妊活必須の栄養素

    妊活必須の栄養素

    体外受精の治療を行った場合に、ビタミンD栄養素が不足している女性では成功率が低下してしまうこと分かってきています。さらには妊娠に成功しても、その栄養素が不足すると流産になる確率が上がったり、お腹の赤ちゃんが育たない可能性(不育症)も指摘されています。

    妊活にはビタミンD

    ビタミンDは、カルシウムと一緒に作用して骨を作るビタミンです。その他にも細胞が増殖する働きを助け、免疫機能や神経の機能を正常に保つ働きや、抗酸化作用、抗炎症作用、抗がん作用などがあります。

    一方で、このビタミンDが妊娠やお腹の赤ちゃんの成長にも重要なことがわかってきています。例えばビタミンDは卵巣機能や卵巣の中で卵子を育てる卵胞が大きくなる時にも重要な働きをしていることが分かってきています。実際にも不妊症外来で測定する卵巣機能を反映するAMH(血液検査の)の数値も、ビタミンDが不足している人は下がりやすいことが分かってきています。また卵巣に嚢胞が沢山できて排卵しにくくなるPCOSもビタミンDを補充すると、排卵障害が改善する可能性が報告されています。

    さらには、ビタミンDの免疫を正常化する作用が妊娠を誘導することも分かってきました。例えば精子は女性の免疫システムからすると外部からの異物(他人由来)となりますが、それを排除する働きのあるナチュラルキラー細胞や細胞性免疫を活性化するヘルパーT細胞が減少することが分かっています。

    ナチュラルキラー細胞や細胞性免疫は、自分の本来の正常な細胞でないものを攻撃する免疫であり、精子だけでなくお腹の中の受精卵でさえ、免疫システムが攻撃する対象になることがあります。そのため妊娠するとナチュラルキラー細胞や細胞性免疫が抑制されて、攻撃しないようにするわけです。研究では、ビタミンDをしっかり摂ることで、免疫バランスを整えて、過剰な免疫を抑制し、妊娠力がアップするというメカニズムが働くことが示されています。

    一方で、体外受精の何回も行ってもなかなか着床しない方やお腹の中で赤ちゃんがうまく育たない不育症の方では、TH1/TH2比が高いということが研究で示されています。実際にヘルパーT細胞が多い方は、妊娠出産のトラブルが起こりやすい可能性があるということになります。

    ビタミンDを摂る方法

    ビタミンDは、肌に紫外線が当たることで体内である程度合成することができます。目安として、夏場など紫外線が強い時期は昼の12時前後に15分ぐらいで、1日の十分量が合成できると言われています。しかし仕事で日中はほとんど外に出ることがない方も多くいますので、現代女性はビタミンDが欠乏しやすくなっています。

    このため体内で作れない分のビタミンDは食事で補う必要があります。自分がビタミンD不足かもと思った場合は、不妊外来の血液検査でビタミンDの濃度をチェックしてもらうこともできます。

    ビタミンDは、豊富に含まれている食品は主に魚です。特にサバやイワシなどの脂肪分の多い魚には、ビタミンD、亜鉛、オメガ3脂肪酸などホルモンの健康維持に重要な栄養素が豊富に含まれています。よくオススメされる魚として、鮭一切れ80gには、およそ25 mcg(1,000IU)のビタミンDが含まれています。さんま100gには約11mcg(440IU)のビタミンDが含まれています。マアジ80gには6mcg(240IU)のビタミン Dが含まれています。

    ただし、マグロやサーモンなどの比較的大きな魚には、食物連鎖によって水銀がより多く蓄積されている傾向があります。実際にマグロをよく食べている人からは、食べない人よりも水銀が多く検出されたという報告もあります。水銀が多く含まれている魚の特徴は大型で長生きする魚です。この水銀は胎児に影響をおよぼす可能性があることが報告されていますが、母体を通じて赤ちゃんに水銀が取りこまれるのは、胎盤ができ上がる妊娠4カ月頃からです。それまでに摂った水銀は代謝や排泄されるので、妊娠直後から食べる量や食べ方をコントロールすればほとんど心配ないと言われています。

    また、天然のサーモンと養殖のサーモンを比較した研究によると、養殖は天然に比べ汚染物質の量が10倍程度多かったということが分かっています。この結果から研究者たちは養殖サーモンの摂取量は年3~6回程度 までを上限とするべきであるとアドバイスしています。ノルウェー産やチリ産のサーモンが有名ですが、スーパーに売られているものや、一般的に外食店などで流通しているサーモンは養殖がほとんどなので注意しましょう。

    一方でビタミンDが不足している場合は、手軽に摂取できるサプリメントを服用することも大切ですが、ビタミンDは摂りすぎも良くないので適度に調整しましょう。ビタミンDは不溶性ビタミンなので良質な油と一緒に摂取すると吸収率が高まります。

    一般的な18歳以上の日本人の場合、厚生労働省のまとめた「日本人の食事摂取基準2020」の定めた摂取目安量によれば、1日340IU(国際単位)の摂取が推奨されています。日本ドラッグストアで一般的に販売されているサプリメントは、一粒当たり1000IUほど含有されているため3日に1回程度の摂取で足りることになります。ただしこの目安量はあくまでも、ある程度野外で日光を浴びることを想定して定められているので日中に外に出ない方や紫外線対策をしている方、あるいは冬の季節などはもう少し多めにとってもいいかもしれません 。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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