脂肪肝を減らす食材

    脂肪肝を減らす食材

    肝臓は複雑な機能を持ち、生きる上で大切な臓器ですが、機能が低下しても自覚できづらい側面があります。肝臓の様々な病気は末期状態で機能がかなり低下してからようやく症状が現れるため「沈黙の臓器」と言われる所以です。例えば脂肪肝は、幹細胞内に脂肪が蓄積してしまう病気ですが、肝臓全体の60%以上が脂肪化している状態でも症状が全く出ません。

    脂肪肝は、病名に脂肪が入っていることから、原因は食事での肉の脂肪とか、油の摂りすぎが原因であると思っている人が多くいます。だから食事で取る脂肪や油を控えれば、脂肪肝の予防や改善につながると多くの人が思いがちです。

    しかし、食べた肉の脂身や油に含まれる脂肪のうち、肝臓まで到達する脂肪は全脂肪の15%ぐらいにしか過ぎません。それよりも大きな脂肪肝の原因が糖質です。肝臓に脂肪が付くのは、糖質の食べ過ぎです。

    糖質の元となる白米、パン、麺類などの炭水化物が脂肪肝の原因になります。つまり糖質を食べると肝臓に脂肪を送り込むことになりますが、肝臓側でその処理が追いつかず肝臓に脂肪が貯まってしまうのです。健康的なダイエットで肝臓に入ってくる脂肪を減らし、適度な運動で肝臓から出て行く脂肪を増やすことが大切です。

    糖質の摂りすぎは、肝臓だけでなく様々な体の不調を引き起こし、その中で最も糖質の影響を強く受けるのは肝臓だと主張する研究者もいます。因みに成人が1日に必要とする糖質は170g、茶碗1杯のご飯白米の糖質が50g程度のため、普通に1日3食を続けているとすぐに超えてしまいます。

    2023年現在でも、脂肪肝や脂肪肝炎の改善に特化した薬剤の研究は進んでいるものの、劇的な改善効果を持つ薬はできていません。つまり食事療法なしに薬を飲むだけで脂肪肝を改善させることは難しくなります。

    肝臓ケアの必要性

    人間は、食べ物が少ない飢餓の時代を生き抜いていくために、余分な栄養分をいざという時のために脂肪という形で蓄えていました。しかし飽食の時代を迎え、過剰になったことが原因で炎症が起き、例えば40代で炎症が起こると50代で病気になってしまいます。血管が弱っていくのも、がんができるのも、その多くの原因は炎症であると考えられています。

    特に内臓脂肪は、主に腸、肝臓、腎臓、膵臓などの臓器を取り囲んで存在しています。また内臓の中でも肝臓に脂肪が沈着した状態を「脂肪肝」と言います。内臓脂肪は見た目では目立たないため、隠れ肥満などと呼ばれます。この内臓脂肪の量が増えると健康に対するリスクが高まることが知られています。例えば内蔵脂肪は、慢性的な炎症やメタボリックシンドローム、心血管疾患、2型糖尿病、高血圧などの様々な疾患と関連していることが示されています。

    内臓脂肪は、脂肪細胞から遊離した脂肪酸やサイトカインといった物質を分泌し、体内の代謝や炎症反応に影響を与えてしまうと考えられています。そして肝臓に関して言うと、日本では成人男性の3人に1人、女性の5人に1人が脂肪肝になっています。脂肪肝の予備軍は2人に1人と言われており、もはや国民病と言っても良いでしょう。この脂肪肝を放置しておくと、さらに重篤な状態に移行していきます。

    もちろん脂肪肝になっても、実はその脂肪自体に毒性があるわけではありません。問題なのは脂肪肝によって炎症が引き起こされるという点です。溜まり過ぎた脂肪が炎症を起こして血管の壁にへばりつき、悪さをすることによって様々な病気を引き起こします。

    そして、肝臓についた脂肪もまた炎症が起きることで問題を起こします。溜め込んだ脂肪肝に炎症が起きると肝臓だけでなく、全身の健康が損なわれます。

    もちろん、脂肪肝になったとしても炎症を起こさず何の問題もない人もいますが、脂肪肝が炎症を引き起こすタイプなのかどうかを知る方法は今のところ存在しておりません。もう一つ意外な点があり、それは脂肪の量ではないということです。脂肪がたくさん溜まっていても心配しなくて良い人と、そんなに溜まっていないにも関わらず炎症を起こして脂肪肝炎に進行してしまう人がいます。

    脂肪肝を減らす「ワカメ」

    お味噌汁に入れるワカメが肝臓に良いのをご存知でしょうか。その根拠となるのは、ワカメ粉末を加えた食事をマウスに食べさせ、老齢期まで飼育して、その後に肝臓の状態を調べた研究です。結果は圧倒的にワカメ粉末を食べていたマウスの肝臓脂肪の蓄積量が少ないことが分かっています。さらに遺伝子検査では、肝臓の炎症を示す数値も少ないことが分かっています。また生活習慣病の発症や進行を抑制する可能性が示唆されています。

    ワカメの成分で有名なのがフコイダンです。フコイダンは発酵性食物繊維の一種で、免疫力の正常化、調整脂肪の抑制、血液サラサラ効果などがあります。ただし食べ過ぎには注意してください。海藻の食べ過ぎは、要素の過剰摂取や下痢の原因になります。

    脂肪肝を減らす「コーヒー」

    そして、コーヒーの効果も肝脂肪を減らすことが明らかになっています。ある研究では、コーヒーを飲むことと肝硬変の関係性を調査したところ、1日4杯以上を飲む人は、肝硬変になりにくいとされています。

    日本で行われた有名な研究があります。国立がん研究センターで行われた研究では、40歳から69歳の9万人を10年間調査したところ、毎日5杯以上コーヒーを飲んでいる人は肝臓がんの発症リスクが76%も減少しました。コーヒーに含まれているどの成分が肝臓に良い影響を与えているかははっきりしていませんが、恐らく抗酸化物質が影響しているのではないかと考えられています。一方で125000人を対象に行われた22年間の追跡調査で、毎日4杯以上のコーヒーを飲む人は全く飲まない人に比べて、アルコール性の肝硬変の発症率が1/5になったと報告されています。ただしカフェインの許容量には個人差があるため、デカフェのコーヒーを活用しつつ、ぜひ取り入れてみてください。

    またコーヒーは、肝硬変のリスクを減らすことができると研究で示されています。肝硬変は肝臓の細胞が破壊され瘢痕組織に置き換わる病気で肝臓の機能が低下します。コーヒーが肝硬変のリスクを軽減してくれるメカニズムについてはまだ完全には解明されていませんが、コーヒーが持っている強力な抗酸化作用や炎症抑制作用が関与していると考えられています。

    コーヒーには、ポリフェノールやクロロゲン酸などの抗酸化成分が大量に含まれていて、これらの抗酸化物質は肝臓の細胞を酸化ストレスから保護し、ダメージを防ぎます。またコーヒーに含まれる成分が肝臓における炎症反応を抑制するということが研究で示されています。さらにいくつかの研究ではコーヒーの摂取が肝臓がんのリスクを軽減することが示されています。コーヒーの持つ強力な抗酸化作用 や炎症を抑制作用が肝臓がんの発生を防いでくれるのではないかと考えられています。

    脂肪肝を減らす「アボカド」

    森の王様と言われるアボカドには、肝臓にとって健康に素晴らしい効果があります。2015年、アルコールを飲まないのに脂肪肝の問題を抱える人に対して、アボカドの効果に関する調査が行われました。この調査ではバランスのとれた食事とともに、適度にアボカドも摂取したところ肝臓の機能を示す各数値が改善されました。

    その理由として、アボガドには肝臓で働くと言われる抗酸化物質グルタチオンが含まれているからです。グルタチオンは肝臓の中で肝臓を傷つける活性酸素を除去して肝機能の低下を防止する働きがあります。その他にも肝臓機能の改善、コレステロール値の改善、活性酸素の除去などにも効果があり、また美容面では肌の保水機能を高めることも分かっています。食物繊維も豊富に含まれ、栄養価の高い食材であるため普段から食事に採り入れましょう。

    脂肪肝を減らす「にんにく」

    ニンニクは脂質や糖質の消化吸収を調節する働きがあります。そもそも肝臓にダメージを与えるものは過剰な糖質や脂質です。だからこそ消化吸収をコントロールすることはとても大切な働きです。さらにアリシンが含まれ、肝臓に蓄積された毒素を体外に排出してくれるという働きを持っています。厳密にはニンニクに含まれるアリインと呼ばれるファイトケミカルがアリイナーゼという酵素によってアリシンに変化します。つまりニンニクに含まれているアリインを効率よくアリシンに変化させ、さらに体の中で効率よく働く栄養素に変える必要があります。そのため火を通す前に必ずみじん切りにして、潰して5分間置くようにしてください。

    このアリシンという物質には、抗酸化や抗炎症作用があり、肝臓の炎症や酸化ストレスを軽減してくれるということが報告されています。これによって肝臓の機能が改善され、脂肪蓄積が抑制される可能性があります。またニンニクには脂肪代謝を促進する効果があるということも示唆されています。脂肪代謝が向上することで肝臓の脂肪蓄積が減少し、肝機能が改善される効果が期待できます。さらにニンニクは、コレステロールを低下させる効果もあります。コレステロール値が高いと肝臓の脂肪蓄積が促進されてしまうため、コレステロールを抑えることによって、肝臓の脂肪蓄積が減少します。

    一方でニンニクは糖尿病を予防するのにも効果的であるということが分かっています。ニンニクは血糖値をコントロールし、インスリン感受性を改善する効果があるため、糖尿病の予防や管理に役立つとされています。

    2020年サドウィ医科大学は、ニンニクが肝臓のダメージを大幅に軽減すると発表しました。これは1万5514件の研究の中から、特に質が高いとされる6件の研究を再分析するものです。結果、ニンニクを食べるとAST(肝臓ダメージを示す数値)が下がることが明らかになっています。

    当然のことながら、ニンニクの効果は肝臓だけに止まらず、抗がん作用も報告されています。硫黄化合物やフラボノイドなどの抗がん成分が含まれており、がん細胞の増殖を抑えてくれる効果が報告されています。特に胃がんや大腸がんのリスクを減らす効果が研究によって示されています。

    脂肪肝を減らす「ブロッコリー」

    野菜の王様と言われるブロッコリーを代表とするアブラナ科の野菜には、他にもキャベツ、カニフラワー、ケール、チンゲン菜、大根、かぶなどがあり、これらは葉酸、ビタミンC,E,K、食物繊維が豊富で抗酸化作用の強い物質も沢山含まれています。アブラナ科の野菜は台所のドクターと言われるほど栄養価が高い食材です。

    アブラナ科の野菜にはファイトケミカルが含まれており、その一種として注目されているのがイソチオシアネートです。辛味成分でもあり、抗がん作用、抗炎症作用、抗酸化作用があると言われています。さらに肝臓の中で解毒酵素を増やすことが明らかになっています。

    脂肪肝を減らす「キャベツ」

    キャベツは低カロリーであるにも関わらず、ビタミン類、ミネラル類、葉酸が豊富に含まれています。さらに食物繊維が豊富で、ポリフェノールや硫黄化合物などの抗酸化物質も含まれています。またキャベツには、豊富な食物繊維が含まれていて消化器系の働きを助けることで血糖値の上昇を緩やかにしインスリン抵抗性の改善役立ちます。

    インスリン抵抗性が改善されることで、肝臓への脂肪の蓄積が抑制されます。さらにキャベツにはビタミンCやポリフェノールなどの抗酸化物質も含まれており、肝臓での酸化ストレスを軽減し、炎症を抑制します。そして炎症が抑制されることで、脂肪肝の進行が遅くなる可能性も指摘されています。

    一方で、キャベツに含まれているグルコシノレートという成分は、解毒酵素の働きを促進し、肝臓の解毒作用をサポートすると言われています。さらにイソチオシラネートという抗酸化物質が含まれており、肝臓の解毒酵素の働きを活性化し、肝臓の機能をサポートしてくれる役割があります。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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