
ファシア(fascia)は、臓器、骨、筋肉、脂肪、血管、神経などのあらゆる組織を覆う膜の総称です。皮膚と脂肪との間、脂肪と筋肉の間、また筋肉の中など、あらゆる部位、深さ(皮下、骨周辺)、層に存在する線維性の網目状の組織構造で、その主な主成分は水分とコラーゲン、エラスチン(タンパク質)などです。
ファシアは、全身の至るところに張り巡らされており、お互いに引っ張り合い、張力を保ち、体の組織を支えているため「第二の骨格」とも呼ばれています。ちなみに筋膜リリースの「筋膜」もファシアの一つです。これらファシアの動きが滑らかなら筋肉の動きがスムーズになりこりや痛みが軽減されます。しかしそのバランスが崩れると、痛みだけでなく、骨格や姿勢の崩れに繋がります。
筋膜とファシア
ファシアの一つである「筋膜」は、筋肉を覆う膜のことです。医学的には骨格筋を包むコラーゲン線維の膜(結合組織)のことで、筋外膜、筋周膜、筋内膜があります。また皮下組織にある浅筋膜、全身の筋肉を包み込む深筋膜が存在します。
筋膜の役割は、筋肉を保護し、筋収縮時に摩擦が起きないように滑りを助け、膜が組織と組織の間に仕切りをつくり、身体の姿勢を保つことです。筋膜とファシアの違いは、筋膜は、骨格筋を包むものであり、ファシアは骨や内臓など筋肉以外も覆うものです。
筋膜には感覚神経が分布しており、外力や疲労物質(乳酸等)によって興奮し、中枢に伝わることで「痛み」を感じます。筋膜はコラーゲンやヒアルロン酸からできており(85%は水分)、長時間の同じ姿勢や脱水などの内外のストレス(刺激など)が加わり、変形すると戻りにくく、萎縮・癒着します。
筋膜が癒着すると、筋肉がスムーズに動けなくなるため、血行不良になり、全身に栄養が届かなくなる、老廃物が流れないなど、血管や神経、リンパ系が影響を受けて、肩こり、頭痛、倦怠感、むくみ、たるみなどに繋がります。
その代表症状がMPS(筋膜性疼痛症候群)です。内外のストレスが原因で筋膜に負荷がかかり、筋肉痛が悪化すると、異常な筋膜が短期間で回復できないため、特定の部位に痛み、痺れが生じます。そこで、筋膜リリースすることで、筋膜の萎縮・癒着を引き剥がすことで正常な状態に戻します。つまり筋肉の柔軟性を引き出し、関節の可動域を拡大することが筋膜リリースです。
ファシアをサラサラにする
ファシア(筋膜)は、筋肉・骨・内臓などの組織の間に介在しています。柔軟なファシアは伸びたり、縮んだりすることができますが、同じ姿勢、同じ動作を繰り返す、運動後のケア不足などで、ファシアが伸びた状態で張り付いたり、縮こまった状態で張り付いたりして元の位置に戻れなくなります。それを無理に動かそうとすると痛みがでます。また放置しておくとますます身体の動きを止めてしまいます。
ファシア(筋膜)は全身につながっているため、他の筋肉や関節の動きまで悪影響が波及し、痛み、柔軟性の低下、力の伝達•筋連鎖がうまくいかずパフォーマンスが低下し、不良姿勢からスタイルの乱れ、浮腫や神経圧迫などの不具合を及ぼします。
またファシア(筋膜)には、血管やリンパ管を支えて通過させる機能があります。ファシア全体の滑りが悪くなるとファシアの周りにある血管やリンパ管などが圧迫されてしまうため、循環機能にも問題が起こってしまいます。この筋膜 (ファシア) を構成する主なものは、コラーゲン繊維とエラスチン繊維、水溶性の基質 (ヒアルロン酸:プロテオグリカンなど)です。つまり「基質」と「繊維」で構成される繊維結合組織です。
異常が起こると本来はサラサラの状態の基質がネバネバになって滑りが悪くなり、繊維同士もほどけなくなります。自転車のチェーンがサビついたり、油が固まるようなイメージです。このようなヒアルロン酸のネバネバは、使い過ぎや運動不足、不良姿勢、ケガなどによってコラーゲン繊維の隙間に浮遊しているヒアルロン酸が凝集化して起こります。
ヒアルロン酸が凝集化してしまうと、その周りにあるコラーゲン繊維が硬化し、これが滑走性の低下、いわゆる癒着を引き起こします。凝縮化した異常なヒアルロン酸分子は、熱に弱いため、熱を加えることで正常化するという性質があります。ネバネバ状態から温めるとサラサラに戻るという性質があり、潤いを改善することで滑りが良くなります。それを加速させるのがインディバファシアです。
一方で、皮膚と筋肉、または皮下脂肪などの間に存在する筋膜(ファシア) のゴワつきを整えることで各層の滑り改善し、良い状態に引き伸ばします。インディバファシアで直下を温めながら、刺激を加えることで筋膜 (ファシア) を良い状態に解放(リリース)することができます。一度、体感すると身体のスッキリ感を味わえます。さらに筋肉や関節の動きの改善だけでなく︎「浮腫みケア」にもオススメです。
ファシアで美姿勢
スマホ、パソコン画面を見るために、頭を突き出すと首の付け根がこり固まります。また肩が前に出ている「巻き込み肩」も胸や肩がこりを助長し、猫背の原因になります。また足を組んだり、骨盤が歪むような座り方、腰を丸めて座るなども猫背の原因になります。
猫背は「上位交差症候群」と言い、肩や首が前に突き出て、背中が丸まった状態のことです。このように猫背になる原因は、①胸・首・肩周辺の筋肉のこり、②前頸(くび)と背部の筋肉が弱いことが挙げられます。そのため背部を鍛えることで猫背を改善することは可能ですが、それだけでは十分とは言えません。
なぜなら美しい姿勢は、上半身の胸、肩、腹筋、背筋、インナーマッスル(骨盤低筋群、腸骨筋、大腰筋など)などのあらゆる筋肉のバランスによって保たれているからです。よって背筋を鍛えつつ、首や肩、胸周辺の固まった筋肉のこりをほぐしていく必要があります。筋肉の柔軟性が失われた状態から、正しい姿勢を維持するために血行良くして、冷えや痛みなどの二次的な疾患を防いでいく必要があるのです。

図:インディバアクティブジャパン/indibaactivjapaninstagram
一方で、ファシアを上手く動かすことで姿勢の改善が可能です。例えば肩周りのファシア、肩甲骨を大きく後ろへ動かすと菱形筋のファシアが動きます。すると背骨(椎骨)にも刺激が伝わり背中の筋肉が柔らかくなり、背骨が本来あるべき位置に自然と動きます。その他にも、お尻、肩、肋骨のファシアケアによって、背中の反りを改善することもできます。
マッサージで体をリセットする
日中に5分間目を閉じて休んでも、休まるのは脳や目といった神経系の器官だけで体が休まるわけではありません。体を適切に休ませるためには、本格的なマッサージ等で全身をリラックスさせてあげることが大切です。
私たちは年齢と共に体が硬くなり、体が硬くなると関節が動く範囲である可動域がどんどん狭くなっていきます。すると筋肉が凝り固まって疲れや痛みが溜まりやすくなり、血流もダウンして組織がどんどん老化してしまいます。このような体のコリを取るために重要なのがストレッチです。毎日適切なストレッチをすることで関節の可動域を維持して筋肉を 柔らかく保つことができます。
しかし実際には多くの人が適切なストレッチをすることができておりません。そもそも運動習慣がなくてストレッチができないという人もいれば、例えストレッチをやっていても自己流で正しい方法でできておらず、正しい効果が得られていません。
そこでマッサージの施術を受けることは、他人にやってもらうストレッチに他なりません。自己流で間違ったストレッチをするよりもプロに施術をしてもらった方がきちんと体をほぐすことができます。
実際、マッサージによる疲労回復効果については様々な研究によって効果が実証されています。筋トレや疲労によって損傷した筋肉にマッサージ刺激を加えたハーバード大学の実験によると、マッサージを受けた筋肉はそうでない筋肉に比べ、より早く回復したことが分かっています。2週間の実験期間で比べるとマッサージを受けた筋肉は、そうでない筋肉に比べ2倍のスピードで回復することが報告されています。
さらにはマッサージを行うことで筋肉が早く回復するだけでなく筋肉が強くなるということまで分かっています。ハーバード大学の研究では、マッサージを受けた筋肉は筋繊維の断 面積が大きくなったことが分かっています。これはマッサージによって筋肉が太くなったということです。
このようにマッサージによって筋肉が早く、かつ強く回復するのは、マッサージの刺激によって筋肉から炎症物質が押し出されるためと考えられています。歩き疲れたり、筋トレをして筋肉の中に疲労物質が溜まるとそこで炎症が起きます。このような炎症をマッサージによって物理的に押し流すことによって筋肉が効率的に回復してくれるのです。
さらにマッサージの効果は、このような疲労回復効果のみならず他にも様々なものがあります。その素晴らしい効能には、例えば関節の可動域がアップして怪我をしにくくなる効果、オキシトシンが分泌されリラックスできる効果、血流がアップして全身が若返る効果があります。
ちなみに年を取って関節の可動域が狭くなってしまうのは、関節そのものが硬くなる他にリンパの流れが滞って圧力がかかってしまうという理由もあります。ある実験では、マッサージによってリンパの流れを良くすることで組織にかかる圧力が低くなることが分かっています。
さらにマッサージによって分泌されるオキシトシンは、母性ホルモンとも呼ばれ、母と子の肌と肌が触れ合うことで分泌されていることが知られています。ある研究では15分間背中のマッサージを受けることで血液中のオキシトシンの量が増加することが確認されています。またマッサージは血流アップ効果があるため、分泌されたオキシトシンが全身に巡って 体中から幸福感に浸ることができます。
顔のマッサージで注意したいこと
特に顔のセルフマッサージには注意が必要です。理由は2つあります。1つは、摩擦によって肌に炎症が起こりやすいこと。もう1つは、顔には筋肉を支えるリガメント(支持靱帯)という組織があり、間違ったマッサージを続けるとこの靱帯まで緩んでしまう可能性があることです。
筋膜が緩んで血流が良くなるだけであれば、むくみが取れてすっきりした印象につながることもあります。しかし、靱帯まで緩んでしまうと、組織が下がりやすくなり、これがたるみの原因になることがあります。
同じ場所を強くこすったり、特定の箇所を押しすぎたりするのも良くありません。「撫でるようなマッサージは避ける」という認識は広まっていますが、実は「色々な場所を押す」マッサージも、靱帯への負担という観点では注意が必要です。
一方で、正しいマッサージの方法もあります。組織を引き上げながら押す、引き上げながら刺激を与えるといったやり方であれば問題ありません。同じ場所をずっと刺激したり、激しく行ったりすることは避けましょう。
また、筋膜リリースをするだけで「痩せる」わけではありません。アスリートなどが痛みを取る目的で行っており、その結果としてむくみが改善することはありますが、「むくみが取れること」と「痩せること」は別の現象です。だるさや足の重さ、体の痛みがあるときには有効な手技ですが、顔に関しては効果を過信せず、慎重に取り扱うことをおすすめします。
筋膜の癒着で痩せない
筋膜は「第二の骨格」と呼ばれるほど体にとって重要な組織です。この筋膜が硬くなり、癒着することで身体に様々な不調をもたらすと言われています。筋膜は皮膚と筋肉の間に存在し、筋肉が動く際の滑りを助ける潤滑作用や血管、神経、リンパ管を支えて通過させる機能などの、身体に欠かせない重要な組織です。
この筋膜は動かしすぎても、動かさなくても硬くなり、癒着状態になります。特に長時間同じ姿勢を繰り返す、歪んだ姿勢、特定の筋肉のみ使う、運動不足、ストレス、怪我などのダメージの蓄積、休息や水分不足などで身体が錆びて動きか悪くなるようなイメージがあります。
このように筋膜と筋肉が癒着することで潤滑作用がなくなり、筋肉への負荷が強くなります。筋肉が固まると周囲の血管やリンパの流れが悪くなるため代謝が下がりやすくなります。代謝が下がるとむくみの原因や痩せにくい体になってしまいます。
この筋膜を解きほぐすためには、筋膜の温度を40℃以上に上げると、筋膜組織の剛性が減少して、より弛緩することが分かっています。そのため身体の内部を直接温めることができる高周波の活用が効果的です。高周波を当てて、筋組織周辺の温度を上げ、筋膜リリースをすることで筋膜をほぐすことで、手技だけでは痛みを感じやすい人や、すぐに症状を和らげたい人にもお勧めできます。
筋膜リリースは、筋膜のよじれやねじれを解消して、正しい筋と筋膜の伸長性と筋膜の動きの回復を促すことができます。筋肉の緊張や自律神経の乱れにより血管が圧迫されて血流が悪くなり、老廃物が蓄積してしまいます。
そうなると必要な酸素や栄養素が行き届かず、疲労物質が筋肉に蓄積され、これによりコリや痛みが発生します。さらに老廃物が溜まるだけでなく、発痛物質がたまりやすくなるため、痛みの悪循環を断ち切るためにも血流を促進し適度な運動とマッサージを取り入れて血行を促すことが大切です。
当院導入のインディバファシア(ASTMツール)は「温熱作用」と「電流作用」を同時に加えながら筋膜リリースができ、関節可動域の改善、機能向上、姿勢改善に効果的な施術です。
インディバファシアのツール
インディバ︎ファシアは、高周波治療とIASTMツールの2つを組み合わせたもので、温めながら、ツールによる刺激作用(圧迫と摩擦)を加えることで、ダブルの熱で張り付きを解消します。

例えば、インディバファシアのクジラツールを使って、大胸筋と小胸筋の間にツールを差し込みと、隣り合う筋肉の動きを改善するのに役立ち、以下のような改善効果が見込めます。
- 肩まわりの不調
- 胸郭出口症候群
- 巻き肩の姿勢改善
さらにインディバファシアのキノコツールの「先端部」で肩甲骨内側にグッと潜り込むことができます。骨際の施術、アキレス腱、膝蓋靱帯といった細かな部分の施術が可能になり、またトリガーポイント治療が可能になります。
さらに、お顔周辺にもオススメです。表情筋も偏った使い方をしていると、顔凝り、歪みなどの引き金となることもあります。
先端部だけでなくキノコの傘の部分で施術したり、エクササイズとインディバファシアの組み合わせもオススメです。エクササイズ(動き)のなかで引っかかりを改善することができます。
インディバの温熱と刺激作用
ファシアの癒着により凝縮化した異常なヒアルロン酸分子は「熱」に弱く、「熱」を加えることによって正常化するという性質があります。

このようにインディバによる高周波温熱治療とマッサージャー等による刺激作用(圧迫と摩擦)を加えることでファシアの張り付きを解消することができます。

インディバファシアで痛みの改善
筋膜 (ファシア)には固有受容器と呼ばれる関節や筋肉の圧縮や牽引、伸張など、位置や動きを司るアンテナが多く存在しており、ファシアの癒着が痛みを引き起こすため、それを刺激することで体の感覚を向上させることが可能です。
インディバファシアから伝わる特有の感覚があり、この特殊なツールは人の手に伝わる感覚を増幅する作用があります。筋肉や結合組織の線維癒着や可動制限など問題のある部位にさしかかるとツールから特有の感覚が手に伝わり、これにより正確な治療部位の選択と施術の両方がこのツールで可能になります。つまり問題部位の探知機能と改善機能が備わったツールで機能改善を図ることが可能です。
インディバファシアで座り過ぎケア
腰部・骨盤の後傾など悪くなった組織は 不揃いになります。ファシア器具刺激による微細損傷は、その不揃いな組織を分解して再吸収を促してくれます。また分解された 組織は再び作り直され 再建築してくれます。このように治癒活動の反応を促進し、また温熱作用はヒアルロン酸などを流動的にさせるため組織間が潤い、ストレスが軽減して楽に動けるようになります。
インディバファシアで腰痛ケア
腰痛の中にはファシアが原因になるものがあります。その特徴が広範囲にじわっとした痛みがある場合です。前屈や後屈、横にずらす、腰を回すなどの動き時に痛みを感じる場合、ファシアに原因がある可能性が高いです。ただしぎっくり腰や椎間板ヘルニアなどの急性期の症状にはあまり効果はありません。
腰痛の場合にケアすべきファシアは大きく分けて2つあります。1つ目が腰の筋肉と脂肪の間にあるファシア(表層部)、2つ目が腰の筋肉と筋肉の間にあるファシア(深部)です。
表層部のファシアの場合、腰の動きでどの方向に痛みを出るか確認してケアを行います。ケア方法は痛みを追いかけるように施術して、腰が軽く動くことを確認していきます。この方法で痛みが無くならない場合には、深部のファシアケアを行います。
腰痛の原因として、背骨の横にある腸肋筋と腰方形筋に挟まれたところにあるファシアの滑りが悪いことが挙げられます。ここをインディバマッサージャーで押し込みながら刺激します。

図:NHKあさイチ「体メンテの新常識“ファシア”第2弾」より
腸腰筋の衰えサイン
朝起きると片方の膝が曲がり、脚が「4の字」の形になっている。多くの人がただの癖だと見過ごしているこの寝相ですが、実は体の奥にある腸腰筋(ちょうようきんという筋肉が衰えているサインだと言われています。
長時間のデスクワークやスマートフォンを見る姿勢が続くと、腸腰筋は縮んだまま固まりやすくなります。すると仰向けで寝たときに無意識に腰が反ってしまい、その緊張を逃がそうとして体は自然に片脚を横に流す「4の字」の姿勢を取るようになります。これが毎晩繰り返されることで、いつの間にか習慣化してしまうのです。
腸腰筋が硬くなると骨盤が前へ引っ張られ、常に腰が反って骨盤が傾いた状態、いわゆる骨盤前傾が定着します。この状態では仰向けで寝ること自体が苦しく感じられるため、脚を横に逃がした4の字の姿勢のほうが楽に感じられるようになります。しかしこの「楽な姿勢」こそが、体のバランスをさらに崩していく落とし穴になってしまいます。
骨盤の左右差が徐々に大きくなり、それが慢性化すると片側の腰や股関節に負担が蓄積していきます。最初は軽い違和感程度でも、放置すれば将来的に腰痛や膝の痛み、股関節のトラブル、転倒リスクの増加といった、健康寿命に直結する問題へと発展していくおそれがあります。
見た目の老化を招く腸腰筋の衰え
腸腰筋は骨盤の奥深くにあるインナーマッスルのため、外から直接見たり触ったりすることはできません。しかしその衰えは、姿勢の崩れを通じて見た目にはっきりと表れてきます。腸腰筋が縮んで骨盤前傾が続くと、内臓が前方へ押し出されやすくなり、体脂肪が少なくてもお腹がぽっこりと出て見えるようになります。これは体脂肪の問題ではなく姿勢の問題であるため、どれだけダイエットを頑張っても改善しにくいのが厄介な点です。
さらに骨盤前傾が強まると、本来お尻を支えるはずの大殿筋や中殿筋がうまく働かなくなり、お尻全体の筋肉が徐々に衰えて平坦で垂れ下がった形になりやすくなります。歩行時にはお尻の筋肉が十分に使われず、太ももの前側ばかりに負担が集中するため、太ももだけが発達してお尻は垂れるというアンバランスな体型になってしまいます。
この状態がさらに進行すると、肋骨が前方に開きやすくなる「リブフレア」と呼ばれる状態になり、お腹が前に出るだけでなくウエストのくびれも失われ、寸胴な体型に見えやすくなります。加えて股関節が硬くなることで血液やリンパの循環も滞りやすくなり、骨盤やお尻の周りに老廃物や余分な水分がたまってセルライトができやすくなるとも言われています。セルライトは単なる脂肪の塊ではなく脂肪と繊維が絡み合った状態のため、一度できると簡単には改善しにくい点にも注意が必要です。
骨盤底筋群との連動が崩れる
腸腰筋は単独で働く筋肉ではなく、骨盤の底で内臓を支える骨盤底筋群と連携して体幹全体を安定させています。そのため腸腰筋が弱ると骨盤底筋群全体もうまく働かなくなり、くしゃみをしたときや笑ったときなど、ちょっとした刺激でも尿が漏れやすくなるリスクが高まるとされています。
実際、65歳以上の高齢者を対象とした2024年の研究でも、加齢による筋肉量の低下であるサルコペニアと尿漏れの関係が報告されており、これは特別な病気ではなく年齢を重ねる誰にでも起こりうる現象だと考えられています。
4の字姿勢の影響で骨盤前傾が強まると膀胱の位置まで変化し、骨盤の傾きによって膀胱が圧迫されやすくなります。その結果、急にお腹に力が入った瞬間に尿のコントロールが難しくなりやすいのです。長時間座るデスクワーク中心の生活を送っている人は、腸腰筋だけでなく骨盤周辺のあらゆる筋肉が固まりやすく、骨盤底筋群の働きが低下して排尿トラブルにつながるケースが増えているとも言われています。
骨盤底筋群は横隔膜や腹筋といった呼吸に関わる筋肉とも連動し、安定した呼吸を促す働きを持っています。この連動がうまくいかなくなると呼吸が浅くなり、腹圧のコントロールが乱れて、立ち上がった瞬間や動作の切り替えの際に尿漏れが起きやすくなります。腸腰筋の衰えは単なる筋力低下にとどまらず、日常のふとした瞬間の安心感にまで影響を及ぼす、思いのほか深刻な問題だと言えるでしょう。
腸への刺激が失われ、便秘を招く
腸腰筋という名前が示すとおり、この筋肉は腸のすぐ近くを通っています。そのため腸腰筋が動くことで、腸や周囲の血管に直接的な物理的刺激が伝わり、いわば内臓をマッサージするような役割を果たしていると考えられています。歩行や階段の昇り降りといった日常動作は、この腸腰筋を使うことで腸に適度な刺激を与えているのです。逆に腸腰筋が硬くなってしまうと、周囲の血流や腸そのものの働きが低下し、便を押し出すための蠕動運動が弱まって便秘につながりやすくなります。
座りっぱなしの生活を送っていると股関節周囲がほとんど動かず、腸腰筋を含む下腹部全体が固まって腸への刺激が乏しくなります。また排便の際には腹圧を利用して便を押し出しますが、腸腰筋が硬く反り腰の状態の人は、トイレでいきんだときに腹筋や横隔膜がうまく連動せず、排便に必要な力が不足してしまいます。その結果、お腹に便がたまっていてもうまく出し切れない状態が続き、便秘が慢性化してしまうこともあります。
腸は自律神経の影響を強く受ける臓器としても知られています。4の字姿勢が癖になっている人は普段から呼吸が浅くなりやすく、交感神経が優位になりがちで、常に体が緊張した状態にあると考えられます。この状態では腸の動きが抑えられて蠕動運動が弱まり、これもまた便秘の一因になります。腸腰筋の衰えは姿勢だけでなく、腸の働きや自律神経のバランスにまで影響を及ぼす、全身に関わる問題なのです。
疲れやすく集中力も続かなくなる
腸腰筋は歩くときに脚を前へ振り出すための重要な筋肉です。この筋肉が弱ると、歩くたびに他の筋肉を無理に動員しなければならなくなり、本来スムーズに行えるはずの動作にも余計なエネルギーが必要になります。少し歩いただけで脚が重く感じる、階段だけ異様に疲れるという人は、単なる体力の衰えではなく腸腰筋からのサインかもしれません。
腸腰筋が弱ると骨盤の位置も不安定になり、体の軸がぶれて歩き方が乱れます。すると本来使うべき深部の筋肉の代わりに体表面の筋肉ばかりを使って無理に歩くような状態になり、足腰だけでなく腰や背中、肩の筋肉まで常に緊張するようになります。立っているだけでも疲れる体になり、体力がどんどん奪われていくのです。
さらに腸腰筋が硬くなると横隔膜の動きにも悪影響が及び、呼吸が浅くなって酸素の交換効率が低下します。筋肉は十分な酸素を得られなければ本来の力を発揮できず、ちょっとした動作でも疲れやすくなります。この酸素不足は脳にも影響を及ぼし、朝からのだるさや集中力の続かなさ、午後の強い眠気となって日中のパフォーマンスを下げてしまうとも言われています。腸腰筋の状態は下半身だけの問題ではなく、体力や脳の働きにまで関わる重要な要素なのです。
靴底のすり減りが示す、膝や股関節への負担
靴底の外側だけが早くすり減っているという人は、4の字姿勢と並ぶ体からのサインかもしれません。腸腰筋が衰えて股関節のバランスが崩れると、常に片側だけ外側に開いた状態になり、歩くときに脚が外側へ流れて重心も外側へ逃げやすくなります。これは単なる歩き方の癖ではなく、体のバランスの崩れがそのまま靴の減り方に現れているものだと考えられます。
歩行時のバランスが崩れると足裏のアーチ機能も低下しやすくなり、本来クッションとして働くはずの足裏が地面からの衝撃をうまく吸収できなくなります。その衝撃は足首や膝、さらには腰へと直接伝わるようになり、膝の軟骨がすり減りやすくなって将来的な膝の痛みにつながってしまいます。腸腰筋が衰えるとその周囲のお尻の筋肉も弱くなり、歩くたびに膝が内側にぶれやすくなることも、股関節への負担を大きくする要因になります。
靴の減り方や歩き方のわずかな変化は、体の内側で起きている変化を映し出す重要なサインです。こうした日常の小さな違和感に気づくことが、将来の健康トラブルを未然に防ぐ第一歩になると言えるでしょう。
腸腰筋を若返らせる簡単なエクササイズ
腸腰筋のケアとしてまず取り入れたいのが、寝る前に行う股関節ストレッチです。股関節のストレッチによって骨盤の前後左右のバランスが改善したという研究結果も報告されており、自宅で無料でできる割には科学的な裏付けもしっかりしています。
やり方は、片足立ちになって上半身をまっすぐ保ったまま、重心をゆっくり前へ移動させ、足の付け根が心地よく伸びる感覚を意識しながら20秒間キープするというものです。呼吸を止めずに左右それぞれ3回ずつ行い、体が温まったお風呂上がりに行うとより効果的だとされています。夜に行うことで副交感神経が刺激され、寝つきや睡眠の質の向上にもつながると考えられています。
次に紹介したいのが、椅子に座ったままできるニーアップ運動です。太ももを持ち上げる動作は腸腰筋を直接刺激できる数少ない運動で、座ったまま行えるため体への負担が少なく、腰や関節にストレスがかかりにくいのが特徴です。背筋を軽く伸ばして膝を交互に持ち上げるだけのシンプルな動きで、特別な道具も必要なく、デスクワークの合間にも取り入れやすい点が魅力です。左右交互にリズムよく行うことでつま先を上げて歩く感覚が身につき、つまずきや転倒リスクの軽減にもつながると言われています。
三つ目は反り腰の改善に役立つドローインです。仰向けで膝を立てた状態から、息をしっかり吐きながらおへそを背骨に近づけるイメージでお腹を限界までへこませ、その状態を10秒間キープします。呼吸を止めずに続けながら行うのがポイントで、これを5回ほど繰り返します。腹筋というインナーマッスルが腸腰筋と連動してコルセットのように腹部を包み込み、腰椎や骨盤を安定させる役割を担っているため、この動きを丁寧に続けることで長期的な姿勢の安定につながっていきます。
東洋医学で診る「ファシア」と巡り
東洋医学では、体のこわばりや動きの制限を、「気」「血」の巡りの滞りという体質面から捉えることがあります。ファシア(筋膜)の癒着による不調も、東洋医学的には巡りの滞りの一つの現れとして捉えられることがあります。
東洋医学で親しまれてきたツボ
特定の症状の治療・改善を目的として紹介するものではありませんが、東洋医学の伝承の中で用いられてきたとされるツボを2つご紹介します
膈兪(かくゆ・肩甲骨の下角の高さで背骨から指2本分外側)と血海(けっかい・膝のお皿の内側上、指3本分上)は、東洋医学で古くから親しまれてきたツボです。


温める心地よさや体感には個人差があり、これらのツボによる特定の症状改善効果を保証するものではありません。指の腹で心地よい強さで押すのを目安にしてください。強い痛みがある場合はすぐに中止してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. ファシアケアとはどういうものですか?
A1. ファシア(筋膜)は全身の筋肉・臓器・骨を包む膜状の組織で、その癒着や硬さが体のこわばりや動きの制限に関わっているといわれています。ファシアケアは、こうした組織の状態にアプローチするケアの総称です。効果には個人差があります。
Q2. インディバはファシアにどのくらい効果がありますか?
A2. インディバは高周波の熱でファシアを温め、巡りをサポートするとされる施術です。ファシアの癒着を直接分解・治療するものではなく、巡りを意識したケアの一つとして選ばれています。効果には個人差があります。
Q3. 腰痛にファシアケアは効果がありますか?
A3. 慢性的な腰の重だるさには、ファシアの状態が関係している場合もあるといわれていますが、効果を保証するものではありません。ぎっくり腰や椎間板ヘルニアなどの急性期の症状には適さないとされており、そうした症状がある場合は自己判断せず整形外科など医療機関にご相談ください。
Q4. ファシアケアはどのくらいの頻度で受けるのがおすすめですか?
A4. 頻度の感じ方には個人差がありますが、週1〜2回のペースで継続してケアを受ける方もいらっしゃいます。回数の目安はカウンセリングでご相談ください。
Q5. インディバと美容鍼を組み合わせるとファシアにどんな変化が期待できますか?
A5. ハリニーでは、東洋医学のツボ・経絡へのアプローチを取り入れた美容鍼灸と高周波温熱機器インディバを組み合わせた「統合美容鍼灸コース」をご用意しています。全身の巡りやこわばりへのケアを目的としたコースで、特定の疾患の治療を目的とした施術ではなく、効果には個人差があります。詳しくはカウンセリングでご相談ください。
出典・参考情報
本記事で紹介したファシア・筋膜に関する情報は、一般的に知られている健康情報をもとに構成しています。痛みや不調が続く場合は、自己判断せず医療機関へのご相談をおすすめします。
【本コラムの監修】

国家資格登録番号
はり師 第173245号
きゅう師 第177978号
・経歴
大学卒業後、美容の世界に入りセラピストとして活動。豊富な美容知識と実務経験を活かし、その後10年間は大手企業内講師として美容部員・エステティシャンの育成やサロン店舗運営のサポートに従事。表面的なケアだけでは限界があると実感したことから鍼灸の道を志し、2016年にはり師・きゅう師の国家資格を取得。現在は美容業界歴20年以上のキャリアと、セラピスト・エステティシャン・美容カウンセラー・鍼灸師としての知見を融合し、肌・こころ・体を整えるトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。
















