EMSで表情筋ケア

    EMSで表情筋ケア

    EMS(電気刺激療法)は、筋肉や運動神経に電気刺激を与えて筋肉を収縮させるものです。顔用EMSは電気的刺激によって筋肉を強制的に動かし、鍛えにくい表情筋を効率的に鍛えられます。顔用EMSで即効性が期待できるものとして、フェイスラインのリフトアップ、目がパッチリと開く、眼精疲労の改善、顔の緊張がゆるむなどが挙げられます。一方で顔用EMSを継続することで効果が表れるものとして、フェイスラインのひきしめ、たるみの解消、くすみ、むくみ、シワの改善が挙げられます。

    表情筋とは

    私たちのさまざまな表情をつくる表情筋は、およそ20~30種類あるとされています。目や眉の表情に主に関わる眼輪筋、皺眉(しゅうび)筋、前頭筋や口角を上げる表情に関わる大頬骨筋、小頬骨筋、頬筋、笑筋などがあります。その中から表情に大きく関わる口筋と呼ばれる口周辺の表情筋とその役割は以下になります。

    大頬骨筋口角から側頭部につながり、口角を上や外側に大きく引っ張る表情筋。大きな笑顔を作るときに作用する。
    小頬骨筋頬骨から上唇につながっている表情筋で、口元を斜め上に引っ張る役割がある。自然な笑顔づくりに欠かせない筋肉。
    笑筋エラから口角にかけて伸びている表情筋で、口角を横に引っ張る役割がある。笑筋の収縮によりエクボができるが、筋力が低下すると口元がだらしなく見える。
    咬筋咀嚼筋とも呼ばれ、物を噛む時に必要な筋肉。衰えるとほうれい線の原因になる。
    上唇挙筋小鼻の下から鼻の横にある表情筋につながっており、微笑んだり泣いたりするときに動く表情筋。上唇挙筋の筋力が低下すると、顔全体がたるんだ印象になる。
    口輪筋口周りを円状に囲んでいる表情筋。口を閉じたりすぼめたりするときに使われる他、口元の微妙な表情づくりに欠かせない。他の表情筋ともつながっているため、顔の表情全体に大きく影響する。
    口角挙筋上顎の犬歯辺りから小鼻の横に伸びている表情筋。口角を下や斜めに引く筋肉で衰えると口角と下アゴにかけてのたるみの原因になる。
    下唇下制筋下唇の両側より少し内側から下顎周辺に伸びている表情筋。下唇を下に引っ張る役割があり、不満や誠実さのある表情を作る際に使われる。
    頬筋両頬の下側にあり、上下の顎から口の両側に伸びている表情筋。口角を斜めに引き上げる役割や、頬を膨らませたりしぼませたりする役割がある。衰えると口角が下がる原因になります。
    頤筋下唇の中央下部から顎にかけて伸びている表情筋。衰えると二重アゴの原因になるため、頤筋を鍛えることで、二重顎解消につながる。

    これらの筋肉はひとつだけで運動することはないため、周囲の筋肉と協働しています。また表情筋も他の筋肉と同様に、あまり使わないと衰えていきます。つまり無表情で筋肉を使う機会が無ければ、筋肉が細くなっていきます。

    実は、日常的に使われている表情筋は、全体の30%程度と言われています。残りの約70%の表情筋は、日常的に使われておらず、年齢に関係なく衰えていきます。表情筋が衰えると、顔を引き上げる力が低下し、たるみなどの原因になります。

    深層筋とは

    一方で深層筋とは、身体の深い位置にある骨と骨をつなぐ筋肉で、単関節筋とも言います。この深層筋には、骨格を安定させ、姿勢を保持する役割があり、この働きが弱まると身体は歪み、その結果、肩・首こり、腰痛、眼精疲労、冷えなど数多くの不調を引き起こすと考えられています。

    そして、私たちが普段使っている筋肉の大半は、身体の表面にある筋肉の浅層筋です。これらは自分の意思で筋肉を動かせる筋肉で、この浅層筋が実質の関節の働きを担います。その奥で深層筋は表層筋のサポートし、関節の調整を行っています。つまり筋肉と骨を連携させるために、繊維状の強固な深層筋が、浅層筋の働きを支えています。

    そしてお顔の筋肉の90%以上は薄い表情筋で構成されていて、深層筋がほとんどありません。顔の浅層筋は、皮筋(表情筋)と言われ、皮膚と皮膚をつないでいます。例えばお顔の中で顎関節と連動している深層筋は、側頭筋、口腔筋(外側翼突筋)、(内側翼突筋)の3つと、咬筋(厳密には表情筋)です。これらは咀嚼筋といわれ、主に口腔内の筋肉です。お顔の深層筋の衰えは、たるみやほうれい線につながります。

    深層筋

              

    ほうれい線、シワと表情筋の関係

    表情筋は骨格筋のひとつであり、それらの筋肉は両端が骨につながっていますが、表情筋のいくつかは皮膚や唇などの軟部組織に付着しています。そのため筋肉が衰えて細くなり、収縮力が弱まると、付着している部分がたるんでくることになります。

    例えば、大頬骨筋や小頬骨筋などが衰えると頬のたるみにつながり、さらに筋肉量が減少するとハリがなくなり、ほうれい線が深くなると考えられます。目元のシワも眼輪筋など目元の筋肉の衰えやハリの減少が原因の一つになります。

    実は、たるみやシワをつくる原因の一つに、生活習慣による「筋肉のクセ」があります。硬く収縮した筋肉は、骨を引っ張り、皮膚が引っ張られて、たるみやシワの原因になります。さらに筋肉が硬直すると、血液やリンパの流れが滞り、余分な水分や老廃物がたまり、むくみます。その結果、さらに筋肉の動きが悪くなり、細胞には十分な酸素や栄養が行き渡らずに、新陳代謝の働きが低下し、ハリがますます失われていまいます。

    表情筋

    表情筋を鍛えると、筋肉が太くなり、収縮力が高まります。つまり鍛えることで筋肉の可動域が広がり、つまり動かしやすくなり表情が豊かになります。その結果、収縮や弛緩を繰り返すことで筋内に貯留する血液量が増え、血流が良くなり、血行が良くなります。

    効果的に鍛える方法としては、意識して表情筋を使っていくこと以外にも、EMSを使うのが良いでしょう。なぜなら疲れを感じるくらいまで動かすトレーニングができるからです。また表情筋のように、普段あまり鍛えていない筋肉に負荷をかける際は、ウォームアップも大切です。やはり温めてから表情筋のトレーニングするのが好ましいでしょう。 筋力は4週間で変わると言われているため、継続して続けることが大事です。他の筋肉(骨格筋)と同じように、表情筋も何歳からでも鍛えられるので、続けて鍛えていくことを心がけましょう。

    表情筋を鍛える

    深層筋と表層筋をバランスよくほぐすのが美しい筋肉を形成するポイントです。お顔の表情筋の中で口角の動きや口元の印象に大きく影響するのが口角下制筋です。

    口角下制筋は、奥歯でものをかむときに使われる筋肉で、頤三角筋とも呼ばれています。下唇の両側から下顎にかけて扇のように広がり、特に上唇と口角を下に引っ張る役割があります。

    口角が下がる

    口角下制筋が凝り固まって下がってくると、年齢より上に見られたり、不機嫌な印象を持たれたりします。そのため明るい表情を作るためにも口角下制筋を鍛えて、顔のたるみを防ぐことが大切です。ただし発達しすぎてしまうと、口角を下に引っ張る力が強くなり、所謂「への字口」になります。

    特に食いしばりや歯ぎしりの癖がある方は、口角下制筋がガチガチに固くなっています。また過度なストレス、猫背姿勢、無表情、食事で噛む回数が少ないなどでも口角下制筋が発達する傾向にあるため、口角下制筋が凝り固まっている可能性が高いでしょう。

    ほうれい線が目立つ

    口角下制筋が凝り固まって口角が下がってくると、ほうれい線が目立つようになります。ほうれい線は、鼻唇溝(びしんこう)とも呼ばれ、年齢にかかわらず誰にでもありますが、加齢や頬のたるみなどでほうれい線の溝が深くなると目立つようになります。

    このほうれい線の対策のひとつが、頬全体の筋肉をほぐすことです。頬骨の周辺は、多くの表情筋が集まっており、これらが衰えると、皮膚を支えきれずに垂れ下がり、ほうれい線を深くしてしまいます。

    特に鼻の脇にある上唇挙筋、上唇鼻翼挙筋、頬骨からつながり口角を引き上げるときに働く大頬骨筋、小頬骨筋のコリ固まりをほぐし、筋肉の弾力を取り戻すと肌の内側からリフトアップさせることができ、ほうれい線だけでなく、目頭から斜め下に垂れ下がるゴルゴラインも改善し、立体的な頬が表れます。

    ほうれい線

    マリオネットライン

    マリオネットラインもほうれい線と同じく、口角下制筋の口角を下に引っ張る力が強くなり、凝り固まることでできてしまうシワです。このマリオネットラインができると、無表情でもシワが見えてしまうため、老けた印象につながってしまいます。

     お顔がたるむ

    口角下制筋が凝り固まって口角が下がってくると、顔のたるみにつながります。なぜなら表情筋の多くが、顔の皮膚や脂肪を支える筋肉だからです。口角下制筋が凝り固まって下に引っ張る力が強くなると、頬を中心に顔全体の皮膚や脂肪が十分に支えられなくなります。その結果、お顔がたるみ、老けた印象になってしまいます。

    ただし、顔のたるみは口角下制筋の凝り固まり以外の原因もあります。例えばあごの関節には、固いものを食べる時には20~30kg、睡眠中の歯ぎしりでは100kgもの負荷がかかっています。その結果、咀嚼筋の中でも大きな「咬筋」が緊張し、顔を歪めてバランスを崩し、口角を下げる原因になります。特に咬筋の下部は硬くなりやすいため、念入りにほぐすとフェイスラインのたるみや口角の下がりが期待できます。

    EMSで表情筋ケア

    シワ・くすみの改善

    顔用EMSの刺激は肌の真皮層に働きかけ、コラーゲンの生成を促す効果も確認されています。また柔軟な筋肉には水分保持する力があり、顔用EMSを使用すると弾力が回復し、その結果、お肌の水分量が上がり、透明感のある肌へと変化していくことが期待できます。

    ターンオーバーの改善

    顔用EMSの電気刺激は血流促進効果があります。血流が促進されることで、皮膚にも栄養がきちんと行き届くようになり、老廃物が流され、肌の新陳代謝がよくなります。血流不良により乱れていたターンオーバーの改善が期待できます。

    たるみ・むくみの改善

    顔用EMSは電気刺激によってピンポイントで鍛えたい筋肉を鍛えることができます。お顔の筋肉を鍛えることによって、たるみの引き締め効果が期待できます。また電気刺激によって循環を良くすることで、顔のむくみを改善する効果が期待できます。

    【専門的】EMS電気刺激療法)の特徴

    EMSは、筋肉がやせ細っていくのを抑制する(骨格筋タンパク分解が抑制される)可能性が高い方法だと言われています。例えば運動不足の人でも、EMSによって筋力低下を最小限に抑えることが可能で、近年では慢性期におけるEMS効果はほぼ確立されており、研究や臨床現場において広く用いられるようになっています。

    この電気刺激による筋肉の収縮は、自分で筋肉に力を入れて動かせる随意収縮とは違います。EMSは、電気刺激で筋肉を収縮させるので、自分の脳からの信号で筋肉を収縮させることではありません。

    そして弱い強度の運動では遅筋が収縮し、運動の強度が強くなるにつれて速筋が収縮します。このように筋繊維は,運動の強度によって運動に参加する線維と割合が決まります。ちなみに随意収縮では,主動作筋全体に収縮が入ります。また筋の収縮力が弱い場合には遅筋のみ収縮し、速筋の収縮は入りにくいです。

    一方で、EMSによる筋肉の収縮は、電極の近くの浅い筋肉に収縮が入りやすくなります。また遅筋線維と速筋線維の収縮が、非選択的に生じます。つまり速筋線維にも筋肉の収縮を入れることが可能です。つまりEMSは、表面の筋肉が収縮しやすく傾向もあるものの、速筋も収縮しやすいということが挙げられます。

    EMSの注意点

    顔用EMSの使用の際の注意点として筋肉疲労(筋肉痛)が挙げられます。長時間使用すればそれだけ効果が出るわけではありません。EMSの注意点として、EMSの刺激強度に依存して生じる低頻度疲労・低周波疲労(LFF:Low Frequency Fatigue)が挙げられます。

    LFFは、低周波刺激(10~30Hz)によって生じる筋出力の低下(疲労)と言われています.LEFの特徴としては、筋力低下後に回復に数時間から数日間必要なことや、筋の代謝的・電気的な障害とは無関係に残存することが挙げられます。つまり筋肉を鍛えるつもりが、返って力が入らず、回復にも時間がかかる場合があり、さらに刺激強度によっては、痛みが生じた症例もあります。

    特に20Hz程度の低周波で筋肉を刺激すると、筋収縮を促したあとにLEFが生じやすく、そこにはCa(カルシウム)イオンが関係していると言われています。なぜなら筋細胞の中で、筋の収縮を起こすのは筋原線維ですが、筋原線維が発揮する張力は、細胞質遊離カルシウム濃度によって調節されているからです。

    いずれにせよ、刺激強度が弱いところから始めて、徐々に強度を調節、筋力強化の恩恵を受けるためには繰り返し行い、かつ刺激強度を調整することが大事です。

    本コラムの監修】

    恵比寿院長

    HARRNY 院長/鍼灸師 菊地明子

    ・経歴
    大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

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