
脳が不快に感じることを止めることで、免疫力の低下や自律神経の乱れを防ぎ、日々の体調を整えることができます。免疫力や自律神経の健康は脳の一部によって大きく決定づけられていることが多くの研究で分かっています。
脳の一部である扁桃体は、日常生活の中で感じる様々な刺激に対して「快」「不快」を判断する役割があります。例えば美しい音楽に触れれば、扁桃体が「快」と判断して、自律神経に働きかけて体をリラックスさせます。
逆に、騒音であれば「不快」と判断して、自律神経に働きかけて瞬時に体を緊張させます。それが続けば自律神経は乱れ、免疫力はどんどん低下していきます。一方で生活習慣を見直し、日常生活の中で「不快」に思うことを無くし、さらに扁桃体を強化することで自律神経の乱れや免疫力の低下を防ぐことができます。
特に不安・焦り・恐れを感じるかどうかが健康を左右する要素でもあります。つまり脳の扁桃体が不安という不快な刺激を受けることで自律神経を乱し、免疫力を下げる要因として働いているのではないかと考えられています。
身体の外と内から考える
健康か病気かは身体の外側と内側の環境で決まります。外側の環境とは、紫外線、空気汚染、ストレス、食事や薬なども含んだ生活する上での体に刺激を与える全てのことです。一方で内側の環境は、私たちの体の中で起こる変化のことです。
私たちの体はホメオスタシス(恒常性)という働きがあり、この恒常性が崩れると、体の中のバランスが乱れて外側からの刺激に対して守りが甘くなります。つまり健康のためには、身体の外と内の環境に目を向けて、身体が絶えず外の刺激によって傷つけられないようにして、さらに内の環境を乱さずに維持していく必要があります。
特に外の環境からもたらされる不安・焦り・恐れなどが健康を大きく阻害しており、これらを総称して不安イメージと呼ばれています。扁桃体が不安イメージによる刺激に対して過敏に反応しない方法を知っておく必要があります。
扁桃体を過敏にしない方法
扁桃体は身体の様々な所に影響を及ぼしているため、至る所に扁桃体を刺激するきっかけとなるセンサーがあります。脳が感じる「不快」を無くすためには、皮膚から受ける刺激(皮膚センサー)、目・耳・口・鼻から受ける刺激(感覚器官センサー)、腸から受ける刺激(腸センサー)を不快にしないことです。
そのためには、不安につながる不快な刺激を減らし、扁桃体を整えるためには不快な刺激を減らすこと以上に普段の生活で心地よいと感じる刺激(快適な刺激)をいかに与えていくのかが大変重要になります。
皮膚センサー
朝は身体を休ませる副交感神経から活動するための交感神経に切り替わる時間帯です。この時間帯は2つの自律神経が入り乱れる時間帯でもあるため、自律神経が不安定になりがちな時間帯です。朝に快適な刺激を受けて扁桃体を整えるのか、不快な刺激を与えて扁桃体を乱してしまうのか、つまり朝にどんな刺激を受けるかがとても重要です。朝に扁桃体を乱してしまうと、日中に扁桃体を整えることに精一杯になってしまいます。
この朝に皮膚センサーを刺激してあげることが扁桃体を整えるために効果であり、特に手や足は脳や神経にダイレクトに繋がっているため、ツボ刺激が大変効果的です。ただしどのツボを刺激するかより、いつ刺激するかの方が大事なので、朝起き上がった後がツボ刺激のベストタイミングです。
なぜなら、朝は体温が低く、神経の伝達速度が遅くなるため、この時間帯に手足をゆっくり揉んだり、ツボ押し、擦って温める刺激をすることで、体温を温めながら、扁桃体を整えることができるからです。
視覚・聴覚センサー
体内時計が狂うと1日の始まりから扁桃体が不調になることが分かっています。そのため視覚センサーをつかって体内時計を整えて扁桃体を内側から安定させる必要があります。
朝、太陽の光を10分程度浴びることで体内時計を調整して扁桃体を整えることができます。なぜなら太陽の光を浴びると、幸せホルモンであるセロトニンという神経伝達物質が分泌され、扁桃体が不安定な状態になるのを防いでくれます。ただしセロトニンは、10分程度太陽の光を浴びることで分泌されます。そのため朝一はゆっくり太陽の光を浴びることを心がけましょう。
またスマホなどの目覚ましアラームではなく、音楽で起きる習慣も大事です。聴覚センサーからの刺激で扁桃体を不安定にしないためにも、心地よい音楽で目覚めましょう。特に感情に訴えかける音楽(懐かしい音楽)で目覚める方が心も体も扁桃体も穏やかになることが分かっています。
嗅覚センサー
嗅覚は直接扁桃体へ直接刺激を送ることができるセンサーであり、扁桃体の位置は鼻の神経の位置と非常に近いところにあります。進化の過程でも鼻を使って外部の情報を察知する能力は生き残るためにも必要な能力です。そのため良い匂いを嗅ぐとホッとしたり、良い気分になるのは嗅覚と扁桃体が密接に関係しているからです。
他にもアロマテラピーの使われるラベンダーは、扁桃体の過剰な反応を抑え不安を鎮める効果があります。一方で体臭などの嫌な匂いは扁桃体を直接刺激するため、理性で判断できず、生理的に受け入れることができない要素になります。
痛みセンサー
私たちの身体に生じる不快感や不調を、全身に張り巡らされたセンサーが感じ取り、感覚神経の伝導路を通って脳に伝わります。
特に「痛み」のコントロールに「扁桃体」と「前頭前野」に関連があります。扁桃体は不安・焦り・恐れの不快な刺激によって興奮すると、脳の前頭前野がその興奮を抑えようとする働きをします。しかし不快な刺激が長期間続くと、その働きが低下して脳が過敏に反応してしまうと考えられています。そのためイライラしたり、気分が落ち込んだり、判断力が鈍るなどの症状が表れます。
頭の鍼で扁桃体を整える
私たちの感情を司るのは脳の扁桃体です。脳の扁桃体が不安という不快な刺激を受けることで自律神経を乱し、免疫力を下げる要因として働いていると考えられています。
頭の鍼とパルスによって、扁桃体への経絡(ツボ)を一定のリズムで刺激することで、セロトニン神経を活性化させ、大脳皮質全体にα2と呼ばれる脳波を作り出すことができます。その状態になると幸福ホルモンであるセロトニンの分泌が増加して、心と体がリラックスします。特に脳疲労の回復にも効果的です。
また、東洋医学では「怒りは肝を破る」と言い、不快な感情が長く続くと特に五臓六腑の「肝」の働きに異常をきたすと考えます。この場合は、鍼灸治療で全身の気の流れを整えることが大切です。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。