西洋医学と東洋医学で診る「不妊」

    西洋医学と東洋医学で診る「不妊」

    西洋医学で不妊は、検査により卵子と精子の状態を適切に診断して、受精させていくことに着目しています。一方で東洋医学では、不妊を引き起こす原因を心と体、さらに生活環境も含めて全体のバランスで診ていきます。

    西洋医学のメリットは、科学的及び理論的に症状の原因を分析し、その原因となっている部位に直接アプローチすることができることです。患者様の症状や経過、バイタルサイン(血圧、脈拍、体温、診断)で得られる所見、血液検査や各診断機器による検査などによる結果から可能性のある疾患を診ていきます。特に科学的根拠に基づいた診断が可能で、原因のはっきりした症状にアプローチできます。

    一方で東洋医学では、患者様の状態を東洋医学的診断(望診・聞診・問診・切診)で主観的に判断して、健康的な状態から崩れたバランスを自己治癒力で元のバランスに戻すアプローチをしていきます。このようなバランスの崩れた状態を「未病」とし、特に原因のはっきりしない症状に対しても有効にアプローチすることができるのが特徴です。また個人差を重視して、その人の体質、体調、性格、さらには生活環境などを考慮しながら、一人ひとりに合わせた治療を行います。

    このように病気を診る「西洋医学」と、人を診る「東洋医学」に大きな違いがあります、不妊治療の初診から違いを考えてみます。

    西洋医学では、不妊治療の第一歩として各検査をして、妊娠を妨げている要因がないかどうかを確認していくところから始まります。生理周期や生理の状態、持病などを問診し、基礎体温表があれば確認します。次に内診・超音波エコーで子宮や卵巣の状態を確認します。検査項目は個々の状態や病院によっても異なり、女性の場合、超音波検査、ホルモン検査、頸管粘液検査、ヒューナーテスト、卵管検査、性感染症検査、子宮がん検査などで、男性の場合は精液検査が基本的な検査になります。それらの検査結果から治療方針の提案などを医師から受けます。

    それに対して、東洋医学では不妊治療の前にまず他の症状や生活環境などを含めて問診します。同じ不妊治療を望まれる患者様でも、体質や体調、その他の症状が大きく異なるからです。そして様々な症状が出ている身体の状態を「証(実証)」と捉えて、その「証」に対して治療を行っていきます。例えば「月経不順」には、のぼせやイライラが、内分泌系の中枢である下垂体の働きが鈍りホルモン不足になっているのなら「頭部の実証」と考えます。またホルモン分泌は正常でも、卵巣の働きが低下しているのなら「腹部の虚証」と考えます。つまり身体の「虚実」のバランスを整えるために治療を組み立てていきます。

    東洋医学で診る「不妊」

    東洋医学がこのような不妊の捉え方をするのは、私たちの身体は五臓(肝・腎・脾・肺・心)と各器官がつながっているという考え方がベースにあるからです。例えば「腎」は、子宮、卵巣、精巣という器官と密接な関係があると考えます。さらに「腎」は、他の臓腑との関係があり、単独にあるのではなくお互いが調整して上手くバランスを取っています(相生相克の関係)。このように身体全体のバランスを自然治癒力によって整える治療法とも言えます。そのため卵子や精子の質だけでなく、それを生み出す五臓、そして体質や環境も含めて不妊の要因を見極めて、卵子や精子の質を改善することに重きを置いています。

    また、不妊治療は先の見えないことに不安を抱く方が多くいらっしゃいます。経済的な不安だけではなく、晩婚化による妊娠への不安や焦りもあります。不妊の原因は様々であり、身体だけでなく、メンタルの安定、食生活の改善、定期的な運動、生活習慣などから、不妊の関係性を探りながら不妊の原因を正しく理解していくことが大切です。

    「腎」の働きを高める

    このように東洋医学ではまず「腎」のケアを最重点に置きます。「腎」は尿として老廃物を排泄する腎臓を思い浮かべると思いますが、東洋医学では、その機能以外にも生殖や成長、老化、そしてホルモンの分泌や免疫全般などを司るとされています。つまり妊娠は「腎」にコトントロールされていると考えます。生活習慣の乱れや加齢などによって「腎」の機能が低下(虚腎)すると身体が老化状態になり、器質的な原因がなくても、不妊になりやすい傾向があります。特に腎精(腎で生み出される生命エネルギー)が不足すると、女性ホルモンの減少、男性の精液減少などの不妊に関係する症状が出やすくなります。

    「腎」の機能が低下する体質として大きく分けると「腎陽虚(冷え)」と「腎陰虚(ほてり)」のタイプがあります。前者のタイプは生活習慣と大きな関わりがあり、手足の冷え、下半身の冷え、腰痛、夜中にトイレで目覚めるなどがあり、冷えることで血の巡りが悪くなり、瘀血症状を呈することが多くあります。また重度になると月経異常、無月経を伴い、瘀血状態が酷いと子宮内膜症や子宮筋腫の原因になります。後者は、身体の中の潤いが少なくなる症状がみられ、肌の乾燥、喉の乾き、ドライアイ、ほてり、足の冷え、不眠、疲れなどが伴います。

    いずれにしても、妊活に特に大切なのは「腎精」を蓄えることであり、「腎」の命のエネルギーを保つことが、妊娠のために必要になります。また「腎精」以外にも、「気」「血」「津液」があり、これらがお互いに深い関係を持ち、相互に補完し合っているため、鍼灸治療で身体を整えバランスよくしておくことが大切です。

    卵巣・子宮の血流と妊娠

    医師や専門家の多くが、妊娠には卵巣や子宮の血流改善の必要性を指摘することは少なくありません。血液は酸素、栄養、ホルモンなどを運搬し、また老廃物を回収して身体の新陳代謝を促す働きがあります。一方で熱を運搬する役割もあり、これらによって卵子の発育や着床に重要な役割を果たすと考えらえています。

    その子宮への血流は、子宮動脈と卵巣動脈などから供給され、子宮内の血流と子宮内膜の厚みや子宮内膜の発育の関係が多くの調査で示されています。また発育卵巣血流の評価(採卵前の卵胞周囲の血流量を測定)によると、血流状態が悪ければ、その後の妊娠が難しいと示されています。つまり子宮周辺への血流改善が妊娠の重要な鍵になると考えられます。

    一方で骨盤内の筋肉を動かし機能させることで内腸骨動脈・子宮動脈を刺激し、子宮へ送られる血液が増加するという臨床結果が示されています。

    これらに関連する筋肉として、腸腰筋・骨盤底筋群・臀筋群・腹横筋があり、これらを刺激する運動に、お尻にボールを置き、股関節の屈曲・伸展を行う方法があります。運動後に内腸骨動脈の血流の速度を計測すると、運動直後に血流の増大が認められ、20分経過後も血流の増大が維持されたという臨床結果があります。

    病院と鍼灸院はどちらを優先すべきか

    妊活に悩む女性の方、若くして妊娠しづらい体質の方で子宮・卵管・卵巣などで病歴のない方には鍼灸院を初めに受診されることをおすすめします。このような方は鍼灸で冷えやホルモンバランスを改善して、妊娠しやすい身体づくりを行うことが妊活に効果的だからです。一方で年齢が気になる方や、持病をお持ちの方は精密検査によって現状をしっかりと理解した上で不妊治療に取り組むことが大切です。また病院に通っても改善が難しく感じる場合には、併行して鍼灸を試すこともおすすめします。

     鍼灸は気軽に受けられるメリットがあり、病気でないけど不調に悩まれる方にアプローチできる方法です。冷えやホルモンバランスだけでなく、自律神経の乱れを整え、血流改善効果により妊娠しやすい身体づくりと体質改善が図れます。

    【本コラムの監修】

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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