
肌の構造は真皮、表皮、角層の3つですが、研究者の中では第4の肌と呼ばれるのが「皮膚常在菌」です。皮膚常在菌は全身で約200種類あり、そのうち顔の皮膚表面には約20種類の皮膚常在菌が住んでいると言われています。
美肌菌と聞いたことがあると思いますが、顔の皮膚にいる常在菌には、善玉菌、日和見菌、悪玉菌の3種類あり、美肌の鍵となるのが善玉菌の中でも美肌菌と呼ばれる表皮ブドウ球菌です。表皮ブドウ球菌は、これまで皮膚の上にいることは分かっていましたが、2010年に日本人研究者が、表皮ブドウ球菌が美肌を作るというメカニズムを特定して美肌菌と名付けたことで一気に美容業界に広まりました。
一方で肌に悪影響を与える皮膚常在菌には、悪玉菌の代表である黄色ブドウ球菌と、基本的には害はないがバランスが崩れると悪玉菌と同様の働きをする日和見菌の代表アクネ菌があります。これらの菌は、皮膚を乾燥させて痒みや炎症、それにアトピー性皮膚炎の発症や重症化を引き起こすなど、肌トラブルとの関連性を示す報告が多くあります。
美肌菌(表皮ブドウ球菌)
表皮ブドウ球菌が美肌菌と呼ばれるのは、皮膚上の皮脂や汗を餌にして脂肪酸やグリセリンを作り出してくれるからです。脂肪酸はお肌を弱酸性に保ち、悪玉菌や雑菌の繁殖を防ぎ、グリセリンは肌の潤いを保つ働きをしてくれます。その他にも美肌菌は皮膚のバリア機能を強化してくれます。これらの働きによって表皮ブドウ球菌は美肌の働きを持つ美肌菌と呼ばれています。
この美肌菌が元気になると潤いのある肌になり、キメが整った肌、シミやシワがない肌、透明感のある明るい肌になります。そのため美肌菌を増やすことを大切にすることが、スキンケアには重要だと言われています。
汗は美肌菌に良い
美肌菌が喜ぶことは、汗をかくことです。汗というと臭いとかベタベタするとかマイナスのイメージを持っているかも知れませんが、汗には2種類あり、エクリン腺とアポクリン腺から出る汗があります。簡単に前者は匂いのない爽やかな汗、後者はギトギトした汗で、美肌菌が喜ぶ焦はエクリン腺から出る爽やかな汗です。つまり美肌菌が好む汗は、軽く運動したり、サウナに入ったりした時に出る小さな玉のようなサラサラした汗です。この爽やかな汗が美肌菌の餌になって美肌菌を増やしてくれます。この爽やかな汗には、抗菌ペプチドと言う悪玉菌を駆逐する成分が含まれているため、結果的にこの抗菌ペプチドの効果でも美肌菌の割合が増えていきます。
皮膚常在菌の研究者が提唱しているのが、お風呂上がりの少し汗をかく軽い運動をして、その汗を流さずにさっとタオルで拭くだけで寝る方法です。もちろん十分に水分を摂ったり、規則正しい生活は肌に限らず健康にとっても大事ですが、中でも美肌菌に影響を及ぼすものとして、肌バランスを正常に保ったり、健康な皮膚が作られるための栄養が大事になります。
美肌菌が喜ぶ食べ物
美肌菌が喜ぶ食べ物が低GI食品とグルテンフリー食品です。低GI食品のGI値は、食後の血糖値の上昇を示す指標です。この値が高い高GI食品は食後の血糖値を急激に上昇させる食品で、急激な血糖値の上昇は血液中のインスリンを大量に分泌させ、男性ホルモンを活発にすることによって皮脂分泌や毛穴のつまりを誘発してしまいます。
過剰に分泌された皮脂は悪玉菌の餌になりやすく、悪玉菌が優位に働くと美肌菌が増えにくい環境になります。白砂糖や白米、パン、麺類などの炭水化物は高GI食品になります。
一方で、グルテンとは小麦粉に水を加えて捏ねることでできるタンパク質のことで、グルテンが腸壁を傷つけて、肌荒れの原因となるリーキーガット症候群 などの不調を引き起こすことが分かっています。高GI食品同様に腸内環境が悪くなることで肌荒れしやすい環境を助長しかねません。
美肌菌が嫌がる睡眠不足
睡眠不足で肌が荒れる原因として有名なのは、例えば自立神経のバランスが崩れる、成長ホルモンが出にくい、血流との関係などですが、大きな原因の一つとして挙げられるのが睡眠不足で汗をかかないことが挙げられます。つまり寝不足だと寝て汗をかく時間が少なくなります。実は寝ている時に体温調整のために思っている以上に多くの汗をかいており、睡眠時間が少ないと汗の出る量が減って、結果的に美肌菌も少なくなり、肌荒れやその他の肌トラブルを招くことにもなります。
美肌菌が嫌がるW洗顔
ついつい吹き出物やニキビ、それにオイリーな肌にならないように洗顔料を使っていると思いますが、実は美肌菌や必要な皮脂まで奪いすぎてしまっている方が多くいます。特に多くの洗顔料がアルカリ性なのが原因の一つで、またそれを補うように使う化粧水や油分の多い美容液を使いすぎることも長い目で見れば美肌菌を死滅させ、乾燥肌に近づけてしまう可能性もあります。
もちろんそれぞれの利点もあり、必要最低限使用するのは問題ありませんが、こういったリスクも踏まえながら、ダブル洗顔は控えて、肌を乾燥させない程度のマイルドな洗顔料を選ぶなど意識するも大切です。また美顔ローラーやピーリング、それに角質はがしのアイテムなどは美肌菌の餌となる角質や皮脂まで取ってしまいます。何れにせよ適度な皮脂は美肌菌にとって必要不可欠なものです。
クレンジングを使い分ける
一方で、スキンケアの中でもクレンジングが一番リスクを伴うものです。メイクの油を落とすことは、皮脂の油を落とすことにもあり、皮脂がある程度ないと肌のバリア機能は正常に働きません。
乾燥肌だからあんまり落とさないよう気をつけるとか、脂性肌なのでしっかり落とすなども大事ですが、やはりメイクが濃ければ、例えばクレンジングオイルやバームなどで、ゴシゴシ摩擦をして一生懸命落とさなくても落ちるものを使い、軽いメイクならミルクでさっと落とすなど、その日のメイクや皮脂量に合わせてクレンジング方法も変えていくことが大切です。
最低限しっかり落とすバームやオイル系、軽く落とすミルク、クリーム、ジェルの2種類は揃え、自分の肌の状況やメイクの濃さによって変えていきましょう。
ぬるま湯で摩擦レス洗顔
肌表面の厚さわずか2ミリの角質層に住む美肌菌は、とにかくデリケートで熱いお湯での洗顔やゴシゴシこするようなすすぎは、肌の汚れだけでなく美肌菌まで洗い流してしまいます。お顔をすすぐ場合は擦らず、少しぬるいと感じるくらいのぬるま湯で、肌に当てるように優しくすすぐのがおすすめです。洗顔後もタオルでゴシゴシ拭かずに、タオルを顔にそっと当てて水気だけを吸い取るようにすると刺激を抑えることができます。
メイクブラシは常にキレイに
意外と見落としているのが、メイクブラシを常に綺麗していますかと言うことです。特に ファンデーションを塗るブラシやスポンジ、パフが結構汚れてる方がいらっしゃります。
1回、自分の肌につけたものをずっと持ち歩くということが結構起こると思いますが、肌の上にいる常在菌が一旦離れて皮脂と混じったりしてついたものをポーチしておくと、そこは綺麗ではないということが容易に想像できると思います。そのため、使ったら必ずその日のうちに洗っておきましょう。
その他にも例えば、クッションファンデに関しては購入した時に付属のもの2つ買うようにし、朝塗ったらそれは洗って置いて新しいものを入れて持っていくなど、ローテーションするなどを心掛けましょう。特に夏期は皮脂が多くなって、古い皮脂とファンデーションが混ざったものをお顔に乗せていると、それが肌荒れの原因になったりもします。
摩擦レスの美容鍼
以上のように、お顔は擦ってしまうような洗い方やマッサージ、過度なスキンケアは、シミを濃くしてしまったり、たるみの原因になってしまいます。一方で美容鍼は、お肌に摩擦を一切起こさず施術できることが挙げられます。美容鍼は、血流改善や血行促進できるだけでなく、お顔の凝りを緩める、むくみを取る、使えていない表情筋を動かす(パルス)、老廃物排出するなど、健やかで健康的なお肌へと導くことができます。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。