体脂肪を燃焼して痩せる

    理想的な体脂肪率は、 男性で10から15%、女性で20から25%と言われています。また歳を重ねるにつれて上限は上がり、男性であれば20%、女性なら30%未満となります。体脂肪率が多くないのにまだダイエットしようと思うのであれば、体脂肪率が問題ではなく、姿勢の悪さや無理な方法で痩せてボディラインが崩れている可能性があります。

    脂肪は食欲を抑えたり代謝を上げたりするレプチンというホルモンの生成に関わっており、体脂肪が落ち過ぎると過食になったり代謝が落ちたりして確実にリバウンドします。また体脂肪は性ホルモンや骨形成のホルモンにも深く関与しているため、体脂肪が落ち着いたら生理が止まったり、骨がもろくなったりします。

    体脂肪が落ちる3つの条件

    皮下脂肪や内臓脂肪などの体脂肪を落とすためには、まずはアンダーカロリーにすることです。アンダーカロリーとは、摂取カロリーが消費カロリーを下回る状態を作ることです。体に必要なエネルギーが食べ物から十分に摂れていないと、それを補うために体に蓄えられたエネルギー源を体脂肪から補います。当たり前ですが、食べ物から十分にエネルギーが取れていればわざわざ体の脂肪を分解する必要はありません。

    次に体脂肪が落ちる要因として、肝臓のグリコーゲンが減ることが挙げられます。肝臓にはグリコーゲンという形で余った糖分が保管されています。余った脂肪が体脂肪として蓄積されているのと同じように糖分も使い切れなかった分は肝臓に非常時のエネルギー源として蓄えられています。体脂肪を分解するためには、まず肝臓のグリコーゲンが減る必要があります。

    そして体脂肪を減らすためには、自律神経に働いてもらわないといけません。例えば唐辛子やコーヒーなどに脂肪燃焼効果があると言われているのは、これらに含まれているカフェインやカプサイシンといった成分に自律神経を刺激する作用があるためです。アンダーカロリーになって肝臓のグリコーゲが減っても自律神経が働かないと脂肪は分解されません。

    内臓脂肪が増える原因

    体脂肪は大きく分けて体脂肪と内臓脂肪に分類されます。この2つに関わる肥満として、女性に多い洋梨型肥満と男性に多いリンゴ型肥満があります。洋梨型は皮下脂肪が増えたことによってなりやすい体型のことで、下腹部やヒップや太ももに脂肪がつきやすい体型です。女性ホルモンには皮下脂肪を増やす働きがあるため女性にはこのタイプの人が多くなります。一方でリンゴ型は内臓脂肪が過剰になることでなりやすい体型でお腹がぽっこりして下半身は細いといった体型です。女性ホルモンは内臓脂肪を減らす働きがあるため、女性ホルモンが少ない男性はこのタイプの人が多くなります。

    内臓脂肪もカロリーオーバーが原因ですが、特にホルモンバランスが崩れると内臓脂肪はつきやすくなります。例えば女性ホルモンのエストロゲンが過剰に増えてしまうと皮下脂肪がつきやすくなり、女性ホルモンが少ないと内臓脂肪がつきやすくなります。またストレスによって分泌されるコルチゾールというホルモンは内臓脂肪を増やす働きを持っています。

    痩せない理由

    皮下脂肪や内臓脂肪が増えるのは、カロリーオーバーやホルモンバランスの崩れが関係しています。体脂肪燃焼を促進させるためには、アンダーカロリー、肝臓のグリコーゲン、自律神経という3つの条件をクリアする必要があります。

    しかしこれらを満足しても体脂肪が落ちないのであれば、それは過度なエネルギー不足の可能性があります。私たちの体は過度にエネルギーが不足すると、脂肪の分解をストップして代謝を落とすという反応を起こします。さらにカロリーが足りない時は自律神経の働きが落ちて、体脂肪の分解が起こらなくなります。これは体が今は危機的な状況と判断して脳や内臓生殖器などの活動を抑えて、省エネ状態に入るという反応を起こすからです。

    また、慢性的な寝不足やストレスが続いている体脂肪は落ちません。慢性的な寝不足やストレス状態だと、コルチゾールが過剰に作られて内臓脂肪を中心とした体脂肪が落ちにくくなってしまいます。さらに寝不足やストレスが続いてしまうと自律神経が働きすぎて疲れてしまい、体脂肪が分解されません。食欲が落ち着いても寝不足やストレスが続くと体脂肪は、本当に落ちません。

    脂肪を燃焼させる

    細胞には必要な栄養分を取り入れ、不要な老廃物を排出する機能があります。太るということは細胞内に脂肪が過剰に蓄えられている状態であり、脂質が代謝の異常を起こしている状態です。ホルモン、伝達物質、酵素の異常として現れ、免疫低下、高血圧、糖尿病、高脂質血症、がん、肥満などの生活習慣病のリスクが高くなります。

    現代人は忙しく、糖質中心の食生活になりがちなため、糖質を控えて良質な資質を摂取するという食生活が必要です。脂質の量を食事バランスの中で半分程度にするこの方法は、ケトジェニックダイエットと呼ばれ、脂肪をエネルギー源として利用することを促すものです。

    ダイエットが成功するというのは、細胞に過剰に蓄えられた中性脂肪が放出されて、元の大きさに戻り炎症がなくなることを意味します。肥大した脂肪細胞が小さくなることで、脂肪組織自体も小さくなります。

    ダイエットには腸の健康を保つ

    脂肪組織は体にとって重要な内分泌器官でもあり、アディポカイン(機能性タンパク質)を分泌します。この物質は脂肪組織内で酸欠(脂肪が溜まる中で起こる)が起こると炎症を起こしてしまい、血圧の上昇、中性脂肪値、コレステロール値の上昇を誘発します。また内臓脂肪が多い人は、この炎症物質によって脳の萎縮が進むことも分かっています。

    細胞レベルでダイエットに成功するためには、まずは腸の健康を考える必要があります。腸の働きが良ければ効率よく栄養が吸収可能になり、体にとって不要なもの、ダメージを与えるものを排除することができます。その役割を担うのが腸内細菌であり、栄養成分の抽出や吸収、免疫機能の一部としての役割、腸の上皮細胞(腸粘膜上皮)を保護する働きがあります。

    この保護する粘膜が悪玉菌などで破壊されると免疫細胞が過剰に反応するリーキーガットと呼ばれる反応が起こります。それが慢性的になれば免疫機能が機能せず、抗体が自分の組織を攻撃する自己免疫疾患という現象が起こります。またリーキーガットによって腸が炎症を起こし続ければ、脂肪細胞も炎症を持続的に起こし続けます。

    また、この腸内細菌の組成は3歳までに決まるとも言われておりますが、偏った食生活が長く続くと組成が大きく変化し基本組成に戻すことが困難なることもあります。さらに年齢を重ねると善玉菌が減り、悪玉菌が増えるためなるべく腸内細菌のダメージを避ける食生活が大切になります。

    脂肪細胞が脂肪を溜め込む

    一方で内臓脂肪を溜め込まないためには、過剰な糖分を避ける必要があります。通常は、体に糖分が吸収されると、膵臓からインスリンが分泌され血糖値を下げ、血液中の血糖値はほぼ一定に保たれます。また細胞の代謝に必要な量以上のブドウ糖は、肝臓や筋肉にグリコーゲンとして蓄えられます。しかし蓄えられる量は僅かで、これ以上の過剰な糖は脂肪に作り変えられます。

    この脂肪の合成を促進するのがインスリンであり、脂肪細胞に脂肪を溜め込む働きも担っています。そのためインスリンは脂肪蓄積ホルモンとも言われています。このように過剰に糖を摂取することで、インスリンによって脂肪細胞の中にどんどん中性脂肪が詰め込まれて肥満になってしまうのです。

    現代人の多くが、いつも何かを食べており、その多くに糖分が含まれているため、血糖値を下げるために、膵臓でインスリンが1日中分泌されている状態になっています。そうなればこのインスリンの刺激を受けにくくなり、細胞内に入ることができない糖分は血液中に溢れ出します。そして膵臓は血糖値が高いためインスリンを分泌するようになり、糖もインスリンも血液中で多くなる状態になります。この状態をインスリン抵抗性と呼び、食後の血糖値が下がりにくくなります。糖尿病はこのインスリン抵抗性が極端に悪化した状態です。

    一方で、脂肪細胞はインスリン感度が低下しないため、インスリンは脂肪細胞に積極的に働きかけてますます脂肪を蓄積するようになります。また肥満の背景にはインスリン抵抗性の他に満腹ホルモンであるレプチンの働きが低下して、過剰に分泌されるレプチン抵抗性もあります。

    間欠的ファスティング

    この肥満の原因であるインスリン抵抗性とレプチン抵抗性を誘発するのが、加工食品を中心とした食生活です。インスリン抵抗性とレプチン抵抗性を改善するためにもの食生活の見直しが必要であり、その方法のひとつが間欠的ファスティングです。

    この間欠的ファスティングは、どの時間でも良いので、1日の食べる時間を8時間以下にすることです。この方法を継続することによってインスリン抵抗性とレプチン抵抗性を改善することができます。また1日おきでも代謝障害やホルモン異常が改善されるため比較的取り入れることが容易です。

    実はファスティングの健康改善効果のメカニズムは完全に明らかになっていませんが、定期的にエネルギー摂取を減らすことは、慢性炎症など多くの代謝異常を改善し、神経変性などの進行を食い止める効果があります。

    脂質、タンパク質、食物繊維のメリット

    脂質を摂りすぎると、油分が血流に乗って脂質異常症(高脂血症)になり、脂肪に吸収されて肥満になり、血管にこびりついて動脈硬化の原因になる、というのは間違った認識です。2015年にアメリカの食事摂取基準が改訂されており、そこには「脂質を控えても心臓病や肥満の予防にはつながらないため、脂質の摂取は制限しない」と明記されています。現在では心臓病や肥満のみならず動脈硬化の原因にもならず、逆に中性脂肪が減るという研究結果もあります。

    コレステロールや中性脂肪といった血中の脂質は肝臓に合成されたものです。脂質を多く摂取すると肝臓での脂肪合成が休止し、中性脂肪のような悪い脂肪が増えづらくなります。逆に脂質の摂取が少ないと中性脂肪の合成が活発になります。

    一方で、タンパク質も摂りすぎは腎臓に良くないという間違った認識があります。タンパク質の摂取は腎臓に悪影響を及ぼさないことが科学的に明らかになっています。むしろ日本人のタンパク質摂取量が2000年代頃から急激に減少しており、現在では戦後1950年代と同じ水準まで落ちていると言われています。

    食物繊維の代表は野菜であり、2014年には食物繊維が肝臓に働きかけて、血糖値の上昇を抑制することが明らかになっています。さらに細胞が血糖を取り込む際に、脂肪細胞側にだけ蓋をして、筋肉への取り込みを優先させるのではないかという研究報告もされています。厚生労働省の基準によれば、1日の食物繊維摂取量の目標は男性で21g以上、女性で18g以上となっていますが、2015年の平均は14.5gでした。

    これら脂質、タンパク質、食物繊維を複合的に摂ることで、血糖値の上昇にブレーキをかけるができます。またこれらを糖質より先に食べる(ご飯よりおかずを先に)ことで、インクレチンや短鎖脂肪酸によって体が血糖取り込みの準備を整えることができ、糖尿病や動脈硬化の原因となる「血糖値スパイク」を抑えることができます。

    ホカホカの炭水化物を避ける

    私たちを太らせてしまう原因は、白米やパン、麺類などの精製された炭水化物です。どうしても白米やパン、麺類などを食べたくなったら、ホカホカではなく冷ましてから食べることが必要です。実は同じ炭水化物でも冷ました炭水化物の方が血糖値の上昇が緩やかになり太りにくいことが分かっています。

    炭水化物の糖質(でんぷん)の中には、レジスタントスターチという成分が含まれており、このレジスタントスターチは、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維の両方の食物繊維の機能を兼ね備えています。つまり糖質であるにも関わらず、食物繊維と同じように消化されずに大腸まで届きます。さらに腸内環境に良い影響与えるだけでなく、免疫力を向上させる、うつ病の予防や改善効果、美肌効果などもあります。

    実際にもレジスタントスターチを摂取したグループは、そうでないグループに比べて空腹時の血糖値やインスリン量が低くなった研究が報告されています。レジスタントスターチは血糖値の上昇を抑え、膵臓の負担を軽減して糖尿病の予防に役立ちます。

    このレジスタントスターチの特徴は、冷ますと増えることです。例えば白米なら冷ますだけでレジスタントスターチ量が1.6倍増えます。そしてレジスタントスターチ以外のデンプンの吸収も穏やかになるため腹持ちがよく、食べ過ぎや間食を防ぐことができます。

    タンパク質をしっかり食べる

    私たちの食欲が止めるためにはタンパク質をしっかり摂取することです。タンパク質は空腹ホルモンのグレリンのレベルを低下させ、満腹ホルモンであるペプチドYYのレベルを高めてくれて、食欲をしっかり満たしてくれます。

    ついつい止まらずに沢山お菓子を食べてしまうのは、タンパク質がほとんど入っておらず、いつまでも食欲が満たされないからです。食欲をコントロールしているのはどれだけタンパク質を食べたかによります。例えばお肉だけを単体で沢山食べることは難しいのは、タンパク質が豊富であるため、すぐにお腹が満たされてしますからです。同じく魚も同じです。

    そのためダイエットするためには、タンパク質をしっかり摂り、食欲をコントロールすることが大切です。そもそもタンパク質はインスリンをあまり分泌させないためダイエットに非常に向いています。糖質をたっぷり含んだ主食を食べる前に、タンパク質が豊富な肉類、魚類、大豆類、卵などをしっかり食べれば、炭水化物の摂取量が減らせます。

    健康的に痩せる

    健康的な体には健康的な腸内環境が必須であり、肥満や内臓脂肪が多く付いている方は慢性炎症が起こっており、高血圧、糖尿病、脂質代謝異常症などの生活習慣病のリスクが高くなります。太る原因であるホルモンコントロールをしつつ、腸内環境を改善して、健康的に痩せるためには、当たり前ですが食事、運動、睡眠、ストレスマネジメントが重要です。

    特に食事は重要な要素であり、食事中の脂質が炎症を起こしやすい脂質である場合は、細胞膜で炎症が起こり機能低下を招くことになります。悪い脂質は劣化しやすい脂質であり、その代表例が植物からできた脂質、サラダ油の主成分となる大豆油、ひまわり油、キャノーラ油です。

    これらは多価不飽和脂肪酸と呼ばれ、脂肪酸の中に複数の劣化しやすい部分があります。またショートイングやマーガリンなど工業的につくられた植物油脂なども悪い油であり、細胞の機能低下を招きます。さらに外食で食べる油も、大部分が繰り返し使われた劣化した油です。

    一方で摂るべき脂質はバター、ギー、オリーブオイル、ココナッツオイル、アボガド、アーモンドなどのナッツ類の脂質です。良質な脂質を摂れば、細胞は良質な細胞膜でてきた細胞になります。また健康を維持するためにも1日4分から10分程度の筋力の萎縮を防ぐトレーニングも必要です。

    脂肪燃焼効果のある漢方

    アリポネクチンを増やす漢方に人参養栄湯というものがあります。アディポネクチンが注目されている理由の一つは、特に運動をしなくても筋肉内の酵素を活性化して糖と脂肪をエネルギーとして活用してくれる点です。つまり脂肪燃焼効果があり、太りにくい体づくりに役に立つことが分かっています。

    この人参養栄湯は、漢方薬の一種で体力が低下した際や体調が優れない時に用いられます。主な成分は高麗人参であり、その他に養栄湯の成分が含まれています。消化器の働きを高めて、栄養を体の隅々まで行き渡らせてくれる漢方として有名です。

    高麗人参は体力を増進し、体の抵抗力を高める働きの他に、養栄湯の成分には血液の循環を良くし、全身の機能を正常に保つ効果があります。その結果体力が低下したり、体調が優れないという状態を改善する助けとなります。また人参養栄湯との中に含まれている黄耆という成分が、アディポネクチンを増加させるということが分かっています。

    さらに、血糖値を下げる効果や血管を修復、拡張する効果など様々な効果が期待でき、高血圧や糖尿病、脂質異常症といった様々な生活習慣病全般を予防改善する効果もあると考えられています。さらに一部のがんについても予防効果が期待されています。

    このアディポネクチンは、大豆たんぱくの一種のβ-コングリシニンを摂取することによって分泌することができるので、大豆製品をしっかりと食べることも大切です。

    そして健康長寿の鍵を握っているアリポネクチンと似た働きをするファイトケミカルとしてオスモチンというものがあります。オスモチンは、トマトやキウイ、リンゴ、さくらんぼ、ぶどう、ピーマン、唐辛子などに含まれているファイトケミカルです。メタボリックシンドロームや糖尿病の予防に役立つとして今注目されています。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

    関連記事

    1. 食べる美容液「アボカド」

    2. クエン酸でアンチエイジング

    3. 赤ワインに含まれるレスベラトロールの効果

    4. マイオカインで老化防止

    5. 脂質と悪玉コレステロール

    6. 筋トレの健康効果

    7. 重曹の健康効果

    8. ほうれい線・フェイスラインの崩れに効くツボ

    9. 病気を予防する食べ物

    10. ストレスからの副腎疲労の改善

    11. どんな健康食品にもデメリットがある

    12. 老ける原因「タンパク質不足」

    13. 痩せるための水の正しい飲み方

    14. 観葉植物の健康効果

    15. 塗るor食べる日焼け止め