砂糖の代わりに蜂蜜!?

    砂糖の代わりに蜂蜜!?

    砂糖の代替品として蜂蜜を食べると健康に良いと聞いたことがあると思います。しかし砂糖と蜂蜜に何ら違いはないということは多くの人は知りません。他にもグラニュー糖、ココナッツシュガー、メープルシロップなども違いはありません。これらは全てグルコース分子(日本ではブドウ糖)と果糖分子できており、多くの方が蜂蜜などは、砂糖よりも健康的だと勘違いして糖質を過剰に摂取しているのです。

    もちろん蜂蜜などには、ビタミンなどの栄養成分や抗酸化物質が多く含まれていることは事実です。しかし蜂蜜に大量に含まれているブドウ糖と果糖の影響を考えればビタミンや抗酸化物質の健康効果はあまり価値がないのも事実です。糖質が悪いということから糖質制限している場合、正しい知識に基づいて血糖値コントロールをできている方は非常に少ない状況です。

    糖質を正しく理解する

    健康に悪影響なのは血糖値スパイクと果糖スパイクです。血糖値スパイクは血中のブドウ糖の濃度が急激に上昇することで、果糖スパイクも同じく、血中の果糖の濃度が急激に上昇することです。結果として細胞が必要とする以上の糖質が全身に巡ることになり様々な身体的精神的な不調が出てしまいます。

    私たちの生命活動に必要なグルコースは、必要不可欠なエネルギー源ですが、細胞内に過剰に供給されると問題が起きる原因になります。ブドウ糖が細胞内に溢れるとミトコンドリアは直ぐにエネルギーに変えていきますが、余分に溢れ出ると小さな分子であるフリーラジカルを放出します。つまりブドウ糖を細胞に与えるスピードが速くなりすぎると、結果として生まれるフリーラジカルが体内で危険な連鎖反応を始めてしまいます。

    このフリーラジカルは触れたもの全てにダメージを与え、DNAを改変して有害な遺伝子を活性化させて変異を起こしてがんを発生させることもあります。また細胞膜に穴を開けて、正常に機能している細胞を機能できなくしてしまう作用もあります。人の体はある程度であればフリーラジカルに対処できますが、血糖値スパイクを繰り返してフリーラジカルの量が増えるとコントロールできなくなります。

    この状態を体の中で中和できない「酸化ストレス」の状態にあると言います。酸化ストレスは、心臓病や糖尿病、認知低下、老化の原因になります。また果糖が体内にあるとブドウ糖だけの状態よりも酸化ストレスが増加します。このように果糖を含む甘い食品が特に悪いとされているのは、酸化ストレスを増加させてしまうからです。

    一方で、ミトコンドリアの機能が低下してブドウ糖を効果的にエネルギーに変えられないようになると、栄養を摂取しているにも関わらず、細胞が飢えて臓器が機能不全に陥ります。体のだるさ、朝起きれない、疲労感が取れないという状態が続き、次第に臓器がダメージを受けて生活習慣病に繋がります。さらに血糖値スパイクは「糖化」を齎します。

    体の焦げである「糖化」は、1912年フランスの科学者メイラードによって発見され、グルコースが別のタイプの分子にぶつかる時に「褐変」が起こることから「メイラード反応」と名付けられました。細胞の分子が糖化されるとダメージを受けて損傷してしまいます。ブドウ糖をたくさん体に与えれば、それだけ糖化は頻繁に起こり、結果として老化スピードが速くなります。

    果糖を正しく理解する

    血糖値以外にも気をつけなければいけないことがあります。血糖値の定義は血中のグルコースの濃度です。つまり血糖値で測ることができるのはグルコースの濃度だけです。ブドウ糖は更に糖度が増した果糖に変化します。つまり正確に測るためには血中の果糖の濃度も測る必要があります。

    果糖を食べると一部はブドウ糖に戻りますが、残りは果糖のまま血流に入ります。この果糖分子はブドウ糖より10倍も速く物質を糖化し細胞にはるかに大きなダメージを与えます。白米やうどんなどのデンプン質で果糖を含まないグルコースのみの炭水化物より、ケーキやクッキーなどの甘い果糖を含む炭水化物の方が体に悪いのは酸化と同じく、糖化のスピードも速めてしまうからです。

    当たり前ですが、ブドウ糖の過剰摂取だけでも酸化や糖化が起きてしまうのに、ブドウ糖の何倍も酸化や糖化を促進させる果糖を多く摂取すれば過剰なフリーラジカルが発生してしまいます。果糖が恐ろしいのは、白米とケーキの血糖値のあがり方「血糖値スパイク」はほぼ同じですが、実は背後に目に見えない「果糖スパイク」が起きているため、明らかにケーキを食べる方が体に悪影響を与えます。そして酸化と糖化が合わせることで体内が全身性の「炎症」状態になりやすくなります。

    このような慢性的な炎症は、脳卒中、慢性呼吸器疾患、心臓病、肝臓病、肥満、糖尿病などあらゆる生活習慣病を引き起こします。世界保険機関(WHO)は、炎症が原因の病気を「人間の健康に対する最大の脅威」としています。世界中の5人に3人が炎症が原因の病気で死亡していると言われています。

    血糖値が上がる理由

    ご飯、パン、麺類といった炭水化物の中に入っている糖分が血糖値を上げる原因になりますが、一方でタンパク質や脂肪は食べても血糖になることはありません。食事から得た糖は、腸から吸収されて肝臓に送られます。糖の一部をグリコーゲンとして肝臓に蓄えます。このグリコーゲンとして蓄えられなかった残った糖分が血糖として血液中に放出されます。糖尿病の人は、食べた糖が全て血液中に流れてしまい血糖値が急上昇します。

    また、ストレスや寝不足、体調不良など食事以外の要因でも血糖値が上がる可能性があります。なぜなら体内にはコルチゾールやカテコールアミン、グルカゴンなど血糖値を上げる働きを持っているホルモンが多く存在するからです。例えば寝不足になるとコルチゾールやカテコールアミンと呼ばれるホルモンが沢山作られます。コルチゾールは、脂肪やタンパク質から血糖を作り出す反応を促し、血糖値が上がったりします。

    空腹時の血糖値は、主に肝臓のグリコーゲンと糖新生というメカニズムによって支えられています。空腹になると膵臓がグルカゴンというホルモンを作り、肝臓に作用しグリコーゲンを分解して血液中に流すことで血糖値を上げる働きがあります。

    糖新生は、タンパク質や脂質から血糖を作るメカニズムです。血糖値が下がってくると、脳から副腎へ指令が送られてコルチゾールというホルモンが作られます。このコルチゾールが糖新生を促して血糖値を維持します。糖質を摂らないと常に糖新生によって血糖値が維持しようと働き、結果として糖新生が起こらなくなると、食欲が乱れて食べ過ぎになってしまいます。

    また、腸内環境が悪いと、全身の炎症が引き起こされ、インスリン抵抗性と呼ばれるインスリンが効きにくい状態になると言われています。他にも腸内ではGLP1と呼ばれる血糖値を下げるホルモンが作られていますが、腸内環境が悪くなると、このGLP1が必要量を作られなくなり血糖値が上がりやすくなります。

    ブドウ糖の貯蔵庫

    血中のブドウ糖や果糖が増えてミトコンドリアが機能不全に陥らないようにするために、膵臓がインスリンを分泌して余分なブドウ糖を体内の貯蔵庫にしまい込みます。第一の貯蔵庫が肝臓、第二の貯蔵庫が筋肉で、これらで貯蔵しきれない糖質は、第三の貯蔵庫である脂肪として体に付きます。上記で述べた果糖は脂肪でしか蓄えられません。さらに果糖から作られた脂肪は、動脈硬化や心臓病を引き起こす悪玉コレステロールを増やす作用があります。ここからもカロリーが同じ食品でも果糖を含む甘い食品を食べる方が体に与える有害性が遥かに大きいことが分かります。

    世の中には、「無脂肪」などと謳っている加工食品が多くありますが、それらにはショ糖が多く含まれています。そのため体内で消化されるとショ糖に含まれる果糖が脂肪に変わり、結果として太りやすくなります。

    正しい順番で食べることが大事

    野菜から食べることを心がけている方が多いと思いますが、血糖値を上げないためには、何を食べるべきで何を食べてはいけないということよりも、食べ方の方が大事です。2015年アメリカのコーネル大学が発表した論文によると、デンプン、食物繊維、糖、タンパク質、脂肪を正しい順番で食べるだけで、血糖値スパイクが73%減り、インスリンスパイクも48%減ったことが発表されています。このように同じ食事でも食べ方によって全く違う影響があることが分かります。

    正しい順番の食べ方は、最初に食物繊維、タンパク質、脂肪、デンプンと糖です。仮にデンプンや糖を先に摂ってしまうと、すぐに小腸に入りグルコース分子に分解されるため、瞬く間に血中に入って血糖値スパイクが起きてしまいます。逆に食物繊維から食べると、食物繊維の十分な力を利用することができます。

    その1つがデンプンをグルコース分子に分解するα—アミラーゼという酵素の活動を抑える働きです。2つ目が胃に入った食べ物が小腸に流れていくスピードを遅くすることができこと。最後が小腸の内側に粘着性のある網を作り出し、グルコースが血中に入ることを抑える働きです。この3つの働きよってグルコースの分解と吸収のスピードを緩めて血糖値曲線をなだらかにしてくれます。

    このように食物繊維を先に食べることで、脂肪を含む食品を胃から小腸に流れていく速度をゆっくりしてくれるため、最後に炭水化物を摂ることがベストです。結果としてデンプンと糖を食べられる上、さらに体への影響を小さくすることができます。さらにインスリンの分泌量も減るため素早く脂肪燃焼モードに戻りダイエット効果も期待できます。また2017年にミシガン大学で行われた研究によれば、血糖値がなだらかな人は、カロリーを沢山摂っても血糖値スパイクを繰り返している人よりも脂肪が減りやすいことが分かっています。

    酢のメカニズム

    甘いものを食べたくなったら、コップ一杯の水に大さじ1の酢を入れて、甘いものを食べる前、もしくは食べた後直ぐに飲んでみましょう。酢は甘いものを食べた後に血糖値スパイクとインスリンスパイクを小さくする効果があります。さらに酢は甘いものへの渇望を抑えて、空腹感を和らげ、脂肪を燃焼しやすくなるという働きも期待できます。

    酢の健康へのメカニズムも最近の研究で明らかになってきており、1つがデンプンをグルコースに分解するα—アミラーゼという酵素の活動を抑制することです。そのため摂取した糖やデンプンがゆっくりとグルコースに変わるため、急激に血中にグルコースが流れることを防いでくれます。これは食物繊維の持つ役割と同様です。

    2つ目が酢酸は血流に入ると筋肉に入り込み、通常よりも早くグリコーゲンをつくるように筋肉に促します。つまり血中のグルコースが効果的に筋肉に取り込まれるので血糖値の急上昇を防いでくれます。最後が酢酸は、ミトコンドリアが脂肪を燃やすようにDNAに命じてプログラムを少し変更させます。これら3つの働きによって甘いものを食べる前に飲むと、血糖値スパイクを抑える他、ダイエット効果も期待できます。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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