ダイエットにカロリー計算は不要

    ダイエットにカロリー計算は不要

    ダイエットするためにカロリー計算してカロリー摂取量を減らすように努力することはあまり意味がありません。つまりカロリー計算する意味はありません。

    なぜなら、私たちの体はカロリーが多ければ太る、少なければ痩せるという単純なものではないからです。食品の多くにカロリーが記載されているため、ついついそれを確認することもあるでしょう。その背景には、摂取カロリーより消費カロリーの方が多ければ痩せるという「カロリー神話」が根付いているからです。このようなカロリー基準のダイエットは古い考え方です。古い常識をアップデートしましょう。

    カロリー神話の誤解

    カロリー神話の誤解の一つに、カロリーはどんな食べ物からとっても同じカロリーであるということが挙げられます。当たり前ですが、100kcalのプリンと、100kcalの魚を同じ量を摂っても体への影響は同じであるはずがありません。このように100kcalをどんな食べ物から摂っても同じと考えるのは大間違いです。私たちの体はもっと複雑で、同じカロリーでも体重に与える影響は全く異なります。

    表示されているカロリーはどのように決まっているかというと、その値は実験室で計測された値であり、単に放出しているカロリーの燃焼量を証明しているにすぎません。人の体は実験室でもないし、計測上同じ値だったとしても、カロリーの“質”は全く異なるのです。

    食べ物の質によって、ホルモン、脳内化学物質、代謝などに全く異なる影響を与えます。このようにカロリーに“質”があり、それは体重を増やすカロリーもあれば、体重をあまり減らさないカロリーもあるということです。

    カロリー制限で体重が増える

    単純に食べる量を減らすと、むしろ体重が減るのではなく太ることがあります。その理由は消費カロリーにあります。摂取カロリーを減らすと、一緒に消費カロリーまで落ちます。例えば、消費カロリーが2000kcalで今の摂取カロリーが2200kcalだから太るので、1500kcalにすれば−500kcal分脂肪が燃焼するので痩せるというのは間違った考え方です。

    こんなことは80年前に行われた研究でも明らかになっていることです。この研究は戦争中の飢餓状態がどんな影響があるのか、回復させるためには何をするべきなのかを調べた研究です(ミネソタ飢餓実験)。被験者の普段の摂取カロリーを3000kcalから半分にして半年間生活してもらうと、肉体的に疲弊したり、精神的に落ち込んだり、代謝が落ちて冷えに悩むなど体に害を及ぼす結果が現れています。体重は予想されていた半分しか落ちていない結果になっています。安静時代謝量が40%低下し、体力も心拍数も平均体温も血圧も下がってしまうという結果が報告されています。

    体重を維持している方の場合、例えば普段の摂取カロリーが3000kcalであれば、消費カロリーも3000kcalになっているはずです。その摂取カロリーを半分にすれば、消費カロリーの不足分1500kcalは体脂肪や筋肉を燃やしてエネルギーにする必要があります。この1500kcalは体脂肪に換算すると約0.2kgになり、1ヶ月で約5kg、1年で72kg脂肪が減る計算になります。しかし実際そんなことはあり得ません。

    また、摂取カロリーを減らしているのに体重が増加するのは、摂取カロリーに合わせて体が適応して省エネの体になるため、摂取カロリーが余ってしまうからです。さらに、その状態で摂取カロリーが増えた場合、体の貯金(脂肪)として蓄えられます。それがリバウンドです。これがカロリー制限に失敗する理由であり、むしろ代謝を下げ、消費カロリーを下げ、体重を増やしてしまうダイエット法なのです。

    カロリー制限でホルモンバランスが乱れる

    ダイエットしようと思うのにできない、ですがそれは「ホメオスタシス」という体を現状維持しようとする機能があるからです。この機能が働くと、空腹ホルモンが増加して、お腹がすいたと四六時中感じやすくなり、食べても満腹になりません。さらにカロリー制限をやめてもすぐに戻らないのです。そのため消費カロリーが落ちていて、以前と同じ食事でも太りやすい体になっているのに、以前より食べてしまうことになります。さらに脳の感情を司る部位を活性化させ、意志力を発揮する部位を抑制することも分かっています。つまりカロリー制限によって、欲望に負けやすい脳に変化し、空腹を感じやすく、満腹感も得ず、消費カロリーも減るという散々な目に遭うのがこのダイエット法です。

    ダイエットには栄養バランス

    食べ過ぎたり、太りやすくなる原因は「脳」にあると言われています。食事制限は食べたいけど我慢することですが、栄養バランスを考えた食事で脳のホメオスタシス(食欲や体重を調整する機能)にアプローチすることで、脳の機能不全を解消して、自然に食欲や体重を調整することができます。

    そこで大切なのが自律神経とホルモンを整えることです。栄養バランスが良い食事は、自律神経とホルモンのバランスを整え、自然と食欲が安定して食べる量が適正になります。逆に栄養バランスが悪ければ、自律神経とホルモンのバランスが崩れて食べ過ぎてしまうのです。

    また、糖質制限をされている方も多いですが、糖質は太る、血糖値を上げると健康にもよくないことから始められます。しかし糖質制限は自律神経のバンラスを崩す典型的な栄養バランスが悪い食事方法でもあります。なぜなら糖質制限は、食べ物から糖質を摂らない分、体内で血糖を作り出す必要があります。それが「糖新生」で、タンパク質や脂肪を原料に肝臓で糖分が作られる仕組みです。この糖新生には自律神経が関与しており、糖質制限で糖新生が過剰になることで、交感神経が過剰に緊張して自律神経が乱れてしまいます。

    一方で多くの論文で睡眠時間が短い人ほど食欲が増して食べ過ぎてしまうという結果が出ています。短くなる原因は睡眠の質にも関係しており、歯ぎしり、目が覚める、肩こりがひどいなどは、寝ている時に血糖値が下がる夜間低血糖)が原因ともされています。就寝中は血糖値が下がらないように仕組みがあるのですが、ストレスや糖質制限などにより体内で血糖値を上げようとコルチゾールがつくられ、肝臓に働きかけて血糖値を維持しようとします。しかしコルチゾールは血糖値だけでなく、体全体を興奮させるため目が覚めるなど睡眠の質を下げることになり、その結果食べ過ぎてしまうのです。

    ダイエットにはメンタル安定

    「食べたいのに食べれない」というストレスはコルチゾールと呼ばれる食欲を強めるホルモンを作り出すことになります。それがカロリー制限、糖質制限、食事制限であり、それはストレスとなり、メンタルを崩す成功率の低いダイエット方法です。人は禁止にすると余計食べたくなるという心理的リアクタンスという特性があります。普段は我慢できていても、寝不足やストレスなどが重なると食欲が爆発し、我慢している分だけ反動で食べ過ぎてしまうのです。

    そのためにも栄養バランスの良い食事が大切なのですが、もっと簡単にできる方法として1日の食事の1割を甘いものにして心を満たすことです。甘いものを上手く食事の中に取り入れてメンタルを安定させた方がダイエットに成功しやすくなります。

    当たり前ですが、食事は栄養を満たすだけでなく、心を満たす作用もあります。甘い食べ物は脳内でセロトニンというホルモンを分泌して幸福感を作ってくれます。またセロトニンは食欲を抑える働きもあるため、食べ過ぎを防ぐことにもつながります。

    良質なカロリーの食べ物

    質の良いカロリーは、結論から申し上げると「たんぱく質」と「脂質」です。特に太りたくない方やダイエットをしている方ほど、なるべくたんぱく質と脂質からカロリーを摂取しましょう。

    その理由は、体のインスリン(肥満ホルモン)が増えることで太るのですが、それはインスリンが体に糖分や脂肪を蓄えるという働きをしているからです。最もインスリン量が多くなる食べ物が、砂糖、麺、パン、白米などの精製された炭水化物です。一方でたんぱく質と脂質は炭水化物(糖分)に比べて、分泌されるインスリンの量が少なくて、太りにくいからです。

    農林水産省によると1日の摂取カロリーの目安は、活動量の少ない成人女性で1400〜2000kcalです。しかしたんぱく質や脂質が中心の人と炭水化物が中心になっている人では太り方が全く異なります。

    研究では、カロリー計算せずに良質なたんぱく質と脂質を中心にカロリー摂取するだけで、カロリーや量もあまり気にせずに痩せることができるということも分かっています。ちなみにたんぱく質や脂質を中心にすれば満足感を得られるため食べ過ぎになることも少なくなります。一方で精製された炭水化物は食欲が満たされることがないため、ついつい食べすぎになるということになります。

    良質なカロリーの注意点

    良質なカロリーであるたんぱく質と脂質が多く含まれているのは魚類です。肉類の多くも良質なカロリーになりますが注意点があります。

    牧草を食べて育ったグラスフェッドビーフと穀物を中心に食べて育ったグレインフェッドビーフがあり、前者は健康に良いことが研究で明らかになっていますが、後者はその逆になります。この両者が健康に与える影響が異なるため、同じ赤み肉でも、体に悪いもの、良いものがあるのです。

    また、油にも飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸、オメガ6脂肪酸、オメガ3脂肪酸など沢山の脂肪酸がありますが、当然同じように健康に良い油と、健康に悪い油があります。この中で積極的に摂るべき油は、オメガ3脂肪酸です。

    オメガ3脂肪酸の健康効果

    オメガ3脂肪酸は必須脂肪酸と言われており、生きるために重要な脂肪酸ですが、体内でつくり出す(合成)ことができません。つまり食事から摂取するしかないのですが、日本人は圧倒的にオメガ3脂肪酸が不足しているという報告もあります。

    オメガ3脂肪酸が多く含まれる食べ物の代表格は脂肪の多い魚であるイワシ、ニシン、サバ、アンチョビ、マグロ、天然サーモンなどです。またこれらの魚には良質なたんぱく質も多く含まれています。週に1から2回程度魚を食べることによって大きな健康効果を得られるでしょう。ちなみに養殖より天然の魚は、オメガ3が多い傾向があり、有害な汚染物質で汚染される可能性が低くなるため、できれば天然の魚を選びましょう。

    魚以外では、ナッツです。特にくるみはオメガ3脂肪酸をたっぷり含んでいます。また植物性由来のくるみなどは、全死因死亡リスクが低下することも研究で明らかになっています。

    そして同じ植物性由来でα-リノレン酸(ALA)が多く含まれているのが亜麻仁油です。亜麻仁油はそのままサラダにかけて食べることをおすすめします。亜麻仁油以外でも、チアシードオイル、フラッスシードオイルなどがあり、オメガ3脂肪酸が多く含まれるオイルです。ただしオメガ3脂肪酸は酸化しやすい油のため、炒め物で利用できないため、オリーブオイルなどの酸化しにくいオイルを炒め物には使いましょう。

    バランスの悪い食事でダイエット!?

    痩せるためにはバランスの良い食べ方をしなければならないという考え自体が間違った考え方です。現代の栄養学では、日々必要とされる栄養素の量が細かく規定されており、タンパク質は1日何グラム、摂取カロリーは何calまでとか、細かな計算が必要です。厚生労働省などが示している1日の必要栄養量の表を摂ろうとすると、必然的に食事量は多くなってしまいます。

    しかし、人類の歴史を俯瞰すれば、毎日同じ量の栄養を摂って生きてきたわけではありません。自然界を見渡せれば、夏と冬で手に入る食べ物は全く異なり、必要とされる栄養素も違ってきます。つまり毎日同じようなバランスのとれた食事をすること自体、私たちの身体にとっては不自然なことかも知れません。

    現代は飽食の時代とも言われ、健康のためには意識して少食にすることが不可欠です。しかし少食にすれば1日に摂れる栄養素の絶対量は少なくなります。だからこそ少食にすればするほど食べるもの一つ一つを慎重に選ぶ必要があります。

    気軽にスーパーで買えるものとして「鯖缶」を勧めている研究者が多います。私たちの脳の60%は脂質で構成されており、その機能維持のためにはオメガ3が必要です。良質なオメガ3は青魚といった食材から摂ることが必要ですが、鯖缶には1/4食べることで1日に必要なオメガ3が十分に摂取できると言われています。また免疫力アップに欠かせないビタミンDも多く含まれています。さらに鯖缶一つで、牛乳1/2カップ分のカルシウムとリブロース1枚分のタンパク質が摂れるとも言われています。

    食事前にコップ一杯のレモン水を飲む

    白米やパン、甘いお菓子などの糖質を摂るとブドウ糖に分解されて血液に流れ込みます。糖質は血糖値を急激に上げますが、膵臓からインスリンが分泌されてブドウ糖が細胞の中に運ばれてエネルギーとして消費されていきます。しかし余ってしまったブドウ糖はインスリンの働きによって中性脂肪となって体内に蓄積し、肥満の原因になります。つまり太らないためには、ブドウ糖を余らせないように血糖値の上昇を緩やかにする必要があります。

    レモンには血糖値の上昇を緩やかにする効果があり、ブドウ糖が中性脂肪に変わるのを抑える働きがあります。国内外の多くの研究でレモンが血糖値の上昇を抑制する効果があることが確認されています。例えば食事前に30mlのレモン水を飲んだ人は、飲まない人に比べて食後30分の血糖値の上昇を20%以上も抑えることができるという研究結果があります。これはレモンに含まれるポリフェノールやクエン酸が関係していると考えられています。またレモンの香りや刺激は、交感神経に作用して満腹中枢に働きかける効果もあり、空腹ホルモンのグレリンを抑え、満腹ホルモンのレプチンの分泌を促します。さらに痩せホルモンと言われるアディポネクチンの分泌も促進されます。

    因みにレモンに含まれているビタミンCやエリオシトリンには高い抗酸化作用があります。抗酸化物質は、老化やがん細胞の増殖の原因となる活性酸素の発生を防いでくれるので、レモン水を飲むことで美容面や健康面にも良い効果が期待できます。

    ダイエットの難しさ

    ダイエットの難しさは、個人差や男女差が大きいことです。どのダイエットが自分に合うかを試すことが大切です。例えばリーンゲインズダイエットは合わなかった人が、日替わりダイエットは合っていたし、さらにイートストップイートも全然問題なかったという人もいます。世の中にある方法を試して、確かめることが自分に合ったダイエットが分かるようになります。特に女性でダイエットによる副作用が出た場合は、軽めのダイエットに変更することが大切です。

    なぜなら、ダイエットでホルモンバランスが乱れる方が2割程度いると言われているからです。例えば食欲が異常に増える、冷え性の症状が現れることがあります。ダイエットで女性の生理に関わるキスペプチンの分泌量が減ると、脳が影響を受け、その結果、生理のサイクルや代謝の乱れ、食欲爆発に繋がったりします。

    つまり、女性のダイエットでは、軽めのダイエットから試して、ホルモンバランスの乱れに注意しながら自分に合ったダイエットを選択することが大切です。もしホルモンバランスの乱れを感じるのであれば、摂取カロリー(食べる量)を減らさないようにして、食事を摂る時間帯を制限するなどしましょう。

    また、激しい運動とダイエットを組み合わせないことも大切です。身体に不調が表れているのに、さらに激しい運動で身体を追い込むのは身体にとってストレスになってしまいます。もし激しい運動を組み合わせる場合は、運動の強度を調整して短時間で行うことを心がけましょう。

    そして、タンパク質の量は意識的に増やしましょう。タンパク質を分解してアミノ酸が生成され、それが女性ホルモンの原料になります。そのためタンパク質量が不足すれば、ホルモンバランスの乱れに繋がります。

    最後に大切なのが睡眠です。ホルモンバランスはストレスに左右され、ダイエット中はストレスへの抵抗力が下がるため、特に睡眠不足でダイエットすると疲労が溜まったり、代謝が落ちたりします。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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