東洋医学で診る「冷え」と「不妊」

    東洋医学で診る「冷え」と「不妊」

    自然妊娠による出産数は30歳から徐々に減少し、35歳を過ぎると明らかに低下、40歳を過ぎると急速に減少し、45歳を過ぎると、生殖補助医療を受けても妊娠することはきわめて少ないとされています(一般社団法人日本生殖医学会データより)。

    一方で、体外受精による出産率は30歳で20%、35歳で16%、40歳で8%、45歳で0.6%になっています(日本産科婦人科学会)。もちろん加齢だけでなく、環境や生活習慣、男性側の原因などによっても大きく出産率は変化します。

    また、伝統中国医学の古典である『傷寒論(しょうかんろん)』には、「婦人の病気は過労などで虚することにより冷えが蓄積。気の巡りが悪くなり月経不順となる」や「冷えが続くと血の巡りも悪くなり、子宮の働きが悪くなり、経絡の流れも悪くなる」など「冷え」と「子宮」に関する記述が多くあります。不妊の原因として、子宮や卵巣など骨盤内の血流が停滞し、冷えを起こしていることが挙げられています。

    さらに、東洋医学では「元を辿ればあらゆる病気は冷えからくる」と考えます。この「冷え」とは、冬などに感じる寒さなどの環境的要因とは違い、様々な原因により体が冷え、血行不良が起こり、根本的に体の中に冷えが入り込んだ状態を「冷え」と示しています。

    冷えと不妊の関係

    冷えと不妊の関係ですが、医学的にはまだ良くわかっていない部分が多く、冷えがどの程度不妊につながっているかは医師や研究者の間でも様々な意見があります。そもそも西洋医学的には、冷えという病気や診断があるわけてはなく、例えば「冷え性」という統一的な定義が曖昧なのも意見が分かれる原因になっています。

    患者様からお腹を触ると冷たいため、冷えているから妊娠しづらいというお話を頂くことがありますが、皮下脂肪がつくお腹周りが触ると冷たく感じるからといって、子宮や卵巣まで冷たくなることはありません。私たちの体には、一定に体温を保つような働きによって生命を維持しており、お腹の周りが冷たくても、子宮や卵巣は温かい状態を保てています。

    しかし、冷えは血流が悪くなっている状態であり、子宮への血流が悪くなることで子宮内膜が厚くならず妊娠しにくい体になってしまうことも考えられます。このように直接的ではないにしても「冷え」は妊娠に影響があるとも考えられるため、なるべく身体は温めておく方が良いというのが一般的な認識ではないでしょうか。

    隠れ冷えは万病の元

    東洋医学には「未病」という概念があり、健康ではないが、病気とも言えない状態を指す言葉です。古くは二千年前に書かれた『黄帝内経(こうていだいけい)』に「未病」という言葉が既に使われています。その「未病」の原因として「冷え」が挙げられます。「冷え」は基本的には自覚的に感じる症状ですが、手足が冷えていても自覚症状がない人、自覚症状があるのに診察すると冷えが見当たらない人(のぼせの症状)、冷えの認識にズレが生じていることが多くあります。

    一方で、手足がなかなか温かくならない人は、自律神経の働きが乱れていることで血流の調整が上手くできていません。特に手足などの抹消の血流は、自律神経によって調節されており、ストレスなどによって交感神経が緊張していると、抹消血管は収縮して血流が悪化します。また女性の冷えは、女性ホルモンの乱れが自律神経の変調をきたしていることも多く、冷えだけでなくのぼせの症状も現れます。例えば足が冷たく、頭がほてる状態を「上熱下寒」と言い、冷えの症状の典型的な状態です。また貧血、低血圧、甲状腺の機能低下などによっても冷えの症状があらわれることがあります。

    現代人は、冷えに慣れた生活をしているケースが多く(住宅断熱性の不足など)、自覚症状のない冷えになっている方が多くいらっしゃいます。これは何となく不調を感じる、疲れやだるさが取れないなどと共通した症状です。特に女性は、PMS(月経前症候群)を始め、生理痛や生理不順、卵巣のう腫、子宮筋腫など婦人病の多くが「冷え」が原因と考えられています。冷えが身体にある場合は、血流が悪く、結果として良い卵は育たず、厚くて柔らかい子宮内膜も育たないため、直床しにくい傾向にあると言えます。

    心と体の「冷え」を取る

    子どもは授かりものと言われるように、不妊治療、ひいては妊娠することは、自分では完全にコントロールできない部分があります。逆にそれらがプレッシャーとなり心の「冷え」につながるケースがあります。

    現代人は仕事が忙しく、体を休める機会も少なくなるため、自分の事で精一杯になってしまい、愛情を与えることも、受け取ることも難しくなり、身近な人との関係が上手くいかないことも多々あります。また過度なストレス(過緊張状態が続く)や、睡眠不足、妊娠への焦りなどによって交感神経が優位になり過ぎて「冷え」に繋がっています。

    東洋医学では「心身一如」という概念があり、心と体は表裏一体であると考えます。心と体はつながっていて、心の不調が体の症状に影響したり、体の症状が心の不調を招いたりします。

    感情と五臓(心臓・肺臓・肝臓・腎臓・脾臓)には密接な関係があり、心は喜び、肺は悲しみ、肝は怒り、脾は思う、腎は驚きと関係しています。例えば、女性の生理は、慢性的に血液不足になり、特に肝臓の血液が生理前は不足しやすくなるので、イライラが起きやすくなります。また心配性の方では、東洋医学では「脾」の働きと「血」の不足を診ます。心と体は、十分な血液があってこそ養われます。血液が不足していると心が不安定になりやすく、睡眠不足になりがちです。

    このように東洋医学が対象としているのは、病気の治療だけでなく、未病の治療、すなわち心と体の健康維持にも及んでいます。不妊治療や妊娠を希望する方の肉体的、精神的ダメージも防ぐこともできます。故に東洋医学は予防医学に通じており、不妊治療などの現代医学を補完し、代替する形でその効果を期待することができます。

    「冷え」の改善方法

    当院では「冷え」の改善に、鍼灸や高周波温熱(インディバ、ラジオスティム)を用います。例えば鍼灸施術では、冷えている部に痛みを与えないように浅めの鍼をしたり、温かみを感じたら取り去るような施灸を繰り返すと、次第に骨盤の中が温まり卵巣や子宮の働きが良くなるものと考えています。

    一方で、高周波温熱は妊婦さんへの使用は禁止されています。また「妊娠の可能性がある時期」についてはお控え頂くようにお伝えしております。ただし妊活において「冷え」を改善するためには、血流をよくすることが妊娠しやすい体づくりには必須です。また妊活中はストレス解消や新陳代謝を促すことも必要であるため、高周波温熱は一度のトリートメントでこれらも含めて対応できるメリットがあります。

    【本コラムの監修】

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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