
私たちの体の中では元々活性酸素を取り除く酵素を作ることができ、それが私たちの体を酸化から守ってくれる抗酸化酵素と言われるものです。この抗酸化酵素を活性化させることが日常の酸化ストレスからDNAの損傷やタンパク質の変性から身を守るために重要です。
抗酸化ケア
お顔のシワ・たるみ・くすみ(STK)ケアに必要なのは「抗酸化ケア」です。活性酸素が生まれる原因と肌の影響を考えてみましょう。活性酸素は細胞呼吸の過程で発生し、体への影響が看過することはできません。この活性酸素の酸化力は強く、いろいろな物質を酸化させ、体の錆びとなってしまいます。
酸素は生命にとって必要不可欠ですが、体内に取り込まれるとタンパク質を破壊して炎症の原因になったり、DNAを破壊して癌の原因をつくりだしたりします。そのため万病の原因とも言われています。

もちろん、体内には破壊されたDNAを修復する力が備わっており、またビタミンCやβカロテンなどは活性酸素に電子を与えることで、他の組織が傷つけられるのを防いだり、分子エネルギーを下げたりします。これらを「抗酸化作用」呼び、美容や健康で注目されている作用です。
例えば、活性酸素はお肌のコラーゲンを破壊して炎症の原因になったりしますが、お肌から化粧品などで浸透させるにはビタミンC誘導体が効果的とされ、抗酸化作用が注目されている物質の一つです。ただし活性酸素に対する抵抗力は個人差があり、体内の酸素の約90%はミトコンドリアで消費され、そのうち1〜3%程度が活性酸素に変換されています。そして約90%の活性酸素はミトコンドリアから発生していると推測されています。
アンチエイジングのメカニズム
外見や美容に関するアンチエイジングは、その正確なメカニズムは良く分かっていません。老化は人によって進み方が異なります。だだし老化は病気であると捉える考え方は、医学会では常識になりつつあります。老化は原因を突き止めて、ある程度は予防や対策ができる時代になってきています。
老化の原因は「酸化」「糖化」「慢性炎症」の3つです。特に「酸化」と「糖化」は、私たちの細胞の劣化の引き金になっていると考えられています。
私たちの体に欠かせない「酸素」は、その一部が「活性酸素」に変化して、細胞の主な成分であるタンパク質を傷つけ、劣化させてしまいます。次に「糖化」は、体の中でタンパク質がブドウ糖に結合して起こる反応であり、この反応により「終末糖化産物(AGE)」がつくられ、これが肌のシミやシワの最大の原因になります。また見た目の問題だけでなく様々な病気の原因になります。
一方で「酸化」と「糖化」は、細胞の劣化を引き起こすだけでなく、「慢性炎症」を引き起こし、様々な病気や不調の原因なってしまいます。
これら原因の対策には、食生活と運動の習慣を変えること以外あり得ません。「酸化」を防ぐ食べ物は、ビタミンA,C,Eなどの抗酸化ビタミンやポリフェノール、カロテノイドといった成分を含む食品です。具体的には、人参、かぼちゃ、ピーマン、パプリカ、ブロッコリーなどの色の濃い緑黄色野菜を積極的に食べましょう。また果物、ワカメや昆布などの海藻類、キノコ類などもおすすめです。
「糖化」を防ぐためには、まずはできるだけ高温調理されたお肉やお魚は避けることが対策の一つです。なぜならAGEは高い熱を加えた調理によって大量にできてしまう特徴があるからです。具体的には肉や魚を揚げたもの、直火で高温で焼いているものです。
そして悪性のAGEはブドウ糖からつくられることが分かっているため、血糖値が上がる糖質やタンパク質の過剰な摂取は控えましょう。具体的にはお菓子、ジュースは絶対に控えましょう。沢山食べることで、血糖値が急激に高まり、この急激な変化がAGEを体内に貯めてしまう原因になることが指摘されています。
体のサビ「酸化」
老化の原因には、細胞寿命説、酸化・糖化、慢性炎症、DNA損傷、腸内環境の悪化など、これらのいくつかが一緒に進むことが考えられています。
また細胞寿命説は、細胞分裂には終わりがあり、それが老化や寿命に関係しているというものです。この細胞分裂の限界(ヘイフリックの限界)は、約50回の細胞分裂で限界を迎えると言われています。この回数以上に細胞分裂ができないのは、テロメアの短縮があるからです。
細胞分裂でDNAが複製されるたびにテロメアは徐々に短くなり、染色体の構造が不安定になります。実際に赤ちゃんのテロメアは長く、高齢者のテロメアは短くなります。このテロメアの短縮を予防することで細胞分裂の限界を延長することがアンチエンジグ研究で注目されています。
テロメアの短縮は、酸化などが原因で早まると考えられおり、酸化防止が大切な理由となっています。しかし、私たちの体には酸素が必要であり、取り込まれた酸素は、ミトコンドリアでエネルギー代謝しATPを生成します。その利用された酸素の3%程度が活性酸素となることが分かっています。
この活性酸素による酸化ダメージによって細胞が傷つき、老化が促進されてしまいます。細胞を包む細胞膜が酸化すると、サビである過酸化脂質が生じて硬くなり、細胞の機能が落ちます。その結果、シワ、シミだけでなく、脂質異常症、動脈硬化などの生活習慣病のリスクにつながります。サビの原因であるストレス、タバコ、アルコール、睡眠不足などの活性酸素増大リスクを減らしていくことが大切なのです。また活性酸素は加齢とともに体内で発生する量が増えていきます。
皮脂酸化でたるむ
酸化による肌トラブルの1つに皮脂の酸化が挙げられます。例えば皮脂が紫外線にあたると、皮脂の中の不飽和脂肪酸やスクワレンなどが酸化して、過酸化脂肪酸や過酸化スクワレンに変化し、表皮の細胞障害を引き起こします。その結果シワ、たるみ、くすみ(STK)などの肌トラブルにもつながります。その他にも紫外線によって、日焼けして肌が黒くなるものチロシンというアミノ酸が酸化することで起こります。
一方で間違った洗顔(過度な洗顔など)によって肌が乾燥して、必要以上の皮脂を発生させてしまう場合もあります。ぬるま湯、泡を立てて優しく洗う、すすぎをしっかりという洗顔の基本を守り、洗顔後のスキンケア(化粧水、保湿剤)で肌の乾燥を招かないようにすることが大切です。
抗酸化にはバランスが大事
抗酸化物質には、ビタミンC、ビタミンE、ビタミンAがあり、特にCとEを併用することが大切です。なぜならビタミンCを大量摂取すると、ビタミンC自体が酸化してしまう突出という現象が起きてしまうため、これを防いでくれるのがビタミンEです。つまり単純にビタミンを摂るのではなく、お互いの影響を考えてバランス良く摂取することが大切です。
その他にも、ポリフェノール(フラボノイド)、カロテロイドなども抗酸化物質として有名です。フラボノイドの中でも玉ねぎにケルセチンは、ビタミンPが含まれ、主にビタミンCの働きを助けてくれます。血管をしなやかにし、活性酸素によるダメージを防ぐ抗酸化作用、抗炎症作用が認められています。またカロテロイドの中で、鮭、蟹、えび、卵の卵黄に含まれているアスタキサンチンは、活性酸素の中でも毒性の強い一重項酸素を除去する力や、過酸化脂質を抑制する力に優れているため積極的に摂るべき物質でしょう。
一方で、体内でも合成される強力な抗酸化酵素があり、鉄分から作られるカタラーゼ、亜鉛、マンガンからつくられるスーパーオキサイドディスムターゼ、セレン、N-アセチルシステインからつくられるグルタチオンぺルオキシダーゼがあり、これらを摂取することで体内で合成される抗酸化酵素を働ける環境をつくることも大切です。
抗酸化ピラミッドとは
抗酸化ピラミッドは、私たちの体を酸化から守ってくれる物質の優先順位を表したもので、そしてトップ3内は今まで聞いたことのない抗酸化物質ではないでしょうか。

ただし、このピラミッドでは分かりやすいように生体の防御機能を単純に高い低いで表していますが、実際は様々な栄養ももちろん大切です。抗酸化物質は種類によって消去してくれる活性酸素の種類が変わってくるため、一概にこれを食べておけばOKというものではなく、万遍なく摂取するのが大切です。
しかし、私たちは食事から摂取するだけの抗酸化物質だけでは当然、活性酸素の無毒化が間に合わなくなってしまうため、そこで大切になってくるのが体内で合成できるこのピラミッドの頂点に君臨するSOD、カラターゼ、グルタチオンペルオキシターゼなどの抗酸化酵素です。もちろんポリフェノールやビタミンなどの抗酸化物質を摂ることが老化防止に役立ちますが、実際は体でも抗酸化物質を作ることができ、むしろこちらの方が優先順位が高くなります。
抗酸化酵素を作るにはどんな栄養が必要!?
SOD
まずは抗酸化成分でトップに位置するSODを体内で生成するには亜鉛、マンガン、銅のミネラルが必須です。私たちの体で作られる抗酸化酵素の多くで大切なのがミネラルで、様々な酵素の働きを助けてくれる補酵素として活躍してくれます。逆にミネラルが足りないと抗酸化酵素を作ることができず、結果的に活性酸素が体内で増えてしまいます。
そしてSODでは、特に不足しがちな亜鉛がとても大切になります。SODは、細胞やミトコンドリア内に存在し、作られる場所はミトコンドリアです。さらに体内で最も抗酸化力が強いと言われている抗酸化物質で、主に私たちの体でよく発生するスーパーオキシドという活性酸素除去してくれます。
その能力は1秒で10億個の活性酸素除去してくれると言われています。またスーパーオキシドは、ミトコンドリアから出てくる活性酸素のため、細胞の老化を直接防いでくれ、逆にSODが不足してしまうと細胞の酸化が一気に進んでしまいます。
実際に、マウスの研究でSOD欠損マウスを作ったところ、直ぐに死んでしまうという結果になっています。またSODは細胞に存在するだけではなく、血液中の結晶にも含まれていて血中の活性酸素を除去し、動脈効果を予防してくれたり、活性酸素と結びついて血管を傷つける超悪玉コレステロールができるのを防いでくれます。さらに高血圧や糖尿病の予防、肌荒れの改善やシミの改善といった幅広い効果があります。
このSODを含む食品には、アシタバやルイボスティがありますが、酵素のため胃酸で分解されてしまい食べ物からの吸収は難しく、不足しがちになります。そのため亜鉛を含む食品、卵、レバー、海藻、ナッツ、大豆製品、イワシやアジなどの青魚を意識して摂取しなければ亜鉛不足が起こり、SODがうまく作られなくなります。
カタラーゼ
カタラーゼの作用はSODがスーパーオキシドを分解した際に出る過酸化水素という活性酸素除去してくれる作用があります。実はSODだけでは、スーパーオシドを完全に無毒化することができません。SODはスーパーオキシドに働きかけてくれますが、この時点では毒性の弱い過酸化水素に変換されるだけで、完全に無毒化できません。
もちろん過酸化水素は、それ自体は毒性が弱いものの鉄や銅などの金属イオンと結合することで活性酸素の中で最強の酸化力を持っているヒドロキシラジカルという物質に変化してしまいます。カタラーゼはこの過酸化水素を水と酵素に分解し、特に血液中の過酸化水素を完全に無毒化してくれます。
そしてカタラーゼを作る上で大切になってくる栄養素が鉄分です。鉄分も不足しがちな人がかなり多い栄養素であり、鉄分は気分の落ち込みやエネルギー生産にも大きく関わっており、特に女性に不足しがちな栄養です。これに加えて抗酸化酵素を作る材料としても使われており、カゼインは特に鉄分に強く依存する栄養のため鉄分不足が続くと過酸化水素が溜まり、ヒドロキシラジカルが体内で発生してしまいます。
またカゼインは肝臓に多く存在することも分かっていて、カゼインを欠損させたマウスでは肝臓障害や炎症、肝臓の細胞死が優位に増加することも分かっています。
グルタチオンペルオキシターゼ
グルタチオンペルオキシターゼは、過酸化水素によるヘモグロビンや細胞膜の酸化を防いでくれる作用があり、作るのに必要なのはセレンというミネラルです。このセレンは、カツオ、マグロ、ぶり、たらこ、カレイ、豚レバー、卵に多く含まれており、特に魚介類に多く含まれています。
1日の推奨摂取量は30から35mgで、セレンはグルタチオンペルオキシターゼの補酵素になるだけではなく、それ自体が抗酸化力を持っており、体を活性酸素から守ってくれます。
食べ物に含まれる抗酸化物質
これらの抗酸化酵素は、年齢と共に減り、特に40代くらいから加齢に伴ってミトコンドリアの質が低下します。これを防ぐには、ミトコンドリアの質を上げ、 活性酸素なるべく発生させない食事を心掛けたり、軽い運動をすることが大切になってきます。
活性酸素がミトコンドリア内で増えすぎるとSODが減少してしまい、その結果、活性酸素がミトコンドリア内にも外にも溢れていき、全身の老化につながります。これを防ぐにはミネラルをしっかり摂ることも大切ですが、ここで役に立ってくるのが食べ物に含まれる抗酸化物質です。
例えば、大根のイソチオシアネート、舞茸に含まれるβグルカン、大豆製品に多く入っているコエンザイムQ10やピロロキノリンキノン、サバやアジに含まれるオメガ3脂肪酸、お酢のクエン酸などが挙げられます。他にも欠かせないのが柑橘類に含まれるビタミンC、ナッツに含まれるビタミンEやマグネシウムなどもミトコンドリアを活性酸素から守り、ミトコンドリアの老化を防いでくれる大切な栄養素です。
バナナの抗酸化力
慢性的なストレスを感じているのであれば、体内で活性酸素が増え過ぎているかも知れません。活性酸素によって細胞や組織が酸化されてサビ付いてしまうと、シミやシワの原因になります。そのため抗酸化力を持つポリフェノールが豊富に含まれているバナナを食べることはアンチエイジング対策には有効です。またバナナには、お肌のトラブル予防や美肌効果を保ち、美容ビタミンと言われるビタミンB群が豊富に含まれています。肌の炎症を防ぐビタミンB3、肌荒れを防ぐビタミンB6、肌の新陳代謝を促進するビタミンB2などが豊富に含まれている天然の美容サプリです。
そして最も重要なメリットが腸を整えてくれる効果です。腸の調子が乱れると全身の臓器が乱れてしまうことが分かっており、心と体の健康はすべて腸から始まると言われる所以です。腸内環境が乱れると、腸内で有害物質がつくられ、血液に乗って全身に行き渡って肌に溜まり、肌が新しく生まれ変わるのを妨げてしまいます。その結果、肌荒れや吹き出物などお肌の調子が悪くなるのです。
バナナが腸を整えてくれるのは、ハイパー食物繊維と言われるレジスタントスターチが豊富に含まれているからです。一般的には食物繊維は善玉菌のエサになり、その食物繊維を摂取することで腸内環境が良くなると言われています。その食物繊維には水に溶ける「水溶性食物繊維」と水に溶けない「不溶性食物繊維」があり、この両者をバンラス良く摂ることが腸内環境を整える上で大切なことです。
バナナに含まれるレジスタントスターチは、この2つの機能を兼ね備えているハイパー食物繊維です。また含まれるフラクトオリゴ糖は、腸内の善玉菌を増やして腸内環境を改善してくれます。さらにバナナは簡単に食べられるだけでなく、低カロリーで血糖値を上げにくいという優れた食材でもあります。
善玉菌が増えることで、脂肪の取り込みを抑え、GLP-1というホルモン分泌を促すことによって満腹感を持続させて、食べ過ぎを防いでくれる「短鎖脂肪酸」を沢山分泌させることができます。さらに善玉菌が生み出す短鎖脂肪酸によって、体温や心拍が上がることで基礎代謝が上がりダイエット効果も期待できます。
ただし、黄色いバナナではなく緑色のバナナを選びましょう。なぜなら黄色くバナナが熟してしまうとレジスタントスターチは糖質に変換されて、糖質が増えレジスタントスターチが減ってしまうからです。このグリーンバナナには、レジスタントスターチに加えて、セロトニン、トリプトファンなどの特別な栄養素が豊富に含まれています。しかし美味しさも微妙かも知れないので、茎の部分に緑色が残っているグリーンチップのバナナをなるべく選びましょう。
赤ピーマンの抗酸化力
私たちの体は、エネルギーを産生するためにミトコンドリアが活動しており、ミトコンドリアは酸素や栄養素を原料としてATPを生み出しています。このエネルギーを生み出す過程で「活性酸素」が生まれ、この活性酸素が細胞を錆びさせる原因になります。この錆びから体を守ってくれるのが抗酸化作用です。「カプサンチン」は赤い色の植物に含まれている色素のことです。この「カプサンチン」は強力な抗酸化作用を持っており、有害な活性酸素を除去して、細胞の老化を食い止める働きがあります。
一方で、コレステロールにも善玉と悪玉があり、善玉コレステロールは私たちの体を健康に維持するために欠かせない栄養です。コレステロールが過剰になりすぎると「血管の粥状硬化」を招き、血管を油のヘドロで詰まらせることになります。そのため血中ではなく、コレステロールは肝臓などに蓄えることが大切になります。そこで血中のコレステロールを肝臓に運ぶ物質であるHDLとコレステロールを結びつけた複合体である、善玉コレステロール(HDLコレステロール)が重要な役割を担います。
「カプサンチン」は、善玉コレステロールを上昇させ、血中の余分なコレステロールを除去する効果があります。なぜ「カプサンチン」が善玉コレステロールを増やすのかは未解明な部分が多くありますが、水に溶けづらく血中でコレステロールと一緒に運ばれることが一因でないかと考えられています。
この「カプサンチン」を多く含む食材が赤ピーマンです。また赤ピーマンは熟すにつれてカプサンチンやビタミンの量が増えます。また赤いトマトに含まれるリコピンも抗酸化作用として知られていますが、カプサンチンの赤い色素であるキサントフィルはリコピンの100倍以上の抗酸化作用をあると言われています。さらに「カプサンチン」は紫外線刺激から肌を守る機能もあります
コーヒーの抗酸化力
コーヒーに豊富に含まれているものがポリフェノールです。カフェインはコーヒー100gあたり約60g含まれているのに対し、ポリフェノールは約200mg含まれています。ポリフェノールは、植物由来の抗酸化物質で赤ワインのアントシアニンやお茶のカテキン、ココアのカカオポリフェノールが有名です。コーヒーに含まれるポリフェノールのクロロゲン酸以外にも、トリゴネリン、カフェストール、カーウェオールなどが含まれています。
そして抗酸化物質の主な働きに活性酸素を抑制する効果があります。活性酸素は、体の細胞や組織を錆びさせ、老化の原因であり、癌や生活習慣病のリスクを高める可能性があります。さらに活性酸素はシワやシミの原因でもあり、体に様々な悪影響を与える活性酸素の働きを抗酸化物質は打ち消す力があります。
また、抗酸化作用の他にコーヒーの健康効果には、動脈効果の予防が挙げられます。広島大学の研究によるとコーヒーを飲まない人と比べるとコーヒーを飲む人が内皮機能障害になる確率は45%低く、血管平滑筋機能障害の確率は50%低くなっています。
血管内皮細胞は、血管の内側を覆う細胞で血液の循環や血管の健康状態を維持する非常に重要な役割を持ちます。内皮機能障害になると動脈効果や心臓病、脳卒中などのリスクが上がります。
一方で血管平滑筋細胞は血管を構成する主な細胞で、プラークや血管壁構造の安定化に寄与します。血管平滑筋機能障害は血管平滑筋細胞が死んだり、老化したりすることによって血壁の脆弱化やプラークの不安定化が起こり、心筋梗塞や脳梗塞、大動脈瘤などの血管障害を引き起こす状態です。
しかし、コーヒーを飲むことで血管が丈夫になって動脈効果の予防だけでなく、脳卒中や心臓病のリスクを下げることにも繋がります。欧州心臓病学会の研究では、コーヒーを1日に最大3杯飲むと血管疾患による死亡のリスクが17%、脳卒中の発症リスクが21%、全ての原因による死亡のリスクが12%下がることが分かっています。この研究の結果、コーヒーを毎日飲んでいる人は飲まない人に比べると心臓のサイズや機能がより健康的であることが分かりました。つまりコーヒーは血管を丈夫にするだけではなく、心臓を若返らせる効果もあります。
また、コーヒーを飲むことは糖尿病の発症リスクの低下につがることも分かっています。国立国際医療研究センターの2009年の研究では、1日3から4杯の コーヒーを飲む人は、ほとんど飲まない人に比べて2型糖尿病の発症リスクが男性で17%、女性で38%低下することが分かっています。
さらに福岡県糖尿病患者データベース研究によれば、1日4杯以上の緑茶と2杯以上のコーヒーを飲むと約5年間で死亡リスクが63%低下し、さらにコーヒーを飲んでいる人では死亡リスクは1日1杯では19%低く、1日2 杯以上では41%低くなっていました。またコーヒーは肝臓癌の予防効果があることが様々な国の多くの研究で証明されています。
日本でも国立がん研究センターがコーヒー摂取頻度によるグループに分けて、その後の肝臓がんの発生率を比較しています。その結果、コーヒーをほとんど飲まない人と比べると毎日飲む人は、肝臓がんの発生リスクが半分に、1日5杯以上飲む人では1/4に低下しました。
他にも、コーヒーを飲むことで肝硬変の原因である肝線維化が進行するのを抑える効果や肝臓病で死亡するリスクを減らす効果も報告されています。さらに認知症のリスクを低下させることも報告されています。これはカフェインにアミロイドβの酸性抑制や除去促進効果があると考えられているからです。さらにコーヒー豆を焙煎する過程で生される苦成分のフェニルインダンは、アミロイドβの脳への蓄積を防ぐ作用があり、ポリフェノールの抗酸化作用は老化や細胞の損傷を防ぐ効果があると考えられています。
認知症のリスクについては、韓国の研究グループによればコーヒーを1日に2杯から4杯飲んでいる人はアルツハイマー病の発症リスクが21%低い結果となっています。またイギリスのアルツハイマー協会もカフェインが軽度認知障害や認知症に対して予防的に働いている可能性を指摘しています。
コーヒーの精神安定作用
朝の目覚めに温かいコーヒーを飲むとカフェインが交換神経を活性化し、眠気をすっきりさせてくれ、交換神経が高まって気持ちが高揚するためストレス解消やリラックス効果を得られます。さらにハーバード大学の研究調査によれば、コーヒー愛飲者はうつ病患者が少なく、1日に2杯から4杯のコーヒーを飲む成人は、自殺リスクが半減することになっています。
さらにコーヒーには脂肪燃焼を高める効果もあり、コーヒーのポリフェノールのクロロゲン酸には、ミトコンドリアを運ぶ酵素を活性化させる働きがあります。そしてミトコンドリアがエネルギーを生み出すのは脂質代謝、つまり脂質をエネルギーに変換することで行われており、その脂質の消費を促進して体脂肪を減らしてくれる効果があります。
また、カフェインは自律神経に働きかけてエネルギー消費を高めてくれます。具体的には、体内の新陳代謝を3%から10%促進させる働きがあります。そのため運動する20分 から30分前にコーヒーを飲むことで血中の脂肪酸濃度を上昇させ脂肪を燃焼しやすくなります。
1日4杯以上のコーヒーはNG
最近の研究では1日4杯以上のコーヒーを飲むと脳卒中になるリスクが37%増加する結果が出ています。1 日に飲む量を3杯までに抑えておくと脳卒中のリスクは変化しませんでした。また1日4杯以上のコーヒーの他に炭酸飲料やフルーツドリンクなどは脳卒中、または脳内出血のリスクを有意に増加させる研究結果もあります。特に炭酸飲料については脳卒中、または脳内出血のリスクが22%増となりました。フルーツドリンクは脳出血のリスク37%増となっています。
大豆の健康効果
がんの原因は、細胞が傷ついた時に発生する異常な細胞の塊です。しかし人間の体には免疫力がある体の中で発生した異常な細胞を排除してくれたり、細菌から守ってくれ、この免疫力がしっかりしていればがんになる細胞ができても排除してくれます。この免疫力が下がるのは、疲れや生活リズムが乱れなど様々な原因がありますが、その中でも食べ物の要因、つまり栄養バランスの悪い食事や少食や過食なども挙げられます。
そして大豆は世界の長寿地域で共通して食べられており、がんや糖尿病の予防を期待されていたり、更年期障害の症状も抑えてくれます。例えば中国の貴陽地域では、干し豆腐、発酵豆腐、豆腐麺など、この地域では徹底して大豆が食べられています。この地域を含め12箇所で血圧の数値を調べると、圧倒的に貴陽の人たちの血圧が低く、血圧が低いと脳卒中や心臓病も起きにくく、他にもコレステロール値が低くて肥満も少ない結果になっています。
大豆には生きる上で大事な3大栄要素(タンパク質、脂質、炭水化物)がバランスよく含まれおり、特にタンパク質は「畑の肉」と言われるほど豊富に含まれています。さらに植物性タンパク質はアミノ酸スコアで見ると、大豆は牛肉や豚肉、アジやシャケなどの肉や魚と同じ値となっています。また大豆は魚や肉と同じく良質なものです。それに加えて大豆は脂質やカロリーが低く、そして悪玉コレステロールを下げることが研究で分かっています。さらに更年期障害や骨粗鬆症、乳がんや前立腺がんの予防となり、ほとんどのがんの死亡率を下げてくれることが多くの研究から分かっています。
一方で大豆に含まれるイソフラボンが乳がんに効果があるだけでなく、前立腺がんに効果があります。前立腺がんはホルモン性のがんで、女性ホルモン作用を持つイソフラボンを取ると男性ホルモンの働きを抑えてくれ、その結果前立腺がんの進行を抑えてくれると考えられています。
実際、がんの発生はどの国でも大して変わりませんが、がん進行して発見されるのが欧米は10倍も多くなっており、その理由は大豆を食べているかどうか食生活の違いだとも言われています。例えば大豆を食べないイギリスは死亡率が高く、その反対に大豆を食べる地域の日本や中国は低くなっています。
また、岐阜大学医学部の高山コホートと呼ばれる研究では、高山市の市民3万人を対象に7年間追跡した大規模研究が行われ、まだ病気になってない人を対象に大豆食品の摂取量を調査しながら、どんな食生活で胃がん死したのか、それを調べてイソフラボンの摂取量でグループに分けて死者数と比べました。その結果、大豆食品を摂る量が少なかったグループに比べて、多く摂取したグループは胃がん死の危険度が半分近く下がった結果となりました。ちなみに大豆は1日60g、大体納豆が40gくらいのため納豆1つと半分くらい摂ると効果的と言われています。
因みにスペルミジンという物質があり、これはポリアミンという構造を持った物質と知られています。これらは細胞の中にあるものですが、食べ物からも吸収することができ、オートファジーを活性化させると言われています。オートファジーは日本語では自己貧食とも言われ細胞の中で不要になったものを食べたり、外へ排出してくれる作用です。そしてスペルミジンはオートファジーを活性化させてくれる物質で納豆には多く入っています。
このスペルミジンは納豆の他にチーズやキノコにも多く含まれています。また玄米や精製してない大麦、小麦などの穀物にも多く含まれています。中高年者829人の20 年間の死亡率を調査した疫学調査では、ポリアミド一種であるスペルミジンを多く摂取している人では死亡率が低いという結果も出ています。
ブロッコリーの抗酸化力
ブロッコリーの原産地はローマ時代にイタリアで栽培され、その後アメリカに広まりました。日本には海外の文化が広まった明治時代に伝わったと言われています。そしてブロッコリーも旬があり、1番美味しくて栄養価の高い時期が11月から3月頃のものです。
その豊富な栄養価にはビタミンCがまず挙げられます。実はビタミンCの王様であるレモンよりも豊富で、レモン1個120gに含まれるビタミンCの量は20mg、それに対してブロッコリー100gに含まれるビタミンCは約120mgです。さらに茹でても54mg含まれています。1日に推奨されているビタミンCの量は100mgであり、茹でたブロッコリーを食べるだけで半分は摂れることになります。
次に多く含まれている成分がタンパク質、そしてビタミンE、葉酸、カリウム、クロム、食物繊維がバランスよく含まれています。また葉酸は妊婦さんは積極的に摂る方が良く、血を作るビタミンと言われています。そして注目されているのが、がん予防効果です。その成分がスルフォラファンです。
これはアブラナ科の野菜に含まれているファイトケミカルの1つで、ファイトケミカルは植物からできる科学物質であり、生きていくために必須の栄養素ではありませんが、様々な病気を予防する効果があると期待されています。スルフォラファンを含むアブラナ科の野菜には、カリフラワー、菜の葉、大根、キャベツ、カイワレ大根に含まれています。
このスルフォラファンは、強い抗酸化作用を持っており、タンパク質や脂質が酸化するのを防ぐ作用があります。さらにスルフォラファンは、SOD酵素などの抗酸化酵素を活発にさせ、また増えすぎた活性酸素からのダメージを減少させる働きもあります。他にも抗酸化作用を活発にさせる働きや解毒酵素の合成を促進させる作用もあります。例えば解毒酵素は肝臓で作られますが、体の中の有害物質を無毒化にする作用があり、不規則な生活習慣ストレスや疲労で解毒酵素を作り出す力が徐々に衰えるため、スルフォラファンで解毒酵素を活発にさせて解毒酵素を高めることができます。
またスルフラファンは、シミやそばカスの原因になるチロシナーゼの働きを抑制し、その結果メラニンが作られる力が弱くなり、シミやそばカスができにくくなります。
頭を酸化から守る
私たちの脳はほとんどが水と脂肪でできています。これらの内、脂肪は酸化しやすい物質です。酸化は物質のサビであり、脳細胞も活性酸素という強い抗酸化力を持つ物質によって酸化され錆びついてしまいます。
例えば、大脳皮質の脳細胞が錆びてしまえば、私たちの思考力や判断力が低下することが分かっています。また記憶を司る側頭葉や海馬が錆びると、覚えが悪くなるとともにすでに覚えていたことすらもどんどん忘れていってしまう ようになります。
一方で、脳細胞の酸化が与える悪影響は思考力や記憶などの高次機能だけでなく、ホルモンバランスや体温調節など生命を保つために必須の機能にも悪影響が及ぼされてしまいます。
活性酸素によって細胞が錆びついてしまう現象を酸化と言い、この酸化に対抗するのが抗酸化作用です。抗酸化作用を持つ物質(抗酸化物質)の代表がポリフェノールです。
ダークチョコレートに含まれるフラバノール
脳細胞を活性化するポリフェノールがカカオに含まれるフラバノールです。私たちの脳細胞の酸化を食い止める以外にも、脳の血管機能や血流を改善する効果があるとされています。幅広い年齢の男女約1000人を対象にした大規模な疫学研究では、週にわずか1枚のチョコレートを食べる人は記憶やワーキングメモリーなどの認知能力が、食べない人に比べて優れているということが分かっています。
ただし、プラバノールが持つ効果を得るためには、ダークチョコレートの中でも、原材料表示にプロマプロセスと書かれてあるものを選ばなければなりません。逆のダッチプロセスは、ダークチョコレートの味を良くするために人工的に付加される処理で、この処理によってカカオに含まれるフラバノールをはじめとした様々な植物栄養素が損ないます。そのためブロマプロセスというもので作られたものを選びましょう。
金柑に含まれるリモネン
脳細胞を酸化から守るために最も効果的なポリフェノールが柑橘類に含まれているリモネンです。リモネンは様々な柑橘類の皮に豊富に含まれていますが、皮のまま食べられる食べ物として、アジアで健康食として古くから食べられてきた「金柑」があります。このリモネンには抗酸化作用のみにならず、代謝をアップさせてコレステロールを減らしてくれる作用もあるということが分かってきました。代謝をアップすることで体の内側から内臓脂肪を減らす効果も期待できるため、ダイエットにもおすすめできる食材です。さらに最近の研究ではリモネンには、抜け毛防止やリラックス効果などの様々な効果があるということも実証されています。
パクチーのデトックス効果
パクチーは脳にとって有害な水銀などの重金属をデトックスしてくれる効果があることが最新の研究で分かってきています。体の中に溜まる重金属は、活性酸素の生成を促進させますが、パクチーには水銀や鉛などの重金属を体外に排出する「キレート作用」という働きがあります。またパクチーには、抗酸化作用のあるビタミンC、ビタミンE、そしてお肌の健康維持に大切なビタミン Bもたっぷりと含まれています。
一方で、パクチーの香り成分である「リナロール」という物質は、私たちの腸管内にたまってしまったガスを排出してくれる整腸作用もあると言われています。この香りは、脳をリラックスさせ副交感神経を優位にしてくれるという作用 もあります。
酸化と美容鍼灸
呼吸で取り込まれる酸素の一部が活性酸素になり、それが細胞やDNAを酸化させて、老化や病気を招く原因となります。この酸化を防ぐために体内の酸化ストレスの防御系のバランスを高める必要があります。
鍼灸で代表的な経穴(ツボ)を刺鍼して、その前後の抗酸化力を評価した研究がありまます。鍼施術後には酸化ストレスが低減し、滞在的抗酸化力が上昇したことが確認されています。これらは「向ホメオスタシス効果」と言われ、鍼には身体を最も望ましい状態に誘う力があり、これらまでの臨床研究で明らかになっています。
また、刺鍼による深部体温を上昇、もしくは正常化作用が確認されており、さらに過去行われた5,000人を超える大規模な検証では、血圧が高い人の場合は抑制し、低い人の場合は上昇させ、平常の人は変化しないという、血圧レベルを整える作用も確認されています。このように同じ鍼刺激でも体の状態によって正反対の効果を生じるとういう、科学的に説明が難しい鍼の効果が実証されています。
日本では腰痛や肩こりなど機能的な慢性疼痛が鍼灸の対象になることが多いですが、欧米ではアンチエイジングの代替治療として位置づけられています。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。