
栄養素の中でも特に重要とされているのが3大栄養素がタンパク質、炭水化物、脂質です。私たちの体は、水分を除くとほとんどがタンパク質です。筋肉や骨、内臓、髪の毛、血液など体のあらゆる部分の材料であり、脳の神経伝達物質、ホルモンや免疫細胞、抗体なども全てタンパク質が材料となっています。これらタンパク質、炭水化物、脂質の3大栄養素にビタミンとミネラルを足したものを5大栄養素と言います。
3大栄養素
日本人のタンパク質の摂取量は戦後直後の時代よりも減っており、その原因に豆腐や納豆、味噌といった大豆食品の摂取量が減っていることが挙げられます。タンパク質の摂取量が減ると筋力が落ちるのはもちろん、不眠症や貧血、疲労感、免疫力の低下、肩こりや腰痛など様々な悪影響が現れます。
炭水化物=糖質と思っている人も多いですが、炭水化物は糖質と食物繊維の組み合わせでできています。また炭水化物食品はビタミンやミネラル、ポリフェノールなどの栄養素もたっぷりと含まれています。私たちの健康に悪影響を及ぼすのは、白米やパン麺、白砂糖や果糖ブドウ糖液糖などの精製された糖質の摂りすぎです。精製された糖質は血糖値を急上昇させ、血糖値が急上昇すればインスリンが過剰に分泌されて、逆に低血糖状態になったり、活性酸素が発生して体の酸化を促進させたり、余った糖が脂肪として蓄積されたりします。
脂質は食品に含まれている油脂成分のことです。油自体は、体のエネルギー源やホルモンや細胞膜の材料になったり、生命維持には欠かすことができない栄養素です。この油は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれ、抗炎症作用のあるオメガ3や体内の組織を形成するオメガ6は健康に欠かせません。この飽和脂肪酸の中でも中鎖脂肪酸は疲労回復や脳の働きの改善効果が期待できます。一方でラードやバターなどの動物性由来の脂肪酸は、脂肪として蓄積されやすいので摂取量は控えめにしましょう。
5大栄養素
タンパク質、炭水化物、脂質の3大栄養素にビタミンとミネラルを足したものを5大栄養素と言います。ビタミンは3大栄養素と違って体を構成する成分でもエネルギー源でもありませんが、代謝をスムーズに行うために必要を不可欠な栄養素です。
例えば、エネルギーを作るときやタンパク質が体の組織になるとき酵素が働いて化学変化が起こります。この化学変化を代謝と言い、代謝が働くためにビタミンやミネラルが必要になります。ビタミンは全部で13種類あり、脂溶性のビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、水溶性のビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、 ビオチン、葉酸、ビタミンCです。因みに13種類のビタミンの中で体が必要とする量が多い順は、ビタミンC2、ナイアシン、ビタミンEです。ビタミンCやナイアシンは水溶性ビタミンですぐに体外に排泄されてしまいます。
もう一つ私たちの体に欠かせないのがミネラルです。そもそも人は約60種類の元素の組み合わせでできており、内訳は酸素65% 、炭素18%、水素10%、窒素3%です。この4つの元素を組み合わせることで体の96%がつくられ、残り4%の元素がミネラル成分です。中でも健康維持に必須とされているミネラルは 16種類あり、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リン、硫黄、塩素、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、コバルト、これらが必須ミネラルです。ミネラルの働きは様々あり、骨や歯の材料になったり、酵素の成分になったり、代謝を正常化する働きがあります。
また、ビタミンやミネラルの他にも食物繊維やフィトケミカルといった微量栄養素もあります。食物繊維といえば腸活に欠かせない栄養素で、食物繊維は微量栄養素と呼ばれる場合と炭水化物に含めて必須栄養素と呼ぶ場合があります。
フィトケミカルは果物や野菜、豆類、海藻などの植物に含まれている成分で、ビタミンやミネラルとは別の栄養素です。有名なのは人参に含まれてβカロテンやトマトに含まれているリコピンなどのカロテノイド、ブルーベリーに含まれているアントシアニン、大豆に含まれているイソフラボンなどのポリフェノールがフィトケミカルです。基本的にフィトケミカルは抗酸化作用を持っており、果物や野菜、豆類、海藻を積極的に食べている人は寿命が長くなったり、癌になりにくいといった研究結果が世界中で発表されています。
栄養バランスが大切
糖質がまるで人を太らせる悪のように見られがちですが、糖質は生きていくために重要な栄養素の一つであるということを忘れてはいけません。また一種類あるだけではいくら栄養価が高くても体にしっかりと吸収することが困難です。ある栄養素を摂るためにはそれとセットになって働く栄養素を欠かせません。つまり栄養を摂る時には栄養素のバランスを考えることがとても大切になります。一つの栄養素、例えばβカロテンが体に良いからといって、それだけと大量にとっても意味がありません。むしろ一つの栄養素を摂り過ぎることが悪影響を与える場合だってあります。
また和食だけに限らず、洋食の良い点も取り入れて多種多様な食材よって少量ずつバランスよく組み合わせて食べるということが大切です。主食のお米、味噌汁、野菜の煮物という和食が低カロリーで健康的で、洋食と比べてヘルシー、そのようなイメージを持っている人がほとんどだと思います。
しかし健康的な食事は、タンパク質、脂質、炭水化物の3大栄養素をバランスよく摂取できるかどうかで見ることが大事なので、一概にそうとも言い切れない場合もあります。特にご飯に味噌汁、野菜の煮物という内容だとタンパク質や脂質が少なく、理想的な栄養バランスが整っていない可能性があります。
栄養に関する正しい知識
世の中には、重大なリスクが無視されてメリットだけが強調された情報、あやしい健康情報が溢れかえっています。そのため栄養に関する正しい知識を身につけておく必要があります。栄養素の働きや適切な摂取量について知っておくべき事実を確認した上で自ら情報を取捨選択し活用するということが極めて重要です。
しかし、年代性別ごとに1日に必要な栄養素の摂取量は異なり、毎日の食事一つ一つの数値に目を光らせていると大変なので、栄養バランスを整えるコツをおさえておけば必要な栄養素を偏りなく摂取することができるでしょう。
そのコツは、主食、主菜、副菜の3つのお皿をそろえて献立を組むことです。主食はご飯やパンなどから炭水化物、主菜は肉や魚、大豆などからタンパク質と脂質、副菜は野菜や芋、海藻などからビタミンとミネラルなどを摂ります。この3つのお皿を揃えるだけで体に必要不可欠な5大栄養素を満遍なくカバーできるはずです。
また、清涼飲料水などは控えて水を飲みましょう。水は体の機能を保ち、便を柔らかくして便秘になるのを防いでくれたり、血液をサラサラにして脳梗塞や心筋梗塞を予防したりと、健康を支える様々な働きをしています。しかし水をどれだけ飲んでも良いということではありません。水の飲みすぎによって起きるトラブルがあります。
例えば冷たい水の摂りすぎは体を冷やし、胃腸の不調を引き起こすことがあります。また腎臓に負担がかかってむくみが露われたり、多くの女房を出すために血圧が下がる水中毒になってしまったりと水の飲みすぎは健康への深刻な悪影響も心配されます。そのため適切な水分補給を心がけ、摂取量と排出量のバランスを崩さないようにすることが大切です。具体的には、汗や尿、排便によって排出される水分は成人の場合1日約2.5リットルです。水分摂取は、これを基準に食事以外で1.5リットルの水分をとることを目安にすると良いでしょう。ただしコーヒーやアルコールなどの利尿作用の高い飲み物に関しては摂取量より排出量の方が多くなるため、水分摂取量としてカウントはしないで下さい。
また、疲れている時には甘いものを食べると良いとか、疲れているから甘い物が欲しくなるなど、そのような認識が一般的となっているため、そう思っている人は結構多いのではないでしょうか。
それはエネルギー切れによる一時的な疲労に対してのみのことで、むやみに甘いものを食べ続けてしまうと、実はかえって逆効果です。甘いものに含まれる糖質は体内でブドウ糖へと作り変えられて血中に取り込むことで血糖値を上げます。そして上がった血糖値を下げようとインスリンが分泌されます。
つまり糖質を一度にたくさん摂取してしまうと、血糖値が急激に上がってしまい、今度はそれを正常値へと戻すため必要以上にインスリンが分泌されることになります。すると血糖値が急激に低下し、低血糖を引き起こします。低血糖になると脳が働くのに必要な分のブドウ糖が足りなくなり、だるさと疲れいった症状につながります。そして糖質過多の生活を続けていると血糖値の調節が 正常にできなくなり、最終的には常に低血糖の状態になり、自律神経のバランスが乱れ、疲労感、思考力や集中力の低下、イライラや不安感の増加など不調を引き起こします。
また摂取した糖質の代謝がスムーズに行われることも大切です。炭水化物に含まれる糖質はそのままではエネルギーとして使うことができません。糖質は小腸でブドウ糖に分解されることでエネルギー源として使われるようになります。それに働きかけてブドウ糖からエネルギーを算出する手助けをするのがビタミンB1です。つまりビタミンB1が不足してしまうと糖質から効率よくエネルギーを生み出すことができなくなり、脳がエネルギー不足に陥って集中力や記憶力の低下などを招いてしまいます。特に日本人は主食のお米をはじめ、糖質をたくさん摂りすぎているため、ビタミンB1を食事から摂取することを怠らないようにしましょう。
例えばビタミンB1を多く含む食べ物として豚肉、ナッツ、豆類などがあります。またニンニクやネギなどに含まれるアリシンという成分も組み合わせるとさらにエネルギー効率が上がります。逆にビタミンB1不足が慢性化する原因としては、多量飲酒が挙げられます。
このようにビタミンB1は糖質の代謝を助けるビタミンですが、脂質の代謝をサポートするのはビタミンB2です。ビタミンB2には脂質を使って細胞の生まれ変わりや成長を促す働きがあります。また脂質をエネルギーとして燃焼させる手助けもします。つまりビタミンB2をしっかりと摂ることでより脂肪が使われやすい体になります。
また、細胞の再生に関わるビタミンB2は成長期の子供に不足してしまうと、子どもや胎児の発育不良につながります。また粘膜や皮膚、髪の毛や爪の新陳代謝を促す役割もあるため、ビタミンB2が欠乏すると、年齢に関係なく肌荒れや口内炎口角炎などのトラブルの原因となります。
魚・肉・野菜の栄養素
魚(高脂肪魚類)
年々日本人の魚の摂取量が下がっており、2001年には1人当たりの魚の年間消費量が40kgだったのが2020 年には年間消費量が23.4kgにまで減少しています。魚介類は、タンパク質だけではなくビタミンやミネラルの宝庫で、例えば小骨まで食べられる小魚はカルシウムが豊富であり、シジミは鉄分やオルニチン、牡蠣は亜鉛やタウリン、鮎や鰻はビタミンA、青魚はビタミンD がたっぷりと含まれています。特に青魚や鮭に多く含まれているオメガ3脂肪酸は血液をサラサラにしてくれる他、血栓の予防、抗炎症作用、高血圧の予防などに効果があります。
また高脂肪魚類は、いわゆる青魚や鮭、マグロなどの脂質が豊富な魚は、がんのリスクを低下させてくれるということが分かっています。実際、大規模な研究では魚の摂取量が多いほど消化器系がんのリスクが低いことが示されています。また47万8040人の成人を追跡調査した別の研究では、魚をたくさん食べると大腸がんの発症リスクが低下するということが分かっています。脂肪分の多い魚が、がんのリスクを低下させる効果があるのは、ビタミンDやオメガ3脂肪酸などがんのリスク低減につながる重要な栄養素が含まれているからです。
肉
お肉は飽和脂肪酸が多く含まれているため、食べ過ぎれば肥満の元にもなり得ますが、タンパク質を効率よく摂取できる代表的な食材です。タンパク質は体内で長期間貯めておくことができないため、毎回の食事でしっかりとタンパク源を確保しておくことが健康には欠かせません。
また、豚肉には疲労回復効果を期待できるビタミンB群が豊富に含まれおり、牛肉の赤みや羊肉にはカルニチンと呼ばれる脂肪燃焼効果がある栄養素が含まれています。そして鶏胸肉に含まれているイミダペプチドには乳酸を分解して、疲労感を減らす効果や活性酸素を抑えるアンチエイジング効果も期待できます。
野菜
野菜を選ぶときはできるだけ旬を意識するようにしましょう。その理由は旬の野菜ほど美味しくて栄養価が高いからです。野菜を栄養面から分類すると、認知症やがんの予防効果で注目を集めているキノコ類、強力な抗酸化作用で体の老化を防いでくれる赤い野菜、ベータカロテンや葉酸が豊富で抗酸化作用が強い緑の葉っぱ、ネバネバで血糖値を正常に保つ働きをしてくれるヌルヌル系の4つに分けることができます。食事はできるだけ多くの食材をバランスよく食べることが健康の秘訣なので、これら4つからピックアップして食べましょう。
腸活食品がお腹に合わない
お腹の不調を持つ日本人の数は約1700万人にも上ると言われています。お腹が張ったり、便秘や下痢、おならが止まらないなどの症状に苦しむだけでなく、腸の不調は肌の状態にも悪影響を及ぼします。
そのため腸に良い、納豆やヨーグルトや発酵食品を食べることを心掛けている方も多くいますが、こうした腸活食品がお腹に合わない方もいます。腸活をすればするほどむしろ腸内環境が悪化していくタイプの人います。あらゆる健康法に言えることですが、多くの人が実践する健康法が全く合わないということがよく起こります。
腸活を続けていても一向に腸内環境がよくならない方は、まずは悪玉菌の餌になる糖質の摂取を控えることが大事です。腸内環境には、悪玉菌、日和見菌、善玉菌の3種類が存在していますが、悪玉菌が便秘や下痢を引き起こしたり、おならの原因となるガスを大量に発生させたりする菌です。ただ最近では悪玉菌が悪さだけをするわけではないということが分かっているので、完全に悪玉菌を排除してしまえば良いというわけではありません。
悪玉菌の餌となり、腸内環境を悪化させるのは高カロリーかつ糖質過多、脂質過多な食事、つまりジャンクフードです。またフルーツジュースを含め、甘い飲み物や甘いお菓子というのは腸内環境を乱します。当然ながら加工食品もNGです。
また、ヨーグルトや納豆などの発酵食品や野菜に含まれている水溶性食物繊維は、確かに健康に良い腸活食品です、腸が整っている人であればこれらは善玉菌の餌となって腸内で有効に働いてくれるはずです。しかし腸が弱っていて、悪玉菌優勢の人の腸にこれらの餌が入ってくると、悪玉菌が増加し大量のガスを発生させてしまいます。
このように小腸で吸収されづらく大腸まで届いてしまい悪玉菌の餌になってしまう糖質をFODMAPと言います。FODMAPは、腸内で吸収されにくいという性質を持っているため腸内に糖質がどんどん溜まっていくことになります。その結果、腸内の糖質の濃度が上昇することになり、ドロドロの糖質たっぷりの液体が小腸内に溜まり、その液体を薄めようと血管からどんどん水分が小腸の中へと流れ込んでいくことになります。それが下痢になってしまいます。
そして、そのまま大腸へと向かうと今度はその糖質を悪玉菌が爆食することになります。すると大量のガスが発生し、お腹が張るといった症状やおならが止まらないという症状、また腸管がうまく動かなくなり便秘になってしまうという人も出てきます。
腸内環境改善の手順
腸内環境を改善するためには明確な手順があります。それは善玉菌優勢の環境を作る、そして善玉菌を増やす2ステップです。これを理解しないまま食物繊維が豊富な食品を食べても、悪玉菌がそういった餌を食べてしまうためあまり意味がありません。
今日から野菜を食べるぞと多少野菜を多く食べたところで腸内環境というのは良くなりません。特に悪玉菌が多い方の特徴としては便やおならの匂いが強いことです。まず、腸内環境を根本的に作り変えるためにプロバイオティクスサプリを摂取することがお勧めです。あまりサプリはお勧めしてはいませんが、腸内環境が乱れている場合は整腸剤や腸活サプリを継続的に摂取して腸内環境の改善を図りましょう。
その後、水溶性食物繊維を中心に腸内細菌の餌となる食品を食べましょう。また便秘に悩んでいる人は、低FODMAPを試す前に不溶性食物繊維を摂りすぎていないかをチェックしましょう。不溶性食物繊維は便の傘を増して、便秘の原因になることがあります。不溶性食物繊維を減らして水溶性食物繊維を増やすことで便秘を解消することができます。不溶性食物繊維が豊富な食材は、ブロッコリー、オクラ、さつまいも、ごぼうといった野菜、しいたけなどのキノコ類、枝豆、大豆、おからといった豆類です。
2種類の食物繊維
昔から食物繊維を摂ると体に良いと言われてきましたが、最近では何でもかんでも食べれば良いというわけではないことが分かっています。食物繊維は大きく分けて不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類があります。この2種類の食物繊維をバランスよく摂取することが腸内環境の改善のために重要です。
不溶性食物繊維は緑色の野菜に含まれている食物繊維で、不溶性食物繊維の名の通り水に溶けることができないため、便の傘を増してくれる働きがあります。一方で水溶性食物繊維はその名の通り水に溶けることで便通を良くしてくれます。水溶性食物繊維は便が通りやすくなるための循環油の働きをしていると考えれば分かりやすいでしょう。
厄介なのが水溶性食物繊維をたくさん含んでいる野菜というのはあまり多くありません。一般的に食べられる緑色の野菜のほとんどは不溶性食物繊維を含んでいます。一方で水溶性食物繊維はごぼうをはじめとする根菜や海藻などに含まれています。
発酵食品の継続的な摂取
人間の体には、本来自らを修復し病気を防ぐ自然治癒力が備わっています。しかしこの力は加齢や生活習慣の乱れによって低下し、その結果様々な病気にかかりやすくなります。
そこで重要な鍵を握っているのが発酵食品の継続的な摂取です。納豆、味噌、キムチといった発酵食品には腸内環境を整え、免疫力を高める善玉菌が豊富に含まれており、近年の研究でもその素晴らしい効果が次々と明らかになっています。
また、発酵食品は継続的に摂取することによって初めてその力を発揮します。腸の健康は免疫力と関係しており、腸内には体の免疫細胞の約70%が存在し、腸が健全に機能していればウイルスの侵入を防いで炎症性疾患の発症リスクを 低下させることができます。例えば研究では発酵食品を習慣的に摂取している人は、そうでない人に比べ、腸内での短鎖脂肪酸の産生量が多く、それが腸のバリア機能を強化し、炎症を抑える働きを持つことが確認されています。
また、発酵食品に含まれる乳酸菌やビフィズス菌は、腸内の悪玉菌を抑制し、善玉菌の割合を増やすことで腸内フローラのバランスを整えてくれます。腸内 フローラが整うことで腸の粘膜が強化され、有害物質の吸収が抑えられ、その結果アレルギー症状の軽減、自己免疫疾患の発症リスクを低下させる効果も期待されています。
さらに発酵食品の健康効果には、例えば納豆に含まれているとナットウキナーゼは血栓を溶かす効果があり、動脈硬化や脳卒中といった病気のリスクを低下させることが研究で示されています。また味噌に含まれているペプチドには血圧を下げる効果があり、キムチに含まれている乳酸菌は脂肪の蓄積を防ぐ働きがあることも分かっています。
また、特に注目されているのが腸と脳の密接な関係です。腸内環境が良好なら脳機能も向上し、認知症のリスクが低下することが明らかとなっています。実際、発酵食品の摂取が多い人は認知機能が高く、記憶力や判断力が優れている傾向があることも研究で報告されています。これは発酵食品が腸内細菌を通じ、脳の炎症を抑え、神経伝達物質のバランスを整えてくれるためと考えられています。
さらに、発酵食品にはデトックス効果も期待できます。腸内で発酵が進むこと で短鎖脂肪酸が作られ、腸の蠕動運動が活発になり、老廃物の排出が促進されます。これによって便秘の改善はもちろんのこと、体内の有害物質の排出がスムーズに行われ、肌の調子が良くなるといった美容効果まで得られます。
植物性の発酵食品
腸内細菌にもってこいの食材が植物性の発酵食品です。お腹の健康のために乳酸菌を摂取すると良いと言われていますが、乳酸菌には動物性乳酸菌と植物性乳酸菌の2種類があります。最近、動物性乳酸菌は経口摂取ではあまり腸の健康に効果がないと言われるようになってきました。ヨーグルトをはじめとする動物性の発酵食品に含まれている乳酸菌が動物性乳酸菌で、腸に届くまでに胃酸などによって分解されて死んでしまうことが明らかになっています。
一方で、漬物をはじめとする植物性の発酵食品が持つ乳酸菌を植物性乳酸菌と言いますが、こちらは胃酸などで分解されることなく生きたまま腸に届かせることができると言われています。
また、お肌と腸内環境の関係は非常に密接で、腸内で悪玉菌が優位になってしまうと悪玉菌が放出する毒素やガスが血液中に溢れ出します。血中に漏れ出した毒素が体中の様々な細胞に蓄積、やがて皮膚の表面にも現れます。こうして皮膚の表面に出てきた毒素がシミやそばかすといったお肌のトラブルの原因になっていると考えられています。
発酵していないキムチ
発酵食品として有名なキムチには、植物性の乳酸菌がたっぷりと含まれていて腸内環境を改善し、体の中から若返るという素晴らしい健康効果があると分かっています。しかしキムチには、発酵という超重要な過程を経ていないものがあります。本物のキムチというのは、白菜に天然の調味料を加えて壺漬けにし1週間ほど乳酸発酵して作られます。最近日本ではこのような発酵を経ていないキムチが売られています。
それはキムチ風の調味料に、安い白菜を漬けたものです。もちろん偽物のキムチは発酵していないため、当然最も体に良い成分である植物性乳酸菌が含まれておりません。実は恐ろしいことに日本の法律では食品表示に植物性乳酸菌が含まれているかどうかを表示する義務がなく、また発酵を経たかどうかを表示 する義務もありません。そのため見た目では、発酵されているかどうかを判断することができません。
本物の発酵キムチは、古くからの伝統的な製法によって作られているので原材料の内訳が非常にシンプルであるという特徴を持っています。白菜や唐辛子、ニンニクなど体に良い健康的自然食品だけで作られていることが特徴的です。一方で偽物のキムチにはキムチ風の味を出すために発酵調味料や増粘剤といった食品添加物が多分に含まれているケースが多々あると言われています。このような自然ではない添加物が含まれていたら、発酵されていない偽物のキムチである可能性があると疑ってかかるべきでしょう。
玄米の健康効果
玄米には大きく2つの健康効果が期待できます。その効果に低FODMAP食で不足しがちな食物繊維を摂取できる、短鎖脂肪酸の中で酪酸だけを増やすことができることが挙げられます。実は玄米は他の短鎖脂肪酸は増やさずに酪酸だけを増やすという珍しい食品です。
主な短鎖脂肪酸は酢酸、プロピオン酸、酪酸の3つですが、一般的には酢酸やプロピオン酸も健康や美容に良いとされていますが、腸の調子が悪い人にとっては害になることもあります。なぜなら過剰な酢酸やプロピオン酸は腸の粘膜のバリア機能を低下させ、そのため腸に穴が開いて血中に毒素が入り込むリーキーガット症候群や過敏性腸症候群の症状が悪化してしまうことが分かっています。
一方で、酪酸には腸の粘膜のバリア機能を高めてくれる他にも、免疫機能の改善に役立ち、全身の炎症を抑えてくれるという様々な効果があります。そのためできる限り酢酸やプロピオン酸の量は減らして、酪酸だけを増やす最適な食材が玄米です。
有機食品の新常識
最近ではスーパーなどで有機食品を見かける機会が多くなってきました。僅かな値段の差であれば、有機マークの付いた方を選んでいる方もいると思います。そこには、有機食品が体にとって良いと思っているからでしょう。
この有機とは、非常に複雑なため定義が難しく、多くの方がイメージとして、小規模農家が地元で生産していて、殺虫剤、除草剤、抗生物質や合成肥料は一切使用されず、もちろん遺伝子組み換えなどないでしょう。また有機認証を取るために時間や努力、そしてコストがかかるため有機食品はどうしても高価になってしまいます。
この有機食品の消費量は増え続けており、有機というマークをつければ売れるため、すでに大企業が参入し、一般的な食品との価格差が縮まったことにより、さらに売れ行きが良くなっています。
しかし、食の健康に関しては有機食品が非有機食品よりも優れているという科学的根拠は殆どないという研究があります。2012年に医学誌で発表された研究では、スターフォード大学の研究者たちが1996年から2009年の13 年間のうち、医学文献に発表された有機食品と非有機食品を比較したすべての研究データを総括して評価しました。223件の評価では含まれる栄養素において有機食品と非有機食品の間に意味のある違いが見出されませんでした。また両者の汚染物質の濃度についても大きな違いは認められませんでした。
さらに同じ研究者たちは他にも14の異なるグループ、述べ13802以上の被験者を対象とした研究を分析し両者の健康への影響を調べましたが、健康増進効果や疾患予防効果などの影響は見られませんでした。
実はこのスタンフォード大学の研究者たちによる研究レビューに対する意見とも見られる研究も医学誌に掲載されています。そこでは有機果物や野菜は非有機のものよりも抗酸化物質がかなり多く含まれ、合成殺虫剤の濃度が低いという点を裏付けとし、有機食品が安全で栄養価が高いと主張されています。
抗酸化物質には、ビタミン、βカロテンなど様々な種類があり、異なる部位で異なる作用をします。これらの名称を聞くと誰もが摂取すると身体に良いというイメージを持つかもしれません。しかしながら抗酸化物質を摂取すれば健康がはっきりと改善するという科学的根拠はなく、残念ながら抗酸化物質の健康改善効果や病気予防効果については一貫した研究結果が得られていません。そしてその研究に用いられた抗酸化物質は有機食品を食べることで得られると予想できる量を遥かに超えていました。そのため、それよりも少ない量の抗酸化物質を食事で得て、健康効果が発揮されるのかは疑問視する声も多くあります。
一方で、有機食品は有機食品より抗酸化物質が少なく、残留殺虫剤が含まれていることが数値として出されていますが、しかし人の健康にどのように影響するかという数々の研究結果からすれば、ほとんど意味をなさない程度と言われています。ちなみに別の医学誌等は有機農作物のタンパク質含有量が非有機農作物よりもかなり少ないことが発表されております。
何れにせよ非有機食品でも健康的な食事はでき、有機食品が占める割合は、アメリカでもまだ4%、欧州でも10%、日本ではそれよりも少ないはずです。そのため有機食品がないから食べないのではなく、非有機食品であってもしっかりと栄養バランスを考えて摂ることが大切でしょう。
サプリの基本知識
サプリメントを栄養補給や美容目的だけでなく、病気予防のために飲んでいる人も多いですが、サプリメントを必要以上に摂取すると健康に悪影響を及ぼすこともあります。過剰に摂り過ぎると肝臓の負担がかかったり、下痢や腹痛などを生じたりするものもあります。またサプリメントは効率よく特定の成分を体内に摂り込むことができますが、病気リスクを高めるものもあります。
そしてビタミンCを含むビタミン類は、私たちの健康に不可欠な微量栄要素です。私たちが健康な生活を送るためには毎日の食生活でバランスよく十分な栄養を摂る必要があります。例えば炭水化物、タンパク質、そして脂質は身体を動かすエネルギーや身体の様々な組織を作ることに利用されています。そしてそれらの栄養素を体内で活用するために必要となるのがビタミンやミネラルといった微量栄要素です。
ちなみにビタミンとミネラルは微量栄要素、炭水化物、タンパク質、脂質は多量栄要素とも呼ばれます。またミネラルは 1日あたりの必要量によって、多量ミネラル 7種類と微量ミネラル9種類に分類されています
ビタミンは体内で十分な量を合成できないため、食事から摂取する必要があり、ビタミンはエネルギー産生栄養素のタンパク質、炭水化物、脂質とは違い、人体の機能を正常に保つために必要な有機化合物です。そしてビタミンには様々な種類があり、食品に含まれている栄養そのうちビタミンと呼ばれているものには13種類があり、それぞれが体内で特定の役割を果たします。
これらは脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンの2つのグループに分けられ、脂溶性ビタミンは水に溶けにくく、油脂やアルコールに溶ける性質を持ち、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKが該当します。
水溶性ビタミンは水に溶けやすく、油脂に溶けにくいビタミンC、ビタミンB1ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸、ビオチン、この9種類が水溶性ビタミンです。ビタミンC以外はまとめてビタミンB群と呼ばれます。
脂溶性ビタミンと水溶性ビタミン
ビタミンAは皮膚や粘膜の健康維持に効果があり、視覚に関わる色素タンパク質の生成、身体の成長などに関わっています。豚や鶏のレバー、ウナギなどの動物性食品に多く含まれています。あとビタミンAの前駆体であるプロビタミンAとして人参やほうれん草などの緑黄色野菜に含まれています。
ビタミンDは、骨の健康を支え、カルシウムの吸収を促進するため、ビタミンDが欠乏すると筋肉痛、筋力低下、骨の痛みを起こすことがあります。他にも倦怠感や頭痛、脱力感、さらには認知障害を発症することがあります。世界で最も権威のある科学雑誌ネイチャーによるとビタミンDが欠乏すると肝不全、腎不全、吸収不全、感染症、心筋梗塞、妊娠中毒、不妊症、骨粗鬆、膠原病が増えると言われています。
ビタミンEは、細胞膜に存在し健康維持を助け、さらに抗酸化作用があるため細胞を損傷から守ります。様々な食品に含まれているため、極端に偏った食生活をしていない限り不足することは稀だとされています。ビタミンKは、血液の凝固に必要で、骨の健康を維持するのに役に立ちます。
また食事から摂取する他に腸内細菌によっても合成されます。またビタミンEと同じで健康で一般的な食生活をしていればビタミンKが不足することはまずないと言って良いでしょう。
一方で水溶性ビタミンのビタミンCは、皮膚や粘膜の健康維持に関わり、植物性食品からの鉄の吸収を促進する他、抗酸化作用があり、免疫系の機能を支えています。ビタミンB1は糖質代謝などの補酵素として働き、エネルギーの産生に深く関わっています。白米やパンなどが中心の食生活では、ビタミンB1不足の症状が起きる可能性が高くなり、ビタミンB1が足りなくなって引き起こされる病気に脚気があり、ビタミン欠乏症の1つで、ビタミンB1の不足によって心不全と抹消神経障害が起きる病気です。
ビタミンB2には、糖質、脂質、タンパク質のエネルギー代謝や脂質代謝の補酵素としての役割を担っている他、皮膚や粘膜の健康維持にも関わっています。
ビタミンB6は、体内でタンパク質、アミノ酸代謝に深く関わっている他に、赤血球のヘモグロビンの合成や皮膚や粘膜を健やかに保つ効果があります。そしてビタミンB12は、アミノ酸や脂肪酸の代謝の補酵素として働いており、赤血球の形成にも関与しています。
ビタミンB群のナイアシンは、別名ビタミンB3で糖質、脂質、タンパク質から細胞でエネルギーを産生する際に働く酵素サポートしています。またビタミンB5とも呼ばれるパントテン酸は、様々な食品から摂取でき、補酵素の材料としてエネルギー代謝に関与しています。そしてビオチンの別名は、ビタミンB7 あるいはビタミンHで、健康な皮膚や髪、爪を維持し、炭水化物と脂質の代謝を助ける働きがあります。ビオチンもまた一般的な食生活では不足することはないとされています。
健康リスク(研究段階)!?
ビタミンA
ビタミンAは脂溶性ビタミンの一つで、視力の健康維持、免疫機能のサポート、皮膚や粘膜の健康を保つために重要な役割を果たします。ビタミンAは、動物実験では皮膚がん、乳がん、肝臓がん、結腸がん、前立腺がんなど様々ながんに効果があるとされています。
しかし研究では、ビタミンAが入っている状態と入ってない状態この2つを目隠し試験で2種類のグループに分けて投与する実験が行われたところ、実際に乳がんの家族歴のある人たち に行ったところ、閉経前の人に対しては乳がんのリスクが低下しましたが、進行性の乳がんに対しては効果がありませんでした。また別の実験では、肺がんの発症率が28%、全死亡率が17%上がってしまいました。さらにイギリスの情報データサービスによれば、ビタミンAのサプリメントを毎日飲んでいた人は、がんの死亡率が16%も高かったことが分かっています。
またフレッドハッチンソンがん研究センターの論文によると、喫煙者、元喫煙者、アスベストに晒された労働者、計1万8314人を対象に毎日ビタミンAと体内でビタミンAに変換されるβカロテンのサプリを飲むグループと、効果のないプラセボを飲むグループの二つにランダムに分けました。
4年間の追跡調査の結果、ビタミンAとβカロテンのサプリを飲んだグループでは、プラセボ群に比べて肺がんの発症リスクが1.28倍高くなりました。さらにサプリグループは全原因の死亡するリスクが1.17倍、肺がんで死亡するリスク1.46倍、心臓病で死亡するリスクが1.26倍だったことも分かっています。
この研究では、喫煙者、元喫煙者、アスベストに晒された労働者が対象ということですが、当てはまらない人でも、ビタミンAをサプリメントで過剰摂取すると肝臓障害や皮膚の痒み、ひび割れ、頭痛、視力障害、めまい、吐き気など様々なトラブルを引き起こすため、気をつけましょう。健康良い成分だからと言って摂り過ぎてしまうと体に負担をかかります。
葉酸
葉酸は水溶性ビタミンの一種で、ビタミンB群に分類されます。DNAの合成と修復に必要不可欠な成分なので、妊娠初期や成長期など細胞分裂が活発な時期には特に重要とされています。また貧血予防や脳の毒と呼ばれるホモシステインの代謝にも役立ちます。
オスロ大学などの研究によると、経口での葉酸サプリメント摂取ががんリスクに与える影響を調査するため、19件の研究を分析し、葉酸サプリメントを摂取したグループと摂取しなかったグループを比較しました。葉酸サプリメントを摂取したグループの全体のがん発症率のリスクは7%と優位ではありませんでしたが、前立腺がんに関しては、葉酸を接種した男性の前立腺がんを発症するリスクが、サプリメントを摂取していない男性に比べて24%高いことが示されています。
葉酸のサプリが、前立腺がんのリスクを高めるメカニズムは完全には解明されていませんが、過剰な葉酸摂取が異常な細胞分裂やがん細胞の成長を促進する可能性や、メチル化パターンの異常を引き起こし、がん関連遺伝子の発現を変化させる可能性や、ホルモン代謝に影響を与えることで、前立腺細胞の増殖を促進する可能性など、いくつかの仮説があります。
この研究では1日400μgLを使用したデータ分析しています。厚生労働省による日本人の食事摂取基準に基づく推奨摂取量は成人男性、女性ともに1日240μg、妊娠中の女性の場合はその2倍、授乳中の女性の場合は340μgとなっているので、かなり多く摂取していることになります。
女性にとっては特定の状況のときに助けてくれる成分ですが、男性は摂り過ぎ厳禁で、適切な摂取量を守ること、食事からの摂取を優先することがこのリスクを回避することに繋がります。またブロッコリーや枝豆、大豆、鶏レバー、のり、緑茶などに豊富に含まれています。
ビタミンB12
ビタミンB12はDNA合成や赤血球の形成、神経機能の維持に不可欠なビタミンで、不足すると手足のしびれや平衡感覚の喪失といった神経障害、巨赤芽球性貧血、疲労感、記憶障害などの症状が現れることがあります。また胃の手術を受けた人や高齢者、消化器疾患を持つ人は、吸収が低下することがあるため、サプリや食事などで積極的に補給する必要があります。しかしビタミンB12と葉酸の組み合わせにより、ある研究ではがんリスクが示唆されています。
エラスムス大学などの研究では、ビタミンB12と葉酸のサプリメントをホモシステイン値の高い65歳以上の男女2919人に長期間摂取してもらい、骨折の発生にどのような影響を与えるかの評価をし、6.5年間の追跡調査が行われました。
その結果、ビタミンB12と葉酸のサプリを飲んだ人達は、全体のがんリスクがプラセボ群よりも高く、特に大腸がんのリスク増加と関連していたことが分かりました。この研究はがんのリスクを測るために設計されたものではないので、間違った結果が出ている可能性もありますが、別の研究でもビタミンB12と葉酸の組み合わせによって同じような結果になっているので、リスクを避けるには食品から摂り入れることをおすすめします。
葉酸とビタミンB12
この2つのビタミンは、虚血性心疾患や脳卒中、認知症の改善に効果があるとされていますが、別の研究ではエビデンスがなく、がんを増やす可能性が指摘されています。
ノルウェーで行われたコホート研究によれば、葉酸とビタミンB12を摂取している人と摂取していない人で分けて調査したところ、非摂取グループのがん罹患率が8.4%だったのに対して、摂取グループは10%でした。つまり葉酸とビタミンB12を摂取することによるがん罹患率は19%増加したことになります。
さらに死亡率は、非摂取グループが2.9%に対して、摂取グループが4%となりました。そして葉酸とビタミンB12の非摂取グループの総死亡率は13.8%、一方摂取グループの方は16.1%でした。つまり全体の死亡率でも16.7%上昇しています。
高容量ビタミンC
アメリカのがん専門クリニックによってビタミンCの効果について比較研究が行われており、大腸がん、胃がん、膵臓がん、肺がんなどの末期がん患者に対して高容量ビタミン療法を提案しました。
参加者のうち半数に高容量ビタミンC 療法を行い、もう半数にはビタミンCの入ってない療法を施しました。しかしビタミンCを投与しようとしまいと寿命には、ほとんど代わりがなかったことが分かっています。
さらに同クリニックは大腸がん、肺や肝臓に転移した患者に対し同じ実験を行ったところ、ビタミンCの大量投与グループの方が早く亡くなってしまいました。つまり高容量ビタミンCのがん抑性効果はないのが結論になっています。結局のところ病気になってから治そうとするよりも病気になる前の予防が大切です。
ビタミンB6
ビタミンB6はアミノ酸代謝や神経伝達物質の合成、免疫機能の維持など、体内で多くの重要な機能を果たす水溶性ビタミンです。不足すると免疫が下がるだけでなく、貧血や神経障害、皮膚炎などの症状が現れることがあります。しかしこのビタミンB6を、ビタミンB12との組み合わせによって、がんリスクを増加させることが示唆されています。
オハイヨ州立大学などの研究によれば、50歳から76歳の7万7118人を対象に、参加者のビタミンB群のサプリメントの使用状況と肺がんリスクの関係を10年間追跡調査した結果、女性では関連が見られなかったものの、男性の場合、ビタミンB6とB12のサプリメントを使用している人は、使用していない人に比べて肺がんリスクが30%から40%も増加しました。
また10年ぐらいビタミンB6を1日20mg以上摂取している男性は82%、ビタミンB12を1日55μg以上摂取している男性は98%リスクが高まりました。長期間、その量を飲んでいる人たちは、リスクが2倍になり、さらに喫煙者の男性となれば、もっとリスクが高くなる傾向があり、ほぼ3倍から4倍に増加していました。
このような結果になる原因については、また完全には解明されていませんが、DNAの働きに関わる重要な栄養素であることや、細胞の成長や分裂への影響などが、がん細胞の増殖を促進する可能性があると考えられています。
これも食事から摂った方が良く、ビタミンB6は鶏胸肉や鶏ささみ、マグロ、サーモン、豚や鶏のレバー、大豆、バナナ、ジャガイモなどに、ビタミンB12はサバ、イワシ、サケ、あさり、ホタテ、牛や鶏のレバー、牛肉、卵、ヨーグルトに多く含まれています。
ビタミンE
ビタミンEは脂溶性のビタミンで、強力な抗酸化作用を持つ栄養素です。細胞の損傷を防ぎ、慢性疾患のリスクを低減したり、免疫機能や血管の健康維持に役立ちます。
ビタミンEは強力な抗酸化物質ですが、過剰な摂取により、がんリスクを増加させる酸化ストレスを引き起こしたり、細胞の制御を乱し、異常細胞の増殖を引き起こすことが考えられます。特にビタミンEは脂溶性ビタミンで、体内に蓄積されやすいため、長期間にわたる過剰摂取は、脳卒中や免疫低下、出血リスク増加などその他の健康リスクをもたらすことがあります。
また出血性脳卒中は増加すると見られており、そして1日400 IUつまり267mg以上ビタミンEを摂取した場合、前立腺がんのリスクが上がると考えられています。さらに目隠し試験の結果、ビタミンEの単独併用は全死亡リスクが増加するという結果が出ています。
健康維持に欠かせない栄養素であることは間違いありませが、ワシントン大学が50歳から76歳までの男女7万7721人を対象に行った調査では、ビタミンEのサプリメントを毎日100mg増やすごとに、肺がんのリスクが約5%増加することが示されています。特にタバコを吸っている人では、同じ量のビタミンEを摂取すると、肺がんのリスクが約11%増加することが分かっています。
ビタミンEは、抗酸化物質であり細胞へのダメージも防ぎ、虚血性心疾患や心臓病の予防効果もあるとされていますが、実は科学的根拠はないとも言われています。また加齢性黄斑変性や白内障などの目の疾患に利き目があると言われていますが、別の研究ではエビデンスがないとされています。
ビタミンD
ビタミンDは、カルシウムの吸収を手助けしたり、骨の健康を維持する一方で、ビタミンDは、がんの罹患率や死亡率を下げる可能性があるビタミンとして研究されています。最近の研究で、ビタミンDの適切な血中濃度が、がん患者の全死因死亡及びがん特異的死亡のリスクを低減させることが示されています。
例えばビタミンDが不足するとがんの死亡率が1.7倍に増加する研究があります。逆にビタミンDの摂取量が十分なら、がん患者の死亡率が0.5倍に下がるという別の研究もあります。またビタミンDサプリを毎日摂取したグループは、プラセボグループに比べてがんの種類に関係なく、がん死亡率が12%低く、70歳以上では17%低下していたという研究結果もあります。
他にも、血清25-ヒドロキシビタミンDの値が、75nmol/Lまで高くなると全死因死亡及びがん特異的死亡のリスクが優位に低減しています。このように様々な研究が、ビタミンDとがんについて相関関係があることを示しています。
一方で、国立がん研究センターもビタミンDの血中濃度が下がれば下がるほどがんの罹患率が上がると考えています。具体的には、40 nmol/L以上が充分で、40 nmol/L以下が不足し、20 nmol/L 以下だと欠乏症にあたり、この状態ではがんの罹患率が1.4倍になった人もいます。
このビタミンDが豊富な食品は、天日干しの椎茸、焼きクラゲ、魚類ならシャケやイワシ、他には卵黄などが挙げられます。また直射日光が皮膚に当たるとコレステロールからビタミンDが生成されるため日光浴でもビタミンDが得られます。
カルシウム
カルシウムは、骨粗鬆症のリスクが高い人、高齢者、出産後の女性など、特定の健康状態にある人はカルシウムのサプリメントを必要とするかもしれませんが、血液検査などで必要量を正確に把握しておかないと、メリットよりもデメリットの方が上回ります。
タフツ大学による観察研究によれば、20歳以上の30899名を対象とした調査で、食品やサプリメントから栄養摂取量と死亡率や心血管疾患、がんのリスクの関連性が評価されました。この研究結果によると、サプリメントから1日当たり1000mg以上のカルシウムを摂取することは、がんによる死亡リスクの増加と関連がある可能性が示されています。
日本人のカルシウムの1日の推奨量は、年齢や性別によって多少前後しますが、成人男性の場合650mgから800mg、成人女性の場合は550mgから650mgとなっています。ちなみにこの研究はアメリカ人を対象にしていますが、アメリカにおけるカルシウムの1日の推奨摂取量は男性の場合、19歳から69歳1000mg、70歳以上が1200mgです。
女性は19歳から50歳で1日1000mg、51歳以上が1200mgとされています。したがって1000mgを超える摂取は、多くの成人にとっては摂り過ぎになる可能性があります。また過剰なカルシウムサプリの接種は腎結石や心血管疾患、消化器系の問題、骨の健康を損なうなど様々な悪影響が指摘されているので、取り扱いに注意してください。
ビタミンCと一緒に摂るとリスクのある添加物
安息香酸ナトリウム
安息香酸ナトリウムは、様々な食品に使われている人工添加物で、酸型保存量に分類されています。食べ物が腐るのは細菌やガビなど微生物が増殖するからであり、食品を長持ちさせるために、その微生物の増殖を抑えるために食品に含まれている保存量です。そして保存量には、酸型保存量と非酸型保存量の2種類があり、酸型保存量は酸性の強い食品で効果を発揮するものです。具体的には、安息香酸ナトリウムを始め、ソルビン酸やプロピオン酸など、それらの酸型保存量は食品の酸性が強いと分子の状態で存在し、その状態が保たれていると食品についた微生物の細胞膜が通りやすくなります。つまり微生物の細胞内に入り込むと、微生物の増殖で重要な代謝作用をブロックして増殖を抑えます。
一方、非酸型保存量は食品の酸性の度合に左右されず効果を発揮します。代表的な非酸型保存量はナイシンです。ナイシンは、微生物の細胞膜に穴を開けることができ、そこから微生物が生存や増殖するために必要なアミノ酸などが流れ出て、生存も増殖もできなくなります。
安息香酸ナトリウムは、食品の腐敗を防ぐ防腐剤保存量として広く使われており、アメリカでは米国食品医薬品局の規定で安息香酸ナトリウムは、一般的に安全という分類に入っています。また国際的な安全基準の規定でも1日で体重1kg あたり647から825mgの摂取なら人体に影響がないとされています。
一方で、安息香酸ナトリウムは医薬品としても使われており、アミノ酸に結合する作用があるため、尿素回路異常症の治療薬や統合失調症の療法に効果があるという研究もあります。
またクランベリーやビルベリーなどのベリー類には多く含まれており、一般的な食材にも含まれています。他にもサラダドレッシングや炭酸飲料、ジャム、漬け物、キャビア、マーガリン、シロップ、醤油など、そしてフルーツジュースなどの飲料水、栄養ドリンクにも使われています。
実はフルーツジュースや栄養ドリンクは糖分などの栄養成分が入っているため細菌が繁殖しやすくなります。つまり成分の上からも腐りやすい食品でもあり、腐らせないためにも防布剤として安息香酸ナトリウムが入っています。
確かに微量なら人体に影響がないというデータがありますが、安息香酸ナトリウムは完全に無害ではありません。安息香酸ナトリウムを2%、5%ほど入れた2種類の餌を用意してラットの動物実験をした研究があります。それによるとその2種類の餌を4週間ラットに与えて飼育したところ、5%の餌を与えたラットの全部が尿失禁、過敏状態、痙攣などを起こして死亡しています。
そして安息香酸ナトリウムと食べ合わせとして危険なのがビタミンCです。ビタミンCも安息香酸ナトリウムも化学物質ですが、ビタミンCと安息香酸ナトリウムが反応するとベンゼンという物質ができます。ベンゼンは発がん性物質であり、京都大学の論文「環境毒性物質とヒトがん原遺伝子との反応による発がんとその予知」で、その発がんするメカニズムが解明されています。安息香酸ナトリウムとビタミンCが一緒に摂取されると、ベンゼンが生成されることは以前から分かっていて、実際にイギリスでは清涼飲料水からベンゼンが検出されて問題になったこともあります。ベンゼンは体内で異物として残り、特に骨髄に影響を与えることが指摘されています。
日本では食品のベンゼンに法定の基準値ありませんが、WHO飲料水ガイドラインではベンゼンに関して10 ppbというのが基準値として目安になっており、それを超えてベンゼンが検出された食品があった場合、厚生労働省は販売業者に分析結果を通知して回収の要請を行うことになっています。
とにかく添加物の項目に安息香酸ナトリウムが書いてあれば、その食品は避けること、飲み物を買う場合は水や無糖の炭酸水を選ぶこと、そうやって安息香酸ナトリウムが含まれていないものを選んで摂取量を減らすことが大切です。
加工肉を食べるならビタミンCも摂る
亜硝酸ナトリウムは、主に食品保存量として使われ、食肉品の色保ち、ボツリヌス菌などの有害な細菌の繁殖を抑える効果があります。しかし亜硝酸ナトリウムの摂取にはいくつかのリスクがあります。
亜硝酸ナトリウムの毒性は、主に2つの側面があります。まず1つ目は、血液中のヘモグロビンに対する影響です。亜硝酸ナトリウムが体内に入るとヘモグロビンがメトヘモグロビンという物質に変化します。メトヘモグロビンは酸素を運ぶ能力がなく、つまり血液が酸素運べなくなってしまいます。これが進行するとメトヘモグロビン血症という状態になり、体内の酸素供給が不足してしまいます。その主な症状としては頭痛、めまい、息切れなどが挙げられます。
2つ目は、亜硝酸ナトリウムがニトロソアミンという発がん性物質に変わる可能性があることです。亜硝酸ナトリウムが胃の中でアミンと反応するとニトロソアミンが生成され、このニトロソアミンは強力な発がん性物質として知られていて、長期間に渡って摂取すると癌のリスクが高まります。
実験では、動物にニトロソアミンを投与すると肝臓や胃にがんが発生しやすくなることが確認されています。そのため人間も同様にニトロソアミンを長期間摂取すると癌のリスクが高まると考えられています。つまり亜硝酸ナトリウムが多く含まれる食品を大量に摂取することはリスクがあります。
この亜硝酸ナトリウムの使用は、各国で厳しく規制されており、日本では食品衛生法により亜硝酸サナトリウムの使用量は食品1kgあたり0.07g以下と定められています。
そしてニトロソアミンは、亜硝酸ナトリウムが特定の条件化でアミンと反応して生成される物質です。具体的には、亜硝酸ナトリウムが胃の中に入ると胃酸と反応して亜硝酸に変わります。この亜硝酸が食物中のアミンと反応するとニトロソアミンが生成されます。特に焼肉やベーコンなどの高温で調理された食品にはアミンが多く含まれているから注意が必要です。
このニトロソアミンの生成を抑えられる1つの方法は、ビタミンCを一緒に摂ることです。ビタミンCは亜硝酸ナトリウムとアミンが反応するのを阻止する働きがあります。そのため加工肉を食べる時には、新鮮な野菜や果物を一緒に摂ると良いでしょう。ビタミンCが多く含まれる食品には、オレンジやレモン、ブロッコリー、パプリカなどがあります。
免疫ビタミンの健康効果
白米では取り入れられないものが免疫ビタミンです。玄米は白米より栄養学的に良いと言われるのは、玄米は白米に比べてビタミンが2倍から5倍、ビタミンEは14倍あり、特にビタミンEはたくさん含まれています。一方、ミネラルは白米に比べて約2 倍から5倍、食物繊維に至っては6倍も含んでいます。そして白米では摂り入れられないものが免疫ビタミンです。
免疫ビタミンとは
免疫ビタミンは、私たちの皮膚とか粘膜の表面にはいつも巡回を行っているマクロファージ、または樹状細胞がいます。この細胞は巡回をして、異物が付くとこれを捕まえたり、攻撃して食べたりします。これを自然免疫と言います。一方でマクロファージ樹状細胞は獲得免疫と言い、見つけた侵入者を体全体に指名手配をする役割も担っています。
その中でT細胞は、ウイルスやバイ菌が細胞の中に潜んでいる時に、その細胞ごと全部破壊するような役目をしています。またB細胞は、敵に対する抗体を準備して、一斉にそれで攻撃します。これを獲得免疫と言います。実は自然免疫は絶えず巡回していて、外敵がいると、それを無差別に捕まえているのではなく、病原菌を見分けていることが分かっています。これがToll様受容体(TLR)と言います。
これはハエは、汚い中で生活していてもカビが生えてきません。体にカビが生えれば死んでしまいますが、このカビを撃退していたのがToll受容体(TLR)の表面にあるリセプターです。そして私たち哺乳類にもToll様受容体(TLR)があることが分かっています。その中のTLR4が細菌の外膜を認識していることが明らかになっています(2011年ノーベル賞)。
実は、がんに対しての受容体も存在しており、炎症が生じている細胞から漏れてきたタンパク質に対して攻撃するように私たちの体を守ってくれています。これを免疫ビタミンと呼びますが、ビタミンの定義は微量で私たち体の生理機能や代謝を調節して栄養素です。しかも私たちの体の中では生成されない必須栄養です。
この免疫ビタミンは、玄米、葉物野菜、根菜類、海藻類に含まれています。植物が生きている周りには、たくさんのグラム陰性菌(色素で染まりTLR4に結合する)がおり、グラム陰性菌が細胞の外膜の破片(LPS)が付着しています。そしてマクロファージや樹状細胞の受容体に結合すると外敵がやってきたと判断して撃退します。一方でグラム陽性菌(色素に染まる)にはペプチドグリカンという細胞膜を持っており、その一部が受容体にくっつくと免疫反応を発揮します。このように、これらの食べ物には免疫ビタミンが付着しているため、そういうものを食べれば、免疫力が上がって健康になれることになります。
そして白米は、LPSが付着している米ぬかを全部取り去ってしまうため、このLPSはほとんどついていません。しかし玄米であればLPSが付着しています。根菜であれば、なるべく皮を剥かずにそのまま泥を落として調理し、葉物はできることなら生で頂いた方がより効果が高くなります。もし農薬を使っていると、このグラム陰性菌が全て死滅しているため、故に農薬を使ってない無農薬野菜を摂る方が免疫ビタミンの免疫力がアップすることになります。
ビタミンC化粧品の優れた点
ビタミンCがたっぷり配合さらていることで人気なのがドクターシーラボのVCエッセンスローションとロート製薬のメラノCCです。
メラノ CCは有効成分として、3-O-エチルアスコルビン酸、グリチルリチン酸2Kなどの抗炎症のものが入っており、3-O-エチルアスコルビン酸というビタミンCの誘導体がシミを抑制し、美白の有効成分が入っているため、美白化粧水になっています。ただ中身を見てみると、その他の成分でアスコルビン酸、つまりピュアビタミンCが入っており、有効成分としてはビタミンC誘導体にピュアビタミンCを加えて作られています。
シーラボのVCエッセンスローションは、まず入っているビタミンCがAPPSというビタミンCになっています。これもビタミン C誘導体の1つで、メラノCCが水溶性であるのに対し、水溶性でもあり脂溶性でもある両親媒性と呼ばれるビタミンC誘導体に、3-O-エチルアスコルビン酸も入っています。何も共通いしているのは、3-O-エチルアスコルビン酸が配合されており、ピュアビタミンCか、APPSという両親媒性のビタミンC誘導体に違いがあります。
ピュアビタミンCは、抗酸化力も高く、皮脂の抑制効果、それ自体に美白効果も高くなります。しかし安定性(肌に入っても酸化してしまう)が良くなく、また肌への浸透という意味ではなかなか浸透しづらいこともありました。そこで考えられたのがビタミンC誘導体で、誘導体にすると肌に浸透しやすくなり、肌の奥まで届けられるようになります。また浸透だけではなく、ビタミンCが力を発揮できる場所に届き、しっかり働くことも可能となります。
このようにビタミンCは、その還元力の強さにより、通常を肌に乗せた時にすぐにその力を発揮してしまうため、肌の奥に入った時に力を出すようにビタミンC誘導体が開発されました。また安定させたり、浸透させるためにビタミンC誘導体としていろんな飾りをつけるので、肌に入った時に私たちが持っている酵素によって、その飾りを切ることで初めてアスコルビン酸になり、肌の奥で力を発揮します。
このアスコルビン酸には活性する部位が2つあり、それがリン酸エステル結合とエステル結合(パルミチン酸)です。前者のリン酸を外すのがフォスタファーゼという酵素で、後者がエステラーゼという酵素です。何も角層や表皮にたくさん存在しており、初めて2つの結合が外れてAPPSがアスコルビン酸になって働くのです。
一方でメラノCCは、アスコルビン酸をしっかり入れているのに安定する技術が入っています。通常ピアビタミンCにアスコルビン酸を入れると活性が落ちていきますが、安定性をさせてきちっと肌に届けることが出来ます。
APPSに関しては、ビタミンC誘導体の中では若干安定性が悪くなりますが、それを安定させていることと、高濃度に入っていることがポイントです。ちなみにアスコルビン酸とAppsは、倍以上値段も違います。
これらを踏まえて、ピュアビタミンCは活性が強いため、例えば紫外線によって炎症が起こった場合、肌がメラニンに作れと指令を出している時には適しています。また皮脂や毛穴が気になる人、シミを予防がほしい人、中でも皮脂が多い系の毛穴の人には断然良いでしょう。
一方でAPPSは、浸透が奥まで届きます。アスコルビン酸が真皮まで届かなければコラーゲンやエラスチンの産生は促されません。そのためAPPSが高浸透型と言われる理由は、肌の中にある酵素によって外されるため、アスコルビン酸という形で肌の奥まで届くところです。
特に肌のハリに効き、またナイアシンアミドが入っているので美白にもつながります。そのためシミよりは全体的な透明感に良く、ナイアシンアミドで表皮のくすみ、メラニン系をケアして真皮にAPPSが届いてコラーゲンやエラスチンを増やして、全体的に透明感を上げます。さらにハリがなくなってできるようなたるみ毛穴にも良いでしょう。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。