EMSだけでダイエット!?

    ems

    お客様から多く頂くのが「EMSで痩せることができるの?」というご質問です。多くのEMSが皮膚の上からパットを貼り、お腹周りや腕や太ももの筋肉を強制的に動かすことを目的にしています。結論から言うと筋肉は多少付くかもしれませんが、お腹の贅肉がごっそり落ちることはないでしょう。

    EMSの仕組み

    医学的・科学的根拠として挙げられるのが、EMSによって僅かながら筋肉が大きくなり、それによっての筋肉量が増えたことで基礎代謝が増えます。その結果、痩せやすくなり、お腹の脂肪も落ちると言うのが理屈です。

    EMSは、日本語では電気的筋肉刺激です。皮膚にパットを張って微弱な電流を流すと、そこで筋肉がピクピクと収縮します。本来の筋肉は、例えば重いものを持とうとか腕を伸ばそうとした時に、脳から電気刺激が脊髄を通って、末梢神経から筋肉に入って筋肉が収縮して動きます。

    しかしEMSは、直接微弱な電流を流すことで筋肉を収縮させることができます。例えば医療であれば顔面神経麻痺のリハビリや病気などで筋肉を動かせない場合など廃用性萎縮の予防のため使われてきました。他にも脳梗塞などで体が動かなくなった状態になった時に、リハビリで急に動かすのではなくて、まずはEMSで筋肉を収縮させてスムーズに動くようにさせることや、宇宙空間で筋肉を維持させるためにEMSを使うなどの報告もあります。

    このようにEMSが、全く医学的根拠がないわけではないですが、多くの人が運動しなくても電気で筋肉を収縮させるだけでムキムキになったり、あるいは体脂肪を落としたりすることを期待しています。しかしあくまで廃用性萎縮の予防や脳梗塞のリハビリで使う効果はありますが、健康な人がEMSを使うことによって、お腹周りの脂肪が落ちたり、腹筋が鍛えられるという大きな効果はないと思います。当たり前ですが、筋肉を付けたければ筋トレの方が効率的ですし、体脂肪を落とすのであれば、ランニングやウォーキング、エアロビクスなどの有酸素運動をすることの方が遥かに効果はあると思います。

    EMSで痩せる

    ダイエットのため、EMSでインナーマッスルを鍛えれば代謝が上がると思い、身体を動かすトレーニングではなく、EMSのみでのダイエットを期待さているかも知れません。それが難しいことは上記で述べた通りですが、一方でEMSを使う目的があります。

    EMSの周波数には筋肉を強く収縮させる特性があり、これによって筋肉の収縮と弛緩を繰り返すことで、筋肉のポンプ作用による血流の促進を図ることができます。またこの筋肉の収縮と弛緩の動きはリンパ管にも作用して、リンパ管内のリンパ液が一定方向に押し出され、結果としてリンパ液の流れが良くなります。また筋肉自体をほぐす作用も期待できます。さらに筋萎縮の防止を期待して行うこともありますし、力を入れるべき筋肉に電気刺激を与えながら患者様に動かしてもらうことで、促通を図ることもあります。

    一方で、EMSによって“代謝”が上がるという研究論文もありますが、多くの論文が基礎代謝ではなく、電気で強制的に動かしている場合の代謝増について述べられています。それらを考えれば歩くだけでもよっぽど効率が良いという結果になるでしょう。

    また、多くのEMS機械が、低周波、高周波、複合波など刺激周波数の違いによる効果をアピールしていますが、筋肉を収縮させるために利用する周波数に大した違いはないと思います。例えば低周波は皮膚表面(3mm)までしか届かないなど記載されていますが、それなら太っている方は皮下脂肪によって筋肉に低周波が届かないことになりますが、実際はそんなことはあり得ません。

    家電の低周波治療器であっても、筋肉に電気刺激を与えて収縮させることができます。故に高周波だからインナーマッスを鍛えられるというのも?でしょう。ただし高周波は、皮膚への刺激感が少ないためメリットがあります。しかし低周波を用いたEMSでも、徐々に出力を上げていけば筋肉に強い収縮感を得られるようになります。何れにせよ、EMSによって筋肉量が増えた結果、基礎代謝が増加するというのは誤解でしょう。

    EMSだけ、つまり寝転んで電気を流すだけで筋肉が鍛えられるとか、基礎代謝量が劇的に改善するなどの都合の良い話はありません。やはり運動によって体を動かし、食事の管理をしっかりすることがダイエットの基本でしょう。

    EMS・美容鍼パルスで表情筋を刺激する

    EMSは、顔面神経麻痺のリハビリなどにも用いられているように、表情筋を刺激することが可能です。EMSによる刺激は、筋肉を繰り返し収縮させることになり、筋肉内に血液を溜められる量(血液貯留量)を増やすことで、血流が良くなることでお肌のハリのアップに繋がります。また血液貯留量が良くなるとで、お顔の血色感が良くなり、顔色が明るくなることも期待できます。

    ただし、EMSは顔の筋肉を強制的に刺激する為、長時間使用すると筋肉が必要以上に消耗したり、表面の刺激も強くなることでメラニンが増えたり、摩擦による肌荒れなど逆効果になることもあるため注意しましょう。

    一方で、美容鍼に通電(パルス)することによって筋肉を引き締めて、血管の収縮を促すことが可能です。血管が規則正しく収縮することで血流が改善され、老廃物排出の促進が期待できます。またEMSと同じく筋肉の過緊張を緩めたり、筋肉を引き締める効果が期待できます。因みに一般的には美容鍼のみよりも、早く効果が出やすいと言われています。

    このように電気を流す美容鍼パルスは表情筋にアプローチすることができ、表情筋に対して電気を流して刺激を与えることが出来ます。しかしながら過度な電気刺激(強刺激と長時間)は、シワの形成を助長する恐れがあります。もちろん美容鍼パルスは、歴史がある安全性が高い施術方法であり、低周波には害のなく、副作用のリスクは一般的な美容鍼と同じで内出血する可能性があるくらいでしょう。また通常は、顔面神経麻痺の患者様には麻痺を悪化させる可能性があるので電気刺激は行いません。

    組み合わせを考えることが大事

    当院ではEMSは導入しておりませんが、多くの院やエステサロンなどでは単体で利用するのではなく他の機械(手技や運動なども)と組み合わせで導入しています。期待すべき効果は、筋肉のポンプ作用による血流の促進とリンパの流れを良くすることです。

    血流やリンパの流れが悪くなる理由として、緊張(収縮)した筋肉が血管を圧迫することが挙げられます。その結果、血行不良によって「首肩こり」が引き起こされます。また筋ポンプ作用がしっかりと働かなければ静脈還流が滞り、末梢などに溜まった水分が血管壁外に滲みだして細胞周囲に滞留し「むくみ」の原因となります。特に女性は男性に比べると筋肉量が少ないため筋ポンプ作用が弱くなるため、下肢において静脈還流が阻害されて末梢循環不良により体温が上がりにくくなり「冷え」に繋がります。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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