私たちの体の中では元々活性酸素を取り除く酵素を作ることができ、それが私たちの体を酸化から守ってくれる抗酸化酵素と言われるものです。この抗酸化酵素を活性化させることが日常の酸化ストレスからDNAの損傷やタンパク質の変性から身を守るために重要です。
抗酸化ピラミッドとは
抗酸化ピラミッドは、私たちの体を酸化から守ってくれる物質の優先順位を表したもので、そしてトップ3内は今まで聞いたことのない抗酸化物質ではないでしょうか。
ただし、このピラミッドでは分かりやすいように生体の防御機能を単純に高い低いで表していますが、実際は様々な栄養ももちろん大切です。抗酸化物質は種類によって消去してくれる活性酸素の種類が変わってくるため、一概にこれを食べておけばOKというものではなく、万遍なく摂取するのが大切です。
しかし、私たちは食事から摂取するだけの抗酸化物質だけでは当然、活性酸素の無毒化が間に合わなくなってしまうため、そこで大切になってくるのが体内で合成できるこのピラミッドの頂点に君臨するSOD、カラターゼ、グルタチオンペルオキシターゼなどの抗酸化酵素です。もちろんポリフェノールやビタミンなどの抗酸化物質を摂ることが老化防止に役立ちますが、実際は体でも抗酸化物質を作ることができ、むしろこちらの方が優先順位が高くなります。
抗酸化酵素を作るにはどんな栄養が必要!?
SOD
まずは抗酸化成分でトップに位置するSODを体内で生成するには亜鉛、マンガン、銅のミネラルが必須です。私たちの体で作られる抗酸化酵素の多くで大切なのがミネラルで、様々な酵素の働きを助けてくれる補酵素として活躍してくれます。逆にミネラルが足りないと抗酸化酵素を作ることができず、結果的に活性酸素が体内で増えてしまいます。
そしてSODでは、特に不足しがちな亜鉛がとても大切になります。SODは、細胞やミトコンドリア内に存在し、作られる場所はミトコンドリアです。さらに体内で最も抗酸化力が強いと言われている抗酸化物質で、主に私たちの体でよく発生するスーパーオキシドという活性酸素除去してくれます。その能力は1秒で10億個の活性酸素除去してくれると言われています。またスーパーオキシドは、ミトコンドリアから出てくる活性酸素のため、細胞の老化を直接防いでくれ、逆にSODが不足してしまうと細胞の酸化が一気に進んでしまいます。
実際に、マウスの研究でSOD欠損マウスを作ったところ、直ぐに死んでしまうという結果になっています。またSODは細胞に存在するだけではなく、血液中の結晶にも含まれていて血中の活性酸素を除去し、動脈効果を予防してくれたり、活性酸素と結びついて血管を傷つける超悪玉コレステロールができるのを防いでくれます。さらに高血圧や糖尿病の予防、肌荒れの改善やシミの改善といった幅広い効果があります。
このSODを含む食品には、アシタバやルイボスティがありますが、酵素のため胃酸で分解されてしまい食べ物からの吸収は難しく、不足しがちになります。そのため亜鉛を含む食品、卵、レバー、海藻、ナッツ、大豆製品、イワシやアジなどの青魚を意識して摂取しなければ亜鉛不足が起こり、SODがうまく作られなくなります。
カタラーゼ
カタラーゼの作用はSODがスーパーオキシドを分解した際に出る過酸化水素という活性酸素除去してくれる作用があります。実はSODだけでは、スーパーオシドを完全に無毒化することができません。SODはスーパーオキシドに働きかけてくれますが、この時点では毒性の弱い過酸化水素に変換されるだけで、完全に無毒化できません。もちろん過酸化水素は、それ自体は毒性が弱いものの鉄や銅などの金属イオンと結合することで活性酸素の中で最強の酸化力を持っているヒドロキシラジカルという物質に変化してしまいます。カタラーゼはこの過酸化水素を水と酵素に分解し、特に血液中の過酸化水素を完全に無毒化してくれます。
そしてカタラーゼを作る上で大切になってくる栄養素が鉄分です。鉄分も不足しがちな人がかなり多い栄養素であり、鉄分は気分の落ち込みやエネルギー生産にも大きく関わっており、特に女性に不足しがちな栄養です。これに加えて抗酸化酵素を作る材料としても使われており、カゼインは特に鉄分に強く依存する栄養のため鉄分不足が続くと過酸化水素が溜まり、ヒドロキシラジカルが体内で発生してしまいます。
またカゼインは肝臓に多く存在することも分かっていて、カゼインを欠損させたマウスでは肝臓障害や炎症、肝臓の細胞死が優位に増加することも分かっています。
グルタチオンペルオキシターゼ
グルタチオンペルオキシターゼは、過酸化水素によるヘモグロビンや細胞膜の酸化を防いでくれる作用があり、作るのに必要なのはセレンというミネラルです。このセレンは、カツオ、マグロ、ぶり、たらこ、カレイ、豚レバー、卵に多く含まれており、特に魚介類に多く含まれています。
1日の推奨摂取量は30から35mgで、セレンはグルタチオンペルオキシターゼの補酵素になるだけではなく、それ自体が抗酸化力を持っており、体を活性酸素から守ってくれます。
食べ物に含まれる抗酸化物質
これらの抗酸化酵素は、年齢と共に減り、特に40代くらいから加齢に伴ってミトコンドリアの質が低下します。これを防ぐには、ミトコンドリアの質を上げ、 活性酸素なるべく発生させない食事を心掛けたり、軽い運動をすることが大切になってきます。
活性酸素がミトコンドリア内で増えすぎるとSODが減少してしまい、その結果、活性酸素がミトコンドリア内にも外にも溢れていき、全身の老化につながります。これを防ぐにはミネラルをしっかり摂ることも大切ですが、ここで役に立ってくるのが食べ物に含まれる抗酸化物質です。
例えば、大根のイソチオシアネート、舞茸に含まれるβグルカン、大豆製品に多く入っているコエンザイムQ10やピロロキノリンキノン、サバやアジに含まれるオメガ3脂肪酸、お酢のクエン酸などが挙げられます。他にも欠かせないのが柑橘類に含まれるビタミンC、ナッツに含まれるビタミンEやマグネシウムなどもミトコンドリアを活性酸素から守り、ミトコンドリアの老化を防いでくれる大切な栄養素です。
コーヒーの健康効果
コーヒーに豊富に含まれているものがポリフェノールです。カフェインはコーヒー100gあたり約60g含まれているのに対し、ポリフェノールは約200mg含まれています。ポリフェノールは、植物由来の抗酸化物質で赤ワインのアントシアニンやお茶のカテキン、ココアのカカオポリフェノールが有名です。コーヒーに含まれるポリフェノールのクロロゲン酸以外にも、トリゴネリン、カフェストール、カーウェオールなどが含まれています。
そして抗酸化物質の主な働きに活性酸素を抑制する効果があります。活性酸素は、体の細胞や組織を錆びさせ、老化の原因であり、癌や生活習慣病のリスクを高める可能性があります。さらに活性酸素はシワやシミの原因でもあり、体に様々な悪影響を与える活性酸素の働きを抗酸化物質は打ち消す力があります。
また、抗酸化作用の他にコーヒーの健康効果には、動脈効果の予防が挙げられます。広島大学の研究によるとコーヒーを飲まない人と比べるとコーヒーを飲む人が内皮機能障害になる確率は45%低く、血管平滑筋機能障害の確率は50%低くなっています。
血管内皮細胞は、血管の内側を覆う細胞で血液の循環や血管の健康状態を維持する非常に重要な役割を持ちます。内皮機能障害になると動脈効果や心臓病、脳卒中などのリスクが上がります。
一方で血管平滑筋細胞は血管を構成する主な細胞で、プラークや血管壁構造の安定化に寄与します。血管平滑筋機能障害は血管平滑筋細胞が死んだり、老化したりすることによって血壁の脆弱化やプラークの不安定化が起こり、心筋梗塞や脳梗塞、大動脈瘤などの血管障害を引き起こす状態です。
しかし、コーヒーを飲むことで血管が丈夫になって動脈効果の予防だけでなく、脳卒中や心臓病のリスクを下げることにも繋がります。欧州心臓病学会の研究では、コーヒーを1日に最大3杯飲むと血管疾患による死亡のリスクが17%、脳卒中の発症リスクが21%、全ての原因による死亡のリスクが12%下がることが分かっています。この研究の結果、コーヒーを毎日飲んでいる人は飲まない人に比べると心臓のサイズや機能がより健康的であることが分かりました。つまりコーヒーは血管を丈夫にするだけではなく、心臓を若返らせる効果もあります。
また、コーヒーを飲むことは糖尿病の発症リスクの低下につがることも分かっています。国立国際医療研究センターの2009年の研究では、1日3から4杯の コーヒーを飲む人は、ほとんど飲まない人に比べて2型糖尿病の発症リスクが男性で17%、女性で38%低下することが分かっています。
さらに福岡県糖尿病患者データベース研究によれば、1日4杯以上の緑茶と2杯以上のコーヒーを飲むと約5年間で死亡リスクが63%低下し、さらにコーヒーを飲んでいる人では死亡リスクは1日1杯では19%低く、1日2 杯以上では41%低くなっていました。またコーヒーは肝臓癌の予防効果があることが様々な国の多くの研究で証明されています。
日本でも国立がん研究センターがコーヒー摂取頻度によるグループに分けて、その後の肝臓がんの発生率を比較しています。その結果、コーヒーをほとんど飲まない人と比べると毎日飲む人は、肝臓がんの発生リスクが半分に、1日5杯以上飲む人では1/4に低下しました。
他にも、コーヒーを飲むことで肝硬変の原因である肝線維化が進行するのを抑える効果や肝臓病で死亡するリスクを減らす効果も報告されています。さらに認知症のリスクを低下させることも報告されています。これはカフェインにアミロイドβの酸性抑制や除去促進効果があると考えられているからです。さらにコーヒー豆を焙煎する過程で生される苦成分のフェニルインダンは、アミロイドβの脳への蓄積を防ぐ作用があり、ポリフェノールの抗酸化作用は老化や細胞の損傷を防ぐ効果があると考えられています。
認知症のリスクについては、韓国の研究グループによればコーヒーを1日に2杯から4杯飲んでいる人はアルツハイマー病の発症リスクが21%低い結果となっています。またイギリスのアルツハイマー協会もカフェインが軽度認知障害や認知症に対して予防的に働いている可能性を指摘しています。
コーヒーの精神安定作用
朝の目覚めに温かいコーヒーを飲むとカフェインが交換神経を活性化し、眠気をすっきりさせてくれ、交換神経が高まって気持ちが高揚するためストレス解消やリラックス効果を得られます。さらにハーバード大学の研究調査によれば、コーヒー愛飲者はうつ病患者が少なく、1日に2杯から4杯のコーヒーを飲む成人は、自殺リスクが半減することになっています。
さらにコーヒーには脂肪燃焼を高める効果もあり、コーヒーのポリフェノールのクロロゲン酸には、ミトコンドリアを運ぶ酵素を活性化させる働きがあります。そしてミトコンドリアがエネルギーを生み出すのは脂質代謝、つまり脂質をエネルギーに変換することで行われており、その脂質の消費を促進して体脂肪を減らしてくれる効果があります。
また、カフェインは自律神経に働きかけてエネルギー消費を高めてくれます。具体的には、体内の新陳代謝を3%から10%促進させる働きがあります。そのため運動する20分 から30分前にコーヒーを飲むことで血中の脂肪酸濃度を上昇させ脂肪を燃焼しやすくなります。
1日4杯以上のコーヒーはNG
最近の研究では1日4杯以上のコーヒーを飲むと脳卒中になるリスクが37%増加する結果が出ています。1 日に飲む量を3杯までに抑えておくと脳卒中のリスクは変化しませんでした。また1日4杯以上のコーヒーの他に炭酸飲料やフルーツドリンクなどは脳卒中、または脳内出血のリスクを有意に増加させる研究結果もあります。特に炭酸飲料については脳卒中、または脳内出血のリスクが22%増となりました。フルーツドリンクは脳出血のリスク37%増となっています。
大豆の健康効果
がんの原因は、細胞が傷ついた時に発生する異常な細胞の塊です。しかし人間の体には免疫力がある体の中で発生した異常な細胞を排除してくれたり、細菌から守ってくれ、この免疫力がしっかりしていればがんになる細胞ができても排除してくれます。この免疫力が下がるのは、疲れや生活リズムが乱れなど様々な原因がありますが、その中でも食べ物の要因、つまり栄養バランスの悪い食事や少食や過食なども挙げられます。
そして大豆は世界の長寿地域で共通して食べられており、がんや糖尿病の予防を期待されていたり、更年期障害の症状も抑えてくれます。例えば中国の貴陽地域では、干し豆腐、発酵豆腐、豆腐麺など、この地域では徹底して大豆が食べられています。この地域を含め12箇所で血圧の数値を調べると、圧倒的に貴陽の人たちの血圧が低く、血圧が低いと脳卒中や心臓病も起きにくく、他にもコレステロール値が低くて肥満も少ない結果になっています。
大豆には生きる上で大事な3大栄要素(タンパク質、脂質、炭水化物)がバランスよく含まれおり、特にタンパク質は「畑の肉」と言われるほど豊富に含まれています。さらに植物性タンパク質はアミノ酸スコアで見ると、大豆は牛肉や豚肉、アジやシャケなどの肉や魚と同じ値となっています。また大豆は魚や肉と同じく良質なものです。それに加えて大豆は脂質やカロリーが低く、そして悪玉コレステロールを下げることが研究で分かっています。さらに更年期障害や骨粗鬆症、乳がんや前立腺がんの予防となり、ほとんどのがんの死亡率を下げてくれることが多くの研究から分かっています。
一方で大豆に含まれるイソフラボンが乳がんに効果があるだけでなく、前立腺がんに効果があります。前立腺がんはホルモン性のがんで、女性ホルモン作用を持つイソフラボンを取ると男性ホルモンの働きを抑えてくれ、その結果前立腺がんの進行を抑えてくれると考えられています。
実際、がんの発生はどの国でも大して変わりませんが、がん進行して発見されるのが欧米は10倍も多くなっており、その理由は大豆を食べているかどうか食生活の違いだとも言われています。例えば大豆を食べないイギリスは死亡率が高く、その反対に大豆を食べる地域の日本や中国は低くなっています。
また、岐阜大学医学部の高山コホートと呼ばれる研究では、高山市の市民3万人を対象に7年間追跡した大規模研究が行われ、まだ病気になってない人を対象に大豆食品の摂取量を調査しながら、どんな食生活で胃がん死したのか、それを調べてイソフラボンの摂取量でグループに分けて死者数と比べました。その結果、大豆食品を摂る量が少なかったグループに比べて、多く摂取したグループは胃がん死の危険度が半分近く下がった結果となりました。ちなみに大豆は1日60g、大体納豆が40gくらいのため納豆1つと半分くらい摂ると効果的と言われています。
因みにスペルミジンという物質があり、これはポリアミンという構造を持った物質と知られています。これらは細胞の中にあるものですが、食べ物からも吸収することができ、オートファジーを活性化させると言われています。オートファジーは日本語では自己貧食とも言われ細胞の中で不要になったものを食べたり、外へ排出してくれる作用です。そしてスペルミジンはオートファジーを活性化させてくれる物質で納豆には多く入っています。
このスペルミジンは納豆の他にチーズやキノコにも多く含まれています。また玄米や精製してない大麦、小麦などの穀物にも多く含まれています。中高年者829人の20 年間の死亡率を調査した疫学調査では、ポリアミド一種であるスペルミジンを多く摂取している人では死亡率が低いという結果も出ています。
ブロッコリーの健康効果
ブロッコリーの原産地はローマ時代にイタリアで栽培され、その後アメリカに広まりました。日本には海外の文化が広まった明治時代に伝わったと言われています。そしてブロッコリーも旬があり、1番美味しくて栄養価の高い時期が11月から3月頃のものです。
その豊富な栄養価にはビタミンCがまず挙げられます。実はビタミンCの王様であるレモンよりも豊富で、レモン1個120gに含まれるビタミンCの量は20mg、それに対してブロッコリー100gに含まれるビタミンCは約120mgです。さらに茹でても54mg含まれています。1日に推奨されているビタミンCの量は100mgであり、茹でたブロッコリーを食べるだけで半分は摂れることになります。
次に多く含まれている成分がタンパク質、そしてビタミンE、葉酸、カリウム、クロム、食物繊維がバランスよく含まれています。また葉酸は妊婦さんは積極的に摂る方が良く、血を作るビタミンと言われています。そして注目されているのが、がん予防効果です。その成分がスルフォラファンです。
これはアブラナ科の野菜に含まれているファイトケミカルの1つで、ファイトケミカルは植物からできる科学物質であり、生きていくために必須の栄養素ではありませんが、様々な病気を予防する効果があると期待されています。スルフォラファンを含むアブラナ科の野菜には、カリフラワー、菜の葉、大根、キャベツ、カイワレ大根に含まれています。
このスルフォラファンは、強い抗酸化作用を持っており、タンパク質や脂質が酸化するのを防ぐ作用があります。さらにスルフォラファンは、SOD酵素などの抗酸化酵素を活発にさせ、また増えすぎた活性酸素からのダメージを減少させる働きもあります。他にも抗酸化作用を活発にさせる働きや解毒酵素の合成を促進させる作用もあります。例えば解毒酵素は肝臓で作られますが、体の中の有害物質を無毒化にする作用があり、不規則な生活習慣ストレスや疲労で解毒酵素を作り出す力が徐々に衰えるため、スルフォラファンで解毒酵素を活発にさせて解毒酵素を高めることができます。
またスルフラファンは、シミやそばカスの原因になるチロシナーゼの働きを抑制し、その結果メラニンが作られる力が弱くなり、シミやそばカスができにくくなります。
【本コラムの監修】
・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。