
「なんとなく脳が疲れている気がする」という感覚を、単なる気のせいだと片付けてしまう方は多いのではないでしょうか。しかし脳もまた一つの臓器であり、使い方を誤れば不調をきたします。その不調こそが脳疲労であり、メンタル不調や認知症の根本にも関わっていると考えられています。
脳疲労はその名の通り脳が疲労困憊してしまっている状態です。体の疲労は筋肉痛や動きの悪さなどによって直ぐに気づくことできますが、私たちは自分自身の脳疲労に中々気づくことができません。なぜなら脳は、疲れきっていても痛みや痒みといった強いメッセージを発することができないためです。
脳は「省エネ」な臓器
脳を語るうえで欠かせないキーワードが「省エネ」です。脳は体重のわずか2パーセントほどの重さしかないにもかかわらず、基礎代謝の20パーセントものエネルギーを消費します。これは筋肉や肝臓が消費するエネルギー量に匹敵するほどの規模であり、決して小さな数字ではありません。
それでいて脳というハードウェアの仕組み自体は、10万年ほど前からほとんど変化していないといわれています。当時、脳の主なエネルギー源であるブドウ糖は今のように潤沢に手に入るものではありませんでした。だからこそ脳は、限られたエネルギーで最大の成果を出せるよう進化してきたのです。
その効率の高さを示す例として、ある計算をスーパーコンピューターで行うと200万ワットもの電力を要するのに対し、脳は同じ処理をわずか20ワット、豆電球程度の電力でこなしてしまうという話があります。スーパーで醤油を探すとき、棚の端から端まで一つずつ確認する人はいません。
調味料コーナーへ直行できるのは、脳が経験にもとづいて答えを一足飛びに導き出す「ヒューリスティック」という仕組みを備えているからです。コンピューターが力任せに全件を検索するのとは対照的に、脳は最短ルートで答えにたどり着こうとします。
脳のショートカット思考と認知バイアス
この省エネを実現するための仕組みが、記憶や思考におけるショートカットです。脳は見たものをそのまま記録するのではなく、自分にとって都合のよい形に情報を変換して取り込んでいます。子どもが「みんな持っているから買って」と言うとき、実際に話を聞いてみると友達は二人しかいないというのはよくある話です。
一度の失敗を「もう自分の人生は終わりだ」と極端に捉えてしまうのも、同じ短絡的な思考の表れです。こうした思い込みは、決して特別な症状ではなく、脳が本来備えている省エネ機能の一環にすぎません。占いで「今日のラッキーカラーは赤」と言われると、その日はやたらと赤いものが目についたように感じることがあります。これは占いが当たっているのではなく、自分自身が無意識に赤いものを選んで見ているために起こる現象です。
双子を見たときに「似ている」という先入観があると、似ている部分ばかりに注目してしまい、実際には似ていない部分の方が多いことに気づきにくくなります。こうした認知バイアスは、脳が疲れてくるほど強まっていきます。届いたメールの文面がなぜか怒っているように感じられたり、道ですれ違った人のひそひそ話が自分の悪口のように思えたりするのも、脳疲労によってショートカットの働きが加速し、思考がネガティブな方向に偏っている状態だと考えられます。
末梢性疲労と中枢性疲労
疲労と一口に言っても、その中身は一様ではありません。2021年にスウェーデンのイエテボリ大学が疲労の基準を見直した結果、実に13種類もの疲労が存在することが分かったといいます。分かりやすく整理すると、体を動かしたことによる肉体疲労と、長時間の会議のように体を動かしていなくても感じる精神疲労という軸がまずあります。
さらに、眠れば回復しやすい疲労と、眠っても簡単には回復しない疲労という軸を重ねると、疲労は大きく四つの領域に分けて考えることができます。子どもが運動した後に感じる疲労は、肉体疲労かつ回復しやすい領域に位置し、ぐっすり眠ればむしろ元気を取り戻します。
一方で大人が日常的に抱えがちなのは、精神疲労かつ回復しにくい領域の疲労です。ここには、やりたいことを我慢し続ける「自我消耗」と呼ばれる状態も含まれます。今これをやろうと思った瞬間にできなかったという経験の積み重ねは、想像以上に大きなストレスになるといいます。こうした精神疲労や自我消耗が蓄積した先に、脳疲労と呼ばれる状態が待っています。
新社会人が慣れない職場環境の中で気を遣い、空気を読み続けることによる疲れも、多くはこの精神疲労に分類されます。厄介なのは、この段階でうまく回復できないと、後戻りしにくい疲労へと進んでしまう点です。
大雑把には疲労は肉体と精神の2つに分けられ、疲労は痛みや発熱ともに体が発する3大アラートの1つと言われており、疲労は大きく末梢性疲労と中枢性疲労に分けられます。抹消性疲労は筋肉や臓器、組織を働かせるための材料となる物質やエネルギーが足りてない状態です。
つまり使いすぎや栄養不足でエネルギーが足りなくなることで、だるさや疲れ感じてしまうことです。特に内臓の疲れは筋肉に比べて気づきにくいため自覚症状がないまま重症化するケースも少なくありません。そして中枢性疲労とは脳の疲労のことで、臓器の働きを調節するなど体のバランスを維持してくれている自律神経を酷使したり、強いストレスを感じると脳細胞がダメージを受けて疲労を感じるようになります。
また、末梢性疲労の症状としては身体のだるさや肩こりなどの筋肉の痛み、眼性疲労などがよくある例として挙げられます。その他にも不眠や動機、呼吸、困難、耳鳴り、嗅覚や聴覚の異常、微熱などの症状が現れる場合もあります。一方で中枢性疲労の症状は、夜中に目が覚めてしまったり、倦態感が抜けなかったり、イライラしたり、不安が強くなるといったことが挙げられます。
このような体からの警告を無視して働き続け、疲労が長い間に渡って積み重なると疲れがなかなか取れず、いつもだるい蓄積疲労と呼ばれる状態に陥ってしまいます。この状態になると休養や睡眠を取ったり、栄養を摂取したりしても疲労が解消できず回復が困難になってしまいます。
さらに蓄積労状態を放置していると症状が悪化し、自律神経失調症になったり、最悪の場合過労死に至ることもあります。自分自身の疲労は意外と気がついてないことが多いため、こういう症状が出たらなるべく休みを取ることが大切です。
脳疲労とアデノシン
脳細胞を含めた私たちの全ての細胞はアデノシン三リン酸、通称ATPという物質をエネルギー源としています。このATPが分解されることによって、エネルギーが発生し、私たちの細胞は活動することができます。ATPが分解される際に発生する副産物がアデノシンです。このアデノシンが脳にくっつくことによって脳疲労が生じると考えられています。
そもそもアデノシンは、私たちの脳に存在する受容体に結合することで覚醒作用のあるヒスタミンという神経伝達物質の働きを抑えます。つまりこのメカニズムによってアデノシンは眠気を催すことになります。たくさん体を動かすと脳を含めた体中でATPがたくさん分解され、アデノシンが大量に蓄積しています。このような大量のアデノシンが脳の受容体にピタッとくっつくことでヒスタミンが抑制され、眠たくなるというメカニズムがあります。
正常な体の場合、このように脳にくっついたアデノシンは、睡眠中に除去されて、朝になると眠気は綺麗さっぱりなくなっています。しかし脳疲労が進んで、 頭の中がアデノシンでいっぱいになると数時間の睡眠では全てのアデノシンを除去することができず、朝起きても頭の中にアデノシンがまだ残っていて眠気やだるさが取れず、次の日までだるさや眠気が持ち越されてしまうことになります。
一般にどれほど体を動かしても、次の日に持ち越されてしまうほどのアデノシンは生成されないと考えられています。むしろ体をたくさん動かしている肉体労働の人の方がぐっすり眠れて、次の日の朝からフレッシュに働いているようなイメージがあります。このように肉体疲労によるアデノシンによって朝起きてだるい症状が出るというのはあまり多くはありません。
次の日まで持ち越されてしまうほどのアデノシンを作り出してしまう疲労は、肉体の疲労ではなく脳疲労です。私たち現代人の脳疲労の原因は情報過多であると考えられており、情報過多とは脳に入ってくる情報量が多すぎて、脳が処理しきれなくなってしまっている状態のことです。
21世紀に生きる私たちが1日に受け取る情報量は江戸時代の1年分、平安時代の一生分であるとも言われています。一方で脳は、ちっとも進化していないことが分かっています。私たちの脳細胞は平安時代の人たちと同じです。
さらに、脳疲労を促進させているのがストレスです。ストレスに晒されて脳が覚醒状態になると私たちはぐっすり眠ることができません。私たちの脳は眠っている時に情報を整理しますが、ぐっすり眠れないと情報の整理がうまくいかず、朝になっても脳の中の情報がごちゃごちゃのままになってしまいます。
「グリア細胞」の役割
脳の働きというと、ニューロン同士がシナプスを介して電気信号や神経伝達物質をやり取りする様子がイメージされやすいものです。しかし脳の中には、ニューロンと並んでもう一つの重要な細胞群が存在します。それがグリア細胞であり、現在では脳の細胞の半分近くを占めるとされています。
グリアという名前はもともと「接着剤」を意味しており、ネットワークも作らず電気信号も発生しないことから、長らくニューロンの隙間を埋めているだけの存在だと考えられてきました。かつてはグリア細胞がニューロンの9倍ほど存在することから、「脳は10パーセントしか使われていない」という都市伝説めいた話が広まったこともあったといいます。
しかし実際には、グリア細胞は電気信号を発しないだけで、極めて重要な役割を担っています。一口にグリア細胞と言っても種類はいくつかあり、たとえば脳内の清掃係とも呼ばれるミクログリアは、異物や不要になった老廃物を取り込んで処理します。オリゴデンドロサイトと呼ばれるグリア細胞は、電気信号を伝える神経線維に巻きついて伝達速度を調節しています。
なかでも近年注目されているのがアストロサイトと呼ばれる星形の細胞です。アストロサイトは血管とシナプスの両方に接触するインターフェースのような存在で、電気活動によって多くのエネルギーを必要とするニューロンに対し、血管から取り込んだブドウ糖を供給する役割を担います。
同時に、ニューロンの活動で生じた老廃物を回収し、再利用できるものは循環させて戻すという、いわば脳内のメンテナンス係でもあります。家庭にたとえるなら、食事を用意し、後片付けまでこなしてくれる存在といえるでしょう。実際、さまざまな精神的な不調や認知症において、このアストロサイトの働きが低下していることが近年の研究で明らかになりつつあります。
脳の炎症
グリア細胞は免疫を担う細胞でもあるため、炎症に対して非常に敏感に反応します。皮膚が赤く腫れたり、胃腸や肝臓に炎症が起きたりするのと同じように、脳もまた炎症を起こしうる臓器です。脳における炎症とは、いわばグリア細胞が過剰に働いてしまっている状態であり、本来であればメンテナンスに充てられるはずのリソースが、緊急対応に奪われてしまっている状況にたとえられます。台所が本来の役割を果たせず、火消しに追われて料理どころではなくなっている状態を想像すると分かりやすいでしょう。
アルツハイマー病のモデルマウスの脳を観察すると、グリア細胞が活発に働いている様子が確認できるといいます。これは脳が何とか元の状態に戻ろうと懸命に働いている証拠でもあります。頭部を強くぶつけたときや、脳出血・脳梗塞が起きたときも同様に、グリア細胞は必死に修復にあたります。
つまり炎症そのものは決して悪いものではなく、本来は正常な状態へ戻すための過程なのです。しかし炎症が慢性的に進行し続けると、やがてメンテナンスが追いつかなくなり、脳のパフォーマンスは低下の一途をたどり、最終的には脳細胞そのものが損なわれてしまうことにもなりかねません。
体の炎症が脳に及ぼす影響
興味深いのは、脳で起きる炎症のきっかけが、必ずしも頭部への衝撃のような分かりやすい出来事に限らないという点です。近年の研究では、体のどこかで生じた炎症性物質が血流に乗って全身を巡り、脳にまで炎症を引き起こすことが分かってきました。
怪我や骨折はもちろん、歯周病のような慢性的で軽微な炎症も例外ではありません。歯周病によって放出される炎症性物質は、体内で炎症が起きていることを知らせる伝令のような役割を果たしますが、それが毎日少しずつ続くことで、脳にもじわじわと負荷をかけていくと考えられています。
免疫は脳からの指令によって働くというイメージが強いものですが、実際には体の免疫状態が脳にも影響を及ぼすという、双方向のやり取りが存在します。これは神経免疫連関と呼ばれ、近年関心が高まっている領域です。内臓脂肪からも炎症性物質が放出されることが分かっており、いわゆるメタボリックシンドロームの状態にある方がイライラしやすいのも、脳がうまく機能していないことと無関係ではないかもしれません。
月経前症候群や更年期症状も、内臓における炎症が脳に影響を及ぼしている可能性が指摘されています。かつては、怪我や持病を抱える方がストレスによって精神的に不安定になると考えられてきましたが、実際には炎症性物質が直接脳に炎症を引き起こしている場合があるといいます。精神論では片付けられない、生物学的な現象としての脳疲労が、そこには存在しているのです。
情報過多という現代病
現代人に脳疲労が多いといわれる背景には、情報量の爆発的な増加があります。ある説によれば、17世紀の人が一生をかけて得る情報量を、現代人はわずか23日ほどで消費しているといいます。地球の裏側に住む見知らぬ人が昼食に何を食べたかといった情報さえ、望まなくても自然と入ってきてしまいます。
こうした情報の洪水は脳の処理能力をやすやすと超えてしまい、まず認知疲労として現れ、それが蓄積することで自分では処理しきれない状態に陥っていきます。省エネを前提に設計された脳にとって、際限なく流れ込む情報量はあまりにも過大な負荷なのです。
実際、日本リカバリー協会が行った調査では、日常的に元気だと感じている方の方が少数派であるという結果が出ています。しかもその割合は年々減少傾向にあり、特に20代から40代の疲労が目立つといいます。なかでも20代・30代の女性は世界的に見ても睡眠不足や疲労が深刻な層とされています。
絶対に放置してはいけない
朝起きてすぐだるくなる原因がうつ病の前ぶれです。先ほどの脳疲労と並んで私たち現代人を悩ませているものが心の疲労です。疲労しきってしまった心はうつ病という取り返しのつかないような大きな心の病の原因となってしまいます。うつ病の原因についてはまだ未解明なところが多いですが、少なくともその原因の1つに頑張り過ぎがあります。
何か目標に向かって頑張るというのは、人生に張り合いを持たせるために大切なことです。目標に向かって頑張ることで 私たちは人生を楽しむことができますし、何よりそれによって若々しく希望を持って生きることができます。
一方で、頑張り過ぎることで私たちの心には相当な負荷がかかっています。このような負荷、つまり心の怪我を放置して傷口が開いていくとついにうつ病となり、最悪の場合2度と立ち直れなくなってしまいます。うつ病の初期症状としては様々なものがありますが、代表的なものに早朝覚醒と呼ばれるものがあります。
早朝覚醒はその名の通りで朝早くになぜか目が覚めてしまうことです。本当は7時ぐらいまで寝て良いのに、朝の3時とか4時ぐらいに目覚めてしまうのが早朝覚醒です。睡眠が足りず、アデノシンを初めとした疲労物質がまだ全然除去できていないにも関わらず、朝早く目覚めてしまいます。そのため目覚めているにも関わらず体や脳がだるくて全く動けないという状況になってしまいます。これがうつ病による早朝覚醒です。このような症状のため、うつ病の人というのは朝目覚めているにも関わらず起き上がれないことに悩まされます。
トマトで脳内のゴミを排除する
加齢と共に、人の名前が出てこなかったり、昨日の夕飯が思い出せなかったりと物忘れを実感してしまいます。これは単なる加齢によるものではなく、放置をすると認知症につながる可能性のある重大なサインです。特に朝は、脳に酸素が行き渡り始めると同時に、酸化ストレスが最も強く働く時間帯でもあります。このタイミングで抗酸化成分を脳に補うことが認知症予防の大きな鍵となります。
脳は脂質が非常に豊富で、酸化に弱く、活性酸素のダメージを受けやすい臓器です。こういった脳の酸化ストレスは、アルツハイマー型認知症を加速させることが知られています。これは酸化ストレスによって脳のゴミであるアミロイドβが蓄積してしまうからです。
しかし、トマトに含まれるリコピンは脂溶性のため、同じく脂溶性の脳において強力な抗酸化物質として働きます。リコピンが脳内の細胞膜を守り、神経細胞の酸化ダメージを軽減してくれます。実際イタリアの研究では、血中リコピン濃度が低い高齢者は、認知症の発症率が2倍高いことが示されています。
また、トマトジュースに含まれるビタミンCは、鉄イオンの酸化を防ぐ働きを持っています。これによって血液中の鉄分が酸化し、神経細胞に沈着してしまうのを防ぐことができます。イギリスのオックスフォード大学の研究では、血中ビタミンC濃度が高い高齢者ほど、記憶力テストの成績が良いことが報告されています。
自律神経の錆
朝起き上がれなくなるのは、自律神経の錆が原因として挙げられます。いきなり自律神経の錆と言われても、あまり聞いたことない人が多いと思います。皆さんは、お肌の細胞が活性酸素という毒によって錆びてしまうというのを聞いたことがあると思います。自律神経も、お肌と同じく細胞からできており、有害な活性酸素に触れることによって錆びていきます。このように自律神経が錆びついていくことで、私たちは朝起きられなくなってしまいます。
私たちの睡眠には自律神経が密接に関わっており、夜寝る前に副交換神経を優位にしてリラックスすると良いというのは健康の常識です。逆に朝起きる時は交感神経を優位にすることで、私たちはスムーズに起き上がることができます。このような自律神経の切り替わりのメカニズムは、私たちの副腎にあるとされています。副腎は背中にある左右2つの腎臓の上にちょこんと乗っかった臓器です。
副腎からはコルチゾールという大切なホルモンが分泌されています。コルチゾールと言うとストレスホルモンとして有名であり、コルチゾールは朝の目覚めのために重要な役割を担っています。ホルモン分泌の日内変動によって朝方に血中コルチゾール濃度が高まるとストレスレベルが上昇して、私たちの体の中で交感神経が優位になります。
交感神経は副交感神経と逆に体を快活にしてくれる自律神経のため、朝に向けて体はちょっとずつリラックス状態を解いて活動状態に入っていきます。このようなメカニズムによって朝が来ると同時に交感神経がマックスになって、気持ちの良い目覚めができるようになります。
しかし、コルチゾールに錆びついた交感神経が反応しなくなれば、朝の活力が全然湧いてこないことになってしまいます。これが自律神経の錆による朝の体のだるさの原因になります。ストレスホルモンであるコルチゾールがどんどん分泌されているにも関わらず、交感神経が反応しなければ、私たちの体では活力なきストレスがどんどん溜まっていってしまいます。そうなると朝起きるのが嫌になってしまうのも当然でしょう。このような自律神経の錆は、活性酸素がそもそもの原因となっています。
貧血による細胞の酸欠
朝起きてすぐだるい原因に考えられるのが貧血です。特に女性の方は貧血が原因で朝起きられない人が非常に多いので注意していただきたいと思います。貧血というのは、よく勘違いされることですが医学的には血が足りないことを意味しているのではありません。血液中にあるヘモグロビンという酸素を運んでくれる物質が少ないということを意味しています。つまり血が少ないのではなく薄い状態です。
私たちが息を止めて酸素を吸わないと死んでしまうのと同じように、私たちの細胞もまた酸素が供給されないと一瞬にして壊死してしまいます。貧血になって細胞に酸素を運んでくれるヘモグロビンが少なくなると、体の隅々まで酸素が行き届かなくなってしまいます。
脂肪燃焼という言葉の通り、細胞では脂肪をはめとする燃料が酸素によって燃やされることでエネルギーが作り出されています。ですが貧血になって細胞が貧血状態になると私たちの細胞は燃焼を起こすことができず、エネルギーを作り出すことができません。そのため全身の細胞が活動のためのエネルギー不足に陥って朝起きられないという症状が出てしまいます。
アデノシンと睡眠不足
朝起きてだるい原因は睡眠不足が考えられます。朝起きてすぐだるい原因の1つとして脳のアデノシンがまだ除去されずに残ってしまっていることを挙げました。その脳のアデノシンが除去されずに残ってしまう理由の1つが、アデノシンがそもそも多すぎるということです。一方で、もう1つの理由として睡眠が少なすぎることも考えられます。
何もしていないのに朝起きてすぐにだるいのは、そもそもの問題として睡眠時間が全く足りていないという原因が考えられます。特に注意しなければいけないのは、8時間ちゃんと寝ているにも関わらず、疲れが取れないというケースです。その場合は確かに睡眠の量自体は足りているものの睡眠の質が全く足りていない可能性があります。
また、睡眠の質が悪化している場合、例え物理的に8時間くらい寝ていたとしても実は睡眠不足に陥ってしまっているケースがあります。そんな人は例えば 一時的に9時間ぐらいに睡眠時間を増やしてみてはいかがでしょうか。それによって疲れが解消されるのであれば、実は睡眠不足の可能性が高くなります。
さらに睡眠は決して脳が休止しているだけの時間ではありません。脳の中では脳脊髄液と呼ばれる水分が循環し、日中の活動で生じた老廃物を洗い流すという重要な作業が行われています。この水の流れを制御しているのがアクアポリンと呼ばれるチャネルであり、それを担っているのがアストロサイトです。
もしアストロサイトの働きが低下すれば、脳内の水の流れも滞り、老廃物の除去が追いつかなくなります。片付けの追いつかない部屋のように、脳の中はどんどん機能不全に近づいていきます。脳が臓器であり、脳疲労が起こりうる生理的な現象である以上、通知に振り回されやすい現代社会の環境は、脳にとって決して優しいとはいえません。
最高の薬は休むこと
私たち日本人というのは世界的に見ても非常に勤勉な民族で、働くのは得意でも休むのがとても苦手であると言われています。ですが休憩というのは、時には活動すること以上に大切なものです。特にうつ病とかうつ病になりかけの人にとっては休憩が不可欠です。うつ病に効く最高の薬は休むことであり、逆に休まなければどんな薬を使ってもうつ病は決して直すことはできません。
グリーンエクササイズ
自然に触れるだけで疲労回復の効果があることが研究でも明らかになっており、英国エセックス大学の研究者らが1250名を対象に行った調査によると、僅か5分間自然の中で運動するだけで気分が良くなり、自信を得る効果が見られました。
また2010年に千葉大学が行った研究調査では、新宿御苑内と新宿駅周辺をウォーキングした場合、新宿駅と比較し新宿御苑では平均で約2.0%の心拍数の低下が見られることが分かっています。つまり自然の中で体を動かすことでリラックス効果まで受けられます。
この他にも韓国ソウルでのうつ病の治療として、認知行動療法を木々や高原植物の豊富な公園での散歩を行うと、認知行動療法のみの場合と比較して約3 倍もうつ状態が改善することが明らかになっています。さらにオーストリアでの自殺未遂をした患者の治療に、山でのハイキングを加えると自殺願望や絶望感が緩和するという調査結果が出た事例もあります。
このようにグリーンエクササイズは、特に精神的な疲労にすごく効果があることが分かっています。より大きな効果があったのは湖や川のような水もある自然でのエクササイズですが、これは都心にあるような緑地化されている広場や公園でも効果があることが分かっています。またグリーンエクササイズは、軽い運動で効果が高く、即効性があるため汗をかいて疲れるまで運動をやる必要はありません。
質の良い睡眠で疲労回復
質の良い睡眠は疲労回復に絶対に欠かせない条件です。質の良い睡眠は、しっかり体と心が休息でき、次の日はすっきりと目覚められて、日中は自分の力を 最大限に発揮し、夜になったら自然と眠くなるこういう状態に体を整えてくれます。
しかし実際は多くの人たちが自分では気づかないうちに睡眠の質が悪くなるようなことをしてしまっているのが現実です。また長く眠れば睡眠の質が良くなるわけではありません。十分に疲れを取るために必要な睡眠時間は、およそ7時間から8時間と言われています。
睡眠の質を改善する方法は難しくなく、寝る2時間前には食事を終えることです。寝る前に食べてしまうと眠っている間も胃腸は働き続けないといけなくなり、そのせいでしっかり体を休めることも脳を休めることもできなくなってしいます。
また、寝る90分前にお風呂に入ることも大事です。ぐっすり眠るためには、湯舟に浸かり、深部体温を上げておくことが必要です。深部体温は体の内側、つまり内臓の温度のことで、この新部体温が急激に下がっていく時に人は眠たくなると言われています。
そのためお風呂に入って湯舟に浸ることで深部体温を上げて、90分後には温度が下がっている状態にすると眠りがスムーズになります。ちなみにシャワーにすると体の表面だけが温まるだけで深部体温は十分に上がってくれません。
そして寝る1時間前からスマホを見ないことも大事です。スマホは、明るい光を放っているため、睡眠ホルモンであるメラトニンが分泌されにくくなってしまいます。またメラトニンには睡眠中に体を回復させる働きがあるため、メラトニンがしっかり分泌されないと睡眠の質が悪くなってしまい、さらに起きている間に受けたダメージや疲労をしっかり回復できなくなってしまいます。
日中に目を閉じて休息する
私たち日本人は、世界的に見ても働き者であると言われていますが、一方で休むのが下手であると言われています。頑張って働く以上に休息することが大切と言え、休息のために最も大切なのが睡眠です。加齢と共に眠りが浅くなり、睡眠が短くなってきます。中高年では2人に1人が睡眠の悩みを抱えているというデータもあります。多くの方が本当はもっと睡眠が必要なのに眠れない、途中で目が覚めてしまって睡眠不足という状態になっています。
実は眠っていなくとも目を閉じているだけで脳がリラックスしてくれることが分かっています。睡眠中の脳の休息効果を100とすると、目を閉じた状態だけでも70から80程度の休息効果があると言われています。実際、脳波を用いた研究では、5分ほど目を閉じている だけでも脳はリラックスした状態を示す脳波であるθ波を発することが報告されています。また目を閉じると目が休まり眼精疲労を予防できるという素晴らしい効果もあります。
快眠ミュージック
朝を快適に起きるためには、夜のルーティーンの中に人によってはお気に入りの音楽を加えるのも良いかもしれません。皆さんはパブロフの犬という言葉を聞いたことがあるでしょうか。パブロフの犬というのはロシアの生理学者であるパブロフが実験によって発見した私たち動物に生まれつき備わっている生理 現象です。
パブロフは自分の犬にベルを鳴らして餌を与え続け、餌が用意できるとベルを鳴らして犬にご飯の時間だよと知らせました。ベルを鳴らして餌を与え続けることで犬はベルを鳴らすだけでよだれが出るようになりました。よだれが出るという生理現象は、一般的に食べ物を前にして視覚的、嗅覚的な刺激が入って初めて起こるものです。しかしベルを鳴らしてから餌を与え続けるということを繰り返すことで、犬の中でベルという聴覚情報と餌が結びついて、ベルを聞いただけでよだれが出るようになったのです。
このようなパブロフの犬の実験は、私たちに備わった生理現象である条件反射というメカニズムによって説明することができます。条件反射は、私たちが後天的に、つまり生まれた後に獲得した反射行動のことです。反射行動は、私たちの意思に反して体が勝手に動いてしまうことです。一方で条件反射は、何度も何度も繰り返すことによって後天的に獲得することができます。このような 条件反射を入眠に応用したものこそが音楽です。
同じ音楽を聴いて眠るということを繰り返していくうちに、私たちはその音楽を聴いただけで眠たくなるようになります。ここで重要なのは、反射を促すためのきっかけとなる音楽は毎回同じものにするということです。また選ぶ音楽は副交感神経が優位になってリラックスできるような心地の良いリラクゼーション音楽のようなものが良いでしょう。
このような音楽による条件反射は心療内科や精神科で治療として用いられることもあります。実際、音楽療法が不眠症の患者さんのための治療法としても使われている例はたくさんあり、非常に有効だとされています。ただし人によっては音楽を聴くことに楽しくなってしまったり、交感神経が優位になってしまって、むしろ眠れなくなってしまう方もいますので、あくまでも自分に効果があるのかどうか一度試してみるべきということをお伝えしておきます。
前日からの準備
翌朝のパフォーマンスを上げるための準備は、その前日の朝からもうすでに始まっています。翌朝のパフォーマンスを上げるため前日の日中からやるべきことは朝日光に当たることです。私たちの体は日光に当たってから十数時間後にだんだん眠くなるように設計されています。
そのため朝日光に当たる時間が遅くなってしまうと体が眠るための準備に入る時間もその分遅くなってしまい、夜眠れなくなってしまいます。そのため例え曇っていても朝起きたら必ずカーテンを開けてすぐに日光に当たるようにしてください。
また昼寝の是非については未だに科学的な決着がついておらず、様々な研究がありますが、少なくとも昼寝をし過ぎると夜の入眠が阻害されてしまうため、良くないというのは多くの学者で一致する見解です。そのため日中どうしても眠たくなってしまった時であっても昼寝は30分以内に抑えるようにしましょう。
疲労回復に効く食べ物
鶏胸肉のイミダゾールジペプチド
私たち人間の疲労回復の鍵を握っているイミダゾールジペプチドという物質をご存知でしょうか。このイミダゾールジペプチドは、主に筋肉内に存在し、疲労の原因である活性酸素を効率よく除去して、疲労回復を促してくれる物質です。このイミダゾールジペプチドは、加齢と共に減少していくことが分かっています。そのため年を取ると私たちはだんだん疲れやすくなってしまいます。
疲労回復のために必要なイミダゾールジペプチドは1日およそ200mgと考えられており、そのために必要な鶏胸肉の摂取量は僅か100gです。私たちは一般的に年を取れば取るほど疲れやすくなってしまう傾向にあります。その大きな原因は言うまでもなく、筋肉量の低下であります。逆に言えば年を取っても筋肉量さえしっかりと維持することができれば、疲れにくい肉体を維持できるということでもあります。
そして筋肉量を維持する上で、筋トレをするのはタンパク質をしっかり摂取することが重要です。なぜならば、いくら筋トレをしって筋肉の材量となるタパ質が不足していれば筋肉は作られないからです。そこでタンパク質が豊富な鶏胸肉をしっかりと食べていただきたいと思います。
有機酸の酢ネギ
酢ネギは私たちの疲労をみるみる回復してくれるスーパーフードとして大注目されています。酢スギには酢酸やクエン酸を始めとする良質な有機酸がたっぷりと含まれています。これらの有機酸は筋肉に溜まった疲労物質である乳酸を分解することで、私たちの体の疲れを取ってくれることが知られています。さらに酢ネギの原料である玉ねぎには、非常に高い血液サラサラ効果があることが知られています。
酢ネギを食べて血液がサラサラになれば、それだけ脳の血管の通りが良くなって脳細胞にたっぷりの血液が巡ってくれるようになります。脳に血液が巡れば、脳細胞に栄養や酸素が供給され、眠っている間に疲労物質アデノシンがお掃除されていきます。
抗疲物質フルスルチアミン
フルスルチアミンは、ビタミンB1の誘導体でエネルギー代謝を促進して体の細胞を元気にすると言われています。またビタミンB群やパントテン酸はエネルギーを作って疲労回復に役立つことが分かってきています。
因みにビタミンB群が豊富な食品の代表は豚肉で、パントテン酸を多く含む食品は鶏レバー、鶏ささみ、卵、魚類、牛乳、豆類、カリフラワーなどです。またレモンの含まれるクエン酸も体にあるクエン酸サイクルと言うエネルギー生産プロセスを助けるため疲労回復に効果的です。さらに抗酸化作用のある還元型コエンザイムQ10、茶カテキンも効果的で、還元型コエンザイムQ10はイワシやサバなどの青魚に含まれており、茶カテキンは緑茶、ほうれん草、レバーには葉酸が含まれています。
頭の鍼で脳疲労を改善
鍼灸治療には、体が本来持つ自然治癒力を高める効果がありますが、頭の鍼によって、さらに脳神経細胞が活性化すると、ドーパミン、セロトニンなど脳内ホルモンの正常な分泌を促進させる効果が期待できます。また頭の鍼により、体の鍼治療では改善しきれなかった症状の改善も期待できます。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。


















