの褐色脂肪を燃やしてエネルギー代謝を高める働きがありますが、カプサイシンサプリには、そのような脂肪燃焼効果が高いということが研究によって明らかになっています。さらにカプサイシンサプリには食欲の抑制効果もあることが分かっています。またカプサイシンのサプリメントを長期的に摂取した人は、自己免疫疾患や心臓病などのリスクが有意に低下したと結論付ける研究も存在します。
辛いものが生理的にどうしても苦手な方は、カプサイシンクリームがあります。カプサイシンクリームは古くから鎮痛効果があるとされ、カプサイシンを練り込んだ外用薬として使われてきました。これはもちろんカプサイシンが持つ抗炎症作用によるものです。そのためカプサイシン入りの概要のクリームは、医療現場においても関節リウマチや神経損傷などを緩和するために使われています。また複数の研究によってカプサイシンを皮膚に塗布することで、食べた時と同様の脂肪燃焼効果がある可能性が指摘されています。
生唐辛子の美肌効果
また、生の唐辛子は辛くないというメリットのほかにビタミンCが豊富に含まれています。ビタミンC含有量で比較すると乾燥唐辛子には100gあたり1mgに対し、生の唐辛子には100gあたり120mgものビタミンが入っているとされています。
体の細胞の錆の原因となる活性酸素を除去してくれる物質が抗酸化物質であり、ビタミンCは抗酸化物質の代表です。またビタミンCには美白効果があります。皮膚に沈着したメラニンはシミやそばかすなど、お肌の老化の原因となり、加齢と共に皮膚にも沈着していくようになります。
メラニンはチロシンという物質がチロシンキナーゼによって変換されることで生み出されますが、ビタミンCにはチロシンキナーゼの活性を阻害することでメラニン合成をストップする作用があります。さらにビタミンCには、メラニンを還元する作用もあることが知られています。既に合成されてた黒色のメラニンを脱色してくれるという効果も期待できます。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。