プラスチックケトルに注意

    2020年に発表されたアイルランドの研究によって、電気ケトルに入れた水には1Lあたり 1600万個相等のマイクロプラスチックが放出されることが分かりました。さらに同じ研究では、ケトル内部が95度に上昇するとマイクロプラスチックの放出が 1Lあたり最大5500万個に激増することも分かっています。

    このアイルランドの研究の対象となったのは電気ケトルや哺乳瓶、お弁当箱といったポリプロピレン製の日用品です。私たちの身近にたくさん存在しているプラスチック製品の中で、使うことによって食品中にプラスチックが溶け出してしまう、使ってはいけないものがあります。

    マイクロプラスチックとは

    このようなマイクロプラスチックは、環境問題を引き起こす原因の1つとして注目されており、世界中でマイクロプラスチックによる海水の汚染が問題になっています。マイクロプラスチックは定義上、直径5mm以下のプラスチックの破片のことを指し、現在世界中の海には人間が出したマイクロプラスチックが大量に漂流しています。

    地球環境においてマイクロプラスチックが問題になるのは、自然分解されるのに数百年かかると言われているからです。そして魚がそれを食べて、その魚を私たち人間が食べ、結局マイクロプラスチックはそれを生み出した私たちの人体の中に戻ってきてしまいます。

    このようなマイクロプラスチックが分解されずに体内に残留すると、体内で発がん性物質や毒性のある物質と結合することで、それらの危険な物質が体内に留まり続けることになります。こうしてがんや免疫異常、ホルモンバランスの乱れといった様々な問題が引き起こされてしまうと考えられています。

    また最近では、本来は有害で無かった天然の栄養素などがマイクロプラスチックと反応することで毒性を持ち、有害な物質に変化する可能性も指摘されています。一方で2018年に欧州消化器病学会に発表されたウィーン医科大学の研究によると、すでに私たち人間の便の中からマイクロプラスチックが検出されたことが確認されています。

    プラスチック電気ケトルの危険性

    プラスチック製電気ケトルの危険性に、溶け出したBPAが高い毒性を発揮することが分かっています。BPAとは正式名称をビスフェノールAと言い、プラスチックの表面のコーティングに用いられる化学物質になっています。このBPAは様々な研究によって水道や肝臓、甲状腺といった私たちの臓器にダメージをもたらすことが明らかになっており、既にスウェーデンやデンマークといった欧州諸国では、食器や食品梱包材への使用が禁止されています。

    さらに最近ではBPAは、ホルモンバランスを乱して肥満を引き起こす可能性も指摘されており、マイクロプラスチックよりもさらに1段階高いレベルでの危険性が疑われています。BPAは、ポリ塩化ビニルを製造するための添加物として、ありとあらゆる工業製品に広く使われています。しかしBPA対策に関して日本はヨーロッパよりも大きな遅れを取っています。ちなみにBPAはプラスチック製の食器や電気ケトル以外にもペットボトルや缶詰の内側のコーティング、レトロ食品などあらゆるプラスチック製の日用品に使われている恐れがあります。

    さらに電気ケトルから溶け出してしまうのは、マイクロプラスチックやBPAといった化学物質だけではなく、重金属の害についても指摘されています。電気ケトルの中を覗いてみるとケトルの底だけはプラスチックではなく金属でできており、この金属板が劣化しお湯の中に重金属が溶け出してしまう恐れが指摘されています。

    一般的に金属板の水に接する部分は、ステンレスで安全であると言われており、オールステンレス製の電気ケトルであれば重金属が問題になることはまずありません。しかし問題なのは金属板のさらに奥にある電気回路です。プラスチック製の電気ケトルの場合は、ケトルの底のプラスチックと金属板との接合が弱く、そこから微量の水が漏れ出してしまうことがあります。

    金属板の内部には、鉛やカドミウムといった重金属が含まれている場合もあり、それらが漏れ出すことで重篤な重金属中毒を引き起こしてしまう可能性があるとも言われています。また鉛はIARCの発がん性ランクでグループ2Bに分類されています。

    一方で、カドミウムは鉛よりもさらに危険で、骨がダメージを受けることで関節が痛くなるイタイイタイ病が挙げられます。カドミウムは非常に長い半減期を持っているため、例えば30年が経過してもまだ半分も体に残り続けてしまうことになります。

    さらにカドミウムは、年を取れば取るほど腎臓に蓄積しやすくなり、若い頃に腎臓に溜まったカドミウムが原因で腎不全になってしまう危険性もあると言われています。またIARCの発がん性分類ではカドミウムは、鉛よりもグレードの高いグループ1となっています。

    プラスチックまな板の危険性

    まな板は、日々の自炊のためには欠かせない調理器具の1つですが、特にプラスチックのまな板は、木のまな板と違って軽くて扱いやすいため重宝している方も多いでしょう。しかしプラスチックまな板は、使えば使うほど包丁によって細かい傷が付き、食べ物を切るたびにプラスチックが剥がれ、それが切った食品の中に混入してしまうことになります。

    特に問題となるのがプラスチックの中でも非常に小さなマイクロプラスチックによる害です。マイクロプラスチックとは粒子上のプラスチックのことで、近年の研究によって、私たちの体に様々な害があることが分かってきました。そしてプラスチックのまな板を使うことによって年間数千万個のマイクロプラスチックが食品に付着してしまうことが分かっています。

    2023年にノースダコタ州立大学は、プラスチック製のまな板とスチールの包丁を使って調理を行った時に発生するマイクロプラスチックの量を測定する実験を行っています。その結果、プラスチック製のまな板を使って調理をすることによって、年間7190万個という膨大な数のマイクロプラスチックが発生することが分かりました。これをグラム換算すると年間でおよそ50gものプラスチック粒子が発生しているという計算になります。

    これだけ大量のマイクロプラスチックが食品に購入して、私たちの体内に取り込まれ、体内に蓄積することで様々な悪影響を引き起こすことが分かってきています。実は直径5mm以下のマイクロプラスチックやそれよりもさらに小さなナノプラスチックは、胃で消化されないまま腸の穴を通って体内に吸収されてしまうことが分かっています。

    これは2022年に発表されたオランダの研究によっても科学的に確かめられています。この研究では健康な被験者の内、77の人の血液からマイクロプラスチックが検出されたことが明らかになっています。またイギリスの別の研究では、肺の中からマイクロプラスチックが検出されたという報告もあり、マイクロプラスチックは呼吸や食事など様々な経路によって私たちの体内に侵入してくることが分かっています。一旦侵入したマイクロプラスチックは、むしろ消化吸収されないという性質によって高い毒性を発揮します。なぜならば消化吸収されないということは、一旦体内に取り込まれてしまったマイクロプラスチックは永遠に体の中に残り続けるためです。

    こうしたマイクロプラスチックの蓄積によって神経系が狂い、腎臓の細かいフィルターにプラスチックのゴミが詰まってしまうなど様々な問題が起きてしまいます。また最近、問題視されているのがマイクロプラスチックによる内分泌攪乱作用です。私たちの体はホルモンという物質によってコントロールされており、ホルモンの中にはエストロゲンやテストステロンといった性ホルモン、そして成長ホルモンや睡眠ホルモン、幸福ホルモンなど非常に多くの種類が存在しています。これらを全て一まとめにして内分泌系と呼び、このようなホルモンバランスを乱してしまう作用が内分泌攪乱作用と呼ばれるものです。

    そしてマイクロプラスチックは付着しやすい別の物質と結合して、それを引き連れて体内に侵入してしまうことが分かっています。つまりマイクロプラスチックはいわば有害物質の運び屋になります。このような有害物質がホルモンバランスを乱すことで、様々な不調が出ると言われています。

    最近では100円均一でプラスチックまな板が買えますが、安物のプラスチックまな板は特にマイクロプラスチックが出やすく、危険であると言えます。まな板は古くから木やガラス製のまな板が安全であると言われています。

    紙コップと紙ストローの危険性

    マイクロプラスチックは、ありとあらゆるプラスチック製品から食品に混入するため、食材に注意していても食器がプラスチック性であれば、マイクロプラスチックの害を避けることはできません。一方で紙の食器であればマイクロプラスチックが食品に溶け出してしまう心配もなく、さらには使い捨てのため衛生面でも良いと思われるかも知れませんが、そこには大きな落とし穴が存在しています。

    実は、紙の食器はプラスチックの食器よりもさらに危険の恐れがあります。紙の食器は、紙だけで作られているわけではなく、紙コップの表面にプラスチックの加工が施されています。一般的な紙コップは、表面をポリエチレンというプラスチックでコーティングして作られています。そして紙コップに入れた飲み物に、マイクロプラスチックが混入することは研究によっても実証されています。

    市販されている5種類の紙コップを調査した2021年の研究では、そのうち4種類の紙コップから大量のマイクロプラスチックが溶け出すことが明らかになっています。この実験では、紙コップに85度の熱湯を100ml注ぎ、15分間放置して顕微鏡で観察しました。その結果、100mlのお湯の中に2万5000個ものマイクロプラスチック粒子が溶け出していることが明らかになりました。さらにマイクロプラスチックよりも小さいサブミクロンというサイズのプラスチックに至っては、紙コップの中に102億個も混入していたことも確認されています。

    一方で、紙コップの表面にプラスチックをコーティングするためには様々な薬剤が使われています。このような薬剤が飲み物に溶け出すことも分かってきています。2023年にスエーデンで行われた研究によると紙コップを浸した水の中で生物を育てたところ、その生物の発育に遅れが生じたことが分かりました。

    また研究では紙コップを浸す時間が長いほど生物への影響も大きくなることが分かっています。これは紙コップからフッ素加工物を始めとする様々な有害物質が溶け出し、それが水の中でイオン化するためと考えられています。フッ素化合物は発がん性や内分泌攪乱作用があることが確認されており、使用が厳しく制限されている物質です。

    環境配慮の観点からプラスチックストローが廃止され、使われているのが紙ストローです。しかし紙ストローも紙コップと同じく内側がプラスチックや様々な合成樹脂によって加工されています。そして紙のストローは、口をつける部分がどんどんふやけます。

    そのふやけた部分から非常に多くの有害物質が口の中に入ってしまうことになります。海外ではこうしたプラスチックストローや紙ストローの有害性が発覚したことで、砂糖キビストローや竹性ストローといった100%天然のストローが使われることも増えています。

    缶詰のコーティングの危険性

    ツナ缶は、貴重な魚介タンパクを手軽に摂れる食べ物として重宝されていますが、実は非常に危険な発がん性が確認されています。しかしツナ缶の発がん性はツナ本体ではなく、ツナが入っている缶にあります。なぜなら安物のツナ缶の缶詰からは、ビスフェノールAという有害な猛毒が溶け出している恐れがあるからです。

    ビスフェノールAは、缶詰の内側をコーティングするために使われる薬剤のことで、缶詰は金属のため何かしらのコーティングをしなければ当然錆びてしまいます。そこで缶詰の内側をビスフェノールAでコーティングし、腐食を防いでいます。

    このビスフェノールA は、私たちの体内に存在するホルモンであるエストロゲンによく構造が似ていることが知られています。そのためビスフェノールAは、エストロゲンが関係する乳がんや前立腺がんといった生殖器系のがんのリスクになると考えられています。実際アメリカのアイオワ大学の研究によると尿中のビスフェノールAの濃度が高い人は、そうでない人に比べ、死亡率が高くなることが分かっています。

    また、別の研究では缶詰を食べると尿中のビスフェノールA が10倍も増えた実験結果も報告されています。さらに78種類の缶詰食品を調べた研究では、90%の製品からビスフェノールAが検出されたことも分かっています。このようなことからEUでは、2024年2月食品の容器におけるビスフェノールAの使用を禁止しています。しかし残念ながら食品衛生後進国の日本では、未だにビスフェノールAは禁止されていません。

    また、ツナ缶には発がん性以外にも様々なデメリットがあることが報告されています。例えば大量の水銀による害や過酸化脂質、植物油の問題、大量の添加物による毒性といった問題を挙げられます。

    その他の危険な物質

    水道水でお湯を沸かす

    プラスチック製に限らず全ての電気ケトルや鍋、やかんなどで水道水を使ってお湯を沸かすのは健康によくありません。水道水には塩素のような有害な物質が含まれており、水道水を飲むことはこれらの有害物質を摂取してしまうことになります。例えばお風呂から上がった時に髪がパサパサにきしむことがありますが、これは塩素によるタンパク質の分解が原因であると言われています。

    また水道水には、トリハロメタンという非常に危険な物質も含まれています。トリハロメタンは発がん性があると指摘されており、IARCの発がん性分類では鉛と同じグループ2Bに分類されています。そして電気ケトルで1度沸騰させたお湯をもう1度再沸騰させると、加熱によってトリハロメタンが増加することが分かっており、再沸騰させることで基準値以上のトリハロメタンが発生してしまう恐れがあります。

    研究によると水道水を加熱することで加熱前の3.6倍にまでトリハロメタンが増えたと報告されています。実はトリハロメタンが加熱によって増えることも、沸騰によって除去できることもどちらも科学的な事実になっています。

    より正確にはトリハロメタンは、加熱によって100度未満までは上昇を続け、100度を過ぎて沸騰が始まると揮発することで空気中に散らばります。そのため水道水を鍋などで長時間沸騰させた場合は、確かにトリハロメタンを除去することが可能です。水道水中のトリハロメタンは30 から40分間沸騰させ続けることで、ほぼ完全に除去できるとされています。

    しかし、問題なのは水道水中のトリハロメタンは、沸騰直前にはむしろ急速に増加するということです。トリハロメタンが沸騰直前に急速に増加するというのは、複数の研究によって明らかになっており、沸騰した瞬間にスイッチが切れて急速に水温が低下する電気ケトルはトリハロメタンが増加してしまいます。そのため電気ケトルで同じ水道水を何度も再沸騰させていると、どんどんトリハロメタンが増えていくことになります。

    PM 2.5などの大気汚染物質

    日本には大陸から流れてくるPM2.5を始めとして、がんが発生するには十分な量の待機汚染物質が日本列島には存在すると言われています。国際が研究機関IARCはPM2.5を始めとする粒子状の大気汚染物質を発がん性グループ1に分類しています。つまり大気汚染は発がん性に関する十分な科学的証拠があることが証明されています。

    この大気汚染による肺がんのリスクについては、日本人の95.7%がWHOのガイドラインの基準値を遥かに超えたPM2.5の濃度に暴露されていることが分かっています。特にPM2.5の濃度が高い地域は、東京や大阪といった都市部だけではなく、中国大陸に近い九州や中国地方も含まれています。

    このような高いPM2.5濃度によって、実際に九州地方では肺がんのリスクが高いことが明らかとなっており、特にリスクの高い熊本市は東京、神奈川、大阪よりも肺がんリスクが高いことが分かっています。

    大気汚染が、がんを誘発するかについては2023年4 月にネイチャー誌に掲載された論文によって明らかになっています。PM2.5のような毒性のある微粒子を吸い込むと細胞でミクロレベルの炎症が起こり、この炎症によって細胞のDNAが傷ついて細胞が癌化してしまうことが分かっています。このことから日本人の喫煙率が下がり続ける一方で、肺がんによる死亡者数は右肩上がりになっていますが、この原因こそが大気汚染であると考えられています。

    そして私たちにできることは、空気清浄機や観葉植物などを置くことで室内の汚染物質を除去するのが良いでしょう。ただし空気清浄機によるPM 2.5の除去効果については諸説ある一方で、観葉植物によってPM2.5が除去できることは数々の中立的な機関による研究によって実証されています。

    様々な観葉植物によるPM2.5の除去効果を比較した実験では、アロエやゴムの木、オリズルランといった植物で最も効果が高いことが分かっています。中でもオリズルランは、汚染物質の除去効果が高いく、安くて育てやすいというメリットがあります。その他にも観葉植物には、メンタルを安定させてくれるなど様々な良い効果があります。

    【本コラムの監修】

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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