頭の鍼で熟睡眠体験

    睡眠は私たちの生活に不可欠な一部ですが、その理想的な量については様々な情報があります。睡眠をたっぷり取れば取るほど良い説、眠れる時にまとめて睡眠をとるべきという説、長時間の睡眠を推奨するなどがある一方で、睡眠は時間ではなく質だという意見もあります。

    理想の睡眠時間というのは一人ひとりで全く異なりますが、一般的には年齢を重ねるにつれて睡眠時間も徐々に短くなります。年齢を重ねるとともに日中の活動レベルや運動量は減少し、それに伴いエネルギー消費も低下します。そのため体の回復に必要な時間も短縮します。

    40から50代の女性であれば 6.5時間ほどの睡眠時間でスッキリ起きられるという人も多いです。もちろん同じ年代の人でも体力や運動量が違うため、必要な睡眠時間も変わります。また日本は四季がはっきりしていて、季節の移り変わりが睡眠にも大きな影響を与えています。日が短く寒い季節には睡眠時間が長くなり、日が長く暖かい季節には睡眠時間が短くなり、その違いは30分程度と言われています。つまり人の体内時計が日照時間の変化を感じ取り、その変化に合わせて睡眠のタイミングを調整しています。

    また、体内時計は人それぞれ異なり、その結果朝方や夜型の人が存在します。体内時計の違いは、遺伝的な要素や生活習慣によるものが大きいと言われています。さらに季節の気温の変化も睡眠に与える影響は大きくなります。

    睡眠不足がもたらす影響

    このように睡眠は体質や周囲の環境によって、その質や長さが変わります。ただし睡眠時間が極端に短いと人体に多くの問題をもたらします。睡眠時には多様なホルモンが分泌され、私たちの健康状態を維持する役割を果たしています。

    例えば、睡眠が不足するとホルモンの分泌が低下し、健康を保つことが難しくなります。また十分な睡眠を得ていない状態が長期化すると、私たちの脳は適切に機能しなくなり、日中に眠気を感じ始め、その結果集中力の低下や疲れやすさ、さらには苛立ちを感じやすくなり、物事を理解し記憶する能力も影響を受け、覚える力や思い出す力が減退します。認知機能が低下している状態は日々のミスを増加させ、ケガのリスクも高め、車の運転や精密な作業を行う際には特に危険を伴います。

    一方で、十分な睡眠を得られないと肌のトラブルにつながります。例えばクマ、ニキビ、肌のくすみなどが起こりやすくなります。睡眠中に分泌される成長ホルモンは、肌の健康を保つために重要な役割を果たしおり、私たちの肌は睡眠中に再生され、睡眠時間が短いと肌細胞の成長が妨げられてしまいます。

    さらに睡眠不足は、肌の保護バリア機能も弱め、外部からの刺激に対して肌が脆弱になります。一度肌の機能が低下するとその回復には時間がかかるため、早期の睡眠習慣の改善が肌の健康には大事になります。

    一方で、睡眠不足は通常の状態に比べて不安や憂鬱感を感じやすい状態でもあります。睡眠不足が続くと脳は負の感情を感じやすくなり、睡眠不足はストレス耐性も低下させ、些細なことでもストレスを感じやすくなります。

    通常は、睡眠中にストレスを処理するためのホルモンを分泌し、精神バランスを整えていますが、睡眠時間が短いとホルモン分泌が減り、ストレスに対する心と体の適応力が弱まってしまいます。もし睡眠不足が慢性化してしまうと精神的な不安定さが続くことになり、心の 余裕が失われ、否定的な思考傾向に陥ったりする可能性もあります。

    そして、睡眠不足は食欲の増加を引き起こし、肥満につながる可能性もあります。十分な睡眠を取らないと食欲を増幅させるホルモンの分泌量が増えてしまい、体が睡眠不足でも稼働できるようにしっかりカロリーを蓄えようとします。ホルモンバランスの変化が食べ過ぎを引き起こし、その結果肥満になりやすくなるだけでなく、覚醒時間が長くなると食事や間食の機会も増え、常に胃袋に何か入っているという状態になります。その結果消化器官への負担も増えます。一方で新陳代謝が悪くなり、基礎代謝量も低下していくため、体は太りやすく痩せにくい体質になりダイエットも難しくなります。

    長時間睡眠の影響

    ただし、睡眠時間が長すぎるのも問題で、睡眠のリズムが狂い、睡眠の質が落ちることがあります。理想的な睡眠時間を確保することも重要ですが、それ以上に質が大切だというのが一般的な見解です。

    質の良い睡眠リズムは、浅い眠りの段階から徐々に深い眠りに移行し、また覚醒の直前には浅い眠りに戻ります。この一連のプロセスが理想的であり、長すぎる睡眠はこの深い眠りと浅い眠りの均衡が乱れてしまいます。その結果、疲労感や集中力の低下など睡眠不足と同じような不快な症状を感じることになります。

    睡眠時間が長すぎると日中の活動量が減り、エネルギー消費量も少なくなりがちになります。そして眠っている間は体温が下がり、体が休息モードに入りエネルギー消費量を抑えます。このように1日を通してエネルギー消費量が低下し、その結果体重増加につながる可能性があります。エネルギー消費量が減っているにも関わらず、通常と同じ量、もしくはそれ以上に食べる行為を繰り返してしまうとあっという間に体重が増えてしまいます。

    もちろん眠っている間も呼吸や心拍など生命維持のための基礎代謝は、活動している間に比べるとかなり少ないものです。筋肉を使ったり、思考を行ったりするから多くのエネルギーを消費します。長時間寝て活動時間が短くなると全体のエネルギー消費量が減少し、太りやすくなります。

    睡眠の基礎知識

    疲れの原因は、人によって様々で医者であっても特定は難しいと言われています。睡眠には心身の疲労回復の他、免疫機能の増加や感情整理など色々な役割があります。心と体のいろんな機能を整える睡眠時間が不足すれば、ご飯食べようが何をしようが疲れは取れません。寝れば治ると言うのは先人の知恵、民間医療みたいなイメージがありますが、近年の研究では睡眠と疲労回復の関係性は科学的に正しいものだと解明されてきています。

    自分では睡眠時間が足りていると思っていても実は足りていなかったり、質が悪い可能性もあります。日中のどうしようもない疲れに悩んでいる人は毎日の 睡眠について見直してみるのがおすすめです。

    2023年3月全国の20歳から60歳の男女2500人を対象にしている調査データでは、睡眠の充足度の項目で十分足りていると答えた人が15%、ほぼ足りていると答えた人が36%、計51%の人が睡眠時間は足りていると答えています。この調査から自分の睡眠時間は足りていると思っている人が割と多くいることが分かります。

    理想の睡眠時間と実際の睡眠時間を比較すると、同じ調査の中で理想の睡眠時間を聞いたところ平均7.4時間は寝たいという結果が出ました。しかし実際の睡眠時間の調査では、平均睡眠時間は6.4時間しかなく、理想と現実で1時間ものギャップがありました。

    さらに同調査では睡眠に関する詳細も一緒にヒアリングしており、多くの人は 規則正しい睡眠寝つきや寝起きの良さについて聞くと概ね良好であると答えている一方で、疲れが取れないと感じる人が54%、日中に眠を感じると答えた人が59%もいました。また睡眠時間の内訳をヒアリングしていくと平日の睡眠時間は6時間以下、休日に多く睡眠 取ってどうにか長尻りを合わせて平均6時間ぐらいの人が多いことが分かっています。

    実際、厚生労働省が毎年行っている国民健康栄養調査を見ると睡眠の実態が見えてくる1番多い睡眠時間は6時間以上7時間未満が36%、次に多いのが5時間以上6時間未満で31%、5時間未満の割合が9%でした。つまり4割の人の睡眠時間が6時間未満となっていました。ただし人によって適した睡眠時間は異なり、睡眠時間が6時間だから良くないと一概には言えないのが睡眠の難しいところです。

    睡眠のタイプは人によって違い、大きく分けると3つのタイプがあると言われています。それがショートスリーパー、ロングスリーパー、バリアブルスリーパーの3つのタイプです。ショートスリーパーは、睡眠時間が6時間未満でも日中の活動に影響なく過ごせる人たちのことです。それに対して9時間以上の睡眠時間が必要となるロングスリーパータイプの人もいます。この2タイプの人口割合は、日本人の場合はショートスリーパーが5から8%、ロングスリーパーが3から9%の割合と言われています。日本人の80から90%はバリアブルスリーパー、6から9時間の変動型の睡眠タイプに当てはまります。そして調査によると、自分をショートスリーパーだと思っている人が全体の23%以上もいることが分かっています。しかし彼ら睡眠時間を聞くと平均して6時間ちょっとの人が多くなっています。

    ちなみにアメリカのペンシルベニア大学の睡眠研究では、4時間、6時間、8時間の3つの睡眠グループを作って日中のパフォーマンスを比較したところ、1番パフォーマンスが高かったのは当然8時間睡眠のグループ、そしてパフォーマンスがみるみる悪化したのが4時間睡眠のグループでした。面白いのが6時間睡眠のグループは、実験開始当初は日中のパフォーマンスに著しい変化は見られませんでしたが、実験開始10日後ぐらいからだんだんとパフォーマンスが悪化し、最終的に6時間睡眠を続けていたグループは2日寝てないのと同じぐらいパフォーマンスが悪化しました。さらに側から見ればパフォーマンス悪化は明らかでも本人たちは自覚も眠気もない状態でした。

    もちろん、実際に2日徹夜した後なら頭が働いていないと自分でも気づけますが、疲労状態が慢性的に続けば脳が気づかなくなり、睡眠時間が短くても大丈夫になったと思う人ようになります。しかし残念ながらショートスリーパーは体が慣れれば慣れるようなものではなく、近年の研究ではショートスリーパーは先天的な体質によるものということが分かってきています。

    2009年のカリフォルニア大学の研究で睡眠に関する特定の遺伝子に変異がある ことが判明しています。DEC2は睡眠に関わる遺伝子で、この遺伝子が変異すると記憶の情報整理が短時間で可能になります。つまり短時間の睡眠でも脳に疲労が残らず、通常通りに活動ができるようになります。

    さらに同研究所は、2019年にショートスリーパーに関わる別の遺伝子を発見したと発表しています。3世代に渡ってショートスリーパーの家系に着目し、遺伝子の解析をしていったところDEC2の変異は確認できなかったが、ADRE1という遺伝子に変異が起きていたことを発見しました。またADRE1が発現したマウスの脳の状態を調べたデータでも、不快睡眠状態でも少しの刺激ですぐに覚醒し、通常のマウスよりも活発に活動ができたことが分かりました。つまりこの遺伝子を持つ人は短時間睡眠の上、目覚めも良いし、日中の活動の質も高いことになります。ADRE1の特性は家族間で遺伝しやすいため、ショートスリーパーの家系ができると発表されています。

    一方でバリアブルスリーパーの人は、どれくらい寝れば疲れがしっかり取れるのかが気になると思いますが、一般的に理想の睡眠時間とされるのは7時間から9時間です。睡眠に関する研究は世界各地で行われており、この理想の睡眠時間も研究の末に導き出されたものです。アメリカの睡眠財団でも18歳から64歳の成人の理想睡眠時間は7から9時間としています。実際、経済協力開発機構の調査では、アメリカの平均睡眠時間は8.8時間と発表されています。

    また、平均すると7から8時間は寝ているのに疲れている人は睡眠の質が悪いのかも知れません。さらに休日寝貯めについては諸説あり、アメリカの研究チームによれば睡眠不足は補えないし、効果がないというデータもあります。週のトータル睡眠時間は増えますが、不足した分を補うことができません。ペンシルベニア州立大学の研究結果でも、寝貯めでは認知機能の回復は認められないとしています。

    レム睡眠とノンレム睡眠

    睡眠には大きく分けてレム睡眠とノンレム睡眠の2種類があります。レムとは睡眠中に起こる眼球の運動のことで、レム睡眠中は体が休んでいても脳は活発に動いていて、起きている時に得た情報の整理や記憶の定着などを行っています。脳内の情報が整理されることで、ストレス解消効果もあります。夢を見るのはレム睡眠の時だけで、眠りが浅いため光や音などの刺激で目を覚ましやすい状態と言えます。

    一方、ノンレム睡眠中は脳と体の両方が休んでいる状態です。ノンレム睡眠は眠りの深さによって4つのステージに分かれています。最も深い眠りのことを 「深睡眠」または「徐波睡眠」と呼びます。この最も深い眠りが睡眠の質を大きく左右しており、眠りについてから4時間以内に深睡眠が取れたかどうか重要です。

    眠りに落ちてからレム睡眠とノンレム睡眠は4回から5回ほど繰り返されますが、最も深睡眠が現れやすいのが、眠り始めてから4時間以内に訪れる最初と2番目のノンレム睡眠の時です。この最初の4時間以内に深睡眠がしっかりと取れていれば睡眠の質は上がります。つまり睡眠の質は最初に訪れるノンレム睡眠の時にどれだけ深く眠れているか重要になります。

    ただし、ストレスの解消効果があるのはレム睡眠であるため、深く眠れたとしても短時間の睡眠では足りないということになります。レム睡眠は、睡眠の後半になるほど増えていくため、 3時間から4時間の睡眠では十分なレム睡眠を確保することできません。つまり体や脳の疲労回復には、睡眠の最初に訪れるノンレム睡眠中の深睡眠が重要となる一方で、ストレスの処理は睡眠の後半に増えるレム睡眠が重要なります。やはり長期的に見れば7時間から8時間の睡眠時間を確保しましょう。

    なぜ人は眠るのか

    睡眠は脳や体がメンテナンスモードに入っている状態です。その中で注目されているのが「グリンパティックシステム」です。

    脳はエネルギーの約25%を使う、代謝が高い組織であり、そのため老廃物(アミロイドベータやタウ蛋白質など)も沢山出していると考えられています。体中に張り巡らされたリンパは、老廃物を回収し除去する役割がありますが、しかし脳には他の組織と違い、老廃物を排出するためのリンパ機能を担う構造が存在しないとされてきました。

    そのため血液がその役割を担っていたと考えられてきましたが、実は神経細胞(ニューロン)をサポートするグリア細胞が管状の構造をつくり、リンパのような役割を果たしているのではないかと考えられています。つまり脳であれば中枢神経系全体を満たしている脳脊髄液がリンパ流のような細胞外での流れを生むことで、脳内で生じた老廃物を効率的に脳外へと除去(脳の洗浄)していると考えられています。

    このグリンパティックシステムによって、脳内の老廃物の排泄の働きが明らかになり、アルツハイマー病をはじめとする様々な脳疾患の発症に関わることが報告され注目が集まっています。

    このメンテナンスモードは、ノンレム睡眠の時だけ働くということなので、ノンレム睡眠を取らなければ、この老廃物を取り除くシステムが動かないということになります。

    睡眠が乱れる理由

    深睡眠がうまく取れない理由として、体内時計が狂っていることが一つの大きな原因です。私たちの体には体内時計が備わっており、時間帯に合わせた本能的な行動欲求がある程度決まっています。この約24時間周期のリズムを学術的には「サーカディアンリズム」と言い、2017年にはノーベル生理学医学賞を受賞した研究分野です。

    例えば、夜になると眠くなり、朝になると目が覚めるのは、このサーカディアンリズムに起因しています。自律神経の働きや体温の変化、ホルモンの分泌など私たちの体のありとあらゆる働きは体内時計に従っています。そしてこのリズムを毎日リセットしてくれるのが太陽の光です。

    サーカディアンリズムの周期は24時間よりもやや長いため、太陽光でリセットしなければ毎日少しずつ就寝時間がズレていきます。特にパソコンやスマホから発せられるブルーライトが、脳の松果体という部位を刺激して、重要な睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を狂わせてしまうことが分かっています。結果的に体内時計が狂い、眠りたくても眠れない状態となってしまいます。

    私たちの体は、朝に太陽光を浴びることで、睡眠ホルモンのメラトニンの分泌がストップして眠気が弱くなり、交換神経が活性化して体が目覚めるという仕組みになっています。特に脳は起きてから時間が経過するほど動きが鈍くなるという性質があり、朝のリセットが終わるとほどなくして一気に脳が活性化します。脳の活動のピークが来るのは起床から約4時間後となります。

    脳のパフォーマンスが午前中にピークを迎えると、そこからはゆっくりとパフォーマンスが下がって、夜になると自然と眠くなります。このような体の仕組みにはホルモンが関係しています。日中は、自律神経の安定を促すセロトニンが多く分泌されています。このセロトニンは睡眠ホルモンのメラトニンの原料となり、夜になるとメラトニンに変換されて眠気を生み出します。このセロトニンの分泌は、体が太陽光を感じることで増加し、夜は減少します。逆にメラトニンは、太陽光を浴びると減少し、夜は増加します。このセロトニンとメラトニンの分泌サイクルが、太陽光を浴びることをスイッチとして、毎日繰り返します。

    睡眠前のNG行動

    水分の摂りすぎ

    寝る前に一番やってはいけない行為が水分を取りすぎることです。その理由は、睡眠時に尿意で起こされないようにするためです。特に頻尿の自覚がある高齢の方は注意しましょう。また水分の中でも控えたいのがお酒です。アルコールには利尿作用があり、また睡眠中にアルコールが分解されることで交換神経が刺激され、体も脳もリラックスできない状態なります。お酒を飲む場合は就寝する3時間前まで、また就寝1時間前からは、お茶やコーヒーを摂取するのも控えましょう。

    寝る前スマホ

    自然な眠りを誘う作用を持つメラトニンは、夕方頃から分泌が始まり、暗ければ暗いほど分泌量が多くなります。逆に明るい光はメラトニンの分泌を抑制する働きがあります。特にブルーライトは脳を強く刺激して、メラトニンの分泌を抑制し、体内時計を狂わせてしまいます。例えば中国の研究チームの調査によると、寝る前のスマホの利用を制限するだけで平均12分早く眠ることができ、睡眠時間が18分長くなることが分かっています。

    また、光の色と睡眠にも関係があります。一般的にリラックスできる色は、温度の低い暖色系の色で、特に温かみのあるオレンジ色なら心地いい眠りに導いてくれます。

    就寝前の歯磨き

    就寝前の歯磨きは質の良い睡眠を妨げることが分かっています。歯茎が刺激されるとメラトニンの分泌量が減ると言われており、睡眠ホルモンのメラトニンが抑制されることで睡眠モードが解除されていまいます。理想の歯磨きのタイミングは就寝1時間前くらいです。逆に朝食後に歯磨きすることで目覚めが良くなることになります。

    入浴は就寝の1時間半前

    眠気は体の深部体温が低下することで訪れます。深部体温の変化には特徴があり、深部体温が下がる直前に一旦上げると、その分温度が深く下がることが分かっています。つまり睡眠前に一時的に体温を上げることで、その分体温が下がり、通常よりも強い眠気が訪れて深く眠ることが可能となります。言い換えれば就寝時刻に合わせて深部体温を意図的に下げるように調整すれば、眠りやすくなると言えます。そこで就寝時刻から逆算して1時間半前か2時間前に入浴をすることが大切です。

    また、熱々のお湯に短時間つかるよりも、ぬるめのお湯にゆっくりと浸かる方が効果があり、熱いお湯に短時間浸かるだけでは、体の表面温度が熱くなるだけで体の深部まで温まりません。リラックスしながらゆっくりとお湯に浸かることで体の深部まで温めることができます。

    14時以降のコーヒー

    適切な量のコーヒーを飲むことは、コーヒーがもたらしてくれる様々なメリットを享受することができます。しかしどんなに体にいいものであったとしても摂りすぎてしまうとデメリットになります。

    具体的にコーヒーは何杯まで飲んでも良いのかは、個人差がありますがハーバード大学医学大学院教授のサンジブ・チョプラ氏は、健康的な成人にとって4杯は安全だろうとしています。またアメリカ医師会では2、3杯が標準であるとしています。さらに心臓の健康に関する35万人以上の参加者のデータを調べた大規模な研究では1日4杯までは効果があるだろうとしています。

    しかしながら、コーヒーに含まれるカフェイン作用は遺伝の影響が大きく、生まれつき悪影響が出る人もいます。またカフェインの利尿作用が働くと水分が体外に排出されてしまうため、コーヒーを飲むと体内の水分レベルが低下し、腎臓に負担をかけることがあるとされています。例えば腎不全などで腎機能が低下している人は、コーヒーなどに含まれるカリウムをうまく排泄することが できないためコーヒーが腎臓に悪影響を与えてしまうと言われています。

    一方で、カフェインを摂取すると覚醒し、頭が冴えわたって集中できるのは、疲れを感じさせる脳内化学物質アデノシンの働きをカフェインがブロックするからです。同時にアドレナリンが分泌されます。

    この2つの働きによって、冴えるのですが、カフェインを摂取しすぎてしまうと増強され過ぎて不安やストレスに繋がる可能性があります。実際にカフェイン誘発性不安障害があり、カフェイン関連症候群の一つとされています。またカフェインの摂取量が増えるとストレスレベルが増加することが示されています。その研究では25人の健康な男性を対象とし、約300mgのカフェインを摂取した人は、プラセボ摂取した人の2倍以上のストレスを経験したことが分かっています。

    また、カフェインの副作用として不眠症などの睡眠への悪影響があります。例えばアメリカ睡眠医学界によると、カフェインの半減期は約5時間だとされています。つまり午後7時に食100mg のカフェインを含むコーヒーを1杯飲んだ場合、5時間後にも体内に50mgのカフェインが残ってしまうということです。また研究でも、就寝前6 時間以内にコーヒーを飲むと睡眠時間が1 時間短縮されることが分かっています。一方で体内にカフェインが残ってしまうと体の回復と記憶の強化に非常に重要な徐波睡眠とレム睡眠の量を減らしてしまう可能性が指摘されています

    そして睡眠不足が体重増加、肥満率の上昇、二型糖尿病、心臓病などに関連しているということが知られており、さらに死亡率が上がってしまうということも分かっています。自治医科大学によって行われた日本の睡眠時間と死亡率を調べたコホート研究では、睡眠時間が1日6時間以下の男性は7から8時間の人と比べて死亡率が2.4倍高いということが明らかになっています。睡眠不足で死亡率が上がるのは免疫力の低下が挙げられています。さらに約5.7万人の女性を対象にした調査によると、睡眠時間が5時間以下の人 は8時間前後の人たちに比べて1.39倍肺炎になるリスクが高かったということが判明しています。

    睡眠の質を改善する方法

    睡眠の質を改善するグリシン

    グリシンを摂取すると睡眠の質が良くなることが分かっています。この根拠として、睡眠医学山寺先生の研究内容があります。この研究は健康な男性ボランティアを2つに分け、グリシンと偽薬を各グループに摂取してもらいました。そして睡眠の質と翌日の認知機能を評価した結果、2グループに明らかな違いが出ました。グリシンを摂取したグループの方が睡眠が深く、翌日の疲労感も少ない傾向が見られ、一方偽薬のグループではほとんど変化は起こりませんでした。グリシンには睡眠の質を改善し、疲労感を軽減させる効果があることが実証されています。また、これと似たような研究データが複数存在しています。

    グリシンはアミノ酸の一種で体内でも生成されますが、食品からも摂取することが可能です。グリシンは神経系において重要な役割を果たし、特に中枢神経系での興奮と抑制のバランスを調整します。リラックスや安心感を感じる神経伝達物質の放出を促進し、さらに体温を下げる効果があります。つまり体内にグリシンの量が多いと睡眠の質も改善効果も期待できます。

    グリシンは幅広い食品に含まれており、例えば動物性食品なら牛肉、豚肉、鶏肉、魚介類、植物性食品なら大豆製品、ほうれん草、かぼちゃ、きゅうり、バナナなどに含まれています。

    寝る前の3時間は何も食べない

    食事を摂ると消化と吸収のために約3時間は胃が活発に動くと言われています。消化の過程で体温が上昇することで睡眠の質を低下させる可能性があります。理想的な睡眠の入り方は、体温を徐々に下げ、脈拍も落ち着かせる必要がります。しかし胃袋に何か入っている状態になると、消化器官が稼働しているため体がリラックスできなくなります。また眠る直前に食事を取るという行為は、逆流性食道炎や胃酸逆流などの問題を引き起こす可能性もあります。

    特に肉は胃での消化は2から4時間、小腸ではさらに4から5時間かかります。その後、大腸での最終的な水分と電解質の吸収を含むとさらに12から48時間かかります。

    睡眠の質を改善する運動

    適度な運動が睡眠の質を向上させます。運動は私たちの体内時計を調整し、体のエネルギーを消費し、ストレスを軽減させます。運動で体内の温度を上昇させるとその後は徐々に温度が下降し、睡眠に入りやすい状態になります。体温が下降するときに睡眠ホルモンのメラトニンの分泌が促進されます。運動はエネルギーも消費し、体がエネルギーを使い果たすと自然と休息を求めるようになり、適度な運動をすると自然とその日は眠りが深くなります。

    さらに運動するとエンドルフィンというホルモンが多く分泌され、エンドルフィンは自然の鎮痛剤や幸せホルモンとも呼ばれ、ストレス緩和の効果が高いホルモンです。ストレスが緩和されると安心感が増し、リラックスした状態で寝ることができます。

    運動の量や時間に関しては、中程度の強度の運動がお勧めです。中程度は早歩きや階段の上り下りをするレベルの運動強度です。このレベルの運動は不眠症の改善や睡眠の質向上にも効果的です。中程度の運動であれば1日 20分程度で、なるべくは毎日行うのがベターです。

    ラベンダーで深い睡眠

    質の良い睡眠を確保するためには、副交感神経が優位な状態となって、心と体をリラックスさせる必要があります。ラベンダーの香りは、催眠効果から不眠症の治療にも使われており、その効能は世界各国で研究が進められています。日本でも大学生を対象とした脳波実験において、ラベンダーの香りをつけた布団で眠ると通常に比べて深い睡眠時間が長くなるという結果が出ています。

    睡眠負債

    睡眠負債は睡眠不足が蓄積することですが、問題なのは一晩ぐっすり寝てもその不足分は返していません。睡眠負債を解消するには何日もかけて正常な睡眠時間を確保していかなければならず、1日あたり1時間の睡眠不足を解消するには約4日間かかると言う説もあるぐらいです。慢性的な睡眠不足が続くと解消するのは眠気だけで糖代謝やホルモンの値は正常に戻りません。すべてを正常値に戻すには9日以上かかると言われています。

    ソーシャルジェットラグ(社会的時差ボケ)

    日本は世界でも稀に見る寝不足大国と言われています。世界50以上の国と地域の平均睡眠時間を調査すると、日本は最下位で6時間18分となっています。そして各国の客観的な睡眠時間を測ると、国民1人当たりのGDPが高い国、つまり経済的にリッチな国ほどよく 寝ていることが分かりました。日本人が普通に考える寝る間も惜しんで頑張ると言うコンセプト自体がナンセンスなことが分かります。頑張りたいならそれこそよく眠ることが必要です。

    健康に大きな影響を及ぼすのが睡眠時間です。アメリカ国立睡眠財団の研究によると、成人の適度な睡眠時間は少なくとも7時間と言います。もちろん1日2日睡眠不足に陥ったからと言って、すぐさま健康に大きな問題が生じるわけではありません。しかし睡眠不足が続くと日常生活はままならなくなり、内臓の機能が落ちて消化不良や免疫力の低下、集中力や意欲の低下など様々な問題を引き起こす可能性があります。早起きをするのに結果的に睡眠不足になってしまっては元も子もありません。そもそも睡眠不足が続けば早起きはただの苦行となってしまいます。

    どのくらいの睡眠時間を確保するのが妥当かと言えば、もちろん人にもよりますが7時間程度の睡眠は必要です。朝方のライフスタイルに移行したいのであれば睡眠時間を削るのではなく、就寝時間を早めて睡眠サイクルを前にずらすのが正解です。そのため遅くても11時頃までに寝ることで7時間の睡眠時間を確保しても朝の6時に起きることができます。

    また、平日に睡眠時間がどうしても十分に取れない人は、休日に昼前ぐらいまで眠り、その睡眠負債を返しています。就寝時刻と起床時刻の丁度中央の時刻、これを睡眠中央時刻と言います。この睡眠中央時刻はその人の睡眠のタイミングの指標になります。

    例えば、平日と休日とで3 時間ズレてたとしたら、これは旅行に行って時差ボケするようなものであり、次の日に調子が悪いのが当たり前です。これをソーシャルジェットラグ(社会的時差ボケ)と言います。平日どうしても睡眠時間確保できない方は、その睡眠負債を抱えたままでいるよりは週末とか休日に返した方がまだマシですが、睡眠中央時刻できるだけズラさない方が良いでしょう。

    脳をほぐすことで体と心を癒す「究極のヘッドスパ鍼」

    一般的なヘッドマッサージは部分的な頭のコリをほぐすものですが、 究極のヘッドスパ鍼は頭をほぐして脳の血行を促進し 、体全体を根本から癒すことを目的としています。 また、エステやヘッドスパでは体感することのできない 当院独自の鍼灸技術は、贅沢で心地よい眠りへ誘います。施術後数分で深い眠りに落ちる、圧倒的な睡眠体験を感じていただけることでしょう。

    睡眠問題を抱えている成人の方の脳は熟睡することを忘れてしまっています。つまり浅い睡眠状態を記憶したままの状態です。そのため脳が誤認し続けないように、原因点に刺鍼を繰り返すことで脳のイメージを書き換えていく必要があります。当院の独自の鍼灸技術により「質の高い熟睡」を体験していただき、さらにその熟睡を脳に記憶させることで「熟睡体験」を習慣化させていくことが可能となります。

    また鍼の刺激によって、日中に活性化した交感神経の働きを抑制し、副交感神経の働きを亢進して、脳や体をリラックスした状態に導くことができます。特に睡眠の質が低下している場合、鍼灸治療によって交感神経を抑え、副交感神経機能を活性化して自律神経のバランスを整えて、睡眠問題を改善することが期待できます。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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