老ける人・老けにくい人の違い

    老ける人・老けにくい人の違い

    研究によると老け顔の人は若々しい顔の人より、早く亡くなるリスクが高いという結果があります。この研究デンマークで行われたコペンハーゲンシティハートスタディと言う追跡調査で明らかになりました。

    この調査では、心臓病や脳卒中などの病気と人々の生活環境がどう関係しているかを調べました。その中で老け顔の特徴と健康状態の関連性も調べています。この研究では約2万人の人を対象に、35年間も追跡調査を続け、長期間に渡って大勢の人を追跡したため老け顔と健康の関係について信頼性が高いと言われています。

    例えば、驚くべきことに老け顔の人は心筋梗塞のリスクが57%も高くなり、心臓病全般のリスクも39%上昇する結果となりました。これらは老け顔の特徴が体の内部で起きている変化 を反映しているからと言われています。このような結果にとなるのは、例えば皮膚のハリが失われるのは体内のコラーゲの減少ですが、そのコラーゲンの減少が血管の弾力性にも影響を与え、弾力性が失われることは動脈硬化のリスクに繋がります。つまり見た目の変化が体の中の変化を表していることになります。そのため、この研究結果は老け顔を単なる美容の問題として片付けるのではなく、健康の重要なサインとして捉えるべきことを示しています。

    老け顔と病気の関係

    研究では、前頭部の髪が薄い人は、40%も心臓病のリスクを上げることが分かっています。これは男性ホルモンの影響が大きく、またまぶたの黄色腫瘤や耳たぶのシワも特徴に挙げられています。その他にも目の下のクマや頬のたるみ、首のシワも健康リスクと関連があることが分かってきています。

    当たり前ですが、目の下のクマは慢性的な疲労や睡眠不足、ストレスなどと関連している ことが多く、長期的に見ると免疫機能の低下や心臓病のリスク上昇につがる可能性があります。また頬のたるみなどは、体内のコラーゲンやエラスチンの減少を示していることが多く、皮膚だけじゃなく血管の弾力性にも関係しているため、たるみが進行すると動脈効果のリスクも高まる可能性があります。

    もちろんこれらには遺伝的な要素もありますが、生活習慣の影響も大きいです。例えば喫煙や飲酒、ストレス、不規則な生活が老け顔を加速させる要因になります。そのため生活習慣を改善すれば老け顔も予防でき、適度な運動、バランスの取れた食事、十分な睡眠、ストレス管理が大切になります。

    一方で、髪が薄くなると心臓病のリスクが上がるのは、男性型脱毛症のメカニズムに関連しているからです。男性型脱毛症は、主に男性に見られる症状ですが女性にも影響することがあります。これは男性ホルモンの一種ジヒドロテストステロン(DHT)が関係しているからです。

    特にストレスを受けると副腎から男性ホルモンであるアンドロゲンが沢山分泌されて髪が薄くなるのが加速します。そしてその髪の薄さと心臓病の関係には複雑な関係があります。髪が薄い人は、男性ホルモンレベルが高いと言われ、そして高い男性ホルモンレベルは心臓病のリスクを上げる可能性があります。そのため髪が薄くなるのを防ぐには、ストレス管理や適度な運動、バランスの取れた食事が効果的で、特に亜鉛やビタミンB群を含む食品を摂るのが良いでしょう。

    一方でまぶたの黄色腫瘤は、主に悪玉コレステロールが関係しており、体内のコレステロール代謝に問題があると血中のコレステロールが増加してしまいます。そして重要なのが体内のコレステロール処理能力です。特にLDLレセプターという悪玉コレステロールを取り込む仕組みが重要で、LDLレセプターは、簡単に説明すれば体内のゴミ処理システムのようなものです。これがうまく働かないと悪玉コレステロールが血管内に溜まります。それが目の周りにできますが、それはマクロファージという細胞が関係しているからです。

    マクロファージは余分なコレステロールを取り込んで皮膚の下に蓄積し、特に目の周りは皮膚が薄いため黄色く見えやすくなります。これを防ぐには、食生活の改善と運動が基本であり、特に飽和脂肪酸を控えめにして、青魚やオリーブオイル、アボカド、ナッツ類などで不飽和脂肪酸を摂りましょう。

    老化と歩く速度

    研究によると歩く速度が遅い人は寿命が短い傾向がありました。特に50代で歩く速度が遅い人は、10年後の死亡リスクが高くなります。なぜなら歩く速度は全身の健康状態を反映しており、筋力、心肺機能、神経系の状態など様々な要素が関わっているからです。

    他にも握力も重要な指標になります。握力が弱い人は心臓病やの中のリスクが高くなります。握力は全身の筋力を反映しており、筋力が低下すると代謝も悪くなり、様々な健康リスクが高まります。

    一方で腰の曲がりは医学用語で「亀背(きはい)」と言い、これも健康リスクの重要な指標なります。研究によると2年間で身長が5mmも縮むと死亡リスクが6%も上がります。これは骨密度の低下を示す重要なサイであり、骨密度が低下すると骨折のリスクが高まるだけでなく、内臓の機能にも影響を与えます。特に日本人は、ビタミンDが不足しているため、適度な日光浴とビタミン Dを含む食品の摂取が大切です。

    老け顔は遺伝の影響!?

    老け顔は、確かに遺伝的な要素もありますが、環境要因の影響が大きいことが分かっています。双子を対象にした研究では、遺伝的背景が同じ双子でも老け顔の方が死亡リスクが高いという結果となりました。これは環境要因や生活習慣の重要性を示しています。例えば喫煙、過度の日光浴、ストレス不規則な生活が老け顔を加速させる要因になります。

    また、細胞レベルでも違いがあることが分かっており、それがテロメアという部分です。テロメアは細胞の染色体の末端にある部分で、細胞分裂の度に短くなります。テロメアは、細胞の寿命を決める目印のようなもので、研究によると老け顔の人はテロメアが短い傾向がありました。

    老けるストレス、若返るストレス

    20代30代であれば、それほど老化のスピードは変わりませんが、40代50代を超えてくるとそれはもう信じられないほど大きな差となって現れてしまいます。実は、近年多く方が推奨しているような予防医学的、節制的健康法は老化を逆に進めてしまう可能性があることが分かってきています。これは簡単に言うと我慢する健康法です。もちろんそれらの健康法自体がダメだというわけではなく、老化を進めてしまう原因に我慢をすることで起こるストレスが大きな原因になるからです。

    実はストレスの中にも老けるストレスと若返るストレスがあり、老けるストレスはメンタルに影響するストレスで、そして若返るストレスは何らかの目標に向かって努力している時に味わう精神的な緊張感です。そして、心が疲れるストレスを日常的に感じている人は、見た目も老けているという研究結果があります。

    その原因には、ホルモンバランスの崩れが挙げられます。メンタルの悪化は、コルチゾールを増やし、これが引き金となって脳から神経ペプチドの一種であるサブスタンスPを吐き出します。サブスタンスPは体内に炎症を引き起こす働きがあり、肌や臓器を攻撃します。そしてやがて全身の機能が低下を始めて、高血糖や肥満、アレルギーなどのリスク増加に繋がります。そのため我慢することで起こるストレスで老化が進むことになります。

    一方で若返るストレスは、自分にとって役に立つ目標に向かってエネルギーを注いでいる時に味わう精神的な不快感です。実はこの不快感こそが重要で、人間の脳のシステムは本気でゴールに向かう場合に、この不快感を与えるようになっており、その不快感による効果をホルミシス効果と言います。これは多すぎれば有害ですが、少なければ有益に働く作用です。つまり新しいことへの挑戦は、不安もあり緊張もしますが、それが自分にとって良いと思われることへの挑戦であれば、その不快感がホルミシス効果となって若返りに繋がります。

    老化スピードと酸化

    このように老化を進めてしまう原因に体の酸化が挙げられます。この酸化の原因になってしまうのが細胞の炎症です。私たちの体を構成している37兆個の細胞は細胞膜によって包まれており、炎症は細胞膜に傷ができた状態のことで、細胞膜が傷ついてしまうと細胞内に大量の活性酸素などのフリーラジカルが侵入して体を錆び付かせ老化が進んでしまいます。

    そしてこの炎症を起こしているものが慢性型のアレルギーです。慢性型アレルギーは急性型アレルギーのようにすぐに分かりやすい症状が現れるわけではなく、なかなか気づきにくいです。実際に腸の炎症を引き起こしたり、細胞膜の炎症によって酸化が進んだり、細胞内に栄養が届きにくくなっていたりします。そのため慢性型のアレルギーを起こす食べ物を避ける良いでしょう。もちろん検査をした方が慢性型アレルギーは正確に判明しますが、検査をしなくても自分の体の声にしっかりと耳を傾けることができれば食物アレルギー は発見できます。

    例えば食べたものを全部書きとめ、体がだるいとかなんとなく気持ちが悪いといった感が あった時に数時間前に自分が何を食べたのかをチェックすれば良いでしょう。気になる症状になる前にいつも同じものを食べているようであれば、それが自分にとってアレルギーを引き起こす食べ物である可能性が高いと言えます。

    睡眠不足が老化を加速する

    慢性的な睡眠不足によって、体の中で多くのコルチゾールが発生します。コルチゾールはストレスホルモンと呼ばれ、過剰に発生すると皮膚を滑らかで弾力性のある状態に保つタンパク質を分解する可能性が指摘されています。つまり皮膚のコラーゲンとエラスチンを分解し、その結果、シワができたり、肌の弾力性が失われたりします。

    同じく慢性的なストレスによっても、シワなどの肌の老化に悪影響を及ぼすことも分かっています。睡眠不足が慢性的ストレスを与え、体内で炎症が起こり、体が本来持っている自己修復能力が損なわれてしまうのです。

    また、睡眠が不足すると成長ホルモンの量が不足することも指摘されています。成長ホルモンは主に寝ている時に分泌されるホルモンで、骨や筋肉の成長や代謝や脂肪分解を促進する働き、組織や臓器を健康に維持する役割、老化し傷ついた細胞を修復・再生してくれたり、疲労を取り除く効果(疲労回復ホルモン)もあります。成長ホルモンをしっかり分泌させるためにもしっかり睡眠時間を確保する必要があります。

    さらに、睡眠不足は体内の炎症に関する血液マーカーの増加に関連していることが分かっています。健康に生きるためには、体内の炎症を減らすことが大切ですが、睡眠不足だとサイトカイン、インターロイキン-6、C反応性タンパク質などの炎症性分子の増加が確認されます。そのため睡眠不足の人は、心血管疾患、高血圧、糖尿病などの慢性疾患のリスクが高まることが分かっています。

    なぜ睡眠不足によって体内で炎症が起こるかというと、本来であれば眠っている間に、血圧が下がり、血管が広がりますが、睡眠不足だと血圧が下がらず、血管壁の細胞が炎症を引き起こすからです。また脳内に溜まった老廃物は寝ている間にクリーニング(グリンパティックシステム)されますが、睡眠不足はこのクリーニングを妨げてしまいます。その結果、アミロイドベータタンパク質という老廃物が取り除かれないため、蓄積することで炎症が発生してしまいます。そしてこのタンパク質が脳の前頭葉に蓄積することで、ノンレム睡眠のより深い睡眠が損なわれ始めます。つまり睡眠の質を低下させてしまうのです。

    食べ物が老化を加速する

    健康のことを考えて食品や調味料を選ぶ場合、賞味期限だけでなく製造日にも気を配りましょう。調味料だけでなく、あらゆる食品はできるだけ製造日の近いもの(鮮度が良いもの)を選び、製造日が書かれていない場合は、なるべく賞味期限が遠いものを選びましょう。もちろん賞味期限を過ぎても使えるものもありますが、健康を考えれば、口に入れるものに関しては劣化をなるべく抑えることが基本です。

    このようなことを気にしなければならないのは、特に油が含まれている食品や調味料です。油は酸化が進めば進むほど茶色が濃くなり、そうした油には過酸化脂質という有害な物質が含まれています。この過酸化脂質が体内に入ると活性酸素が発生し、触れる細胞を劣化させていきます。老化の原因であるシワ・シミもこの活性酸素がつくり出します。

    揚げ物を食べた後にお腹の調子が悪くなる、胃もたれする、下痢になるのはある意味、体の正常な反応です。高温で加熱された油は酸化している可能性が極めて高く、体に有害な油を排出しようとするためです。また高温で加熱していなくても、保存している期間が長くなればなるほど酸化は進みます。

    その他にも、たんぱく加水分解物を含むもの、カラメル色素を含む○○風調味料、人工甘味料(サッカリン、アスパルテーム、スラロース、アセスルファムK)には注意しましょう。選ぶべき調味料は昔ながらの製法のもので食品添加物を加えていないもの、塩は天然塩を、醤油や味噌は天然発酵したものをなるべく選びましょう。

    【最新研究】老化は44歳と60歳に急激に進む

    アメリカスタンフォード大学が44歳と60歳前後で急激に老化が進むという研究結果を発表しました。この研究では、25歳から75歳までのアメリカに住む男女108人を対象に、血液、皮膚、排泄物を3ヶ月から6ヶ月おきにサンプルを採取し、約1年から最長7 年ほど血液や腸・皮膚の細菌を調査した結果となっています。その結果44歳頃と60歳頃に機能不全につながる生体分子の変化が確認されました。

    今までの研究は、皮膚の老化を追いかけていく研究でしたが、今回のスタンフォード大学の研究は、その遺伝子の変化が確認されています。そのため体の中でそれらの細胞がどういう風に反応しているのかを見ているのが1つの特徴で、さらにもう1つの特徴として腸内細菌層を見ています。つまりその人がどういうものを食べているか、どのような生活習慣があるのかが今までの老化研究と全く違う部分です。

    この研究結果では、44歳前後に急激な老化が起こるのは、心血管疾患、脂質代謝の減少、アルコールの分解がしづらくなることが挙げられています。また60歳頃では、体内で免疫調節、腎臓機能、酸化ストレスに関わる分子に変化が起きていることが分かっています。その結果、がん、リュウマチ、そして動脈硬化、脳梗塞など、血糖値の上昇による糖尿病のリスク上昇などが挙げられます。

    特に酸化ストレスは、体の中が酸化することで細胞が傷つけられる現象で、酸化ストレスが増えているということは、細胞の老化が加速していると考えられます。また炭水化物の代謝に関わる分子にも変化があるということは、肌などの老化が44歳頃と60 歳頃に2回加速するという研究結果になっています。ちなみに今までの研究は、老化は一定の速度で進んでいくと考えられていました。

    2ヶ月で生物学的に11歳若返る方法

    科学的に証明された範囲での若返りには、まず病気の予防をすることが重要です。例えば高血圧、中性脂肪、糖尿病などいわゆる慢性疾患は年を取ることでリスクが上がり、ジワジワと進行して、さらに老化が進む悪循環に入ってしまいます。つまり慢性疾患の類いを予防することが老化を防ぐ有効な手段です。肉体の若さを保つことが慢性疾患のリスクを下げることにつながります。

    そして2023年に発表された論文では、6人のアメリカ人女性、年齢は46歳から62歳を対象にした実験で、女性たちは2ヶ月間特定の生活スタイルを実行してその前後で生物学的年齢を測定しました。生物学的年齢は体の中の、実際の老化具合を図る指標です。例えば 50歳でも生物学的には40歳の若い人もいれば、60歳の老けた人もいます。この生物学的年齢は病気のリスクや寿命に深く関わっています。

    8週間のプログラムを遂行した後、その女性たちの生物学的年齢が平均で3年下がったことが分かりました。また生物学的年齢が下がっただけでなく、体内の炎症や慢性疾患に関わる値も改善していました。そのプログラムは、栄養バランスを整えた食事、適度な運動やストレス管理、そして睡眠の質を向上させることがポイントでした。つまり基本的な健康習慣がとっても大事になります。

    またDNAが深く関わっており、人間のDNAは生まれてから死ぬまで変わらないと思われるかも知れませんが、実際には「エピジェネティクス」いうメカニズムで遺伝子のスイッチがオンオフされています。簡単に言うと遺伝子自体は変わりませんが、その活動が変わります。つまり環境や生活習慣によって遺伝子が働き方を変えることができます。例えばストレスを減らしたり、良質な食事を摂ることで老化を引き起こす遺伝子のスイッチをオフにできます。その結果、若々しい細胞の状態を維持できるようになっています。

    8週間のプログラム

    女性たちの生物学的年齢が平均で3年下がったプログラム内容は、まず食事の見直しです。基本的に野菜をたくさん食べるメニューにして、特に濃い緑の葉物野菜を中心に、一皿のケールとほうれん草を摂り、さらにアブラナ科の野菜のブロッコリーやキャベツ、カリフラワーを追加しています。他にパプリカ、ピーマンも追加されています。

    またメニューでは1週間にレバーを250g、レバーには動物性の脂質やビタミンがたっぷり含まれており、血管拡張作用もあるビーツも一緒に取るとさらに効果的です。さらに1週間で5から10個の卵も食べ、大体1日1個くらい、さらに動物性脂肪も1日200g弱を摂るようにしています。

    動物性脂肪は体に悪いイメージがあり、摂り過ぎは確かに良くありませんが、適量であればコリン、カルニチンなど体に必要な栄養素が動物性の食品にしか含まれてないことが多くあります。また甘いものは果物だけで摂り、砂糖まみれのキャンディを避けていました。そしてNGの食べ物は精製された穀物、ご飯やパン、小麦です。さらに水分補給も忘れずに行い脱水を避けています。

    健康的な肉体を維持する方法

    体を老化させる原因になる慢性疾患を予防することが重要で、生活習慣の改善によって生物学的年齢が若返っても慢性疾患で老化が進んでしまえば意味がありません。この老化のスピードは個人差が大きく、ニュージーランドで行われた研究で生物学的な老化スピードにかなりの差があること分かっています。

    この研究によると45歳の時点で生物学的に老化が進んでいる人は、認知機能や体機能も低下していることが分かっています。その研究では1972年と73年生まれの1000人以上を20年間追跡し、26歳から45歳までの老化のスピードを比較しています。

    研究では心臓や肺、腎臓、免疫系、さらには歯の健康まで19種類のバイオマーカーを使って老化の進行を測りました。バイオマーカーは、例えば血圧やコレステロール値、肺機能などの体の機能を示すものです。バイオマーカーの年間変化率を計算して老化の速さを見ると、例えば実年齢が1年増えるごとに生物学的年齢も1歳増える人は普通のスピードで、中には1年で生物学的に2歳以上老ける人も確認されています。

    それには特定の要因が絡んでおり、例えば若さを保っている人は健康的な食事、運動習慣、ストレス管理をしていました。逆に生活習慣が悪いと早く老化していました。例えば心血管系のバイオマーカーを調べて、そのデータが悪化している人は一気に老化が進んでおり、例えば血圧が高いと心臓への負担が増えて体全体の老化が早くなります。そして老化のスピードが早い人は感覚や運動機能も低下しており、歩くスピードが遅くなったり、握力が弱くなったりしています。

    腸内細菌と老けの関係

    この研究は、日本人を対象にした研究ではないため、44歳と60歳という年齢自体が、日本人には必ずしも適用されないかもしれません。しかし今まで老化はゆっくりと徐々に進んでいき、どんどん右肩下がりになるイメージでしたが、 この研究で、老化は一定のペースで進むのではなく、特定の年齢で急激に進行することが分かっています。

    この現象には腸内環境が関与しているのではないかと考えられています。実は腸内細菌が代謝や免疫を調整していることが分かっており、腸内細菌は短鎖脂肪酸などを作り出しており、この短鎖脂肪酸には免疫の調整、代謝の機能をアップさせることが分かっています。つまり短鎖脂肪酸が低下すると、体の代謝が低下し、様々な物質の分解が難しくなることになります。

    なぜ短鎖脂肪酸が作れなくなるのか、その理由の一つとして腸内細菌の影響が挙げられています。腸内細菌は3歳ぐらいでベースが作られ、15歳ぐらいで確立されると言われています。ある一定の時期に常在菌叢(じょうざいきんそう)が大きく変化することによって短鎖脂肪酸などに影響すると考えられています。この腸内細菌のバランスが崩れる主な原因は、腸内細菌に悪影響を与える食べ物の摂取が増えることです。

    腸内細菌に良い食べ物の代表が豆類、ごま、わかめ、野菜、しいたけ、芋(まごはやさしい)などで、これらには発酵性の食物繊維のルミナコイドが含まれています。ひと昔前までは、食物繊維の「水溶性」「不溶性」分類されていましたが、現在は発酵性の食物繊維か、そうでないかで大きく分けられています。

    発酵性食物繊維であるルミナコイドは、大腸に届き、腸内細菌によって発酵されることでエネルギーを生成する食物繊維です。このエネルギーは短鎖脂肪酸として生成されます。腸内細菌がルミナコイドを餌として利用し、発酵することで人間の体に有益な短鎖脂肪酸を生成することができます。発酵性の食物にも色々な種類があり、当然1つの種類だけを食べていれば良いわけではありません。色々な発酵性の食物を入れることで体の中で万遍なく発酵され、継続的に短鎖脂肪酸を生み出すことができます。

    ただしサプリメントなどで外部から腸内細菌を摂取しても、それらの菌は腸に定着しないことがわかっています。そのため酪酸菌を摂取しても、体内で酪酸が生成されるわけではなく、摂取した菌は体外に流れ出てしまいます。特に酪酸は飲みにくく、胃で代謝されてしまうと言われています。

    急激な老化を抑制するためには、バランスの良い発酵性食物繊維(ルミナコイド)を摂取し、腸内細菌によって腸内環境を整えることが大事です。老化は緩やかに進むのではなく、急激に進む理由には腸に悪い食事、つまり腸内細菌のバランスが徐々に崩れ、短鎖脂肪酸の生成が減少し、この結果、老化が急速に進む可能性があります。

    細胞老化遅くする方法

    細胞の年齢は細胞分裂などを制御するテロメアによって決まります。テロメアは遺伝子の末端の部分にあり、細胞分裂が繰り返されるたびに長さが短くなります。そして一定以下の長さになると細胞は分裂できなくなり死滅します。つまりテロメアが長くする、もしくは短くならないような生活ができれば、細胞レベルが若返ります。例えば、お肌で長い間細胞分裂が起こってくれればシワやシミなどの肌トラブルを起こす可能性が減ったりします。体内でも同じようにテロメアの長さがしっかりあれば、分裂が長い間起こり老化に伴う症状が起きづらくなります。

    このテロメアの長さを維持するためには運動が効果的だということが研究で分かっています。アメリカで行われた栄養調査の中から、5,823人の健康データを使った研究では、普段の運動とテロメアの長さに相関関係があり、運動量が多ければ多いほどテロメアが長いことが分かっています。

    一方で、体内で生じる酸化ストレスがテロメアを短くすることも分かっており、お肌の線維芽細胞や角化細胞、さらには脾臓・腎臓・肝臓などの細胞でも同じような短縮が確認されています。さらには高ストレス状態、喫煙、肥満、睡眠不足などの生活習慣によっても同じく短縮が促進されます。

    老化と免疫力の関係

    実は、免疫力を上げすぎるだけだと老化が進むことが分かっています。免疫は、ウイルスや細菌など体にとって異物が侵入するのを発見し、排除する仕組みのことで生体防御機能のことです。その機能を持つ免疫細胞が病原体を見つけると病原体のサインである炎症性サイトカインを分泌します。そのサインの元に免疫細胞集まり、病原体を攻撃をし、排除することになります。

    その後には必ずこの免疫細胞を抑える免疫抑制細胞が現れ、免疫抑制細胞が炎症を抑え込んで抗炎症性サイトカインを分泌して炎症が終わったサインとします。その結果一連の免疫反応は終わり、これが免疫反応の流れになっています。

    このように免疫は、炎症を促して病原体を攻撃する免疫細胞と、それを終わらせる免疫抑制細胞があり、そして私たちが免疫力を上げると言うのは排除する力を上げることの意味合いで使うことが多いです。そのため免疫細胞の攻撃力だけを上げると常に炎症反応が起きている状態になり、体の炎症反応が止まらない状態になってしまいます。そのため現代人は、免疫細胞が強くて免疫を抑制する細胞が弱いと言われています。

    一方で老化には2種類あり、加齢とともに必然的に進む生理的な老化と慢性的な炎症が起きることで進む老化です。そして慢性炎症は病的な老化の原因になります。例えば顔であればシミとやシワ、たるみの原因になり、体であれば癌やアルツハイマー、糖尿病、アレルギー疾患、花粉症など色々な疾患を引き起こすことが分かっています。つまり体を炎症に傾ける状態を続けることは老化が進んでしまうことになります。

    そのため抗炎症性の免疫細胞を活性化させ、免疫細胞と免疫抑制細胞のバランスが大事になります。例えば車であれば免疫細胞はアクセル、免疫抑制細胞はブレーキであり、そのアクセルとブレーキがバランスよく効くことで安全に運転できることになります。免疫抑制細胞が弱いと免疫が過剰となり、慢性症になり、慢性症が起こると体に病的な老化が進むことになります。逆に免疫細胞が弱いと免疫抑制細胞が過剰となり、感染症だけでなく癌も攻撃できないことになります。特に癌細胞がある人は、免疫抑制細胞も沢山いることも分かっています。

    これらのバランスをしっかり整えるには腸内細菌が大きく関わっていることが分かってきています。腸内細菌は免疫を促す細菌と免疫を抑制する細胞がいることが分かっており、免疫と同じように腸内細菌のバランスが大切になります。そして炎症を抑える細菌に短鎖脂肪酸をたくさん作ってもらうことがバランスを整えるポイントになっています。この短鎖脂肪酸を作ってもらうためには発酵性の食物繊維、いわゆるルミナコイドを摂ることが必要と言われています。

    炎症を抑え細菌はルミナコイドを摂取することによって短鎖脂肪酸を作り、その中の酪酸が免疫バランスを整えてくれます。もちろん炎症を促す細菌を抑えるのではないですが、病原菌を排除した後には必要以上に体に炎症を起こさないことは老化を進めなくすることになります。

    ルミナコイドには様々な種類がありますが、数種類の発酵性の食物繊維をバランスよく摂ることが大切なことも分かっています。しかし平均的な日本人は通常の食物繊維の摂取量が20g未満と言われているため、数種類のルミナコイドをできれば1日25g以上を摂ることを目安にして、老化も感染症も予防しましょう。様々な種類と摂ることで腸内細菌が炎症を抑えるT-reg細胞を作り出してくれ、それによって免疫のバランスが整って慢性炎症を抑えることができます。

    酪酸菌で体に起きる良い効果

    酪酸菌を食材と摂取しようとすると、酪酸菌を含む食品は、ぬか漬けや臭豆腐といったものしかなく、非常に限られています。そのため酪酸菌を増やしたい場合にはサプリメント等を活用するのが良いでしょう。

    酪酸菌には、酪酸を生成することでしか得られない効果があります。1つ目に酪酸は腸内を弱酸性にする効果がある以外にも、腸内の酸素も減らしてくれます。酪酸と酸素を使う大腸の上皮細胞がエネルギーを生成し、結果的に酸素が減る仕組みがあります。善玉菌は酸素に弱く、悪玉菌は酸素が多い環境が好みのため、酸素が減り、腸内が弱酸性の環境になると善玉菌が活発化されます。またマグネシウム、カルシウムなどのミネラルも相乗効果で吸収されやすくなります。

    2つ目は、酪酸菌が酪酸を沢山生成することで若返り効果があることが分かっています。シンガポールの大学と国際機関によるマウスを使った実験の結果によると、若いマウスの腸内細菌を年老いたマウスに移植する実験を行いました。すると新しい神経細胞が分化する現象と腸の活発化が見られました。それだけでなく脳でも新しい神経細胞の生成が活発化していることが確認されました。この神経を新しく生み出し、活発化させたのが酪酸の働きであることを実験で突き止められたのです。

    ここから導き出せることは、酪酸には長生きのためのホルモン生成を活発化させる働きがあること、脳に影響を与えていることから認知機能の低下を抑止する効果があると考えられています。

    3つ目が肥満抑制効果です。酪酸菌の主な餌は、食物繊維やオリゴ糖で、これらを分解し発酵することで酪酸が生成されます。これは短鎖脂肪酸と言い、いわゆる痩せホルモンに分類されます。短鎖脂肪酸は交感神経と主に結合される神経や脳を活性化させることによるエネルギー消費効果が期待できます。つまり代謝が上がって脂肪が溜まりにくくなる効果があります。京都大学の研究では、短鎖脂肪酸そのものにも食欲抑制効果があると分かっています。

    また短鎖脂肪酸の働きに、腸にある神経を活発化させることにより脳へも伝達させる、脳に神経情報を伝えることで脳が満腹感を感じやすくなります。これにより食欲抑制効果が期待できるとされています。

    4つ目が酪酸菌の抗アレルギー効果です。免疫反応が過剰に起きると所謂アレルギー状態になります。研究では無菌マウスに健康な乳児の腸内細菌を移植して 牛乳を与えて反応を満たそうとすると、健康な乳児マウスは牛乳への免疫があり、アレルギー反応が出ませんでした。逆にアレルギーを持つ乳児の腸内細菌を移植すると重度のアレルギー反応が見られました。この乳児の腸内細菌の違いに酪酸菌が関わっていることが分かっています。つまり酪酸菌がアレルギー反応から守る効果、もしくは抑制効果があることが分かります。

    また、酪酸菌と並んで 善玉菌の代表格として挙げられるのが乳酸菌です。代表的な善玉菌は、乳酸菌、ビフィズス菌、そして酪酸菌です。これらの性能はそれぞれちょっと異なる特徴があります。

    乳酸菌の働きは、腸内を酸性にして悪玉菌が住みにくい環境を整えること、大腸を刺激して腸の蠕動運動を促すこと、便の水分量を増加させること、免疫細胞を活性化させることが特徴です。

    ビフィズス菌は、酪酸と同じ短鎖脂肪酸の酢酸を作り出す効果があります。大腸から吸収されて全身の臓器や筋肉で代謝に使われ、生態調節機能を果たすと言われている酪酸菌も同じく腸内を酸性にすることで悪玉菌が増殖しないようにします。また酸素があるとビフィズス菌の活動が抑制されてしまうことがあるため、この酸素を排除し、ビフィズス菌を活発化させる作用が酪酸菌にはあります。他にも大腸の上皮細胞のエネルギーになる以外にも、腸の粘液の分泌を促す効果もあります。腸の粘液の分泌が促されることで病原菌の侵入を防ぐことも可能です。これにより胃酸に強く、生きて腸まで届くと言われています。

    腸内環境に良いオメガ3 脂肪酸

    さらに腸内環境を善玉菌が住みやすい環境にしてくれるのが、オメガ3 脂肪酸です。オメガ3脂肪酸は炎症を和らげる作用がある脂肪酸であり、特に青魚に含まれています。

    このオメガ 3脂肪酸が腸内環境にも良い影響を与えているというデータが出てきています。 腸が炎症を起こしている状態、リーキーガットのような毒素が体内に侵入してしまう可能性を高めてしまう症状だったり、善玉菌が増えにくく悪玉菌が増えやすいといった状況になります。そこで腸が炎症を起こしている状態を鎮めてくれるオメガ3脂肪酸は非常に腸内環境にとって良好な影響を与えてくれます。

    食生活が乱れている方はすでに腸内で大火事が起きている可能性がありますので、まずはその大火事、炎症を沈めないと腸内環境が整いません。そのため食物繊維を摂るとか、発酵食品を取るとか、整腸剤を飲むとかも大切ですが、まずは腸の炎症を鎮めるという点においてオメガ3 脂肪酸を意識して摂取していただくと良いと言えます。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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