
お腹に不調を持つ日本人の数はやく1,700万人とも言われており、約7人に1人が腸に問題を抱え、お腹の張りや長引く便秘や下痢に悩まされています。また腸の状態が悪ければ、お肌の状態にも悪影響を及ぼします。
様々なメディアでお腹に良い腸活をはじめましょうと、特に納豆、ヨーグルト、キムチなどの発酵食品を摂りましょうと言われていますが、実はそれらによって腸内環境が乱されているケースがあります。
実はこういった腸活食品が合わない方がいます。お腹に良いとされる納豆やヨーグルトなどの発酵食品をたくさん食べていて、それなのに便秘に悩まされている場合は、むしろ腸活すればするほど腸内環境が悪化していくタイプの人と言えます。このような健康法はある方には合っても、自分には全く合わないということが良く起こります。つまり発酵食品を食べるだけで便秘が解消する人もいれば、発酵食品を食べることで便秘に苦しむ人もいるのです。
自分に合った腸活
腸活を続けていても一向に腸内環境が良くならず便秘に悩まされている人は、悪玉菌のエサになるような糖質の摂取を控えることが大事です。腸内には善玉菌、日和見菌、悪玉菌の3種類がいますが、この中で悪玉菌が便秘や下痢を引き起こしたり、おならの原因となるガスを大量に発生させます。ただ最近では、悪玉菌は悪さだけをしているのではないことも分かってきています。
最も悪玉菌のエサになり、腸内環境を乱して悪化させる食事が高カロリー、糖質及び脂質過多のジャンクフード(ファストフード)です。また甘いフルーツジュースなどの糖分過多のものや加工食品などもNGです。
これらは絶対避けるべき食品ですが、特に悪玉が優勢になっている腸では、発酵食品でさえ悪玉菌のエサになってしまいます。このように小腸で吸収されづらく大腸まで届かないで悪玉菌のエサになってしまう糖質のことをFODMAPと言います。このFODMAPは二糖類、オリゴ糖、単糖類、糖アルコールの頭文字を取った発酵性の糖質です。
お腹の調子が悪いのに、それを改善させる前にこのようなものが含まれた食品を摂ってしまうとさらに悪化します。これらは腸内で吸収されにくいため、腸内に糖質が溜まっていき、糖質の濃度が上昇します。この小腸内の濃度を薄めるために血管から水分が流れ込み、下痢の原因になります。そして大腸まで到達すると悪玉菌がその糖質を爆食して大量のガスを発生させます。最悪の場合、腸管がうまく動かなくなり、便秘になってしまう人もいます。このような方は、FODMAPを避けることでお腹の調子を取り戻すことができます。
また、腸活を行う際に腸に良いと言われていることを適当に一斉に行なっている方が多くいらっしゃいます。腸活には明確なステップがあり、まずは善玉菌優勢の環境をつくり、その次に善玉菌を増やすことが大事です。
日頃からバランスの良い健康的な食事生活を送っている人は、腸内環境のバランスが整っているため食物繊維の量を増やすだけで腸内環境が劇的に良くなります。一方ジャンクフードなどで腸内環境が腐敗している人が野菜を食べたところで腸内環境が良くなることはありません。このような方は、まず整腸剤やプロバイオティクスを優先的に摂って腸内環境を整えることが必要です。その後に水溶性食物繊維を中心に腸内細菌のエサとなる食事をしましょう。
3つの腸に悪い食べ物
3つの腸に悪い食べ物は、小麦、乳製品、砂糖(糖分)です。これらの食べ物で体調不良になられる方がいますので要注意です。
小麦は、腸を荒らすグルテンが含まれています。グルテンはパン、ピザ、パスタ、うどんなどに含まれており、リーキーガットの原因になると言われています。グルテンが小腸の粘膜を刺激して、細胞同士の繋がりを緩め、その小腸の粘膜から血液へ有害物質が入り込みやすくなります。またグルテンがアレルギー症状や慢性炎症を引き起こすことが分かっています。
次に乳製品ですが、ヨーグルトやチーズなどの発酵食品に含まれる乳酸菌は腸に良いと言われていますが、メリット以上のデメリットがあると考える専門家も多くいます。なぜなら乳製品にはカゼインというタンパク質が含まれており、グルテンと同じくリーキーガットを促してしまいます。さらにカゼインは、アレルギー、めまい、アトピーを引き起こす可能性が指摘されているため、グルテンフリーと同じく、カゼインフリーの食生活を心がける必要があります。
最後の砂糖(糖分)ですが、白米、スイーツなどは腸に住むカンジダ菌の大好物です。腸で繁殖したカンジダ菌を排除するため免疫細胞が集まり炎症を起こします。つまり甘いものや炭水化物は腸の粘膜を傷つける原因になります。また食後の血糖値の乱高下によって、血糖値スパイクが起こってしまいます。
腸内環境と食品添加物
腸内環境に重要なのが、プレバイオティクスとプロバイオティクスです。プレバイオティクスは食物繊維や発酵食品、オリゴ糖など腸内細菌が活性化するための餌になる食品です。一方でプロバイオティクスは、乳酸菌やビフィズス菌など腸内フローラを改善してくれる微生物です。
例えば、納豆やヨーグルトなどの乳酸菌、すなわちプロバイオティクスを増やすことも大切ですが、それは腸活の1つにしか過ぎません。腸活には乳酸菌やビフィズス菌などを多種多様で有益なプロバイオティクスを摂ること、腸内細菌の餌となる食物繊維や発酵食品などのプレバイオティクスを摂ること以外にも、食生活の改善、ストレスフリーを考えることなども必要です。
腸内環境が悪化してしまう大きな原因の一つが食品添加物の摂取です。なんと現代人が1日に摂取する食品添加物は50種類、年間で4kgも摂取していると言われています。野菜や果物、天然の魚以外のほぼ全ての食品に添加物が入っていると言っても過言ではありません。
特に食品添加物の一種であるソルビン酸は、ハムやソーセージパンやケーキなどほとんどの加工食品に含まれており、これらを毎日食べ続ければ腸内細菌が死滅し、腸内環境が悪化していきます。また納豆そのものは発酵食品ですが、付属している納豆のタレにもたくさんの食品添加物が含まれています。
因みに現代の日本人の腸内細菌は戦前の日本人の腸内細菌数の1/3にまで減っているとも言われています。このような食品添加物を避けるためには、食品のパッケージの裏側に記載されている栄養成分表示を見ることを心がけましょう。
果糖ブドウ糖液糖、たん白加水分解物、調味料(アミノ酸など)、この3つの添加物は特に要注意しましょう。これらは腸内細菌を殺し、腸の機能の一つである解毒が作用しなくなり、血液の質が低下します。そして有害物質が全身を巡るようになり、疲労感、体調不良の原因となります。
低FODMAP食
FODMAPは、発酵性(Fermentable)、オリゴ糖(Oligosaccharides)、二糖類(Disaccharides)、単糖類(Monosaccharides)、ポリオール(Polyols)の頭文字を取ったもので発酵性の糖質のことです。
一方で低FODMAP食は、腸に良いと考えられている多くの食材を取り除く食事法です。例えば便秘や下痢、腹痛を繰り返している人、腸活を試しても一向に腸内環境が良くなっている気がしない人、そしてお腹がいつも張って苦しい人が行うべき食事法です。例えば不溶性食物繊維は便のカサを増し、便秘の原因になってしまうことがあります。便秘の方は不溶性食物繊維(ブロッコリー、おくら、サツマイモ、ごぼう、キノコ類、枝豆や大豆、おからなどの豆腐)を減らし、水溶性食物繊維を増やすことで便秘が解消されます。
今、お腹の調子が悪く、低FODMAP食を実践しようとなった場合には以下の食材はなるべく控えましょう。
オリゴ糖 | ガラクトオリゴ糖 | レンズ豆やひよこ豆などの豆類 |
フルクタン | 小麦、玉ねぎ、にんにくなど | |
二糖類 | 乳糖(ラクトース) | 牛乳やヨーグルトなどの高乳糖食 |
単糖類 | 果糖(フルクトース) | 果物(りんご、もも、なし)や蜂蜜など |
糖アルコール(ポリオール類) | ソルビトール、キシリトール、エリスリトール | マッシュルーム、カニフラワー |
お腹の調子が悪く低FODMAPを実践する場合の具体的な方法は、まずは豆類や小麦、玉ねぎなどを控えることです。オリゴ糖類が多く含まれているこれらの食品は、少量であれば食べても問題がないことがほとんどです。しかしその中でも避けるべき食材が、玉ねぎとニンニクです。なぜなら玉ねぎとニンニクは、過敏性腸症候群の症状を引き起こす最大の原因になります。そして小麦を含むパン、ラーメン、パスタ、ピザ、お好み焼きなどもお腹の不調に悩んでいる人にはお勧めできない食品です。
糖類、二糖類の代表はラクトース(乳糖)で牛乳やヨーグルトといった乳製品に含まれております。一般的には乳製品は内臓脂肪を減らしてくれたり、血圧を下げてくれる効果があり、腸の調子が良い人には良い影響をもたらしてくれます。しかしお腹の調子が良くない人にとっては乳糖がお腹のトラブルの原因になります。
また、単糖類の中でも注意すべきなのがフルクトースです。別名果糖に代表される糖類で果物やハチミツなどに含まれています。実は、この果糖を消化できない人がかなりの割合でおり、果糖を腸内でうまく吸収できないためお腹がゴロゴロとしたり、下痢という症状を引き起こしてしまいます。リンゴ、桃、梨などの果物は果糖の割合が多く、お腹の調子が悪い人は避けるべき食べ物になります。逆にバナナ、ブドウ、いちごなどはお腹に安心の果物です。
一方で、ポリオール(糖アルコール)はソルビトールやキシリトールなどに代表される糖類で、マッシュルームやカリフラワーなどに含まれています。エリスリトールといった砂糖の代わりに使われる甘味もここに入ります。ダイエット食品や低糖質食品を食べるとお腹を壊してしまう人がいますが、その場合は糖アルコールの取りすぎの可能性があります。
玄米の2つの効果
低FODMAP食を実践する場合、不足がちな食物繊維を摂取できる食べ物に玄米が挙げられます。玄米は短鎖脂肪酸の中で酪酸だけを増やすことができる食材です。玄米などの全粒穀物は豊富に食物繊維を含んでおり、気軽に食物繊維量を確保できる優秀な食材です。特に玄米は低FODMAP食であり、胃腸が弱っている方に非常におすすめです。
また、酪酸やプロピオン酸などの短鎖脂肪酸は一般的には健康や美容に良いとされています。しかし腸の調子が悪い人にとっては、酢酸やプロピオン酸は良くないこともあります。なぜなら過剰な酢酸やプロピオン酸は腸の粘膜のバリア機能を低下させてしまうということが分かっています。そのため腸から血中に毒素が入り込むリーキーガット症候群や過敏性腸症候群が悪化してしまうことが分かっています。
酪酸には腸の粘膜のバリア機能を高め、免疫機能の改善、全身の炎症を抑えるなどの効果が期待できるため、できる限り酢酸やプロピオン酸を減らして酪酸だけを増やすためにも玄米はオススメです。
酪酸菌で便通の改善
酪酸菌とは大腸に存在する腸内細菌で、酪酸を作り出す細菌の総称のことを言います。腸内には100兆もの細菌が存在しており、それぞれが様々な作用を及ぼしています。それらには体内に良い作用を引き起こす善玉菌や反対に有害物質を作り出す悪玉菌、他にも腸内の状態によって良くも悪くも作用する日和見菌があります。ちなみに腸内環境の理想的な比率は、善玉菌が2割、日和見菌が7割、悪玉菌1 割と言われています。
また、善玉菌と言われる腸内に住む乳酸菌やビフィズス菌は、健康維持に必要な短鎖脂肪酸を作ります。この短鎖脂肪酸には酪酸、酢酸、プロピオン酸があり、これらは腸内に含まれる最も多い短鎖脂肪酸です。短鎖脂肪酸の役割は腸内を弱酸性に維持して悪玉菌の活動を抑成、他にも大腸の蠕動運動を促進して便通を良好に保ってくれます。また殺菌、抗炎症作用で腸のバリア機能を高め、腸管の粘液の分泌や水やナトリウムの吸収を促します。
一方で、腸の炎症の原因は細菌やウイルス感染の他に、ストレスや不規則な生活などでも発症すると言われています。日常的な暴飲暴食やストレスなどでも発症します。腸の炎症は腹痛、下痢、血便、発熱などの症状が良くなったり悪くなったりを繰り返すことが特徴です。長期間続くことで大腸がんを引き起こすきっかけになりかねません。
ちなみに、短鎖脂肪酸の役割で注目すべきは大腸に備わるバリア機能を高めるという点です。腸の中でも大腸には特に多くの細菌が存在しているため、細菌が腸の組織に接触や侵入しないように大腸の表面には分厚い粘液のバリアをまとっています。このバリアの役割は有害な細菌から腸を守っているだけではなく、大腸を通過する便を潤滑油のようにコーティングして便のスムーズな排泄を促します。
しかし、大腸の粘液層が減少するとバリア機能が低下、細菌から体を守れなくなり、腸の炎症を引き起こしたり、便の通過に支障をきたしたりします。そのため酪酸は、このバリア機能を維持する免疫にとても重要な細菌です。
また、酪酸は大腸にとって重要なエネルギー源でもあり、大腸の粘膜上被細胞が必要とするエネルギーの約60から80% は酪酸によって賄われています。実際、腸の粘膜上被細胞に酪酸を投与すると、大腸の粘液分泌が促進されるという報告もあります。また便秘の患者さんと同じ腸内フローラを再現したマウスの実験もあり、マウスに酪酸を与えると排便の頻度や便通の状態の動きが改善されています。
加えて、短鎖脂肪酸の中でも酢酸はビフィズス菌でも作り出せる菌ですが、酪酸を作れるのは酪酸菌だけです。酪酸には有害物質を作る悪玉菌の発育を抑制する働きに加えて、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が滞在しやすい腸内環境に促します。また酪酸は、大腸が活動するエネルギー源となり、腸内環境を整える働きもあります。
酪酸菌を増やす「ぬか漬け」
酪酸菌を含む食事は非常に少なく、その中でも効果的なのがぬか漬けです。近年、ぬか漬けの効果について注目されており、その理由の1つがぬか漬けに豊富に含まれる善玉菌です。一般的にぬか床には、12から30 種類ほどの善玉菌が含まれていると言われており、ぬか漬けを定期的に食事に取り入れることは腸内環境の改善につながります。ぬか漬けには、酪酸以外にも乳酸菌や酵母なども多く含まれており、特に豊富に含まれているのが乳酸菌です。
乳酸菌は、ぬかの糖質を消費し、乳酸を作る細菌で腸内細菌を正常に整えることで体内に良い影響を与えます。例えば腸内を酸性にし、消化物の腐敗を防止したり、腸の蠕動運動を補い、便秘を改善する効果があります。他にも免疫機能の向上や中性脂肪や血中コレステロール値の低下といった作用もあります。
ぬか漬けの植物性乳酸菌は、ぬか床のような塩分の多い過酷な環境で生き抜くことで体内でも高い生存力を維持できるため、動物性入酸菌は胃酸で消滅してしまいますが、植物性乳酸菌は生きたままで届いてくれます。また酪酸や乳酸菌だけでなく、ぬか漬けに含まれる酵母も良い作用をしてくれます。
酵母とは糖類を食べてアルコールや有機酸、ビタミン B群を作り出す細菌です。糖質の吸収を抑え、腸の蠕動運動を助け、便秘を改善、免疫力向上、疲労回復にも貢献してくれます。他にも新陳代謝や栄養吸収率が高まることで悪玉菌の繁殖を抑え、免疫力向上や肌質の改善し、さらにダイエット効果も期待できます。
ちなみに、ぬか床のぬかは、玄米を白米に精米する時に取り除く胚芽や表皮の部分のことです。実はこの部分にはお米に含まれるビタミンやミネラルの約95%が含まれており、またタンパク質や脂質、食物繊維、ビタミンA、ビタミンB 群など栄養素が豊富に含まれています。そのため、このぬかに含まれる豊富な栄養素がぬか床の水分に溶け、この溶けた水分が漬けた野菜に染み込み、ぬか漬けの栄養化が高くなります。
実は野菜をそのまま食べるより、ぬか床につけた方が栄養化が上がる場合もあります。例えば大根のぬか漬けの場合、生よりビタミンB1が約16倍、B2が約4倍、B6が約6倍、カルシウムが約2倍など、ぬか漬けだとほとんどが倍以上の栄養素になっています。他にもキュウリをぬか漬けにした場合、カリウムは約3倍、ビタミンB1は約8.7 倍と増えます。ただし酪酸菌を含む食べ物には、刺激臭が強い場合が多い場合が多く、ぬか漬けの匂いや味が独特で苦手な人は、酪酸菌の餌となる栄養素を含んだ食べ物を摂取して酪酸菌を育てていきましょう。
例えば食物繊維で、その中でも特に水に溶けやすい水溶性食物繊維を含む食べ物には、納豆、きなこ、ごぼう、オクラ、アボガド、海藻などがあります。どうしてもうまく食事から摂取できないという時はサプリメントを活用するのも良いでしょう。酪酸菌をサプリメントで摂取するなら乳酸菌と一緒に摂取するのがより効果的です。酪酸菌だけで摂取するよりも菌数が10数倍に培養されると言われています。
また、酪酸菌を増やすには運動も効果的です。人は食べ物を摂取すると体内で腸の蠕動運動によって奥に運ばれますが、その過程で食べ物は栄養や水分が分解吸収され、便となって排泄されます。実は腸の蠕動運動は自律神経の働き次第で、腸の蠕動運動に浮き沈みが出ます。そのためストレスや不摂生などの原因で自律神経の働きが乱れると蠕動運動は停滞してしまいます。蠕動運動が停滞することで腸内に滞在する時間が長くなり、そのことで水分が必要以上に吸収された結果、便が固くなり便秘の原因となります。
また、日常的な運動が腸の蠕動運動を促す効果が期待できると言われています。研究では、スポーツ選手の腸内環境を調査したところ、善玉菌の増加があることが報告されています。また腸粘膜は温度、圧、化学物質などの様々な刺激を受け取る構造があるとされており、運動で物理的な刺激を与えることは腸の蠕動運動の刺激につながります。
他にも、運動を習慣つけることは腸内の酪酸菌を増やすのに役立つとも言われています。研究で在宅ワーク中心の人を対象に6 週間に渡り、有酸素運動を週3回継続する実験をしました。大体30から60分程度、段階的に運動の激しさを上げながら実践してもらったところ、腸内フローラの構成に変化が見られ、酪酸を生む細菌の数が増加することが分かっています。ただし運動を継続的に行わないと腸内フローラは元の状態に戻ってしまうため、運動は週3から4回ペースで1日30から60分程度が良いとされています。主にウォーキングやサイクリングなどの有酸素運動が効果的です。
植物性食物繊維の梅干し
梅干しの効能の一つが腸を整えてくれることです。腸を整えるために、乳酸菌が大事であると言われていますが、乳酸菌には動物性乳酸菌と植物性乳酸菌の2つがあります。動物性乳酸菌は、ヨーグルトなどに含まれている乳酸菌であり、口から摂取しても大腸に届くまでに消化され死滅してしまうと考えられています。そのため、ヨーグルトを食べることの有効性はあまりないのではないかとも考えられています。
一方で、植物性乳酸菌は小腸などで消化されてしまうことがなく、生きたまま大腸まで届きます。この植物性乳酸菌は、大腸の善玉菌の餌となることで腸内環境が改善され、腸内細菌層のバランスを良好にします。
腸内環境が悪くなり、悪玉菌が大量発生してしまうと、その悪玉菌が作り出した毒素が腸の中で溜まり、腸管で吸収されて血液をめぐり全身の細胞に漏れ出します。梅干しにはカテキン酸という殺菌作用のある栄養素も含まれており、腸内の悪玉菌を抑制する働きがあるということも分かっています。
エキストラバージンオリーブオイルで便通を良くする
エキストラバージンオリーブオイルには、研究によって様々な健康効果が認められていますが、特に含まれる抗酸化物質が腸壁を保護し、腸の炎症を抑えてくれることが分かっています。この抗炎症作用により過敏性腸症候群の軽減や消化器系疾患の治療にも役立ちます。また研究段階ですが、腸のpHを正常化し、有益なバクテリアの成長を促進して、腸内細菌のバランスを整え、ガスや膨満感の軽減に役立つことが示されています。
またヨーロッパでは古くから便秘解消効果があるとして用いられています。含まれるオレイン酸は吸収されにくい性質があるため、小腸内で長く留まることができ、小腸を刺激したり、大腸内の滑りを良くすることによって便通を促すと考えられています。
そばで便秘解消
そばは、様々なメカニズムによって私たちの腸内環境を正常化してくれる効果が期待できます。そばによる腸内環境の保護作用の1つとして、豊富な食物繊維によるものが挙げられます。そばには100gあたり1.5gという豊富な食物繊維が含まれていて、その量は同じ麺類であるうどんの2倍以上を誇ります。特にそばには、食物繊維が多いというだけでなく、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維の両方がバランスよく含まれています。
不溶性食物繊維は便の傘を増し、水溶性食物繊維は便にぬめりを持たせる作用があるため、この 2つがバランスよく腸内に届かなければ、便通は良くなりません。水溶性食物繊維は、海藻やごぼうなどの限られた食材からしか摂取できないため、多くの日本人が不溶性食物繊維に偏りがちです。食べるだけで不溶性水溶性の両方の食物繊維をバランスよく摂取できてしまうそばは、便秘解消のためにうってつけの食品と言えるでしょう。
さらにそばに含まれるヘミセルロースという不溶性食物繊維は、善玉菌の餌となることで腸内細菌のバランスを整えてくれるとも言われています。腸内環境は、脳や肌など私たちのあらゆる部位の健康に密接に関係しており、腸内環境が悪化すると脳腸相関によって、その信号が脳に伝わり、集中力の低下やイライラといった精神症状が出てくると言われています。
また腸内で悪玉菌が優位になると腸で発生した有害なガスが血液中にばらまかれ、それが皮膚の細胞に吸収されことで肌荒れなどのトラブルを招いてしまいかねません。
海藻で便秘解消
海の野菜である「海藻」ですが、陸上の野菜より栄養価が高いと言われ、特にカルシウム、鉄、マンガン、マグネシウムなどのミネラルが豊富に含まれています。またフィコシアニンやカロテノイドなどの生理活性化合物が含まれ、これらの物質のいくつかは強力な抗炎症能力を持つ抗酸化物質です。この炎症を抑える作用のためにも、海藻を食べるべき大きな理由になります。
そして全身の代謝を制御する甲状腺ホルモンをつくるためのメネラルであるヨウ素が多く含まれています。ただしヨウ素の過剰摂取は甲状腺の働きを乱すことになるため、昆布などを大量に食べるのは控えましょう。
また、海藻には食物繊維も多く含まれており、例えばひじきには水溶性と不溶性の食物繊維がたっぷりと含まれています。他にものりに含まれるポルフィランの保水力が腸内フローラを改善する役割を担うことができます。
一方で食物繊維の摂取量が多い人は少ない人に比べ、早期死亡率23%減、がんの発症率17%減、食物繊維の摂取量が1日10g増えるごとに早期の死亡率が11%ずつ減ることが分かっています。この食物繊維の健康効果は、日本で行われた大規模な研究によってもその効果が裏付けられています。9万人以上の日本人を対象とした研究では、食物繊維の摂取量が多い人は、男性で23%、女性で18%の人が死亡リスクが低いことが分かっています。
余談ですが、古来から日本人は長い間食習慣として海藻を食べ続けてきたため、世界で日本人だけが腸内細菌で海藻を発酵させられる民族です。
ヨーグルトは朝NG、夜OK
私たちの腸にとって乳酸菌を摂取することが重要ですが、ただ単に乳酸菌を摂取すれば良いわけではないことが分かってきました。乳酸菌には大きく分けて動物由来の動物性乳酸菌と植物由来の植物性乳酸菌があります。ヨーグルトは牛乳からできているため、動物性乳酸菌が含まれていますが、植物性の乳酸菌と比べて胃液よって消化されやすい性質があることが分かっています。そのためせっかくヨーグルトを食べて乳酸菌を摂取しても胃酸で分解されて腸まで生きて届かない可能性があります。
このように乳酸菌が胃酸で分解されてしまうとすれば、朝は胃の中は空っぽの状態になっているため、ヨーグルトの持つ乳酸菌が直接胃酸に触れてしまいます。生きたまま届かなかった乳酸菌の死骸は、腸内で何の効果も発揮しないばかりか、場合によってはその死骸悪玉菌の餌になってしまうケースもあると言われています。朝の空腹時にヨーグルトだけを食べるのではなく、ヨーグルトは他の食べ物を先に食べて胃酸が中和された状態で飲み込むようにしてください。
逆にヨーグルトを食べるべき最適な時間が存在します。その時間帯とは夜寝る前です。私たちの胃腸は、副交感神経によって支配されています。副交感神経はリラックスした時に働くため、24時間の中で最も副交感神経が優位になるのは夜寝ている時です。つまり胃腸は朝の便通に向けて夜寝ている間によく働くようになっています。このような胃腸の性質を利用して夜の時間帯を狙って、寝る前にヨーグルトを食べることで胃腸が働いている時間に合わせて栄養素を送り込むことができます。
その結果、腸の蠕動運動が円滑になり、便の排出作用が高まります。さらに良質なヨーグルトには、タンパク質がたっぷり含まれており、無添加で糖質のない豆乳ヨーグルトであれば カロリーも低いため、夜摂取することで代謝が高まり、眠っている間に効率よく脂肪を燃焼してくれる効果も期待できます。
便秘が慢性的な疲れの原因
体調不良や慢性的に疲れの原因は、体の中には老廃物が溜まっているかも知れせん。そもそも私たちの体には毒を出す仕組みがあり、それが排便です。まずは便通を良くすることこそがデトックスの基本です。
便秘が酷くなる体内には老廃物が溜まり、腸の中で病気や老化を促進する活性酸素や悪玉菌が増加し、腸内が乱れます。悪玉菌が作り出す有害物質によって、腸の消化吸収能力が低下し、栄養素が十分に吸収できなくなり、体中の細胞に十分な栄養素が供給できなくなります。また悪玉菌が優勢になり、腸内細菌のバランスが乱れてしまうと老化が促進されたり、アレルギーが起こっ たり、高血圧や糖尿病などのリスクが高まってしまうことも分かっています。
さらに、便秘によって便が腐敗すると、その増えた老廃物は、腸の粘膜から再吸収され、全身を巡り、体の細胞や臓器などに悪影響をも齎します。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。