
物を見るときにすぐにピントを合わせられるのは、カメラのレンズのような役割を果たしている水晶体が最適な厚さに自動で調整してくれるからです。この水晶体の厚さを調整する役割を担うのが、毛様体筋という筋肉と自律神経です。目を使いすぎて毛様体筋に疲れが溜まると、自律神経にも影響が及ぶため、頭痛や吐き気など全身に症状が現れるようになります。
一方で「疲れ目」という一時的な症状もあります。疲れ目は、休息や睡眠をとれば自然に回復します。しかし眼精疲労は、眼痛やかすみ、充血などの目の症状以外にも、体の別の部位に影響を及ぼし、慢性的な頭痛や肩こりなどの症状を引き起こすことがあり、休息や睡眠では十分に回復しません。
眼精疲労の原因
眼精疲労の原因は多岐にわたりますが、そのうち目の水晶体の厚みを調整する毛様体筋の筋肉の”こり”が原因であることが多いです。その多くは、パソコンや読書、暗いところでの作業、度の合わないメガネなど様々です。
目には光の量を調整する「瞳孔」があり、その開け閉めに自律神経が関わっています。明るいディスプレイ、暗い場所での読書などを長時間続けると、瞳孔が常に緊張状態になり、瞳孔を動かす目の筋肉(毛様体筋)が疲労します。一方で自律神経もバランスを崩し、血流が悪くなり、特に目の周りの老廃物が滞留して目が重く感じるようになります。
また、ピントの合わない眼鏡、近視、乱視、老眼により目を凝らすことでも目の筋肉が緊張して疲労を起こします。さらに見難いスマホの文字を頭を突き出して見ようとすれば、首肩の筋肉に負担がかかり、首肩こりだけでなく頭痛の原因になったりします。
このように、目を酷使して目周辺の筋肉に負担をかけると、毛様体節(目のピントを調整する)に疲労が生じ、自律神経のバランスが乱れて頭痛等の症状が現れます。一般的に眼精疲労が原因の頭痛は、片頭痛と緊張型頭痛の2種類と考えられています。
また眼精疲労が、頭部全体の血流を悪化させるともいわれています。こめかみから側頭部にかけて脈を刺すような痛みの偏頭痛は、眼精疲労が起因になっています。さらに目を酷使するとその分だけ側頭部への血液の流れが悪くなるため、側頭部の薄毛にもつながります。
目の周りの筋肉のコリ
眼精疲労は慢性的な肩こりや頭痛を引き起こし、休息や睡眠では中々回復するのが難しくなります。眼精疲労の原因は様々ありますが、ひとつに目の周りの筋肉の使いすぎによるコリが大きく関係しています。
目の毛様体筋は、遠くや近くを見るときにレンズの厚さを調整する筋肉ですが、近くのものに集中しているときは、この毛様体筋が収縮してレンズが厚くなります。つまり近くを見るときは収縮して緊張状態が続き、首と肩の筋肉と同じようにコリが生じてしまいます。他の筋肉と同じように使いすぎによって疲労してしまうのです。
目の周りの眼輪筋も同じく、近くのものを見続けるとコリが生じます。良く瞼などが痙攣する方は、眼輪筋が硬く凝っている可能性があります。
当院では、目を酷使して凝り固まった筋肉には、目元用パッド(パルス)を使い、目元の筋力(眼輪筋)を細かく振動させます。目の周りの筋肉がほぐれると、血行が促進され眼精疲労などが解消されます。
ドライアイの原因
スマホやパソコンが手放せなくなった現代において、目の疲れが取れないと感じている方が多くいます。スマホやパソコンなどで近くばかり見ることが多いと、筋肉が緊張し続け、毛様体筋が凝り固まります。また遠くに度数を合わせたメガネなどで近くを見続けると大きな負担となり疲れの原因になります。そのため近距離用のメガネを使うことも大事です。
その目の疲れの主な原因は、毛様体筋のコリ以外にもドライアイが挙げられます。スマホやパソコンに集中していると、まばたきの回数が激減していることがあります。まばたきの働きには、目の内側にある涙腺を刺激して目の表面を均一に潤します。まばたきが減ると涙の量が減るため、目が乾いてしょぼしょぼするといった症状が現れるようになります。
実は目薬を多くさすと、涙が洗い流され、乾燥を防ぐ涙本来の役割が担えなくなります。涙には目の表面細胞に酸素や栄養を送ったり、殺菌作用により微生物の侵入や細菌を防いだりする役割があります。ドライアイを防ぐためには意識してまばたきすることも大切です。
ドライアイは、目やに、目の奥の痛み、目がかすむ、見えにくい、慢性頭痛、首肩こりの根本的な原因になっていることが多くあります。15分に1回ゆっくり息を吐きながら10秒目を閉じて疲れケアをしましょう。
特に、目のかすみは注意する必要があります。まばたきしてもピントが合わない、頻繁に目がかすむ原因に緑内障の可能性あります。緑内障で失われた視野は二度と回復することができないため、専門的な機関で検査を受けてください。
目を閉じて休息する
休息のために最も大切なのが睡眠であることは当然ですが、例え眠っていなくとも目を閉じているだけで脳がリラックスしてくれることが分かっています。睡眠中の脳の休息効果を100だと仮定すると、目を閉じた状態では70から80程度の休息効果があると言われています。
実際、脳波を用いた研究では5分ほど目を閉じているだけでも脳はリラックスした状態を示す脳波であるシータ波を発することが報告されています。また日中に目を閉じると目が休まり眼精疲労を予防できるという効果もあります。
当然、目の疲れを取るために最も効率的なことは、何も見ないことです。目は光を受け取って、それを電気信号に変えて脳に伝えるための器官です。そのため目を開けて光が目の中に入っている以上に、目はずっと働き続けています。このようなことから目を休めるためには、ただ目をつぶってじっとしているのが効率的な方法です。
実は、光にも様々な種類があり、目に優しい光と目に悪い光があります。このうち、できる限り目に優しい光を見ることで、疲労を軽減することができます。逆に目に悪い光の代表例が紫外線やブルーライトです。これらは光害とも言われていて、このような光害公外をできるだけ防いで生活をするということが何よりも重要です。
アメリカ眼科学会で提唱されている20分20秒20ft(6m)の法則があります。これはブルーライトを発するスマホやパソコンなどのモニターを、20分見たら20秒間20ft(6m)以上の遠くをぼんやり見て目を休ませようというものです。この方法だけで目をリラックスさせることができて、眼精疲労が取れることが知られています。
目の健康を維持する亜鉛
年を取るとともに多くの人が気になるのが目の健康です。40代以上では老眼が増え、50代60代にもなると白内症などによる失明のリスクが上がっていきます。最近では、スマホやパソコンによってブルーライトの影響を受け、疲労やドライアイに悩まされている方も多いでしょう。そんな目の悩みにおすすめなのが、夜寝る前に亜鉛を摂ることです。
実は、視力や目の健康を維持するために亜鉛が重要な働きを果たしていることが分かっています。私たちの目は、カメラのように水晶体というレンズと網膜というフィルムから成り立っています。このフィルムである網膜の細胞には亜鉛が豊富に存在し、目の機能の維持に関与していることが分かっています。
実際、研究では亜鉛が網膜の神経細胞の機能維持に役立っており、神経伝達の調整や視覚の信号を脳に速やかに伝達する役割があることが報告されています。
実際、亜鉛を投与することによって視機能が改善するのは、様々な研究によって示されていることです。ちなみに最近の研究によると亜鉛だけでなく鉄や銅といった微量のミネラルも、私たちの目の機能に影響を与えることが分かっています。
また、亜鉛と関連する目の病気が緑内症です。緑内症は日本人の失明原因の第1位です。緑内症を引き起こす要因の1つとして酸化ストレスが注目されています。酸化ストレスは、私たちの細胞を錆びつかせてしまうような有害な毒素の ことで、加齢や添加物の摂取、ストレスなどによって溜まり、目を傷つけてしまいます。このような酸化ストレスを除去してくれる物質としてスーパーオキシドディスムターゼという酵素が注目されています。
このスーパーオキシドディスムターゼを構成する成分に、亜鉛が含まれていることが知られています。実際、亜鉛の摂取によって、この酵素が活性化する働きがあると研究によっても確認されています。さらに目の健康において重要なのがロドプシンという物質です。私たちは盲膜で光を認識することで物の形や色を感知しています。実はこのロドプシンの合成に亜鉛が必要です。
また亜鉛は、目の機能を維持するために不可欠なビタミンAの代謝にも関係しています。ビタミンAが不足すると夜盲症と言って夜に見えにくくなることが有名です。これは亜鉛不足によって網膜の光を感じる力が弱まり、目が疲れやすくなったり、視力低下を引き起こすこともあります。このようなことから、亜鉛は目の健康のためには絶対に欠かせない栄養素であると言えます。
東洋医学的に診る「ドライアイ」
ドライアイは涙の量が不足することや涙膜の不安定さによって引き起こされる状態です。目薬の頻繁な使用は一時的な解決策であり、場合によっては症状を悪化させる可能性があります。
ドライアイの症状には、乾燥感、しょぼしょぼ感、ゴロゴロ感、鋭い痛み、目の奥の重さなどがあります。これらは、しばしば眼精疲労と混同されますが、多くはドライアイによるものです。涙は水分、粘液、油の三層から成り立っており、これらが均一に配分されることで涙膜が安定します。
このドライアイの改善には、涙の量を増やすことが重要で、保湿成分を含む目薬の使用やマイボーム腺からの油分の分泌を促進するために意識的に瞬きをすることが効果的です。一方でドライアイを悪化させる要因として、エアコンやパソコンの使用、コンタクトレンズの長時間装着があります。これらに対処するためには室内の湿度を保つ、定期的な瞬きや休憩を取る、視線を下に向けるなどの工夫が必要です。
ドライアイの症状は涙の量や質の不足によって引き起こされることが多いですが、東洋医学ではこれらの症状が心肝血虚証と関連している場合があります。
心肝血虚証は、心臓と肝臓の血が不足している状態で、精神活動や目などに栄養が行き届かないことで、目眩、動機、不眠、視力低下などの症状が表れることがあります。特に目のかすみや視力低下は、ドライアイと密接に関連しています。心肝血虚証の原因には、過労、ストレス、睡眠不足、栄養不足などがあり、これらはドライアイのリスクを高める要因ともなります。
東洋医学的なアプローチ方法としては、鍼灸で心と肝の気血を補い、体のバランスを取ることで心肝血虚証の改善に役立ちます。おすすめのツボは太衝(たいしょう)、心兪(しんゆ)、肝兪(かんゆ)です。
眼精疲労と肩こりの関係
眼精疲労で悩まれている方は、本人が気づかないこともありますが、肩こりも相当酷くなっています。肩こりは肩首周辺の筋肉のこりからくる血行不良により生じます。パソコンやスマホなどで長時間同じ姿勢を無理に維持するため、目を酷使する眼精疲労と重なります。
また、肩こりも眼精疲労も自律神経の乱れによって起こります。その自律神経を乱す原因がストレスであり、身体がストレスによって緊張することで全身の血流が悪化します。このように複合的な要因で、眼精疲労、肩こり、自律神経の乱れが生じてしまうのです。
目の疲れと側頭部の薄毛
「目の疲れ」が側頭部の薄毛の原因になることはあまり知られていません。スマホの見過ぎなどで目を酷使して、目の周りの筋肉がこり、その結果血行が悪くなり、目の周りの筋肉だけでなく、それらに繋がる頭の筋肉へも影響を与えます。頭皮の血管は髪の栄養素を運ぶ重要な役割がありますが、血行が悪くなると必要な栄養が行き届かなくなるため薄毛や白髪の原因になると言われています。
慢性的な眼精疲労であれば、特に耳の上が薄くなっているケースがあります。また女性で多く薄毛になる原因は、びまん性脱毛症や女性型脱毛症(FAGA)などがあります。何れも加齢によるホルモンバランスの乱れ、慢性的なストレス、生活習慣病などが原因に挙げられ、一部が薄くなるのではなく、全体的に髪の毛が細くなり、ボリュームがなくなるなどが現れます。ただし、症状の大小には個人差がありますが、進行性の脱毛症の場合は放置せずに、係りつけの先生にご相談ください。
眼精疲労がたるみにつながる
眼精疲労は、目の疲れが酷くなると出る症状で、まぶたが重い、肩こりが酷い、頭痛、まぶたの痙攣などが初期症状です。概ね1日睡眠をとれば翌日には回復していることが多いですが、目の不快感が続く場合は要注意です。
この眼精疲労がまぶたのたるみを引き起こす一因とも言われており、特に現代人はパソコン、スマホなどで目の負担が大きく、目の疲れの慢性化によって違和感を生じ、まぶたをかく・擦る回数が多くなり、靭帯や眼瞼挙筋腱膜などを緩めてしまうことでまぶたがたるんでしまいます。
予防策としては、目を休ませること(十分な睡眠)、目を乾燥させないこと(目薬など)、目の血行を改善する(蒸しタオルなど)、目のツボ押し、まぶたを擦らないことが挙げられます。
眼精疲労がほうれい線につながる
眼精疲労がほうれい線につながる理由は、目の周辺や関連するお顔の筋肉が緊張してこり固まるからです。ほうれい線に関係する筋肉には、口輪筋、大・小頬骨筋、上唇挙筋などがありますが、これらは眼輪筋とつながっているため、目のこりがそれらの筋肉の緊張を引き起こします。こりは血流が悪化することで、老廃物や疲労物質などの毒素が滞留してしまうため、たるみの原因となってしまいます。
予防策としては、こり固まった筋肉をほぐすこと以外にも、眼輪筋を鍛えることが大切です。
甘い加工食品で眼精疲労
目の衰えや疲れというのは主に3つの働きで進行してしまうことが分かっています。その3つは酸化と糖化、そして炎症です。このうち特に現代人で最も増えているのが糖化です。つまり糖質の摂り過ぎによる血糖値スパイクによって、私たちの目が傷ついてしまい、眼精疲労が進んでしまうことが分かっています。
甘いものを食べて血糖スパイクが起きると、全身の血管に大きな負担をかけることが知られています。特に私たちの目には、たくさんの毛細血管が集まっている場所です。そのため糖質を摂り過ぎることで当然目に大きな負担がかかり、眼精疲労が進んでしまうことが分かっています。また目に酸素や栄養素がきちんと行き渡らなくなって視細胞が酸欠状態になってしまいます。その結果、目の疲れが慢性化してしまいます。
眼精疲労と鍼灸
WHO(世界保健機関)では、眼精疲労を鍼灸の適応疾患として挙げており、世界的にもその治療評価が高くなっています。その理由として、不調の根本原因を探り、全身の状態を捉えてから治療を進めて、自然治癒力を高めるからです。
目の症状であれば、目の周囲を直接刺激するだけでなく、体の目に影響するツボを利用し、結果として目の血流を改善して、筋疲労の改善、老廃物の排出などによって機能を回復させていくことができます。また同時に首肩こり、頭痛、吐き気などの複数の症状にも対処することが可能です。
例えば、パソコンなどで目を酷使する人を対象に鍼灸治療を行った研究(弾性41人、女性20人に鍼治療を週1回)がありますが、首肩こりを改善することで、眼精疲労が改善したことが確認されています。また30代の7名に低周波パルスによる置鍼(太陽・攅竹のツボ)によっても目の調整機能の改善がみられ、早期に回復する傾向がることが分かっています。この太陽(たいよう)と攅竹(さんちく)は、これまでに目の症状に対するツボとしてよく使われています。

そして目の症状に効果的な体のツボとしてよく使われるのが光明(こうめい)です。このツボへの鍼をすることで、網膜の血流が改善することが分かっています。血流が増加すると、沢山の酸素や栄養が細胞に運ばれ、さらに老廃物が流されコリの解消や疲労回復力が高まります。

頭の鍼が眼精疲労に効果的な理由
眼精疲労に頭の鍼がなぜ良いかというと、頭には眼に効くポイントがたくさんあるからです。視神経や感覚点の眼というポイントがあり、そこに鍼をすることで、自律神経などが整ってきます。目のピント調整には自律神経が深く関係しており、交感神経と副交感神経のバランスを回復させることで、眼精疲労の症状緩和につながります。
また、頭と首の境界にある後頭下筋群(小後頭直筋、大後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋)に鍼をすることが、眼精疲労に効果的です。これらの筋肉がなぜ眼精疲労に効くかというと、眼球運動やまぶたを動かす時などに後頭下筋群が一緒になって動くことが分かっており、目を酷使するときにこの後頭下筋群が疲労するからです。
これらのような眼精疲労に対する鍼灸治療の有効性は、臨床研究でも明らかになっています。眼精疲労の場合、こめかみ、頭部などに鍼をあてていき、毛様体筋、三叉神経、瞳孔括約筋などに頭の鍼でアプローチしていきます。また目の周りのマッサージを行うことで症状を改善していきます。
当院では、頭に刺鍼し、パルスと呼ばれる低周波電流を流します。この鍼とパルスによって、筋を刺激して即効性を更に高めることができます。眼球を動かす筋肉に連動する後頭下筋群という筋肉に鍼通電することで、首肩こりを緩めて、眼精疲労を緩和します。また眼精疲労が酷く、こめかみを押すと痛みを感じる場合には側頭筋への鍼通電を行い、こめかみのこりを解消して眼精疲労を緩和していきます。
眼精疲労に効くツボ
毛様体筋は目の奥にあるため、マッサージでほぐすことはできません。しかし、眼精疲労に効果的なツボを刺激することで、体の奥深くにある筋肉をほぐすことができます。特に頭部には、眼精疲労や目の疲れに効果的なツボがあるため、眼精疲労や眼精疲労からくる頭痛なども解消してくれます。
ツボを押すときは、指の腹を使って、1部分を5回程度押すようにしてください。ただし絶対に眼球は押さないでください。

- 太陽…目尻と眉尻を結んだ中心よりやや外側にあるツボ
- 承泣…目中心からやや下がった眼球が入っている部分の縁にあるツボ
- 陽白…眉中央から指1本分ほど上方にあるツボ
- 魚腰…眉の中心にあるツボ
- 晴明…目頭のやや内側の骨のくぼみ周辺にあるツボ
- 攅竹…眉毛の最も内側の端にあるツボ

- 風池…髪の毛の生え際の窪み部分にあるツボ
- 脳空…脳空はちょうど目の裏側あたりに位置するツボ
東洋医学で診る「目の疲れ(眼精疲労)」
東洋医学では、目は「肝」によって養われていると考えています。すぐ目が疲れたり、視界がかすんだりするのは、肝が弱っていることを示しているのです。この「肝」は、視神経、網膜、角膜、結膜などを主っており、東洋医学でいう「血」とも深い関係にあります。
「血」は、身体全体を駆け巡るものです。「肝」の働きが健康であれば、「肝」でつくられた血は身体全体に十分行き渡り、目はしっかりと養われ、はっきりとものをみることができます。
しかし、「肝」が弱りその機能が低下すると、角膜炎や結膜炎、白内障や、緑内障、目のかすみといった目の症状が出てくるとされています。また「肝」の働きが弱まると、目の症状以外にも頭痛、疲労感、顔色が冴えない、腰痛、肩こり、婦人科疾患といった症状がでてきます。
一方で西洋医学の領域でも、肝臓の病気になると、目が疲れ、視力が低下するなどの症状が起こることはよく知られています。そのため眼精疲労やドライアイ、目の周りがピクピクと痙攣するなど目のトラブルの多くは「肝」の症状として出てきます。
春になると肝は活発に働きます。しかし環境が変わるなどの何かと落ち着かない時期で、ストレスが溜まりやすく、肝の働きが過剰になります。肝は精神活動も司っているため、肝の過剰は情緒不安定を引き起こします。だからこそ、この時期は目を休め、しっかり睡眠をとり、こだわり過ぎず、慌てず、できるだけのんびりと構えて穏やかに過ごすように心がけましょう。
ホットタオルで血流を促す
目の疲れを解消する効率的な方法が、血流を促進することです。目には細い血管が集中していて、血流が悪化してしまうと十分な酸素や栄養が届きづらくなります。さらに血流が悪化して、細い血管が詰まりやすくなると、深刻な目のトラブルが発生してしまう可能性が高くなります。
まず効果的なのは、目を直接ホットタオルなどで温めて血流を促すことです。濡らしたタオルを絞り、電子レンジで1分ほど温めてまぶたの上に乗せ、目を閉じて3分ほどリラックスするだけで、血流が促されます。長時間近くのものを見続けて緊張した疲れた目の周りの筋肉がほぐれます。また目を温めることは、疲れ目を解消するだけでなく、ドライアイの改善にも非常に効果があります。
一方で、目の疲れを感じる場合は、同時に首や肩も凝っていることが多くあります。首や肩と目の周りは、全身をめぐる血管でつながっており、肩から首の血流を促進することは、目の周りの眼輪筋への血流にも良い影響を与えます。目を温めるホットタオルで、首も温めてあげることも効果的です。
目の疲れを取る食べ物
私たちの全身の細胞は当然ですが、全て食べたものからできています。それは目も例外ではありません。どんなものを食べると目に良いのか、まず重要なのは、目の中で最も大切な部である網膜の黄斑部の栄養となる食べ物です。盲膜とは、カメラにおけるフィルムの役割をしており、黄斑部は盲膜の中心部で文字通り黄色い部分となっています。この黄斑部には、カロテノイドと呼ばれる黄色や赤色の色素成分が詰まっています。これらの成分は、強い抗酸化作用を持つ色素であり、体の中で合成することはできません。
一方で、植物などに広く存在するため、私たちはこのようなカロテノイドを外から摂り入れることによって、はじめて目の健康を守ることができます。特に黄斑部の中心には、カロテノイドの一種であるゼアキサンチンが多いことが分かっています。また黄斑部の周辺には同じくカロテノイドの一種であるルテインが多く集まっています。
このゼアキサンチンとルテインの2つが網膜を酸化から守ってくれています。そして網膜はカメラにおけるフィルムであり、常に光が集まるため、光が集まればブルーライトや紫外線などもそこに集まりやすくなります。このようなブルーライトや紫外線から網膜を守ってくれているのがカロテノイドです。このようなことからゼアキサンチンやルテインといったカロテノイドを豊富に含んでいる食材を積極的に食べることが、目の健康のために何よりも重要であるということがわかります。
このゼアキサンチンやルテインが豊富に含まれる食材にはトウモロコシ、黄パプリカ、ほうれん草などがあります。ゼアキサンチンは黄色い色素であり、このような黄色や緑の野菜からたくさん摂ることができます。一方でルテインは、小松菜やモロヘイ、ほうれん草などから摂ることができます。どちらかと言うと緑や青の野菜から摂れると覚えておくと良いでしょう。ちなみにゼアキサンチンやルテインといった栄養素は、共に色の濃い緑黄色野菜に豊富であると覚えておくと簡単で良いでしょう。
また、忘れてはいけないのが赤い色素です。赤い色素といえばアスタキサンチンが有名で、これはどちらかと言うと植物よりも魚に多く含まれています。アスタキサンチンもまた強い抗酸化作用があり、網膜が活性酸素によって錆びついてしまうのを防いでくれます。アスタキサンチンはイクラやエビ、鮭などの赤い魚介類にたっぷりと含まれています。
さらに、アスタキサンチンの特徴は、盲膜を守るだけでなく目の表面にあるぶどう膜の炎症を抑えてくれます。ぶどう膜は、ぶどう膜炎という病気の名前で聞いたことがあるかもしれませんが、強い紫外線や免疫アレルギーなどによってぶどう膜で炎症が起こるとぶどう膜炎になり、視力が低下します。アスタキサンチンは、このぶどう膜の健康を保つ働きをしています。
また、アスタキサンチンには、水晶体の厚みを変化させる毛様体筋の疲労を回復させる効果が報告されています。毛様体筋は、私たちが近くや遠くを見る時にピントを合わせる働きがある筋肉のことです。これはぶどう膜とひとつながりになっているため、アスタキサンチンの摂取によってぶどう膜の健康を守ることは、そのまま毛様体筋の健康を守るということにつながり、眼精疲労を取ることにつながります。
一方で、魚介類に含まれている脂質は網膜の視細胞を守ることが分かっています。細胞は光を電気信号に変換して脳に送るという働きをしており、特に青魚に豊富なEPAやDHAといったオメガ3脂肪酸は、こういった視細胞を守る働きが高いことが分かっています。
特に目に良い食べ物の1つが「鯖缶」です。鯖(秋刀魚、鯵、鰹、鮪)などに含まれるDHAやEPAは血液をサラサラにして、血管老化を防止します。また涙の粘液成分であるムチンの生成を活性化してドライアイを予防する効果があるとされています。
そして、オメガ 3脂肪酸は魚介類だけでなく、植物性の油にも含まれています。オメガ3脂肪酸を含む油には、亜麻仁油や荏胡麻油などがよく知られています。ただしオメガ3脂肪酸は、熱に弱いという特徴があります。そのためこういった植物性の油の場合は、低温圧搾の商品を選ぶことが大切です。また食べる時も熱を加えず、サラダなどに直接かけて食べるといった方法が良いでしょう。
また、ブロッコリーに含まれるルテインやゼアキサンチンの栄養素は、目の健康に良いと言われています。ブロッコリーは茹でると水溶性ビタミンなどが水の中に溶け出してしまいますが、レンジで蒸したブロッコリーは、栄養を余すことなく体内に取り組むことができます。ブロッコリーを食べやすい大きさにカットし、加熱可能な容器に並べ、軽く塩やオリーブオイル、ごま油などをお好みでかけて電子レンジ500wで4分加熱するだけです。その後蓋を閉めたまま予熱で5分ほど蒸らすことで、芯までしっかり柔らかく仕上がります。
サングラスで目の紫外線対策
紫外線は皮膚だけの問題だと思っている人は結構多いですが、実は紫外線がもたらすダメージは肌の表面だけではありません。紫外線を受けることによって筋肉や免疫力にまで悪影響を及ぼすことが分かっています。特に中高年以上では紫外線を浴びるだけで体の回復力が低下することが分かってきています。
紫外線は、皮膚だけでなく細胞内のエネルギー工場であるミトコンドリアを傷つけ、それによってエネルギーの通貨と呼ばれるATPの産生が阻害されてしまいます。これによって体力はあるのに力が入らなかったり、疲労回復が遅いといった問題が少しずつ積み重なります。さらに紫外線による酸化ストレスは体内で炎症を引き起こしてしまいます。すると筋肉の回復が遅れたり、関節のこわばりなどが進行します。
さらに、紫外線は皮膚の免疫バリアを破壊し、全身の免疫細胞の働きまで弱めてしまうことが報告されています。その結果、風邪を引きやすくなったり、炎症性疾患が悪化したりします。このようなことから紫外線対策は、ただ肌の美容を守るためだけではなく、疲れない体を守るための重要な習慣と言えます。
ちなみに、ブルーライトカットの眼鏡は、確かにある程度のブルーライトは防げますが、太陽光のような強烈な紫外線まではカットできません。紫外線は、ブルーライト以上に目を酸化させてしまう非常に危険な光です。このような紫外線から目を守るためには、日頃から積極的にサングラスを活用することが大切です。
最も目の健康に良いサングラスは、真っ黒いサングラスより黄色いサングラスです。実は濃い色のサングラスは注意が必要です。雪山に行ったり、マリンスポーツをするなど、特に紫外線が強烈な場所で過ごす場合は別ですが、日常生活で濃い色のサングラスをかけてしまえば視界が常に暗くなってしまいます。視界が暗くなると目は、より多くの光を取り込もうとして瞳孔が開き気味になります。その結果、サングラスと顔の隙間から差し込む紫外線が、むしろ目に入りやすくなることが分かっています。このようなことからサングラスは黒よりも薄い黄色系を選ぶのがベストであると言えるでしょう。
また、朝10時以降の直射日光はできるだけ避けるようにしましょう。特に目から入る紫外線は、睡眠ホルモンの分泌を妨げて、夜の疲労回復のチャンスを奪ってしまうことが分かっています。このようなことからもサングラスなどによって目の紫外線対策をするのも重要な習慣です。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。


















