クエン酸は、酢やレモン、梅干しといった酸っぱい系の食べ物に含まれている酸味成分の一種です。クエン酸は人間の体内で大事な役割を果たしており、そして摂取した食べ物をエネルギーに変えるために欠かせない成分です。
クエン酸は、アンチエイジングや慢性疾患に対する予防効果が優れていて、最近ではがんに対しての予防効果まであることが分かっています。このクエン酸は、私たちのエネルギーを作り出すのに必要なミトコンドリアで合成され、ATPを作る上でも重要な働きをしています。
クエン酸を合成する酵素は、30代まででピークの8 割程度まで合成量は低下し、40代になると半分程度まで減少してしまいます。その後も減少し続けるため、加齢と共に外から定期的に補給した方がエネルギーを作りやすくしたり、疲労を回復しやすくしてくれます。
クエン酸に期待できる効果
クエン酸と摂ると疲労回復、胃腸の働きを整える、便秘や下痢を和らげる、活性酸素を取り除く、マグネシウムやカルシウム、鉄の吸収を助ける、食欲を増進させる、活性酸素を取り除く抗酸化作用、さらにエネルギー生成の効果、ダイエット効果、尿量を増やすことでむくみの改善、殺菌や臭いを抑える効果も期待できると言われています。この他にも血糖値抑制、抗高血圧、ストレス低下、胃のムカつき改善、緊張型頭痛の改善、肩こりの改善などが挙げられます。
エネルギーを作り出す効果
この中で特に注目したいのがエネルギーを作り出す効果です。人間が生きていくためには24時間365日、常に代謝を行って生命維持に必要なエネルギーを生成し続けなければいけません。例えば呼吸をして酸素を摂り込むことでもエネルギーが作られていますが、その代謝回路には「解糖系」「クエン酸回路系」「電子伝達系」の3種類があります。これらの代謝回路の一角を担っているのがクエン酸が関係するクエン酸回路系です。クエン酸回路系は人間に限らず、基本的に酸素呼吸を行うすべての動物に存在しています。
このような生命を維持するのに欠かせないクエン酸は、私たちの細胞のミトコンドリア内で活動します。ミトコンドリアは私たちが生きていくために必要なエネルギーを産生する細胞小器官です。生き物が生きていくために必要なエネルギーの95%近くを生成しているとも言われ、ミトコンドリア内にあるクエン酸回路では呼吸を通じて糖を代謝してエネルギーへと変化させるだけではなく、カルシウムやマグネシウムといったミネラルやビタミンを体内に吸収しやすくして疲労物質を分解する大切な役割を果たしていると言われています。
クエン酸を摂ると疲労回復効果が期待できるだけではありません。例えば急激に激しいスポーツによって筋肉を使うと徐々に乳酸が溜まって体は疲れますが、クエン酸はこの疲労物質を分解して筋肉に蓄積しないようにする効果があることも分かっています。つまり筋肉に疲れを溜めない効果とミネラル類の吸収を促進する効果の2つの効果で抜群の疲労回復効果を発揮します。
この一連の流れをキレート作用と呼び、エネルギーの代謝が促進されることで エネルギーが全身に溢れ、疲れが解消していきます。またキレート作用は、ギリシャ語でカミのハサミっていう意味があり、クエン酸がミネラルを包み込むことでマグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄分といった微量ミネラルの体内利用率を上げてくれる効果があります。マグネシウム、カルシウム、亜鉛、鉄は、免疫やミトコンドリアでATPを作ったり、細胞を元気にするのに大切な栄養素です。これらのミネラルは、疲労の元となるミトコンドリア機能の低下を防いでくれるミネラルで、吸収率が高くはないためミネラルの不足を防ぐためにクエン酸は一役買ってくれます。
さらにダイエット効果が期待できたり、利尿作用によるむくみの解消や、体全体の巡りが良くなるため免疫力アップが期待できたり、ミネラルの吸収が促進されることで骨が丈夫になったり、メンタルが悪くなるのを防ぐ効果が期待できるとも言われています。
疲れにくい体にする
体外から摂取したクエン酸は、ミトコンドリアで作られるものと少し違う働きもしてくれます。クエン酸の疲労回復に効果は、エネルギーを作る時に使われる栄養が関係しており、ATPを生み出す時に消費されるのが炭水化物や糖分から作られるグルコースです。通常はグルコースからピルビン酸が作られ、ミトコンドリア内で消費され、ATPを生み出してくれます。しかしグルコースの分解が過剰になってしまうとミトコンドリアでピルビン酸が処理しきれなくなります。すると溜まったピルビン酸の一部が乳酸に変化し、この乳酸が細胞内に溜まると疲労感を感じやすくなります。乳酸はエネルギー源として使われていくのですが、溜まりすぎてしまうと疲労を感じやすくなってしまいます。
特に代謝が低下していたりすると乳酸が溜まりやすく、疲れも感じやすくなってしまいます。そこでクエン酸を外から摂取することで、グルコースの利用が阻害される上に、乳酸を作るのも阻害し、代謝の一部が脂肪酸の代謝に切り替わります。脂肪酸のエネルギー産生は糖質の代謝の19倍も効率が高く、クエン酸を摂ることで疲労感を減少させ、さらに疲れにくい体にすることができます。
乳がんの予防効果
クエン酸にがんを抑制する効果があると言われているのは、細胞の増殖抑制や転移を防いでくれる効果があるからです。この作用は2017年に、ハーバード大学も発表していています。がん細胞は糖質を大量に摂り込み、その量は正常細胞の3倍から8倍 にもなります。またがん細胞は摂り込んだ糖質のほとんどを乳酸に代謝するという特殊な働きがあります。がん細胞が生産した乳酸は、私たちが持いる自然免疫の機能を弱める性質があり、実際2010年の研究でも明らかになっています。がんの乳酸によって弱ってしまう免疫はILC2と呼ばれ、皮膚や粘膜などの免疫と大きく関わっており、これらの免疫を自分たちが作り出す乳酸で弱らせて、成長や転移を促進しています。つまり細胞からの乳酸が増えすぎると免疫が低下するだけではなく、がんになりやすくなったり、元々がんの人の場合は、がんが増殖したり、転移しやすくなってしまいます。
実際にがん細胞が作り出す乳酸は、乳がんに関わる全ての主要な変異遺伝子の発現を150%から800%も増加させることが分かっています。この他にもがんが作り出す乳酸は、発がん性だけではなく、血管新生を亢進する作用もあり、がん細胞の自給自足を助け、がん細胞の増殖を促していくことが分かっています。
そのためクエン酸による乳酸を抑制する効果が効いてくるだけでなく、この他にもクエン酸が、がん細胞のエネルギー代謝の抑制、免疫を活性化することでがん細胞を抑制する機能や、がん細胞を自滅に追い込んだりして、がん細胞の抑制や発がんの予防に役立ってくれます。
免疫力の強化
私たちの体は弱アルカリ性の時に最も内臓が活発に活動し、免疫も高い状態を維持できます。しかし食生活が偏ったりすることで体は酸性に傾き、免疫が低下したり、自立神経が乱れたりしてしまいます。実はクエン酸は、体内に入れる前は酸性ですが、体に吸収される段階でアルカリ性に変換されて吸収されます。このためクエン酸を摂ると血液が弱アルカリに保たれやすくなり、結果的に免疫が強化されます。
ちなみに私たちの体は酸性に傾かないように、微妙なpHで保たれており、基本的に血液はpH7.4±0.5と狭い範囲で弱アルカリ性に保たれています。これを調整しているのが腎臓や肺であり、つまり加齢によって調整機能がうまく働かなくなったり、機能そのものが低下してしまうと血液は酸性に傾き、細胞に重大な損傷を与えてしまいます。
またpHを調節する時に、カルシウムが使われますが、実際に欧米人に骨粗鬆症が多いのは、酸性食品である動物性タンパク質を多く摂取するからということが分かっています。さらにカルシウムは、免疫に大きく関係しているため、カルシウムが使われすぎると免疫の低下にもつがってしまいます。これらの観点からもクエン酸を摂取して、血液をなるべく酸性にしないことは免疫を健全に保ち、強化してくれることに大きく役立ってくれます。
これに加えてクエン酸には、インフルエンザウイルス、ノロウイルス、サルモネラ菌、カンジタ菌などやウイルスへの抑制効果が確認されており、風邪や大腸疾患の予防にも効果的です。
性ホルモンの合成
性ホルモンは、更年期障害とも関係しています。性ホルモンはコレステロールがプレグネノロンという物質に変換された後、男性ホルモンであるテストステロンや女性ホルモンのエストロゲン、そしてコルチゾールなど全てのステロイドホルモンの材料になります。このプレグネノロンの材料であるコレステロールを作るのに必ず必要になってくるのがクエン酸です。またコレステロールは、胆汁酸や体内の細胞膜を作っている材料にもなっています。
クエン酸は一方で過剰になったコレステロールを抑える効果もあり、実際に肥満気味の男女対象とした研究でクエン酸が主成分の酢を摂取させたところ、総コレステロール値の改善とLDLコレステロールの減少が確認されています。
クエン酸の摂り方
クエン酸の摂取上限はWHO、国内ともに摂取上限は定めていません。添加物での使用規制もないため、よほど摂りすぎなければ体に害を及ぼすことはなく、摂りすぎても排出されてしまうだけです。また1日の摂取量は決まっていませんが、効果的な飲み方としてはクエン酸パウダー小さじ1杯5gを、500mlの水に溶かして1日3回か4回くらいに分けて飲むことです。クエン酸は1度に摂取しても、2から3時間で体内の濃度は元の状態に戻ってしまうため、1回で2gを飲むのではなく、3時間程度時間を置いて飲んだ方がより効果的に作用してくれます。
食材でクエン酸を多く含む食品は梅干で、100gあたり7g程度のクエン酸を含んでいます。これはあくまで昔ながらの酸っぱい梅干に限るため、スーパーで売っている甘い梅干には、そこまで多くクエン酸は入っていません。そのためおすすめはカボス果汁で、カボスの果汁にはレモンの倍の100mlあたり6gのクエン酸が入っているため、食品からの摂取では一番効率よくクエン酸を摂取できます。またカボスにはビタミンCも一緒に含まれ、レモンに近い作用があります。
そして、クエン酸を飲んで何も変わらないという方は、クエン酸を代謝するにはビタミンB群とマグネシウム、それ以外のミネラルが必須であるため、ビタミンB群やミネラルが不足した状態で飲んでも効果がいまいち薄くなってしまいます。せっかくキレート作用があるわけなので食事と一緒に他の栄養と摂取した方が、相乗効果が得られることになります。
ドリンクで飲む場合に気をつけることは、クエン酸は酸が強いため歯のエナメルを解かしてしまう可能性があります。食事と一緒に飲む場合はなるべくストローを使って、クエン酸水を歯に当てないで飲んだ方が良いでしょう。飲んだあとは口をすすぎ、クエン酸が口の中に残らないようにした方が良いでしょう。
【本コラムの監修】
・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。