
肝臓は複雑な機能を持ち、生きる上で大切な臓器ですが、機能が低下しても自覚できづらい側面があります。肝臓の様々な病気は末期状態で機能がかなり低下してからようやく症状が現れるため「沈黙の臓器」と言われる所以です。例えば脂肪肝は、幹細胞内に脂肪が蓄積してしまう病気ですが、肝臓全体の60%以上が脂肪化している状態でも症状が全く出ません。
肝臓に脂肪が付くのは、糖質の食べ過ぎです。糖質の元となる白米、パン、麺類などの炭水化物が脂肪肝の原因になります。つまり糖質を食べると肝臓に脂肪を送り込むことになりますが、肝臓側でその処理が追いつかず肝臓に脂肪が貯まってしまうのです。健康的なダイエットで肝臓に入ってくる脂肪を減らし、適度な運動で肝臓から出て行く脂肪を増やすことが大切です。
2023年現在でも、脂肪肝や脂肪肝炎の改善に特化した薬剤の研究は進んでいるものの、劇的な改善効果を持つ薬はできていません。つまり食事療法なしに薬を飲むだけで脂肪肝を改善させることは難しくなります。
脂肪肝を減らす「ワカメ」
お味噌汁に入れるワカメが肝臓に良いのをご存知でしょうか。その根拠となるのは、ワカメ粉末を加えた食事をマウスに食べさせ、老齢期まで飼育して、その後に肝臓の状態を調べた研究です。結果は圧倒的にワカメ粉末を食べていたマウスの肝臓脂肪の蓄積量が少ないことが分かっています。さらに遺伝子検査では、肝臓の炎症を示す数値も少ないことが分かっています。また生活習慣病の発症や進行を抑制する可能性が示唆されています。
ワカメの成分で有名なのがフコイダンです。フコイダンは発酵性食物繊維の一種で、免疫力の正常化、調整脂肪の抑制、血液サラサラ効果などがあります。ただし食べ過ぎには注意してください。海藻の食べ過ぎは、要素の過剰摂取や下痢の原因になります。
脂肪肝を減らす「コーヒー」
そして、コーヒーの効果も肝脂肪を減らすことが明らかになっています。ある研究では、コーヒーを飲むことと肝硬変の関係性を調査したところ、1日4杯以上を飲む人は、肝硬変になりにくいとされています。
また、日本で行われた有名な研究があります。国立がん研究センターで行われた研究では、40歳から69歳の9万人を10年間調査したところ、毎日5杯以上コーヒーを飲んでいる人は肝臓がんの発症リスクが76%も減少しました。コーヒーに含まれているどの成分が肝臓に良い影響を与えているかははっきりしていませんが、恐らく抗酸化物質が影響しているのではないかと考えられています。一方で125000人を対象に行われた22年間の追跡調査で、毎日4杯以上のコーヒーを飲む人は全く飲まない人に比べて、アルコール性の肝硬変の発症率が1/5になったと報告されています。ただしカフェインの許容量には個人差があるため、デカフェのコーヒーを活用しつつ、ぜひ取り入れてみてください。
脂肪肝を減らす「アボカド」
森の王様と言われるアボカドには、肝臓にとって健康に素晴らしい効果があります。2015年、アルコールを飲まないのに脂肪肝の問題を抱える人に対して、アボカドの効果に関する調査が行われました。この調査ではバランスのとれた食事とともに、適度にアボカドも摂取したところ肝臓の機能を示す各数値が改善されました。
その理由として、アボガドには肝臓で働くと言われる抗酸化物質グルタチオンが含まれているからです。グルタチオンは肝臓の中で肝臓を傷つける活性酸素を除去して肝機能の低下を防止する働きがあります。その他にも肝臓機能の改善、コレステロール値の改善、活性酸素の除去などにも効果があり、また美容面では肌の保水機能を高めることも分かっています。食物繊維も豊富に含まれ、栄養価の高い食材であるため普段から食事に採り入れましょう。
脂肪肝を減らす「にんにく」
ニンニクは脂質や糖質の消化吸収を調節する働きがあります。そもそも肝臓にダメージを与えるものは過剰な糖質や脂質です。だからこそ消化吸収をコントロールすることはとても大切な働きです。さらにアリシンが含まれ、肝臓に蓄積された毒素を体外に排出してくれるという働きを持っています。厳密にはニンニクに含まれるアリインと呼ばれるファイトケミカルがアリイナーゼという酵素によってアリシンに変化します。つまりニンニクに含まれているアリインを効率よくアリシンに変化させ、さらに体の中で効率よく働く栄養素に変える必要があります。そのため火を通す前に必ずみじん切りにして、潰して5分間置くようにしてください。
2020年サドウィ医科大学は、ニンニクが肝臓のダメージを大幅に軽減すると発表しました。これは1万5514件の研究の中から、特に質が高いとされる6件の研究を再分析するものです。結果、ニンニクを食べるとAST(肝臓ダメージを示す数値)が下がることが明らかになっています。
脂肪肝を減らす「ブロッコリー」
野菜の王様と言われるブロッコリーを代表とするアブラナ科の野菜には、他にもキャベツ、カニフラワー、ケール、チンゲン菜、大根、かぶなどがあり、これらは葉酸、ビタミンC,E,K、食物繊維が豊富で抗酸化作用の強い物質も沢山含まれています。アブラナ科の野菜は台所のドクターと言われるほど栄養価が高い食材です。
アブラナ科の野菜にはファイトケミカルが含まれており、その一種として注目されているのがイソチオシアネートです。辛味成分でもあり、抗がん作用、抗炎症作用、抗酸化作用があると言われています。さらに肝臓の中で解毒酵素を増やすことが明らかになっています。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。