栄養学の基礎知識

    栄養学の基礎知識

    栄養素の中でも特に重要とされているのが3大栄養素がタンパク質、炭水化物、脂質です。私たちの体は、水分を除くとほとんどがタンパク質です。筋肉や骨、内臓、髪の毛、血液など体のあらゆる部分の材料であり、脳の神経伝達物質、ホルモンや免疫細胞、抗体なども全てタンパク質が材料となっています。これらタンパク質、炭水化物、脂質の3大栄養素にビタミンとミネラルを足したものを5大栄養素と言います。

    3大栄養素

    日本人のタンパク質の摂取量は戦後直後の時代よりも減っており、その原因に豆腐や納豆、味噌といった大豆食品の摂取量が減っていることが挙げられます。タンパク質の摂取量が減ると筋力が落ちるのはもちろん、不眠症や貧血、疲労感、免疫力の低下、肩こりや腰痛など様々な悪影響が現れます。

    炭水化物=糖質と思っている人も多いですが、炭水化物は糖質と食物繊維の組み合わせでできています。また炭水化物食品はビタミンやミネラル、ポリフェノールなどの栄養素もたっぷりと含まれています。私たちの健康に悪影響を及ぼすのは、白米やパン麺、白砂糖や果糖ブドウ糖液糖などの精製された糖質の摂りすぎです。精製された糖質は血糖値を急上昇させ、血糖値が急上昇すればインスリンが過剰に分泌されて、逆に低血糖状態になったり、活性酸素が発生して体の酸化を促進させたり、余った糖が脂肪として蓄積されたりします。

    脂質は食品に含まれている油脂成分のことです。油自体は、体のエネルギー源やホルモンや細胞膜の材料になったり、生命維持には欠かすことができない栄養素です。この油は飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分かれ、抗炎症作用のあるオメガ3や体内の組織を形成するオメガ6は健康に欠かせません。この飽和脂肪酸の中でも中鎖脂肪酸は疲労回復や脳の働きの改善効果が期待できます。一方でラードやバターなどの動物性由来の脂肪酸は、脂肪として蓄積されやすいので摂取量は控えめにしましょう。

    5大栄養素

    タンパク質、炭水化物、脂質の3大栄養素にビタミンとミネラルを足したものを5大栄養素と言います。ビタミンは3大栄養素と違って体を構成する成分でもエネルギー源でもありませんが、代謝をスムーズに行うために必要を不可欠な栄養素です。

    例えば、エネルギーを作るときやタンパク質が体の組織になるとき酵素が働いて化学変化が起こります。この化学変化を代謝と言い、代謝が働くためにビタミンやミネラルが必要になります。ビタミンは全部で13種類あり、脂溶性のビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、水溶性のビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ナイアシン、パントテン酸、 ビオチン、葉酸、ビタミンCです。因みに13種類のビタミンの中で体が必要とする量が多い順は、ビタミンC2、ナイアシン、ビタミンEです。ビタミンCやナイアシンは水溶性ビタミンですぐに体外に排泄されてしまいます。

    もう一つ私たちの体に欠かせないのがミネラルです。そもそも人は約60種類の元素の組み合わせでできており、内訳は酸素65% 、炭素18%、水素10%、窒素3%です。この4つの元素を組み合わせることで体の96%がつくられ、残り4%の元素がミネラル成分です。中でも健康維持に必須とされているミネラルは 16種類あり、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、リン、硫黄、塩素、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素、セレン、クロム、モリブデン、コバルト、これらが必須ミネラルです。ミネラルの働きは様々あり、骨や歯の材料になったり、酵素の成分になったり、代謝を正常化する働きがあります。

    また、ビタミンやミネラルの他にも食物繊維やフィトケミカルといった微量栄養素もあります。食物繊維といえば腸活に欠かせない栄養素で、食物繊維は微量栄養素と呼ばれる場合と炭水化物に含めて必須栄養素と呼ぶ場合があります。

    フィトケミカルは果物や野菜、豆類、海藻などの植物に含まれている成分で、ビタミンやミネラルとは別の栄養素です。有名なのは人参に含まれてβカロテンやトマトに含まれているリコピンなどのカロテノイド、ブルーベリーに含まれているアントシアニン、大豆に含まれているイソフラボンなどのポリフェノールがフィトケミカルです。基本的にフィトケミカルは抗酸化作用を持っており、果物や野菜、豆類、海藻を積極的に食べている人は寿命が長くなったり、癌になりにくいといった研究結果が世界中で発表されています。

    魚・肉・野菜の栄養素

    魚(高脂肪魚類)

    年々日本人の魚の摂取量が下がっており、2001年には1人当たりの魚の年間消費量が40kgだったのが2020 年には年間消費量が23.4kgにまで減少しています。魚介類は、タンパク質だけではなくビタミンやミネラルの宝庫で、例えば小骨まで食べられる小魚はカルシウムが豊富であり、シジミは鉄分やオルニチン、牡蠣は亜鉛やタウリン、鮎や鰻はビタミンA、青魚はビタミンD がたっぷりと含まれています。特に青魚や鮭に多く含まれているオメガ3脂肪酸は血液をサラサラにしてくれる他、血栓の予防、抗炎症作用、高血圧の予防などに効果があります。

    また高脂肪魚類は、いわゆる青魚や鮭、マグロなどの脂質が豊富な魚は、がんのリスクを低下させてくれるということが分かっています。実際、大規模な研究では魚の摂取量が多いほど消化器系がんのリスクが低いことが示されています。また47万8040人の成人を追跡調査した別の研究では、魚をたくさん食べると大腸がんの発症リスクが低下するということが分かっています。脂肪分の多い魚が、がんのリスクを低下させる効果があるのは、ビタミンDやオメガ3脂肪酸などがんのリスク低減につながる重要な栄養素が含まれているからです。

    お肉は飽和脂肪酸が多く含まれているため、食べ過ぎれば肥満の元にもなり得ますが、タンパク質を効率よく摂取できる代表的な食材です。タンパク質は体内で長期間貯めておくことができないため、毎回の食事でしっかりとタンパク源を確保しておくことが健康には欠かせません。

    また、豚肉には疲労回復効果を期待できるビタミンB群が豊富に含まれおり、牛肉の赤みや羊肉にはカルニチンと呼ばれる脂肪燃焼効果がある栄養素が含まれています。そして鶏胸肉に含まれているイミダペプチドには乳酸を分解して、疲労感を減らす効果や活性酸素を抑えるアンチエイジング効果も期待できます。

    野菜

    野菜を選ぶときはできるだけ旬を意識するようにしましょう。その理由は旬の野菜ほど美味しくて栄養価が高いからです。野菜を栄養面から分類すると、認知症やがんの予防効果で注目を集めているキノコ類、強力な抗酸化作用で体の老化を防いでくれる赤い野菜、ベータカロテンや葉酸が豊富で抗酸化作用が強い緑の葉っぱ、ネバネバで血糖値を正常に保つ働きをしてくれるヌルヌル系の4つに分けることができます。食事はできるだけ多くの食材をバランスよく食べることが健康の秘訣なので、これら4つからピックアップして食べましょう。

    腸活食品がお腹に合わない

    お腹の不調を持つ日本人の数は約1700万人にも上ると言われています。お腹が張ったり、便秘や下痢、おならが止まらないなどの症状に苦しむだけでなく、腸の不調は肌の状態にも悪影響を及ぼします。

    そのため腸に良い、納豆やヨーグルトや発酵食品を食べることを心掛けている方も多くいますが、こうした腸活食品がお腹に合わない方もいます。腸活をすればするほどむしろ腸内環境が悪化していくタイプの人います。あらゆる健康法に言えることですが、多くの人が実践する健康法が全く合わないということがよく起こります。

    腸活を続けていても一向に腸内環境がよくならない方は、まずは悪玉菌の餌になる糖質の摂取を控えることが大事です。腸内環境には、悪玉菌、日和見菌、善玉菌の3種類が存在していますが、悪玉菌が便秘や下痢を引き起こしたり、おならの原因となるガスを大量に発生させたりする菌です。ただ最近では悪玉菌が悪さだけをするわけではないということが分かっているので、完全に悪玉菌を排除してしまえば良いというわけではありません。

    悪玉菌の餌となり、腸内環境を悪化させるのは高カロリーかつ糖質過多、脂質過多な食事、つまりジャンクフードです。またフルーツジュースを含め、甘い飲み物や甘いお菓子というのは腸内環境を乱します。当然ながら加工食品もNGです。

    また、ヨーグルトや納豆などの発酵食品や野菜に含まれている水溶性食物繊維は、確かに健康に良い腸活食品です、腸が整っている人であればこれらは善玉菌の餌となって腸内で有効に働いてくれるはずです。しかし腸が弱っていて、悪玉菌優勢の人の腸にこれらの餌が入ってくると、悪玉菌が増加し大量のガスを発生させてしまいます。

    このように小腸で吸収されづらく大腸まで届いてしまい悪玉菌の餌になってしまう糖質をFODMAPと言います。FODMAPは、腸内で吸収されにくいという性質を持っているため腸内に糖質がどんどん溜まっていくことになります。その結果、腸内の糖質の濃度が上昇することになり、ドロドロの糖質たっぷりの液体が小腸内に溜まり、その液体を薄めようと血管からどんどん水分が小腸の中へと流れ込んでいくことになります。それが下痢になってしまいます。

    そして、そのまま大腸へと向かうと今度はその糖質を悪玉菌が爆食することになります。すると大量のガスが発生し、お腹が張るといった症状やおならが止まらないという症状、また腸管がうまく動かなくなり便秘になってしまうという人も出てきます。

    腸内環境改善の手順

    腸内環境を改善するためには明確な手順があります。それは善玉菌優勢の環境を作る、そして善玉菌を増やす2ステップです。これを理解しないまま食物繊維が豊富な食品を食べても、悪玉菌がそういった餌を食べてしまうためあまり意味がありません。

    今日から野菜を食べるぞと多少野菜を多く食べたところで腸内環境というのは良くなりません。特に悪玉菌が多い方の特徴としては便やおならの匂いが強いことです。まず、腸内環境を根本的に作り変えるためにプロバイオティクスサプリを摂取することがお勧めです。あまりサプリはお勧めしてはいませんが、腸内環境が乱れている場合は整腸剤や腸活サプリを継続的に摂取して腸内環境の改善を図りましょう。

    その後、水溶性食物繊維を中心に腸内細菌の餌となる食品を食べましょう。また便秘に悩んでいる人は、低FODMAPを試す前に不溶性食物繊維を摂りすぎていないかをチェックしましょう。不溶性食物繊維は便の傘を増して、便秘の原因になることがあります。不溶性食物繊維を減らして水溶性食物繊維を増やすことで便秘を解消することができます。不溶性食物繊維が豊富な食材は、ブロッコリー、オクラ、さつまいも、ごぼうといった野菜、しいたけなどのキノコ類、枝豆、大豆、おからといった豆類です。

    2種類の食物繊維

    昔から食物繊維を摂ると体に良いと言われてきましたが、最近では何でもかんでも食べれば良いというわけではないことが分かっています。食物繊維は大きく分けて不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の2種類があります。この2種類の食物繊維をバランスよく摂取することが腸内環境の改善のために重要です。

    不溶性食物繊維は緑色の野菜に含まれている食物繊維で、不溶性食物繊維の名の通り水に溶けることができないため、便の傘を増してくれる働きがあります。一方で水溶性食物繊維はその名の通り水に溶けることで便通を良くしてくれます。水溶性食物繊維は便が通りやすくなるための循環油の働きをしていると考えれば分かりやすいでしょう。

    厄介なのが水溶性食物繊維をたくさん含んでいる野菜というのはあまり多くありません。一般的に食べられる緑色の野菜のほとんどは不溶性食物繊維を含んでいます。一方で水溶性食物繊維はごぼうをはじめとする根菜や海藻などに含まれています。

    植物性の発酵食品

    腸内細菌にもってこいの食材が植物性の発酵食品です。お腹の健康のために乳酸菌を摂取すると良いと言われていますが、乳酸菌には動物性乳酸菌と植物性乳酸菌の2種類があります。最近、動物性乳酸菌は経口摂取ではあまり腸の健康に効果がないと言われるようになってきました。ヨーグルトをはじめとする動物性の発酵食品に含まれている乳酸菌が動物性乳酸菌で、腸に届くまでに胃酸などによって分解されて死んでしまうことが明らかになっています。

    一方で、漬物をはじめとする植物性の発酵食品が持つ乳酸菌を植物性乳酸菌と言いますが、こちらは胃酸などで分解されることなく生きたまま腸に届かせることができると言われています。

    また、お肌と腸内環境の関係は非常に密接で、腸内で悪玉菌が優位になってしまうと悪玉菌が放出する毒素やガスが血液中に溢れ出します。血中に漏れ出した毒素が体中の様々な細胞に蓄積、やがて皮膚の表面にも現れます。こうして皮膚の表面に出てきた毒素がシミやそばかすといったお肌のトラブルの原因になっていると考えられています。

    玄米の健康効果

    玄米には大きく2つの健康効果が期待できます。その効果に低FODMAP食で不足しがちな食物繊維を摂取できる、短鎖脂肪酸の中で酪酸だけを増やすことができることが挙げられます。実は玄米は他の短鎖脂肪酸は増やさずに酪酸だけを増やすという珍しい食品です。

    主な短鎖脂肪酸は酢酸、プロピオン酸酪酸の3つですが、一般的には酢酸やプロピオン酸も健康や美容に良いとされていますが、腸の調子が悪い人にとっては害になることもあります。なぜなら過剰な酢酸やプロピオン酸は腸の粘膜のバリア機能を低下させ、そのため腸に穴が開いて血中に毒素が入り込むリーキーガット症候群や過敏性腸症候群の症状が悪化してしまうことが分かっています。

    一方で、酪酸には腸の粘膜のバリア機能を高めてくれる他にも、免疫機能の改善に役立ち、全身の炎症を抑えてくれるという様々な効果があります。そのためできる限り酢酸やプロピオン酸の量は減らして、酪酸だけを増やす最適な食材が玄米です。

    【本コラムの監修】

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    恵比寿院院長

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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