鍼灸で血圧を下げる

    鍼灸で血圧を下げる

    生活習慣病のひとつである高血圧で悩まれる方(高血圧症)は約4,300万人いると言われています。日本高血圧学会から「高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)」が発表されおり、血圧の状態を正しく判断し適切な治療が推奨されています。

    高血圧の原因になる理由として、もともと高血圧になりやすい体質、加齢による血管の老化、塩分の摂過ぎ、肥満、運動不足、ストレス、飲酒や喫煙などが挙げられます。これらの原因が重なり合って血圧が高くなるケースがほとんどであり、大部分が原因が特定できない高血圧を本態性高血圧といいます。

    血圧と毛細血管

    血液は体の隅々の細胞に酸素と栄養を届、同時に細胞の代謝によって生み出された老廃物や二酸化炭素を回収するという機能があります。このような大切な働きをしている血液を運ぶ道路が血管です。特に最も重要な血管に毛細血管があり、この毛細血管の太さは髪の毛の1/10と言われるほど細いものです。

    私たちの毛細血管を傷つける二大原因として塩分と糖分の2つが挙げられます。私たちの体には甲状腺、またはホメオスタシスと呼ばれる機能が備わっており、血圧や体温などのバロメーターを常に一定に保とうとする体の機能があります。このホメオスタシスには優先順位があり、血液に限って言うと濃度>温度>血圧の順で優先順位が高いと考えられています。つまり濃度を一定に保つために温度が変動したり、逆に温度を一定に保つために血圧が変動したりなど体の中で優先して甲状腺を保つべきバロメーターが決まっています。あらゆる液体において濃度と体積とはトレードオフの関係にあり、濃度はその液体に溶けている体積あたりの溶質の量のことなので、体積が上がれば濃度は減少し、逆に体積が減少すれば濃度は上がります。

    少し難しいですが、血中の塩分濃度を下げるためには、血の体積を上げる必要があります。つまり塩分過多になってしまった血液を大量の水で薄めることで中和します。塩辛い食べ物を食べると喉が渇くのは、このように血液濃度を下げるためです。血液濃度が下がると血液中の水が増えることで、今度は血圧が上がってしまいます。もちろん毛細血管はある程度を可塑性があり、拡張したり収縮したりすることはできます。しかしその拡張能力には限界があり、毛細血管に流れる血液の体積が増えると血圧が上がることになります。

    このような血圧の上昇が慢性的に続いてしまった場合、当然血管には大きな負担がかかり、血管は簡単に破綻してしまいます。また血管を傷つける理由として糖分によるダメージも問題視されています。昔から糖尿病の人は血管系の病気のリスクが高いことが分かっており、それは血液中に含まれる糖が動脈を内側から傷つけてしまうことが原因です。

    塩は健康の敵!?

    塩の摂り過ぎは体に悪いと言われ、確かに世界的に見ても日本人の塩分摂取量は多く、高血圧の原因ともされています。高血圧になる人が増加する一方で、減塩商品も増えていますが、塩は生きていく上で欠かせない重要なミネラルです。人の体内では血液に乗せて必要な栄養素を全身に送っており、血液の主成分はナトリウムと塩素で、それは言うなれば体液です。

    人の体は60兆も細胞からできおり、細胞の間は体液で満たされ、細胞はナトリカリウムやカリウムのバランスを取りつつ生命維持の役割を果たしています。塩分を摂り吸収されると体液として働き、そして尿として排泄されます。塩分は血液中に多すぎても少なすぎてもいけないため、このように調節されています。

    例えば、ナトリウムが汗で排出され、しっかりと補給されないと低ナトリウム血症となり、めまい、吐き気、だるさ、頭痛などの症状が現れます。またナトリウムは神経が働くためにも使われており、ナトリウムのバランスを調整することで運動したり、考えたり、神経伝達などの電気的なシグナルを伝えることで活動ができています。

    ちなみに塩分摂取量は、日本の厚生労働省の指針として男性では1日に7.5g、女性は6.5gとされており、さらに日本高血圧学会では1日に6g、世界保険機関WHOでは5g未満とされています。実際の日本人の平均食塩摂取量を見ると男性で10.9g、女性で9.3gとなっています。

    また、東北と九州に住む人の塩の消費量と高血圧と死亡率についての調査では、九州の人々の平均塩分摂取量は14g、東北は28gで、九州の人の高血圧の発症率は20%、東北の人は40%という結果となりました。塩分摂取量も2倍で発症率も2 倍となり、高血圧の原因は塩の摂り過ぎによるものと断定されています。

    しかし、九州と東北では気候は大きく違い、食文化も同じ日本とは言え大きく異なり、特に寒い東北では運動量に大きな違いがあることや、調査母数の少なさから疑問視される調査内容となっています。

    また、日本人の平均塩分摂取量は昔よりも減っているにも関わらず、高血圧の患者は約4300万人いると推定されています。特に40代から70代の男性60%、女性40%、75歳以上は男性74%、女性は70%で、ほとんどの日本人が高血圧となっており、日本は世界の中でも高血圧患者が多いと言われています。

    これまでの調査は塩分摂取量を対象にしていましたが、インターソルト研究という別の調査があります。世界32各国52の地域を対象に疫学調査した研究があります。それまでの調査方法は、食事の内容から塩分摂取量を測定して推定する流れでしたが、インターソルト研究では尿を採取して塩分摂取量を計測しています。

    その結果、多数の地域では塩分接種量と高血圧の関連性は見い出せていません。逆に塩分摂取量が増えると血圧が下がる結果が出た地域もありました。1日14gの塩分摂取をしていた地域と1日6gの塩分摂取をしていた地域を比べると、1日6g摂取の地域の方が血圧が高かったという結果があります。

    また、高血圧のラットを用いた実験で、1/3低塩分の餌、通常の塩分の餌、10倍の塩分の餌を与えるグループかつ水は塩に対して1%だけ与えられました。30週間、血圧、体重、成長、むくみを観察し、好きなだけ水を飲めたグループ3に関しては血圧に違いは見られませんでしたが、水を制限されたラットは血圧上昇の後になくなっています。

    つまり実験の結果によって水で薄めれば、塩分量による違いはないことが分かり、塩分と高血圧の関係がないことが分かっています。これは水分を摂ることで体内のバランス調整をしており、水の摂取が少なかったことにより体内のバランスが崩れて排泄ができなかったことが原因になったからです。そのため塩分の摂取量ではなく、体内バランスを保つことが重要なことが分かっています。

    他にも、味噌汁には当然塩分が含まれていますが、高血圧に影響しません。しかもこの根拠を発表したのが日本高血圧学会です。また味噌汁は高血圧に影響しない以外にも血管年齢を若返らせる効果もあります。

    一方で、アメリカで行われた国民栄養調査のデータで食塩の摂取量と罹っている病気の関連を調べており、食塩の摂取量と高血圧患者には関連性がほとんど見られませんでした。さらに心筋梗塞に始まる心疾患患者の死亡率は塩分摂取量の多い人が低いことが分かっています。逆に塩分摂取量が低い人は心疾患による死亡率が高い結果となっています。

    血圧と悪玉コレステロール

    私たちの体には傷ついた毛細血管を修復するためのメカニズムが備わってい ます。実は、そのメカニズムの担い手が悪玉コレステロールです。毛細血管の弾力性を作っているのが血管内皮細胞で、その細胞の膜はコレステロールを原料としています。そのコレステロールを肝臓から血液中に運ぶものこそが悪玉コレステロールです。

    善玉コレステロールは、血液中から肝臓に戻っていくコレステロール、悪玉コレステロールはその逆で、悪玉コレステロールは肝臓から血管に出ていくのは、塩分や糖分によって傷ついた血管内皮細胞を修復するためです。

    しかし、悪玉コレステロールが血管修復の過程で血管を線維化させたり、最悪の場合には詰まらせたりしてしまう悪者の面もあります。このように傷ついた血管内皮細胞を修復する過程で動脈が弾力性を失うと動脈硬化になり、動脈硬化が進行すれば血管が詰まり、心筋梗塞や動脈塞栓などの病気も発症します。

    高血圧を改善する方法

    高血圧には自覚症状がほとんどありませんが、血圧が高い時にみられる自覚症状としては、頭痛、肩こり、めまい、むくみ、動悸などがあります。しかしこれらの症状があったとしても高血圧特有の症状と考える方は少ないです。そのため自覚症状がないからと放置する方が多くいます。そのまま放置すると、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、慢性腎臓病(CKD)、糖尿病、不整脈などの合併症を引き起こし、その後の生活に大きな影響を及ぼす恐れがあります。

    ピーナッツ

    ピーナッツに含まれている成分には、血圧を下げる効果があることが認められています。ハーバード大学の研究によると、30年間に12万人の食生活を調べた研究において死亡率を大きく下げる食材の一つにピーナッツがあったと報告されています。この実験結果をもとに様々な研究者がピーナッツの効能を調べたところ、ピーナッツには飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸がバランスよく含まれ、悪玉コレステロールを下げたり、血管を丈夫にしたりする効果があることが分かっています。

    おすすめの食べ方は、塩を使っていない皮付きのピーナッツで殻を剥いた時についてくる渋皮も一緒に食べることです。渋皮にはポリフェノールが多く含まれ、高い抗酸化作用と血圧降下作用が期待できます。ただしピーナッツはカロリーが高めなので1日の摂取目安量は20粒程度です。またピスタチオもピーナッツと同じくポリフェノールやカリウムなどのミネラルを含んでいます。

    ほうれん草

    ほうれん草は、豊富なβカロテンによって活性酸素の働きを抑えて、老化を止めてくれるという素晴らしい食品として知られています。しかしほうれん草の注目すべき栄養素は、βカロテンの働きだけではありません。ほうれん草に含まれる栄養素で注目すべきはミネラルです。ほうれん草に含まれているミネラルの1つにカリウムがあります。

    塩分を摂り過ぎると血圧が上がるのは、その中に大量のナトリウムが含まれているからです。人の体はナトリウムを多く摂取すると血液中にナトリウムが流れ込み、血液の濃度が濃くなってしまいます。血液の濃度が濃くなるとそれを薄めようとして大量の水が血管の中に流れ込み、大量の水が血液の量が増え、パンパンに膨らんだ風船のように血管の壁にかかる圧力が増えることで血圧が一気に上がります。

    ほうれん草に含まれるカリウムは血圧を下げて、血管が傷つくのを予防してくれる効果があります。カリウムによって血液中のナトリウムが排出されて、血液の濃度が薄まると血液の濃度が薄まり、今度は逆血液中から水が逃げていくことになるため、体内に循環している血液量が少なくなり、その結果血圧が下がってくれます。

    杜仲茶とキャバ茶

    お茶はポリフェノールの一種であるカテキンが多く含まれ、血圧の上昇を抑える効果が期待できます。さらに血圧を下げるのに最適なお茶が杜仲茶とギャバ茶です。杜仲茶とはその名の通り杜仲という中国原産の木の若葉を乾燥・焙煎したもので樹皮は漢方の材料にも使われている栄養価の高い植物です。杜仲茶に含まれているゲニポシド酸と呼ばれる物質が、血圧を下げる有効成分として知られています。

    このゲニポシド酸には、副交感神経の活性を高める働きがあり、血管の筋肉である平滑筋が緩まることで血管が広がるため血圧が下がります。またゲニポスド酸にはLDL酸化抑制機能があり、悪玉コレステロールの酸化による動脈硬化などを防ぐ効果も期待できます。実際に九州大学で杜仲茶を使用した研究において、杜仲茶に血圧を下げる効果が確認できたことが報告されています。

    キャバ茶には、ギャバと呼ばれるガンマ・アミノ酪酸というアミノ酸が多く含まれています。ギャバは抑制系の神経伝達物質として働くことが明らかになっており、脳機能の改善効果や高血圧を改善する効果が確認されています。

    お酢

    お酢の成分である酢酸は飲むとアデノシンという血管拡張物質の分泌を促すため、血管が広がって血圧を下げる効果が期待できます。ミツカンの研究所の報告によると、血圧が高めの男女64人に大さじ1杯の食用のお酢を10週間飲んでもらったところ、高い方の血圧が6.5%下がり、低い方の血圧が8%も下がったという結果が発表されています。

    高カカオチョコレート

    カカオ70%以上の高カカオチョコレートに多く含まれているエピカテキンなどのカカオポリフェノールには、血圧を下げる効果が確認されています。エピカテキンは消化されると小腸で吸収され、全身の血液に送り出されます。そして血管内部の細胞に染み込んで血管の炎症を抑え、血流を良くするという働きが期待できます。特に高血圧の患者さんは大抵血管内部に炎症を起こしていて、血管が狭くなって血液が通りにくくなるため血圧が高くなってしまいがちです。そこをエピカテキンが炎症を抑えることで血管の通り道が広がり、血液の流れが改善するので血圧が下がるというわけです。

    また、体に良いからと高カカオチョコレートをまとめて食べるのはNG です。効果的な食べ方は、少量の高カカオチョコレートを1日に数回に分け、例えば25gのチョコレートを1日5回に分けて食べるのが理想と言われています。なぜなら消化されたエピカテキンが血液中にとどまることができるのは3時間程度だからです。

    さらに、チョコレートの原料であるカカオ豆にはカリウムも豊富に含まれてい ます。カリウムはナトリウムとバランスを取りながら、血圧や細胞膜の浸透圧を調整する役割を果たすとともに、余分なナトリウムを排出するため血圧の上昇を抑える効果が期待できます。その他にカリウムが多く含まれている食材は ほうれん草、納豆、ひじき、バナナ、アボカドなどが挙げられます。

    もずく(フコイダン)

    内因性の酸化LDLの原因は、sd-LDLという悪玉コレステロールですが、もずくにはsd-LDLの血中の値を下げてくれる効果があります。もずくが持つsd-LDLを下げてくれる栄養素を「フコダイン」と言います。フコダインは水溶性食物繊維で、水溶性食物繊維は水に溶けて循環油の役割をすることで便の排泄を促してくれます。

    しかし、食事から水溶性食物繊維を摂取するのは簡単なことではありません。しかしもずくであればスーパーで1食ずつパックになって売られており、日々の食卓に導入するのは容易です。またフコダインには、血中のsd-LDLを下げてくれる以外にも抗酸化作用や抗アレルギー作用、さらには抗がん作用まであるとされています。また肌の細胞も活性酸素によって錆び、細胞の酸化がシワやシミなどのお肌の老化の原因となるため、フコダインが持つ抗酸化作用によって、肌の細胞老化を防ぐことができます。

    魚の粗汁

    魚の粗汁に含まれているEPAやDHAなどのオメガ3系の多価不飽和脂肪酸は、血液中のHDLコレステロールを上げ、LDLコレステロールを下げてくれる働きがあります。

    スパイス

    ニンニクや生姜などのハーブやスパイスにはビタミンやミネラルといった抗酸化物質が大量に含まれています。継続的に食べることで悪玉コレステロールを下げる効果があることが様々な研究によって分かっています。研究によれば1日1辺のにんにくを3ヶ月食べるだけで、総コレステロール値を9%も下げることができたという結果が出ています。またスパイスやハーブには抗酸化物質が含まれています。

    下り階段

    高血圧の改善を目指す上で塩分制限などの食事療法と並行して、毎日の適度な運動は非常に効果的です。そこで、お手軽運動が移動の際に階段を使うことです。階段を利用するこれだけでもかなりの運動効果を期待できます。

    ただし、高血圧の人にとっては上り階段を急いで駆け上がると血圧が急激に上昇してしまい心肺機能に高い負荷をかけてしまう恐れがあります。そのため階段は上りを使わずに下りの時だけ階段を使用すると、血管に負担をかけずに適度な運動量を確保できます。実は運動効果という観点では、階段の上りと下りの効果はほぼ変わりません。少しばかり上りの方が消費カロリーが多い程度です。また階段の上りで使う筋肉は通常の歩行時に使っている筋肉と同じである一方で、下りで使う筋肉は普段は使わない筋肉であることも明らかになっています。

    横向きで寝る

    適度な運動も心がけているのに、なぜか高血圧が改善されない方は睡眠時無呼吸症候群の疑いがあります。近年、睡眠時無呼吸症候群は高血圧や糖尿病の原因の一つであることが分かってきています。

    検査方法は簡単で、睡眠時の血中酸素飽和度を測定するだけです。95%の酸素飽和度が維持されていれば問題ありませんが、95%を割り込むことが就寝中に度々ある場合は睡眠時無呼吸症候群と診断されます。特に自覚症状がない病気であるため、気がついた時には高血圧や高血糖になっている恐れがあります。

    この睡眠時無呼吸症候群は、主に肥満や体質が原因で発症する病気です。また睡眠時無呼吸症候群の方は呼吸を復活させるために交感神経が興奮して覚醒反応が起きるため血圧が上昇してしまいます。睡眠時に脈拍が大きく変動する状態が続くと、血管が傷んで動脈硬化が進み高血圧の体質になります。

    対策が仰向けではなく横向きで寝ることです。仰向けに寝ると睡眠中に軟口蓋が重力で下がって軌道を塞いでしまいます。横向きになれば軟口蓋が喉に降りてこないため軌道がふさがることを減らすことができます。つまり横向きで寝るようにすれば無呼吸が発生しなくなるため、それに連動する形で発症していた血圧の上昇を抑えることができます。

    アロマテラピー

    アロマテラピーは、伝統医学や民間医療に分類されるため正式な医学とは認められていません。しかし数多くの臨床によって、その効能が実証されています。特に有名な効能の一つがラベンダーの血圧を下げる効果です。ラベンダーの香りが自律神経系に与える影響については様々な研究で実証されています。その原理は、ラベンダーの香りが副交感神経を刺激するため気分がリラックスして 血圧が下がります。またラベンダーの香りを嗅ぐだけでなく、湿布にして皮膚から浸透させることも有効であることが実証されています。

    しかし、アロマのすべてがリラックス効果を発揮して血圧を下げる効果があるというわけではありません。例えばローズマリーに含まれているカンファーは 血圧を上げる効果があると言われています。例えばカンフル剤は強心剤のことで弱った心臓を刺激する作用がありますが、カンフル剤の由来から想像できるようにカンファーを含むローズマリーの香りは血圧を上げて体を活性化させる作用があります。従って朝血圧が低くて調子が出ない低血圧の方には、ローズマリーがおすすめになります。このようにアロマと一口に言っても体質や体の状態によって使用した方がいいものと使用すべきではないものがあります。

    減塩で血圧が下がる!?

    高血圧の原因として塩分過多が挙げられ、減塩や塩分控えめが当然のように推奨されています。しかし塩にも良い塩と悪い塩があります。そもそも塩は私たちが生きていく上で必要不可欠な物質です。イギリスの論文で食塩摂取量が最も多いグループの死亡率が最も低く、食塩摂取量が最も少ないグループの死亡率が最も高いという結果が発表されています。

    塩そのものが問題なのではなく、塩の質が重要で、実は日本で生成されているほとんどの塩は海水中の塩素イオンとナトリウムイオンだけを抽出しおり、純度99%と非常に高く、ミネラル分がほとんどない精製塩になっています。スーパーなどで販売されている食塩、食卓塩、クッキングソルトといった食用塩は質が低い塩です。また醤油や味噌、漬物、梅干しなどに使われている減塩の多くはオーストラリアやメキシコから安価で輸入されており、この減塩にもミネラルはほぼ含まれていません。つまり塩の問題というのは、現在出回っているほとんどの塩がほぼ塩化ナトリウムしか含まないことが問題なのです。

    塩化ナトリウムが体内で分解されると、ナトリウムイオンがカリウムなどのミネラルと組んで体にとって重要な働きをしてくれます。しかしミネラルとのバランスが取れていないと、ナトリウムイオンの濃度だけが異常に高くなります。このナトリウムイオンは、筋肉を硬直させる性質があり、筋肉で作られている血管を硬くします。その結果、血液を送り出すために高い圧力が必要になります。これが高血圧の原因になります。つまり高血圧の原因は、塩自体ではなくナトリウムイオンにあり、その他のミネラルのバランスが崩れることが体に悪い影響を及ぼすことになります。

    私たちは塩以外にも、日常的に化学調味料からナトリウムを摂取しています。一方で重要なミネラルのカリウムは天然塩や海藻類、納豆、里芋、野菜といった食材に含まれていますが、現代の加工食品中心の食生活では十分に摂取できていません。つまり単に減塩して塩分量を減らしてもナトリウム過剰、かつカリウム不足の状態は改善されません。

    ミネラルバランスが崩れた状態が続くと、体は本能的に塩辛いものが食べたいという欲求が生まれることになります。そこでまた塩化ナトリウム99%の化学精製塩を摂ると、ナトリウム過剰になりさらに塩を欲するようになって、塩分依存症となります。塩辛いものが食べたいという欲求が起きたら塩不足ではなく、ミネラル不足を疑う必要があります。

    大切なのはミネラルバランス

    高血圧の原因はナトリウムの過剰ですが、逆にナトリウムが不足してもまた問題となります。ナトリウムもまた体内で重要な働きを担う必須ミネラルの一つです。例えば筋肉や心臓、そして神経も細胞の外側がナトリウムで満たされることで正常に働くことができます。このナトリウムの体内含有量は約100gで備蓄量は多くありません。例えば大量の汗をかくと、ナトリウムが排出されて不足し、血圧が下がって倦怠感を覚えたり、ひどい場合はふらつきを起こしてしまいます。

    地球上に92種類のミネラルが存在すると言われており、そのうち生物は約30種類で構成されています。そして人が生きていく上で体外から摂り込まなければならないミネラルが16種類あります。この16 種類を必須ミネラルと呼びます。さらに2つに分類することができ、マグネシウム、カリウム、カルシウム、リン、硫黄、ナトリウム、塩素の7種類が必須主要ミネラルです。その他のセレニウム、銅、亜鉛、コバルト、鉄、ヨウ素、クロム、マンガン、モリブデンの9種類が必須微量ミネラルとなります。

    海藻にはこの必須ミネラルの16種類が全て含まれて、海水の構成要素は不思議 なことに人の体液と非常によく似ています。しかし海水はニガリ成分が多くなるため、製塩技術によって人に理想的なミネラルバランスにすることができます。

    そこで自然塩を選ぶことが大事なのですが、自然塩は大きく分けて海水から作られる海の塩と、岩塩から取れる山の塩があります。そし海水は必須ミネラルが全て含まれている良質な塩です。岩塩はもともと海だったところが陸地に囲まれて数千年数万年かけて海水が結晶化してできたもので、原料自体は海水です。岩塩は塩化ナトリウム以外のミネラル分が先に結晶化する性質があるため、現在採取できる外側の層の岩塩はナトリウムの含有量が多く、海水塩よりもミネラル分が少なくなります。

    因みにこの結晶化したミネラル分は、長い年月をかけて地底深くで地下水に溶け込んでいきます。このミネラルをたっぷり含んだ地下水が、ヨーロッパなどで取れるミネラルウォーターです。日本の国土は火山灰であるため、土の中にも水の中にもそれほどミネラルは含まれていません。そのため日本人はミネラル分が不足しがちになるため、古来から海水塩でミネラルを補うという食生活が続けられてきたのです。

    桑の葉茶で生活習慣病予防

    加齢と共に健康診断の結果に血糖値や血圧、中性脂肪の赤字が並び始めます。それは加齢によるホルモンバランスの変化と共に代謝の低下は起こり、これまでと全く同じ食生活や生活習慣をしているにも関わらず、一気に生活習慣病のリスクに直結しやすくなってしまうからです。

    そんな時にこそお勧めしたいのが桑の葉茶です。桑の葉は古くから日本で薬用茶として親しまれ、近年では複数の臨床試験で健康効果が裏付けられている素晴らしいスーパーフードです。

    桑の葉茶の最大の特徴は、デオキシノジリマイシンという天然成分を豊富に含んでいることです。これは糖の分解酵素であるα-グルコシターゼの働きを抑え、食後の血糖値の上昇を緩やかにしてくれる効果があります。さらに桑の葉茶には、カリウムやマグネシウム、ポリフェノールなどもバランスよく含まれていて、総合的な生活習慣病予防が期待できます。

    研究によると、桑の葉のデオキシノソジリマイシンを摂取して30分以内に食事を摂ることで、食後血糖値の上昇を優位に抑制できることが確認されています。これは桑の葉に含まれているデオキシノソジリマイシンが、デンプンが糖質に分解されるのを遅らせてくれる効果を持っているからです。それによって糖尿病が予防できるだけでなく、食後の眠気や集中力の低下、さらには肥満防止にも有効であることが分かっています。

    また、別の研究によると桑の葉の抽出物を含む飲み物を12週間継続摂取した中高年で、血圧が優位に低下したことが分かっています。これは桑の葉に含まれているカリウムが利尿を促進してくれるためだと考えられています。さらに桑の葉に含まれる有効成分が血管機能を改善してくれるため、血流が改善して血圧が自然に下がってくれます。

    さらに、別の研究によると桑の葉茶の摂取によって中性脂肪とLDLコレステロールの低下が確認されています。これは桑の葉の食物繊維が腸内で脂質の吸収を抑えてくれることに加えて、抗酸化成分がLDLコレステロールの酸化を防いで、動脈効果の進行を抑制するためと考えられています。

    鍼灸で高血圧を改善

    鍼の血圧を下げる効果は多数の研究結果が発表されており、鍼による血圧の改善が期待できるのは自律神経にアプローチできるからです。なぜなら心臓や血管の動きは自律神経に影響を受けるからです。

    例えば動脈硬化、脂質異常症、糖尿病、腎不全、心不全などで血液が流れにくくなると、血圧を上げなければ末端の毛細血管まで血液が巡らなくなります。また人の血液量は体重の1/13と言われており、肥満の方は体液量が多くなり、全身へ血液を送る心臓への負担が大きくなります。

    一方で、体はpH7.4の弱アルカリ性を保持していますが、食事での塩分の摂取量が多くなると血液と細胞内体液を薄めるために水分が多く必要になり、全身体液量が増加します。肥満と同じように心臓に負担がかかるため、腎臓がフル回転して血液を浄化させますが、いずれ疲労していきます。

    ここまでは、全身に多くの血液を送る心臓への負担(1回拍出量)ですが、もう一方に心拍数があります。心拍数を多くして全身への血液量を増やす反応は、自律神経機能によって調整されます。つまり自律神経の交感神経機能が亢進すると心筋機能が亢進して、心拍数が上昇するため高血圧に繋がります。また血管にも自律神経によって拡がったり縮んだりしています。同じく末梢血管も自律神経調節で行われています。

    もちろん、高血圧は自律神経の影響だけではなく、上記に述べた肥満による体液量の増加、腎臓のナトリウム排泄能の低下、レニン・アンジオテンシン系の亢進、血管収縮物質の増加、血管拡張物質の減少などが挙げられます。 

    鍼治療は選択の一つでありますが、このように食事や運動との併用による総合的なアプローチが必要になります。その他にも慢性症状や慢性疾患の多くが自律神経のバランスの乱れが原因になっています。

    【本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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