幸福に感じる瞬間は人それぞれですか、科学的には人はなぜ「幸せ」を感じるかが解明されつつあります。それは「幸せ」は脳内に幸せホルモンが溢れている状態です。この幸せホルモンには、オキシトシン、セロトニン、ドーパミンがあり、幸せを感じている時には、これらの脳内物質が分泌されていたとうことです。
哲学的に幸せとは何かと考えるのではなく、科学的に幸せを考えれば、ものすごくシンプルです。つまり科学的に「幸せ」になる方法は、幸せホルモンを分泌させる行動をとることです。
幸せホルモンのオキシトシン
キシトシンはホルモンの一種で、愛と絆に関係するホルモンで愛着ホルモンとも呼ばれています。オキシトシンは、脳の視床下部で作られて全身に運ばれます。特に母親が分娩時に子宮の収縮を促して陣痛を誘発させ、出産後も子宮の回復を助けたり、母乳の分泌を促進することが分かっています。そして出産前後の時期に分泌が急激に増えることで母性を高めるとも言われています。このように親子の愛情が強くなる以外にも、恋人同士の絆も強める効果もあると言われています。つまりオキシトシンのおかげでパートナーとの絆が強まり、長く一緒にいられるのです。
一方でオキシトシンは、ハグしたり手をついだりすると分泌され、出産の時や授乳の時にも大量に分泌されます。また研究によれば配偶者との絆を強める働きがあるだけでなく、動物を対象としても分泌されることが報告されています。つまりスキンシップよるオキシトシンが社会的な行動や信頼感に大きな影響 を与えることが分かり、人間関係を良くするための鍵であることも明らかになっています。
心と体を幸せにするためにオキシトシンを分泌させる方法は、そんなに難しいものではありません。例えば研究では、可愛い動物の動画を見るだけでも、ペットに触れるだけでも良いですし、植物を育てることでも分泌されることが分かっています。
また、人に親切にするだけでも、オキシトシンは分泌されることが分かっており、別名「親切の物質」と言われる所以です。「人に親切にすることで幸せになれます」というのは綺麗事かもしれませんが、脳科学的には、実際にオキシトシンが分泌されて幸福感を感じるのです。ブリテッシュコロンビア大学の研究によると、不安感を抱えている人が親切な行為をするだけで、不安感が減りポジティブな気分になれるということも示唆されています。
さらに人に親切にすることは病気のリスクまで下げてくれるという研究もあります。57歳〜85歳の成人を対象とした研究では、ボランティア活動が体内炎症のレベルが低いことと最も強い関連性があったということです。
一方で、相手にも自分にも感謝をするだけでも、幸せになるというのも科学的に正しいというのが解明されています。感謝をすると脳内にオキシトシンやエントルフィンが分泌されて、人が前向きになったり、幸せを感じたりします。
オキシトシンのメリット
愛情を持って人や動物、植物に触れ合うと脳内でオキシトシンが分泌され、人は幸せを感じます。さらに幸福感以外にも、不安やストレスがなくなることも分かっています。
人は外部からストレスを感じると、体内にはストレスホルモンであるコルチゾールが分泌されます。そのステレス過多が続くと、頭痛、胃痛、メンタル疾患へと繋がってしまいます。オキシトシンは、ストレスに過剰反応した体をケアし、平常な状態に戻してくれる効果があります。つまりオキシトシンがストレスホルモンの分泌を抑制してくれることが研究によって示唆されています。
また、オキシトシンには他人を信頼できるかどうかにも関わっていると言われています。ある研究では、オキシトシンの量が多ければ多いほど相手への信頼度合いが高くなるそうです。私たちは良質な人間関係を作ることは極めて重要であり、他人を信頼して強い絆をつくることが何をするにしても大切です。
オキシトシンの健康効果
オキシトシンの健康効果については、例えば認知機能が改善されるという研究があり、記憶力や学習能力がアップすると言われています。そしてアンチエイジング効果も期待でき、筋肉の増量も助けたり、体力もアップするという研究もあります。またオキシトシンが多い人は、ストレスが緩和されて安定した気持ちで日々を過ごせます。さらに人とのコミュニケーションが円滑になる効果もあり、優しくなったり協力的になったりすることが多いと言われています。
また、オキシトシンは、脳の扁桃体や視床下部に作用してリラックスや安心感をもたらすからです。これらの部位は感情の制御やストレス反応に関わっており、オキシトシンがストレスホルモンの分泌を抑え、その結果分泌が多い人は気持ちが安定すると考えられています。
このようにオキシトシンが不安や心配を緩和するのは、副交感神経が有意に働いて心身ともにリラックスするからです。また心臓にも影響を与えることが分かっており、オキシトシンは心臓の受容体に働きかけ、血管を広げて血圧を下げる効果があります。また心拍数も低下してストレスから心臓を守ります。そしてオキシトシンが免疫機能を調整し、炎症反応を抑える働きがあることが分かっています。
炎症は体の自然な反応ですが、過剰になると病気の原因になりますが、オキシトシンはそのバランスを取ることで健康を維持します。そのためオキシトシンが少ないと体の炎症反応が過剰になって病気のリスクが高まります。他にも認知機能の低下が挙げられます。つまり記憶力や集中力が落ち、うつ症状も出やすくなって気持ちが落ち込みやすくなったり、やる気が出なくなります。
その他にも言語的コミュニケーションの障害も起こることがあり、言葉がうまく出てこず、その結果コミュニケーションが難しくなることもあります。そして筋肉の痛みも感じやすくなり、体がだるくて痛みを感じることが増えます。さらに睡眠の質も低下してしまい、寝つきが悪くなったり、熟睡できなかったりします。
また肥満の場合、脂肪細胞が大きくなって 炎症性サイトカインという物質を出します。それが体中に広がり、様々な臓器に影響を与えます。例えば糖尿病であれば膵臓に慢性炎症が起きてインスリンの分泌が悪くなり、それが原因で血糖値のコントロールが難しくなります。それだけでなく脂肪細胞から出たサイトカインが血流に乗って全身に広がると動脈効果の原因にもなります。そして血管が固くなると血流が悪くなって心臓病や脳中のリスクが高くなります。
感謝の気持ちで若返る理由
若さのためには内面性も大切であることが分かっています。内面性が充実していると心の問題から来るストレスが減ることで酸化ストレスが減少し、実際に細胞が若えることが知られています。また見た目の若々しさとはそもそも何なのかを調べた人間工学の実験では、私たちは人の年齢を判断する時にシワやシミといった表面的なものだけではなく、表情に大きな比重を置いていることが報告されています。つまり例えシワや法令線といった表面的な老いの要素があったとしても、表情が明るくて生き生きしているだけで若く見えることが分かっています。
具体的にどのようにしたら毎日を生き生きと過ごすことができるのか、その秘訣が感謝の気持ちです。私たちの心の健康は体の調子と同じで常に変化するものですが、大切なことは日々の心の変動を受け入れながらも、心の振れ幅を最小限にすることです。私たちの心というのは、プラス方向であってもマイナス方向であっても極端に動いた時に感謝の心を忘れがちになります。何か良いことがあった時も悪いことがあった時も、感謝の気持ちを持つことで感情を抑えて朗らかな気持ちで過ごすことができるはずです。
このような効果は、科学的にも証明されており、様々な研究によって感謝の気持ちを持つことでセロトニンやノルアドレナリンといったホルモンが増えることが分かっています。逆に感謝によって炎症物質であるサイトカインやストレスホルモンであるコルチゾールが減り、血圧や心拍数が下がることも確認されています。サイトカインやコルチゾールは、急速に細胞を老化させることが分かっていますので、科学的にも感謝の気持ちは見た目の若さに直結することが証明されています。
「ありがとう」を言う習慣
実は感謝の気持ちは、自分から人に伝えても、人から自分に伝えられてもどちらも人生の幸福度が高まることが知られています。カリフォルニア大学の研究によると感謝を伝えることでストレスが軽減され、幸福感が増大するとともに健康にも良い影響があることが報告されています。
私たち人間は社会的な動物であり、どれほど自分自身が満たされたとしても、それだけで幸福になることはできません。幸せになるには他者の存在が必要で、人の役に立ち、人に感謝されることで初めて社会的な幸福感を満たすことができます。しかし日常生活で人から感謝される機会は、早々ないかもしれませんが、そこでやって欲しいのが自分に対する感謝です。
私たちの脳は、イメージと現実をはっきりと区別できません。それと同じく、私たちの脳は自分で自分にかけた言葉と他人が自分にかけた言葉を明確に区別しません。つまり私たちが自分に感謝の気持ちを伝えると脳はまるで他人にありがとうと言われたように錯覚します。そのため自分に感謝の気持ちを伝えることで感謝を伝えるメリットと感謝されるメリットの両方を享受することができます。そして寝る前に自分自身に感謝をすれば幸福感に包まれ、とても安らかな気持ちになることができます。
栄養素と神経伝達物質
心と栄養素は無関係のように思いますが、心は脳で生み出されるものであり、脳も他の臓器と同じように食べ物の影響が非常に大きい器官です。例えば脳の神経伝達物質の材料となるタンパク質が不足すると、幸福感や意欲落ち着きを生み出す神経伝達物質がうまく作れなくなります。またタンパク質が神経伝達物質に合成されるためにはビタミンB群、鉄、亜鉛などの栄養素が必要となります。特に生理中の女性は鉄欠乏に陥りやすいので、生理中は普段よりも気持ちが沈んだり、鬱っぽい気分になってしまいます。
そこでまず心がけて欲しいのが十分なタンパク質の摂取です。気持ちが沈んだ時は大豆製品や魚、卵、お肉などからタンパク質を摂取して心のパーツともいえる神経伝達物質の材料を補給しましょう。神経伝達物質の合成を促す亜鉛は記憶力を保つ役割や認知症予防効果も期待されている重要なミネラルです。亜鉛が最も豊富に含まれている食べ物は牡蠣ですが、牛肉や豚レバー、煮干し、ごま、うなぎや海苔などにも含まれています。
また、2017 年のアメリカの研究によると生理が始まった思春期の女の子は、同年代の男子の2倍も鬱になる可能性があることが分かっています。これは生理によって体内の鉄が不足することで脳の神経伝達物質の合成が滞ってしまうことが原因です。
まずはシュガーフリー
人間工学の実験では、私たちが人の見た目を判断する時に重要な要素は、生き生き感、目力、透明感、シワやたるみ感の4つです。このうち生き生き感や目力は内面性や性ホルモンに関係しており、一方で透明感やシワやたるみといった表面的な問題は、身体の健康に基づいていることが分かります。
体の健康を維持してお肌の透明感をアップし、シワやたるみを予防するには、最も手っ取り早く効果が出る方法が「シュガーフリー生活」です。お肌から透明感が失われ、シワやたるみが出てしまうのは簡単に言うとお肌の細胞の老化が原因です。そしてお肌の細胞の老化には大きく分けて3つの原因があり、それは酸化、炎症、糖化です。
このうちお肌の酸化は、主に紫外線が原因のため紫外線対策が必須です。次の炎症に関しては腸内環境の乱れや睡眠不足、心理的なストレスなど様々な原因があります。これについては生活習慣を正していくことで少しずつ改善していく他ありません。そして糖化は、これら3つのうち最も排除するのが簡単です。糖化は、細胞が糖と結びついて エイジスという老化物質に変わってしまうことを言います。エイジスは、細胞の焦げのことであり、当然黒ずんで硬くなってしまいます。皮膚の細胞が糖化すれば当然、透明感は失われシワが増えてしまいます。
この細胞の糖化を止める方法がシュガーフリー、すなわち砂糖の摂取を控えることです。糖化の原因となる糖は、具体的には血糖のことで、砂糖を食べて血液中に糖が流れ込むと血糖が上がりますが、そのような糖が血管を通って全身の細胞に運ばれて糖化反応が起きてしまいます。
そしてシュガーフリーは見た目の若々しさだけではなく、体の中の健康や脳の若さにも関係しています。例えば長い期間に渡って砂糖を取り続けた人は、寿命が10から20年短くなってしまう研究報告もあり、砂糖は心血管疾患や糖尿病、癌といった様々な病気に深く関係しています。
オキシトシンを増やす方法
研究によると、15分間の背中のマッサージで血液中のオキシトシン量が増加することが確認されています。マッサージが効果的なのポイントは、温かい手でゆっくりと、手のひら全体で優しく圧をかけることです。強く押しても痛いだけで効果はありません。また触れられる側だけではなく、触れる側のオキシトシンの分泌も高まります。他にも人との会話や動物との触れ合い、スポーツ、新しいことにチャレンジすること、親切な行動でもオキシトシンの分泌が高まります。
そして日々の生活の中で小さな幸せを見つけることも大事で、それがストレス解消になるため、幸せを感じるだけでオキシトシンが分泌されます。つまりストレス発散する行動でオキシトシンが出て、その結果ストレスがさらに発散さて好循環になります。また東邦大学の論文「スキンシップと団欒はオキシトシンを介してストレスを解消させる」では、スキンシップでストレスを解消させることも検証されています。
美容鍼灸とオキシトシン
オキシトシンを効率よく分泌させためには、例えば赤ちゃんとお母さんの関係を考えてみると分かりやすくなります。赤ちゃんとお母さんはオキシトシンを増やすヒントが沢山あり、例えば授乳、見つめ合う、匂いを嗅ぐ、鳴き声を聞くこと、これらがオキシトシンの分泌を促進します。
これらは赤ちゃんとお母さん限定ではなく、それ以外でもオキシトシンが分泌されることが分かっています。ここで重要なのが触覚刺激で、皮膚刺激による興奮が脳に伝えられて心地よさを感じるとオキシトシンが放出されることが分かっています。そのためオキシトシンの分泌には、マッサージも効果的なことが分かっています。
カリフォルニア大学の研究(2012年)によるとオキシトシンはマッサージによって分泌されることが分かっています。研究では15分のマッサージを受けるグループと、マッサージは受けずに静かに休憩するグループに分けて、血液検査を前後でしたところ、前者はオキシトシンが有意に上昇していることを発見しています。また2015年の研究では、マッサージを受けている人だけでなく、マッサージをしている人のオキシトシンレベルも増加することが分かっています。
マッサージが効果的なのポイントは、温かい手でゆっくりと、手のひら全体で優しく圧をかけることです。強く押しても痛いだけで効果はありません。また触れられる側だけではなく、触れる側のオキシトシンの分泌も高まります。
これらの研究のベースには、人とのスキンシップによってオキシトシンが分泌されるということがありますが、同じく鍼灸によっても同じ効果が期待できるでしょう。さらに鍼灸による皮膚刺激が、感覚神経を伝わり脳内への影響し、様々な脳内物質が分泌されます。その結果、オキシトシンの分泌だけでなく、痛みの鎮痛作用、心の緊張状態の緩和、ストレス軽減につながることが分かっています。
【本コラムの監修】
・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。