
ファシア(fascia)は、臓器、骨、筋肉、脂肪、血管、神経などのあらゆる組織を覆う膜の総称です。皮膚と脂肪との間、脂肪と筋肉の間、また筋肉の中など、あらゆる部位、深さ(皮下、骨周辺)、層に存在する線維性の網目状の組織構造で、その主な主成分は水分とコラーゲン、エラスチン(タンパク質)などです。
ファシアは、全身の至るところに張り巡らされており、お互いに引っ張り合い、張力を保ち、体の組織を支えているため「第二の骨格」とも呼ばれています。ちなみに筋膜リリースの「筋膜」もファシアの一つです。これらファシアの動きが滑らかなら筋肉の動きがスムーズになりこりや痛みが軽減されます。しかしそのバランスが崩れると、痛みだけでなく、骨格や姿勢の崩れに繋がります。
筋膜とファシア
ファシアの一つである「筋膜」は、筋肉を覆う膜のことです。医学的には骨格筋を包むコラーゲン線維の膜(結合組織)のことで、筋外膜、筋周膜、筋内膜があります。また皮下組織にある浅筋膜、全身の筋肉を包み込む深筋膜が存在します。
筋膜の役割は、筋肉を保護し、筋収縮時に摩擦が起きないように滑りを助け、膜が組織と組織の間に仕切りをつくり、身体の姿勢を保つことです。筋膜とファシアの違いは、筋膜は、骨格筋を包むものであり、ファシアは骨や内臓など筋肉以外も覆うものです。
筋膜には感覚神経が分布しており、外力や疲労物質(乳酸等)によって興奮し、中枢に伝わることで「痛み」を感じます。筋膜はコラーゲンやヒアルロン酸からできており(85%は水分)、長時間の同じ姿勢や脱水などの内外のストレス(刺激など)が加わり、変形すると戻りにくく、萎縮・癒着します。
筋膜が癒着すると、筋肉がスムーズに動けなくなるため、血行不良になり、全身に栄養が届かなくなる、老廃物が流れないなど、血管や神経、リンパ系が影響を受けて、肩こり、頭痛、倦怠感、むくみ、たるみなどに繋がります。
その代表症状がMPS(筋膜性疼痛症候群)です。内外のストレスが原因で筋膜に負荷がかかり、筋肉痛が悪化すると、異常な筋膜が短期間で回復できないため、特定の部位に痛み、痺れが生じます。そこで、筋膜リリースすることで、筋膜の萎縮・癒着を引き剥がすことで正常な状態に戻します。つまり筋肉の柔軟性を引き出し、関節の可動域を拡大することが筋膜リリースです。
ファシアで美姿勢
スマホ、パソコン画面を見るために、頭を突き出すと首の付け根がこり固まります。また肩が前に出ている「巻き込み肩」も胸や肩がこりを助長し、猫背の原因になります。また足を組んだり、骨盤が歪むような座り方、腰を丸めて座るなども猫背の原因になります。猫背は「上位交差症候群」と言い、肩や首が前に突き出て、背中が丸まった状態のことです。
このように猫背になる原因は、①胸・首・肩周辺の筋肉のこり、②前頸(くび)と背部の筋肉が弱いことが挙げられます。そのため背部を鍛えることで猫背を改善することは可能ですが、それだけでは十分とは言えません。
なぜなら美しい姿勢は、上半身の胸、肩、腹筋、背筋、インナーマッスル(骨盤低筋群、腸骨筋、大腰筋など)などのあらゆる筋肉のバランスによって保たれているからです。よって背筋を鍛えつつ、首や肩、胸周辺の固まった筋肉のこりをほぐしていく必要があります。筋肉の柔軟性が失われた状態から、正しい姿勢を維持するために血行良くして、冷えや痛みなどの二次的な疾患を防いでいく必要があるのです。

図:インディバアクティブジャパン/indibaactivjapaninstagram
一方で、ファシアを上手く動かすことで姿勢の改善が可能です。例えば肩周りのファシア、肩甲骨を大きく後ろへ動かすと菱形筋のファシアが動きます。すると背骨(椎骨)にも刺激が伝わり背中の筋肉が柔らかくなり、背骨が本来あるべき位置に自然と動きます。その他にも、お尻、肩、肋骨のファシアケアによって、背中の反りを改善することもできます。
筋膜の癒着で痩せない
筋膜は「第二の骨格」と呼ばれるほど体にとって重要な組織です。この筋膜が硬くなり、癒着することで身体に様々な不調をもたらすと言われています。筋膜は皮膚と筋肉の間に存在し、筋肉が動く際の滑りを助ける潤滑作用や血管、神経、リンパ管を支えて通過させる機能などの、身体に欠かせない重要な組織です。
この筋膜は動かしすぎても、動かさなくても硬くなり、癒着状態になります。特に長時間同じ姿勢を繰り返す、歪んだ姿勢、特定の筋肉のみ使う、運動不足、ストレス、怪我などのダメージの蓄積、休息や水分不足などで身体が錆びて動きか悪くなるようなイメージがあります。
このように筋膜と筋肉が癒着することで潤滑作用がなくなり、筋肉への負荷が強くなります。筋肉が固まると周囲の血管やリンパの流れが悪くなるため代謝が下がりやすくなります。代謝が下がるとむくみの原因や痩せにくい体になってしまいます。
この筋膜を解きほぐすためには、筋膜の温度を40℃以上に上げると、筋膜組織の剛性が減少して、より弛緩することが分かっています。そのため身体の内部を直接温めることができる高周波の活用が効果的です。高周波を当てて、筋組織周辺の温度を上げ、筋膜リリースをすることで筋膜をほぐすことで、手技だけでは痛みを感じやすい人や、すぐに症状を和らげたい人にもお勧めできます。
筋膜リリースは、筋膜のよじれやねじれを解消して、正しい筋と筋膜の伸長性と筋膜の動きの回復を促すことができます。筋肉の緊張や自律神経の乱れにより血管が圧迫されて血流が悪くなり、老廃物が蓄積してしまいます。そうなると必要な酸素や栄養素が行き届かず、疲労物質が筋肉に蓄積され、これによりコリや痛みが発生します。さらに老廃物が溜まるだけでなく、発痛物質がたまりやすくなるため、痛みの悪循環を断ち切るためにも血流を促進し適度な運動とマッサージを取り入れて血行を促すことが大切です。
当院導入のインディバファシア(ASTMツール)は「温熱作用」と「電流作用」を同時に加えながら筋膜リリースができ、関節可動域の改善、機能向上、姿勢改善に効果的な施術です。
インディバの温熱と刺激作用
ファシアの癒着により凝縮化した異常なヒアルロン酸分子は「熱」に弱く、「熱」を加えることによって正常化するという性質があります。

このようにインディバによる高周波温熱治療とマッサージャー等による刺激作用(圧迫と摩擦)を加えることでファシアの張り付きを解消することができます。

ファシアで腰痛ケア
腰痛の中にはファシアが原因になるものがあります。その特徴が広範囲にじわっとした痛みがある場合です。前屈や後屈、横にずらす、腰を回すなどの動き時に痛みを感じる場合、ファシアに原因がある可能性が高いです。ただしぎっくり腰や椎間板ヘルニアなどの急性期の症状にはあまり効果はありません。
腰痛の場合にケアすべきファシアは大きく分けて2つあります。1つ目が腰の筋肉と脂肪の間にあるファシア(表層部)、2つ目が腰の筋肉と筋肉の間にあるファシア(深部)です。
表層部のファシアの場合、腰の動きでどの方向に痛みを出るか確認してケアを行います。ケア方法は痛みを追いかけるように施術して、腰が軽く動くことを確認していきます。この方法で痛みが無くならない場合には、深部のファシアケアを行います。
腰痛の原因として、背骨の横にある腸肋筋と腰方形筋に挟まれたところにあるファシアの滑りが悪いことが挙げられます。ここをインディバマッサージャーで押し込みながら刺激します。

図:NHKあさイチ「体メンテの新常識“ファシア”第2弾」より
【本コラムの監修】

HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子 ・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。