
敏感肌というと、乾燥してカサカサし、ピリピリと刺激を感じやすい肌を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。ところが実際には、皮脂の分泌が多くベタつきや毛穴の開きが目立つのに、ニキビができたりかゆみや赤みが出たりする「脂性敏感肌」と呼ばれるタイプも存在します。
近年の研究によって、敏感肌には乾燥性のものと脂性のものという二つの系統があることが明らかになってきました。今回は、これまであまり詳しく語られてこなかった脂性敏感肌がなぜ起こるのか、そして三つのタイプに分かれるという最新の知見をもとに、それぞれどのようなケアが必要なのかを紹介していきます。
敏感肌には「乾燥タイプ」と「脂性タイプ」がある
問診を通じて見えてくるのは、敏感肌が一種類ではないという事実です。多くの人がイメージする敏感肌は、乾燥してカサつき、少しの刺激でもヒリヒリしてしまうタイプでしょう。しかし実際には、これとは正反対に、皮脂が多くテカりやすく毛穴も目立つのに、ニキビや赤み、かゆみといった敏感肌特有の症状を併せ持つ人も増えています。
このタイプは近年「脂性敏感肌」と呼ばれるようになりました。見た目の印象だけで乾燥肌用のケアを選んでしまうと、かえって症状を悪化させてしまう恐れがあるため、まず自分がどちらのタイプに当てはまるのかを知ることが大切です。
脂性敏感肌セルフチェック
自分が脂性敏感肌かどうかは、いくつかのサインから見当をつけられます。次の項目に当てはまるものが多いほど、脂性敏感肌の傾向があると考えられます。
- Tゾーンや顎はテカるのに、頬や目元・口元はつっぱる・カサつく
- 化粧水がしみたり、ピリピリ・赤みを感じることがある
- 小さなニキビや吹き出物を繰り返しやすい
- 洗顔直後はさっぱりするのに時間がたつとベタつく
- 季節の変わり目や生理前に肌の調子が乱れやすい
肌研究では、これらは皮脂の多さと、その下でバリア機能や水分保持が追いついていない状態が重なって起こると考えられています。当てはまる項目が多い方は、皮脂を取り除くケアに偏らず、うるおいを守りながら刺激をためないケアへ切り替えるのが第一歩です。あくまで目安のため、肌トラブルが続く場合は皮膚科など専門機関に相談しましょう。
2025年の研究が明らかにした脂性敏感肌の正体
脂性敏感肌が本当に存在するのかと疑問に思う方もいるかもしれません。この点について、2025年にScientific Reports(サイエンティフィック・リポーツ)に掲載された研究が手がかりを与えてくれます。この研究は17歳から34歳までの女性200名を対象に行われ、肌の感覚的な訴えだけでなく、水分量やバリア機能、炎症の指標となるヘモグロビンやポルフィリンの量など、客観的なデータを用いて脂性敏感肌の実態を調べたものです。
その結果わかったのは、単に皮脂の量が多いだけではなく、バリア機能そのものが低下していること、皮膚の知覚神経が過敏になっていること、そしてベースに炎症が存在していることでした。皮脂が多いのになぜ肌トラブルが起こるのかという疑問は、こうした複数の要因が絡み合っていることで説明できるのです。
皮脂が多いのは顔全体ではない
皮脂が多いといっても、実は顔全体が均一に脂っぽいわけではないことも、この研究から見えてきました。脂性敏感肌の人はTゾーンの皮脂量が多い一方で、頬の皮脂量はそれほど多くなく、むしろフェイスラインや顎はTゾーンと同程度に皮脂が多いという結果が出ています。この違いが生まれる理由は、フェイスラインや顎の皮脂腺が、皮脂分泌を促すアンドロゲンというホルモンに反応しやすいためです。
アンドロゲンの影響が強く出ると、フェイスラインや顎の皮脂腺の働きが活発になります。そのため、顔全体を一律に皮脂オフケアしてしまうと、皮脂の少ない頬の部分では水分がかえって奪われてしまい、赤みが出たり乾燥したりする一方で、フェイスラインや顎はケアが不十分なまま残ってしまうという、部分ごとのアンバランスが生じやすくなるのです。自分の肌でどの部位に皮脂が多いのかを観察し、部位に応じてケアを変えることが重要だといえるでしょう。
できやすいのは小さなニキビ、そのメカニズム
脂性敏感肌のもう一つの特徴として、ニキビができやすいことが挙げられます。ただし思春期にできるような大きなニキビではなく、ポツポツとした小さなニキビが目立つ点が特徴です。皮脂の量が多いと角質が厚くなりやすく、毛穴の中で角質と皮脂がともに増えることで詰まりが生じます。この詰まりが小さなニキビへとつながっていくのですが、そこにはアクネ菌が多く関わっていることもわかっています。
アクネ菌がポルフィリンという代謝物質を作り出すことで、さらに炎症が促進されてしまうのです。そのため、この小さなニキビはアクネ菌を殺菌するだけでは改善しにくく、まずは炎症そのものを抑えることが優先されます。ここまでをまとめると、脂性敏感肌はTゾーンやフェイスラインに皮脂が集中する一方で頬は皮脂が少ないため部位別のケアが必要であること、そして皮脂による炎症でバリア機能がさらに低下してしまうため炎症を抑えるケアが欠かせないことという、二つの前提を押さえておく必要があります。
脂性敏感肌の3つのタイプ
脂性敏感肌はさらに三つのタイプに分けられることがわかっています。一つ目はバリア機能の低下によって症状が出る「バリア型」、二つ目は皮膚の知覚神経が過敏になることで症状が出る「神経型」、三つ目は炎症そのものが主体となる「炎症型」です。これら三つは単独で現れることもあれば、複数が重なって出ることもあります。自分がどのタイプに近いのかを知ることで、より的確なケアを選べるようになるでしょう。
バリア型のケア
バリア型は、肌のバリア機能が低下して水分がどんどん逃げてしまうことがきっかけとなり、そこから炎症が起こり、炎症によって皮脂の分泌がさらに増え、その皮脂がニキビを悪化させるという悪循環に陥っているタイプです。どれだけ皮脂を抑えようとしても、水分を保持する力そのものが低下していては、ニキビの改善にはつながりません。そのため、このタイプはまずバリア機能を立て直すことを最優先にする必要があります。
皮脂が多いからといってさっぱりとした洗浄力の強いアイテムだけを選ぶのではなく、バリアを整えるセラミドや、細胞間脂質を生成するアミノ酸などを取り入れることが重要です。加えて、肌の修復を助けるパンテノールや、水分を抱え込んで肌荒れを防ぐ天然保湿因子系の成分も取り入れながら、バリア機能を整えることを最初の目標にしてください。
神経型のケア
神経型は、バリア機能の低下に加えて、皮膚の知覚神経が常に過敏な状態になっているタイプです。髪の毛が触れただけでもヒリヒリしてしまうのが特徴で、赤みやニキビは比較的少ない傾向にありますが、放置すると悪化しやすい点に注意が必要です。まだ赤みが目立たず、ニキビも少ないけれど皮脂が多くてむずがゆさを感じるという段階の人は、早めに手を打っておきたいタイプだといえます。
このタイプでは、神経の過敏性を落ち着かせることが最優先になるため、刺激の強いピーリングやゴシゴシとした洗顔、化粧水を何度も叩き込むようなケアは避けるべきです。またアンドロゲンによる皮脂分泌の増加はストレスホルモンの影響でも起こりやすいため、神経型の人はストレスの多い生活や不規則な習慣によって皮脂がさらに増えてしまう傾向があります。皮脂そのもののコントロールだけでなく、生活習慣を見直しストレスを緩和していくことも合わせて行うとよいでしょう。
炎症型のケア
三つのタイプの中でもっとも多いと考えられているのが炎症型です。このタイプは肌に炎症が起こっている状態で、赤みの量も多く、炎症の影響でメラニンの生成も進みやすいため、三タイプの中では肌のトーンが暗く見えやすいという特徴があります。慢性的に炎症が続くと、表皮だけでなく真皮にもダメージが及び、コラーゲンやエラスチンが壊れてしまうことで、実際の年齢よりも肌が老けて見えてしまうこともあります。
このタイプでまず取り組むべきは炎症を鎮めることです。グリチルリチン酸やトラネキサム酸、アラントインといった成分を取り入れることがポイントになります。また紫外線は炎症のスイッチを入れる要因にもなるため、日焼け止めは欠かせません。ピリピリするような刺激の強いスキンケアは一旦お休みにし、とにかく炎症を抑えることに専念してください。
脂性敏感肌の人が避けるべきNG習慣
脂性敏感肌の人が避けたほうがよい習慣についてまとめます。まず、ザラザラとしたスクラブや力を込めたゴシゴシ洗顔は、肌のバリア機能をさらに低下させてしまうため避けるべきです。また、毛穴を引き締めたいからといって、さっぱりタイプのアイテムだけで済ませてしまうのもおすすめできません。セラミドなど肌のバリアを整える成分がしっかり配合されていながら、使用感はさっぱりしているというアイテムを選ぶのが理想的です。
さらに、強いピーリングや積極的な毛穴治療にすぐに取り組みたくなる気持ちもわかりますが、まずは敏感な状態そのものを落ち着かせてからでなければ、そうした攻めのケアはかえって逆効果になってしまいます。睡眠不足やストレスも見過ごせない要因で、フェイスラインなどに繰り返しできるニキビには、ストレスによる皮脂の増加が関係していることも多いため、生活習慣の見直しもケアの一部として意識しておきましょう。
脂性敏感肌と生活習慣・食べ物
脂性敏感肌のゆらぎには、スキンケアだけでなく毎日の生活習慣も関わると考えられています。睡眠不足やストレスが続くと自律神経やホルモンのバランスが乱れやすく、皮脂の分泌や肌の敏感さに影響することがあるとされています。食事の面では、甘いものや脂っこいもの、味の濃いものにかたよると、肌のコンディションが乱れやすいと言われています。
東洋医学では、こうした食習慣で体に余分な熱や湿気がこもった状態を「湿熱(しつねつ)」と呼び、皮脂やニキビと関わりが深いと捉えます。野菜や水分をほどよくとり、脂質・糖質にかたよらないバランスのよい食事、湯船で体を温める、睡眠のリズムを整えるといった土台づくりが、肌のゆらぎと付き合ううえで役立つと考えられています。特定の食品が肌を治すわけではありませんが、体の内側から整える意識が、外側のケアを支えてくれます。
スキンケア選びのポイント
基本的な洗顔の仕方としては、Tゾーンや顎のあたりはしっかりと洗う一方で、頬の部分は優しく洗うというように、部位によって力加減を変えることが望ましいといえます。アイテム選びでは、毛穴を詰まらせにくいノンコメドジェニック処方のものを選びつつ、細胞間脂質や天然保湿因子を補うセラミドやアミノ酸、抗炎症作用のある成分を積極的に取り入れるとよいでしょう。また日焼け止めは毎日欠かさず使うようにしてください。
世の中には乾燥性敏感肌向けをうたったアイテムが多く、敏感肌用と書かれた製品の多くが油分を含んでいたり、乾燥肌向けの処方になっていたりすることも少なくありません。そのため、自分が脂性敏感肌だと気づかずに乾燥性敏感肌向けのアイテムを選んでしまうと、症状が改善しないどころか悪化させてしまう可能性があります。
敏感肌向けブランドとして知られるキュレルにも、乾燥性敏感肌向けの青いラインと、乾燥性でありながらベタつきも気になる人向けの緑のラインがあるように、同じブランドの中でもタイプ別に商品ラインが分かれていることがあります。自分が乾燥性敏感肌なのか脂性敏感肌なのかを見極めたうえで、アイテムを選ぶようにしてみてください。
東洋医学・鍼灸から見る『脂性敏感肌』
東洋医学では、皮脂の多さや繰り返す小さなニキビを、体に余分な熱と湿気がこもった「湿熱(しつねつ)」の状態と関わりが深いと捉えます。甘いものや脂っこいもの、味の濃いものを摂りすぎると湿熱がたまりやすく、それが肌のベタつきや吹き出物としてあらわれると考えるのです。また、皮膚は東洋医学でいう「肺」、消化は「脾(ひ)」「胃」と関わるとされ、胃腸の疲れやストレスによる自律神経の乱れが、皮脂バランスや肌の敏感さに影響すると捉えます。
テカっているのに内側はゆらいでいるという脂性敏感肌の状態も、単なる皮脂過多ではなく、体の中のめぐりや水分の巡りのアンバランスとして読み替えることができます。表面の皮脂を取り除くことばかりに意識を向けるのではなく、こもった熱や湿気を上手に発散し、気血水のめぐりを整えるという発想が、肌のゆらぎと付き合ううえでのもうひとつの視点になります。なお、これらは東洋医学における考え方であり、現代医学的な治療効果を示すものではありません。
セルフケアに使えるツボ(合谷・曲池・足三里)
肌の調子が気になるときは、めぐりや胃腸のはたらきを整えるとされるツボをやさしく押してみましょう。1つ目は「合谷(ごうこく)」。手の甲、親指と人差し指の骨が交わる少し手前のくぼみにあり、顔まわりのめぐりや不調が気になるときの目安として広く知られるツボです。

2つ目は「曲池(きょくち)」。ひじを曲げたときにできるしわの外側の端にあり、体にこもった熱を発散したいときの目安にされます。

3つ目は「足三里(あしさんり)」。膝のお皿の外側のくぼみから指四本分下にあり、胃腸のはたらきを整えたいときによく使われるツボです。

押し方の目安は、息を吐きながら「気持ちいい」と感じる強さで3〜5秒、数回ほど。肌に炎症や傷があるところは避け、強く押しすぎない、痛みが出たらやめる、妊娠中や持病のある方は事前に専門家へ相談する、といった点に気をつけてください。ツボ押しは体調を整えるセルフケアの一助であり、体感には個人差があります。
美容鍼灸・インディバという選択肢
セルフケアに加えて、体の土台となるめぐりやコンディションを整える選択肢として、サロンでのケアもあります。美容鍼灸は、顔や体のツボ・筋肉に鍼でアプローチし、気血のめぐりや自律神経のバランスを整えることを目指すコンディショニングとして知られています。またインディバは体を深部からじんわり温めるケアで、冷えやめぐりが気になる方の体づくりの一助として取り入れられています。
日々のコンディションを整える選択肢の一つで、肌の効果を保証するものではありませんが、冷え・めぐり・体のこわばりが気になる、ゆらぎやすいといった方は、日々のスキンケアやセルフケアと合わせて、こうしたサロンケアを取り入れてみるのもひとつの方法です。
よくある質問(Q&A)
Q1. 脂性敏感肌とは何ですか?
A1. 脂性敏感肌とは、皮脂が多くテカりやすいのに、刺激に弱く荒れやすい肌の状態を指します。皮脂の量が多いだけでなく、肌のバリア機能が低下して水分を保ちにくくなっていることが背景にあると考えられています。2025年の研究でも、皮脂の多さと敏感さが同時に起こる肌質として注目されています。テカリとカサつき・ゆらぎが同居するのが特徴です。
Q2. 脂性敏感肌とインナードライの違いは何ですか?
A2. 大きく重なる部分が多く、どちらも「皮脂は多いのに内側は乾いている」状態を指します。インナードライは水分不足で皮脂が過剰になった状態を強調した呼び方で、脂性敏感肌はそれに加えて刺激への弱さ・赤みやピリピリ感を伴う点が特徴とされます。いずれも皮脂を取りすぎるケアは逆効果になりやすいと考えられています。
Q3. 脂性敏感肌はどんなスキンケアをすればいいですか?
A3. 皮脂を落とすことより、うるおいを守りながら刺激をためないケアが基本とされます。洗顔はこすらず短時間で、セラミドやアミノ酸などでバリア機能を支え、赤みが気になるときはグリチルリチン酸などの成分が選ばれます。ベタつくからと保湿を省くとかえって皮脂が増えやすいとされるため、水分と油分のバランスを意識しましょう。
Q4. 脂性敏感肌で避けたほうがいい習慣は?
A4. 洗いすぎ・こすりすぎ・皮脂を取りすぎるケアは避けたほうがよいとされます。あぶらとり紙の使いすぎや洗浄力の強い洗顔の多用は、かえって皮脂の過剰分泌やバリア機能の低下につながることがあります。睡眠不足やストレス、甘いもの・脂っこいものへのかたよりも肌のゆらぎに影響しやすいと言われています。
Q5. 脂性敏感肌に美容鍼灸は役立ちますか?
A5. 美容鍼灸は気血のめぐりや自律神経のバランスを整えることを目指すコンディショニングとして知られています。東洋医学では肌の状態を体の内側のめぐりや湿熱のアンバランスと関連づけて捉えるため、めぐり・冷え・体のゴワつきが気になる方が、日々のスキンケアと合わせて取り入れる選択肢の一つです。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。

















