首こり、肩こりには「頭の鍼」

    首や肩こりは「日本の国民病」と呼ばれています。その首肩こりが様々な体の不調を引き起こすことが分かっています。また肩こりは筋肉の疲労によるものだけではありません。日常生活の乱れ、ストレスなどによって自律神経のバランスが崩れることで、内臓の働きが低下し(胃もたれ、便秘など)肩こりを引き起こす場合もあります。

    また、現代人の首肩こりの原因の多くが、パソコンやスマホを長時間見る時などの姿勢の悪さ、目の使いすぎなどで筋肉がこり固まることにあります。首肩こりの原因は人によって様々ですが、特に「運動不足」「姿勢の悪さ」「ストレス」「眼精疲労」によって、肩周りの筋肉が「血行不良」となることで生じます。

    「運動不足」は、筋肉を動かさないことや、また筋力低下で、頭や腕を支えることができなくなり、首肩に大きな負担になることで、血流量が低下して肩こりを酷くします。

    「姿勢の悪さ」は、長時間同じ姿勢を続け、その姿勢を保つための筋肉に絶えず負担がかかることで筋肉が硬くなり、血管を圧迫して血行不良を引き起こします。特にデスクワークが多い人は、首が前に(ストレートネック)出て、前屈みの姿勢になり、お腹が圧迫されることで腸の血流が滞ります。この血流不全が大きな負荷となって肩こりの原因にもなります。

    「ストレス」によって自律神経が乱れ、交感神経が優位に働いて、血管を収縮させ、血行不良を招き、肩こりが生じます。

    「眼精疲労」は、スマホやパソコンなど使いすぎによって引き起こされ目のかすみ、充血などだけではなく、首筋から肩までの筋肉を強張らせ、肩こりや頭痛を引き起こします。

    このように様々な肩こりの原因はありますが、大きく分けると「筋肉疲労」「自律神経の乱れ」「ストレス性」の肩こりがあります。そしてこれらは、姿勢の悪さ、手の使いすぎなどの症状が重なっているため、一つの対処療法では改善することが難しいのが国民病と呼ばれる所以です。

    筋肉は、疲労がたまると徐々にかたくなります。このこり、つまり固くなった筋肉が血管やリンパ管を圧迫するため、血流が滞り、さらに疲れが溜まりやすくなります。その結果、首や肩のこりを引き起こします。さらに筋肉が硬直することで神経を圧迫し、その刺激情報が大脳に伝わることで、首や肩の痛みを認識、さらに筋肉や血管を収縮させるという悪循環サイクルを起こします。

    痛みのメカニズム
    参考「目で見る医書シリーズ 徹底図解くび・肩・腕の痛み」(法研)

    頭痛の原因は首こり、肩こり

    首肩こりを感じている方の半数以上が「頭痛」と「眼精疲労」を伴っています。特に頭痛は約6割の方が併発している症状になります。首や肩こりの症状が頭まで広がる理由は、主に筋肉と血管の2つが関与しているからです。

    まず、肩こりは主に背中の僧帽筋(そうぼうきん)という筋肉が凝り固まることで起きます。この僧帽筋は肩甲骨から肩、首まで広く覆っているので、「こり」の部分も首まで含む広範囲になります。

    頭痛の原因は首や肩のこり

    一方で、首こりの主に後頭下筋群(こうとうかきんぐん:右図)という筋肉の凝り固まることで起きます。この筋肉は、僧帽筋よりも奥深くにあり頭蓋骨と首の骨をつないでいます。さらに首の後ろにある筋肉の中でも一番深部にある頭半棘筋(とうはんきょくきん)が凝り固まることで起こるのが緊張性頭痛です。頭痛の大半はこの緊張性頭痛と言われています。

    また頭痛の発生に関わる大後頭神経(だいこうとうしんけい)は頭半棘筋を貫いているため、首こりによって筋肉が圧迫されると、その神経も圧迫され、頭痛が起きます。脳に通じる血管の中には、首の骨の中を通っている細い血管があるため、首に異常が発生すると、その影響から頭痛が起こる場合があります。

    猫背が肩首こりの原因!?

    猫背によって骨盤が後傾して背中が丸くなり、または反り腰で姿勢が崩れて痛みが出ることがありますが、一方で血流が悪化して酸欠が起こり、痛みの物質が発生して肩首こり、腰痛などに繋がっているケースがあります。特に胸椎が硬くなって後弯している人は、肩甲骨が外転して酸欠が起こりやすく、そこで痛みが出る方が多くいます。

    肩こりは不調のシグナル

    肩こりは筋肉をほぐして血行改善することで症状が軽減される一方で、全く改善できず、辛い思いをされている方もいらっしゃいます。その場合は、何らかの病気から不調につながっている可能性があります。特に胸部や腹部の痛み、手足のしびれ、手指の動きがぎこちなくなる、感覚が鈍くなる、めまいを伴うなど場合は、素人判断せずに、早急に病院を受診して下さい。また、たかが肩こり・首こりと思って放ったらかしにしてはいけません。長期的な首・肩こりは自律神経の乱れにつながります。

    肩やその周辺に原因がある場合五十肩(肩関節周囲炎)/胸郭出口症候群/頸肩腕症候群
    頸椎に原因がある場合頸椎症/頸椎後靱帯骨化症/頸椎ねんざなどの外傷/頸椎腫瘍/リウマチ性脊椎炎
    内臓などの病気による場合高血圧、低血圧、狭心症/自律神経失調症/更年期障害/眼精疲労/貧血
    自律神経の乱れによる場合頚性新型うつ/頭痛/冷え性/多汗症/疲労感・だるさ/不眠/ドライアイ・マウス/肌荒れ/生理痛・生理不順/疲れ目/機能性胃腸症/過敏性腸症候群/精神的な疾患

    寒暖差疲労が首こり、肩こりの原因

    日中との気温差が7℃以上になる場合は、体温調整が難しくなるため「倦怠感」「頭痛」「首肩こり」の不調が出やすくなります。理由としては、気温差が7℃以上になると体温を一定に保つ自律神経が過剰に働き、疲れが溜まりやすくなることが挙げられます。また夜になると急激に気温が落ちる日が多く、朝昼の寒暖差だけでなく、日毎の寒暖差にも気をつける必要があります。

    気温差で自律神経が乱れ、倦怠感や肩こりが起きやすくなる寒暖差疲労の症状に効果的なのが、自律神経が集中する首回りのケアです。寒暖差疲労の方は、首回りのコリが強かったり、痛みが出やすかったりするため、ツボでコリをほぐしたり、効果的に首を温めるケアがオススメです。

    翳風(えいふう):耳たぶのうしろの骨が出っ張っている辺り

    ツボ刺激が、脳の視床下部(ししょうかぶ)に作用し、自律神経の働きを整えることができます。

    翳風(えいふう)

    東洋医学で診る「首こり、肩こり」

    頭の重さを支えるためには、首だけでなく肩、背中、腹筋なども使って支えています。運動不足などで筋肉があまりない人は肩がこりやすいとも言われています。一方で東洋医学では「風寒の邪気」に侵入されたことによって肩こりが生じると考えます。

    首や肩の周りには6本の経絡(膀胱、胆、三焦、大陽、小腸の経絡と督脈)が流れており、これらは全て陽の経絡です。寒くなると陰の力である寒気が強くなり、体に寒気が侵入して陽の経絡を痛めてしまうと肩や首こりにつながります。そのためお灸などで温めることで、この寒気を追い払うことがまず大切です。

    温めても首肩こりが軽減しない場合は、胃腸が弱っていることで冷えにつながっている可能性が高いです。胃腸が弱っていれば消化吸収がうまくできておらず、体に必要な熱エネルギーを生み出せず、気血の巡りが悪くなり、冷えをさらに悪化させます。このように首肩こりの根本的な原因は体の内側にあります。

    血巡りが悪い「瘀血(おけつ)」

    東洋医学では、肩こりは「瘀血(おけつ)」の人がなりやすいとも言われています。「瘀血」とは、一体どのような状態を指すのでしょうか?

    瘀血とは、東洋医学でいう血(けつ)が滞ってしまう状態のことを言います。イメージでは、血がドロドロしているような感じです。瘀血があると、肩こりだけでなく、
    ・冷え性や便秘
    ・ニキビ
    ・頭痛
    ・腰痛
    ・生理痛、生理不順など
    様々な症状を引き起こしやすくなります。そして瘀血は長い間放っておくと、糖尿病や高脂血症などの生活習慣病や、子宮筋腫、子宮内膜症などの婦人科疾患になることも。

    瘀血になってしまう原因はさまざまですが、ストレス過多や不規則な睡眠、甘いものの食べ過ぎ、脂っこいものの食べ過ぎなどで悪化します。また、カラダが冷えてしまうことで瘀血は更に悪化します。冬に肩こりが悪化しやすいこともその理由です。

    首こり、肩こりを改善する方法

    湯船に浸かる

    最近は湯船に浸からない方も多いですが、血の巡りを改善する一番簡単な方法は、37~40℃程度で10~15分間ゆったりと心地よい温度の湯船に浸かることです。身体を温めると、リラックスできるので、血巡りも改善します。

    朝晩白湯を飲む

    朝晩に白湯を飲むことで基礎代謝が良くなります。白湯を飲むと胃腸が温まることで、全身の血行が良くなり内臓の温度も上がります。内臓温度が1℃上がると、基礎代謝は上がって、脂肪燃焼率がよくなり、痩せやすい体質になると言われています。

    有酸素運動を心がける

    ウォーキングやジョギングなど、長時間継続して行う運動によって、体脂肪をエネルギー源として使い燃焼させることができます。また内臓脂肪も同様に減少させることができます。

    鍼で筋肉の緊張を緩ませる

    「筋肉疲労」の肩こりには、肩こり頚部と上腕三頭筋のツボを刺鍼することや、マッサージによる治療が効果的です。ただし肩こりは複雑な原因が絡み合っているため、胃腸の血行を促す胃や大腸のツボや、ふくらはぎのツボへのアプローチも必要です。

    直接鍼を凝り固まった筋肉に刺すことで、筋肉に免疫反応が起こり、その修復に伴い、血流を促進させることができます。また血流が改善されることで、筋肉に酸素が運ばれ、ほぐれると同時に痛みを引き起こす発痛物質も流されるため、痛みが治まります。

    頭や首への鍼で身体を改善

    「自律神経」「ストレス」に起因する肩こりには、頭や首への刺鍼、手技による頚や肩、そして腰部や骨盤部のツボを刺激することで、自律神経を整え、深いリラックス効果が期待できます。

    体には、内臓の働きを活発にするツボがあります。そのツボを鍼で刺すことによって体全身の代謝が上がり、血流が改善します。また頭や首に鍼を刺すことで、自律神経の乱れを調整することができます。鍼で身体のバランスを良くすることで、血管が拡張し、血流がスムーズに巡ります。

    こり、肩こりを改善するツボ

    天柱(てんちゅう): うなじの両側にある筋肉の外側。後頭部の髪の生え際あたり

    効果:首肩こり、目の疲れ、血圧の安定、冷え、自律神経失調症

    天柱(てんちゅう)

    肩井(けんせい): 首と肩の中間あたりに位置し、押すと痛みやこりを感じる部分

    効果:肩こり,頭痛,五十肩,自律神経失調症

    肩井(けんせい)

    東洋医学で診る、首こり、肩こりと美肌

    前述の通り、首や肩こりの原因は血の流れが悪いことから起きます。これらの流れを良くすることで、お肌に十分な栄養を届けることができます。その結果、筋肉がほぐれることで老廃物の排出が促進されて、たるみが解消され、また美肌効果も得られます。

    また、首や肩こりは精神的な影響によって肌荒れにもつながります。首や肩こりが原因で不眠、ストレス、自律神経の乱れることで、免疫力が低下、女性ホルモンのバランスの乱れによって、肌のハリや弾力が無くなったり、ニキビの原因となってしまいます。

    血の巡りを改善するツボ

    太衝(たいしょう):親指と人差し指の骨の間を、指で軽くなぞり自然と指が止まる位置。

    血海(けっかい):膝のお皿の内側の上から、指3本上あたり

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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