腸内のカビであるカンジタ菌は、腸の中だけでなく口や皮膚などに生息し、普段から人間 たちと共存してる菌でもあり、通常の状態であれば悪さはしません。しかし体調が悪くなったり免疫力が落ちたりすると一気に増殖して体に悪影響を与えます。特に腸内の細菌バランスが崩れるとカンジタ菌が腸内で暴れ出して腸粘膜を傷つけます。それが進行するとリーキーガット症候群っていう状態になり、腸の壁が本来通さないはずの有害物質を体内に通してしまいます。
腸の壁が穴だらけになって有害な物質がどんどん血液に流れ込むと、眩暈、ふらつき、頭痛、吐き気、記憶障害、感情のコントロールが難しくなります。また腸の状態が悪くなると免疫力も落ち、アトピーなどの皮膚炎、便秘や下痢、アレルギー、不妊、成長障害なども現れます。これらの症状の原因がカビかどうかは尿検査(有機酸検査)で分かります。
腸のフィルター
腸は大腸小腸に分けられており、小腸は食べ物を消化吸収する働き、大腸は消化吸収された後の不要物を便として排泄する働きがあります。また腸には口から侵入してきた病原細菌から身を守る働きもあり、その仕組みを腸管免疫と言います。腸の粘膜には全身の約60%のリンパ球が集まっており、小腸では全身の免疫抗体の約60%が作られています。
さらに腸管免疫では、食品などの体の維持に必要な成分に過敏な免疫反応を起こさないようにする経口免疫寛容という働きもあります。腸の壁には絨毛と言う、できるだけ多くの栄養素が吸収できるように表面積を広くするための細かい突起のようなものがあり、この絨毛に敷き詰められた粘膜細胞は、お互いにしっかり結合し合って一定以上の大きさのものは通さないような構造になっています。これをタイトジャンクションと言います。
これによってある程度以上の大きさのものは通さないというフィルターの役目をしていますが、カビによって腸壁の粘膜が破壊されると、このタイトジャンクションが緩んで十分に働かなくなります。その結果、未消化物や異物が血中に入ってアレルギー反応などを起こしやすくなり、これをリーキーガット症候群と呼びます。これによって肌荒れ、アレルギー、花粉症、便秘、肥満、生活習慣病、精神病、自己免疫疾患などが引き起こされたりします。
発酵食品で腸がカビる
実は私たちの腸は、少しの生活週間の乱れによってカビてしまうと言われています。そもそも腸にはたくさんの腸内細菌が生息しおり、善玉菌や悪玉菌だけでなく真菌というカビの仲間も紛れ込んでいます。その代表がカンジタ菌です。カンジタ菌は私たちの体に住みついている常在菌の1つで、普段は私たち自身の体の免疫力によって繁殖が抑えられています。しかし食生活や生活習慣の乱れなどによって免疫力が低下してしまうと、このカンジタ菌が繁殖して大暴れします。そしてカンジタが起こすものが腸を始めとした様々な臓器のカビになります。このようなカンジタ菌によるカビを悪化させてしまう食べ物が発酵食品です。
発酵食品は、善玉菌を増やして腸内環境を改善してくれるイメージがありますが、確かに発酵食品は腸が健康な人が食べることで善玉菌を増やして腸内環境を整えてくれる効果があります。一方で腸が不健康な人や既に腸がカビ始めている人が摂取すると、むしろカビを助長しかねない効果があると言われています。これは発酵食品が腸内に生息する菌を手当たり次第増やしてしまうためと考えられています。このように発酵食品は、使い方次第で腸の健康を良くも悪くもする諸派の剣であると言えます。
腸内でカンジタ菌が増えて腸にカビが生えてしまうとカビが物理的に腸を攻撃し、腸のバリアを破壊します。さらにはカビ菌が作り出す毒素が体中にばらまかれてしまい、そして免疫システムが異常をきたし、自分自身を攻撃してしまうといった数多くの問題が発生します。
例えば、腸は小腸と大腸を合わせておよそ8mにも及ぶ長い臓器ですが、腸が破れ中身が外に漏れ出してしまったら、下水管が破裂するのと同じでお腹の中が大変なことになります。実際、腸に穴が開くことで起きる細菌性腹膜炎は、強烈な炎症によって死亡することもある恐ろしい疾患です。このような危険な事態に陥らないために腸には強力なバリア機能がありますが、腸にカビが入るとカビ菌が腸の壁に胞子を伸ばすことで腸のバリアを物理的に破壊してしまいます。
腸のバリアが破壊される有名の食べ物が、小麦に含まれるグルテンによるリーキーガット症候群です。小麦を食べるとそこに含まれているグルテンが腸の壁にへばり付き、炎症を起こし、穴を開けてしまうことが知られています。実は腸にカビが入るとこれと全く同じ現象が起きてしまいます。このような炎症が皮膚に届けば肌荒れの原因になってしまいます。
また、カビ自体の物理的な攻撃だけでなく、カビが作り出す毒素によるダメージも甚大です。腸のカビはアルコールを始め、様々な有害物質を放出しますが、中でも注意しなければいけないのがグリオトキシンです。グリオトキシンは有毒な物質で、私たちの免疫細胞が持つDNAを切り刻んでしまうことが知られて います。このことからグリオトキシンは全身の免疫力を下げ、腸の健康をどんどん損なってしまいます。
さらにカビによって免疫システムに異常をきたすのも大きな問題になります。腸内のカンジタ菌が増えてカビが発生すると、私たちの体ではカンジタ菌を駆除するための抗体が作られます。困ったことにこの抗体はカンジタ菌だけでなく私たち自身の脳や腎臓といった臓器まで攻撃してしまうことが分かっています。
このような状況で発酵食品を食べたところで発酵食品は、すでに腸に住みついているカビ菌を増やすばかりで健康のためには逆効果になってしまいます。そのためまずは発酵食品だけではなく腸内のカビ菌をやっつける食品を食べることで、1度腸をフラットな状態にリセットしてあげる必要があります。今はお腹の調子が悪い時は、むしろ発酵食品は控えるようにした方が良いというのが大切なポイントです。発酵食品は腸内のカビ菌が一掃され腸がフラットになった状態で食べることで初めて健康効果を発揮してくれます。
食物繊維で腸がカビる
発酵食品とともに腸内環境に良い影響を与えると言われているのが食物繊維です。食物繊維は物理的に便通を良くしてくれるだけでなく、腸内の善玉菌の餌となることで腸内環境を改善すると考えられています。しかし発酵食品と同じで、すでに腸がカビだらけの人が食べることでむしろ逆効果になってしまう恐れがあります。もちろん食物繊維はカビが生えていない正常な腸、乱されていない腸にとっては毎日摂るべき重要な栄養素の1つです。
特にタンパク質と食物繊維は、私たち日本人に不足しがちであると言われており、野菜だけではなく海藻類やキノコ類などからも積極的に私たちは食物繊維を摂らなくてはいけません。しかし腸内にカビが生えてしまった人は、発酵食品と同じく食物繊維の摂取を控えて腸内環境をリセットしてあげる必要があります。なぜなら本来健康的であるはずの食物繊維は、善玉菌だけでなく腸内のカビ菌の餌にもなってしまうからです。
また、カビ菌の大好物は糖類です。甘いスイーツなどに使われる砂糖は代表的な糖類の1つですが、実は食物繊維もまた広い意味での炭水化物の一種で糖類に含まれます。食物繊維は炭水化物ありながら、私たち人間の体では消化ができず、デンプンのような消化可能な炭水化物は糖類として吸収されていきますが、食物繊維は未消化のまま全てが便と一緒に排泄されてしまいます。そして食物繊維を消化できるカビ菌にとっては、食物繊維は糖類に他ならず、砂糖と同じ甘くて美味しい大好物になります。そのためカビ菌が繁殖している状態で食物繊維を食べることは、砂糖たっぷりのスイーツを食べてしまうのと同じ結果になります。
例えば、野菜不足を解消するためにサラダをたくさん食べてお腹が張っておならがたくさん出てしまったという経験はないでしょうか。それは他でもなくサラダに含まれる食物繊維が悪玉金の餌となって腸内で増えた悪玉菌が大量のガスを発生させるために他なりません。健康な腸であれば悪玉菌以上に善玉菌が増えるため、多少ガスが出ても問題はありません。研究によると悪玉菌がゼロの腸はむしろ調子が悪くなることが分かっており、大切なのは善玉菌と悪玉菌のバランスの取れた比率です。
お腹の調子が悪い時は、野菜を控えて代わりにビタミンやミネラルが豊富な豚肉などを食べるのが良いでしょう。野菜を控えると食物繊維だけでなくビタミンなど他の栄養素も不足がちになってしまうので、それを別の食材から補ってあげるのが良いです。そしてお腹の調子が良くなってきたら、野菜や海藻を食べて食物繊維を補給してあげれば良いでしょう。このように食事は、自分自身の体調と相談しながら日々調整していくということが大切です。
小麦で腸がカビる
腸にカビが生ることで腸のバリアが物理的に破壊され、リーキーガッド症候群を来たしますが、このような状態で小麦を食べれば、よりリーキーガッド症候群が進んでしまいます。さらに小麦は、それ自体がリーキーガットの原因になるだけでなくカンジタ菌の餌になることで腸のカビをより悪化させてしまいます。
さらに小麦には高い依存性があります。小麦由来のグルテンは、一説にはニコチン並みの依存性があるとも考えられています。実際、長期的にパンなどの小麦食品を食べていた人が急にグルテンフリーの食事に切り替えると禁煙などと同じような禁断症状が出ることが分かっています。この症状には吐き気や頭痛、足の痙攣などが知られています。
昨今、日本人の間では米食の人が減って代わりにパン食の方が増えてきていると言われています。2011年の総務省の調査では日本の一般家庭におけるパンの消費料が、米の消費量を上回ったことが報道されました。また日本人の食生活を調査した別の研究では、パンは特に朝食で食べられていて、高齢になるほど朝にパンを食べる人が多くなる傾向があることが分かっています。
腸にカビが生えたらすぐにでも小麦の摂取をやめる必要がありますが、小麦が止められずカビ菌が増えてお腹の調子が悪化し、そのストレスで、さらに小麦食品を食べてしまうという悪循環に陥ってしまいます。
甘いもので腸がカビる
砂糖はカビ菌の大好物であり、その悪影響の度合いは発酵食品や食物繊維の比ではありません。少しでもお腹の調子が悪い時に、砂糖たっぷりのお菓子を食べると、それだけで腸内のカビが爆発的に増えてしまうと言われています。
さらに砂糖の摂取によって、腸のカビ菌が変異してしまうことが知られています。私たちの体に住みついているカンジタ菌は本来であれば大人しい菌で、少しぐらい増えたとしてもそこまで悪さをするわけではありません。ですがカンジタ菌に砂糖を与えすぎるとカンジタ菌が先の尖った変異型に変化し、強い病原性を発揮してしまうと考えられています。このような変異型のカンジタ菌は腸を腐敗させ、異常なほどの危険な毒素をばらまいてしまいます。
一方で、人工甘味料であれば糖分ゼロと考えるかも知れませんが、人工甘味料もまた砂糖と同じく腸内の悪玉菌の大好物です。人工甘味料の中には発がん性が確認されているものや肥満を助長するものなど様々なリスクが指摘されています。
カンジタ菌が増えるサイン
膨満感
腸内で悪玉金やカンジタ菌が増えると腸内バランスが崩れてガスが溜まりやすくなります。そのためお腹がぽっこりしたり、ガスが臭くなることが多いです。
便秘や下痢
カンジタ菌が腸内環境を悪化させると腸の働きが乱れるため、便として出るべきものが出 なかったり、逆に出すぎたりします。便秘になるか下痢になるか腸内の状況次第です。
疲労感
ただの疲れではなく、体がだるくて動けなくなるのはカンジタ菌が体内で毒素を放出しているのが原因です。カンジタ菌の毒素は、体中にばらまくだけでなく脳にも影響を与え、集中力が低下したり、やる気がなくなったりします。また理科学研究所の論文「カビによる肝障害悪化メカニズムを解明-カンジタ菌は活性酸素を産生し、タンパク質架橋酵素の核移行を招く-」によれば体にとって毒である活性酸素まで作り出すことを論じています。
口腔異常
口の中に白い舌やコケがつく、粘膜が荒れているなど、その場合は腸内で暴走したカンジタ菌が口の中まで影響を及ぼしている可能性があります。特に舌が白くなるとカビが口の中まで進出している可能性が高いです。
皮膚の湿疹や痒み
腸内環境が悪くなると皮膚にも影響が現れ、湿疹が出たり痒くなったりします。この場合もカンジタ菌が腸内から全身に影響を及ぼしている可能性があります。
腸のお掃除食材
お腹の調子が悪く腸にカビが生えている可能性がある時に、飲むべきものがリンゴ酢です。なぜならリンゴ酢には腸で繁殖してしまったカビ菌だけを集中して攻撃する効果があるからです。当然、強力な抗菌作用のある食べ物によってカビ菌が一層できたとしても、それと一緒に善玉菌も死滅してしまえば、またすぐに悪玉菌が優位になってしまいます。しかしリンゴ酢は善玉菌を攻撃せず、繁殖したカビ菌だけを駆除する効果があります。ただし注意していただきたいのが、カビ菌に効果的なリンゴ酢はあくまでも純リンゴ酢です。
また、アメリカのタフト大学の研究では、ココナッツオイルにカンジタ菌の増殖を抑える効果があることが分かっています。またMCTオイルも腸内に過剰に増殖したカンジタ菌を抑制する力を持っていると言われています。これはMCTオイルを構成する中鎖脂肪酸のカプリル酸にカンジタ菌を抑える抗真菌作用があるからです。
そして腸のお掃除食材として優秀なのが大根おろしです。2023年に発表された研究によれば、大根おろしにはカンジタ菌や黄色ブドウ球菌といった腸内で悪さをする細菌や真菌を選択的にやっつけてくれる抗菌作用があることが確認されています。このような効果は大根おろしが持つ独自の辛み成分アリルイソチオシアネートに秘密があると言われています。
お腹の調子が悪い時に食物繊維を摂ってはいけないのは食物繊維がカンジタ菌の餌になってしまうからですが、カンジタ菌がアリルイソチオシアネートによって破壊されるため、食物繊維を横取りする悪者はいなくなって食物繊維は善玉菌だけのものになります。
このような理由から大根おろしはカンジタ菌だけをやっつけて逆に善玉菌だけを増やしてくれる効果があります。このアリルイソチオシアネートは、大根をすり下ろして組織が壊れた時に初めて発生する物質になります。あくまでも擦り下ろした大根おろしが効果的であるというポイントを抑えておきましょう。
マイクロバイオーム(腸内細菌層)
マイクロバイオーム研究が世界中で進み、腸内細菌が病気を起こす因子を持っていることが分かっています。また2013年には、偽膜性腸炎というある種の菌が慢性炎症を起こすことも分かり、さらに健康な人の糞便をその患者に移植すると高い治癒力で回復した事例も現れました。
これらから糞便の中には病気を起こす原因と病気を治す因子があることが分かり、そこから健康や病気に関係する腸内細菌のデータ調べ、病気の人と健康の人の腸内細菌は何が違うのかという研究が注目されています。
例えば、健康な人の腸内細菌の多様性(バランス)は、ある一定の菌組成比で構成されていますが、病気の人の場合はその組成比(β多様性)が大きく変わっていることがあります。また細菌層の中の菌種数(α多様性)についても、健康な人に比べて病気の人は大きく低下していることも分かっています。ただしその中でも個人差あり、健康な人でも疾患の細菌層に似た人もおり、そこがマイクロバイオーム研究の難しい部分になっています。
【本コラムの監修】
・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。