
首にできる「縦しわ」は、紫外線や乾燥が原因です。首にできる「横しわ」は、生活習慣が関係しています。首は、顔よりも皮膚が薄く、加齢の影響が現れやすくなります。実際『首は見た目年齢を決める』といわれるほど、目立つ部分です。
紫外線や乾燥が「縦しわ」の原因
紫外線によって、ハリと弾力を保つコラーゲンとエラスチンの働きが減少し、ハリが保てなくなり、「縦しわ」が深くなります。また、乾燥によって、肌のバリア機能(保湿成分)が失われ、細かいシワができること以外にも、首の下にある広頚筋という筋肉が弱まり縮むことで、「縦しわ」が目立ちます。
姿勢の悪さが「横しわ」の原因
首は皮膚が薄く、たるみやすいため、姿勢を意識していないとすぐにしわが寄ってしまいます。スマホやパソコンなど、下を向いた姿勢で長時間過ごしたり、姿勢の悪さから首や肩がこっていたら、首がむくんで「横しわ」ができやすくなります。
また「横しわ」ができる原因のひとつが枕の高さです。枕が高いと頭の位置が高くなるため、眠る時に顎がひいて、首にシワができやすくなります。
一方で、首の皮膚の下には頚椎という骨や軟骨、甲状腺がありそのでこぼこにそって皮膚にしわができるために、骨格的にしわが出来やすい方もいます。
猫背がシワの原因
無意識に取っている姿勢が、シワだけでなく呼吸や血流の循環に直接悪影響を及ぼしています。例えば背中を丸める猫背は普段の肺活量を下げてしまう不健康な姿勢です。背中が伸びている状態での肺活量は3000ccほど、猫背だと200から500ccにしかなりません。さらに背中が丸まっていると胸部や内臓が圧迫されて血流が悪くなります。腹部が折れ曲がると男性では前立腺が、女性では子宮が圧迫され、がんのリスクが高まると言われています。呼吸や血液循環の悪影響によって免疫機能が低下して老化にもつながります。
正しい姿勢は、骨盤の中心にある仙骨が立っている状態です。猫背の場合は、この仙骨が立たなくなり正しい姿勢を保つことが難しくなります。その原因として、腰や背中の筋力の低下し、骨や関節も弱くなることが挙げられ、廃用性萎縮(寝たきりで体の機能が低下すること)を長い時間かけて進行させているような状態です。
また筋力の低下によって体の発熱力が低下し、低体温状態になり免疫力が下がります。さらに筋力の低下は顔まわりの筋肉にも影響して、噛み合わせが悪くなり、この咬合障害によっても唾液の分泌が悪くなり、それが免疫力の低下をされに進めてしまいます。
姿勢を改善するためには、背筋がピーンと立つスックワットがオススメです。背筋をしっかり伸ばすと、骨盤の上に仙骨が正しく乗り、胸部と胸部が拡がって首がひっこみ、外見も身体機能も連動してよくなります。さらに猫背やうつむき姿勢で縮んでいた首のシワも改善します。
首の筋肉を鍛えるのはNG
首のシワを予防するために顎を上にあげて伸ばしたり、トレーニングで鍛えたり、首をストレッチしてシワを予防する方法は、逆にたるみの原因になります。
首の左右にある広頚筋は下に引っ張る力が強く、上を向いた時に口元の周りを下に下げようとする力があります。なので、この筋肉を鍛えてしまうと引っ張る力が強くなりたるみの原因になります。むしろ広頚筋は鍛えるのではなく、ほぐすことを優先してください。
首のシワにはレチノール
米国皮膚科学会が推奨するアンチエイジング成分は、ビタミンA(レチノール)とα-ヒドロキシ酸(AHA:グリコール酸・乳酸)です。
レチノールは医師を含めた様々な専門家が昔からおすすめしている成分であり、効果を示す論文も多くあります。レチノールの効果は表皮のヒアルロン酸産生や真皮のコラーゲン産生を促す効果が確認されており、シワ改善、肌の弾力アップが認められています。特に目尻のシワや首のシワ改善が挙げられ、8週間で改善するデータが資生堂から発表されています。
一方で、海外の研究報告の目を向けると、0.05%ぐらいの低濃度でも肌の水分量、弾力、シワ、真皮の密度の改善報告があります。またレチノールを塗ると古い角質層が剥がれる作用(ターンオーバーの促進)が知られています。ただし反応性が高いため、刺激や赤みを感じる方が多く、敏感肌の方は注意しましょう。
レチノールの注意点
レチノールは、ビタミンAの一種で、表皮細胞を活性化してターンオーバーを促し、ハリのある肌に整えることができます。さらに表皮にあるヒアルロン酸の産生や真皮のコラーゲンやエラスチンの生成を促すことでシワの改善効果が期待できます。
様々なレチノール入りの化粧品が販売されていますが、急激に新陳代謝を促進するため肌への作用が大きく「レチノイド反応(A反応)」という副作用(肌の赤み、肌の乾燥、皮剥け、ヒリヒリ感など)が出ることもあります。特に肌の水分量が少ないと肌のバリア機能が低下するので肌トラブルに繋がります。
レチノールには様々な種類があり、高濃度配合と謳っていてもほとんど作用が認められていないものを使って高濃度にしている化粧品もあるため、単純に濃度(%)だけで判断しないようにしましょう。
レチノールのように表皮を肥厚させてシワを改善するようなものは扱いが難しいのも現実です。錯角化や過角化、乾癬のような異常角化によってシワを改善するのであれば、表皮を厚くすることをしっかりコントロールしてシワを目立たなくすることが大切です。
シワに有効な成分
シワ改善として有効性が認められて製品化されている代表的な成分が、ナイアシンアミド、レチノール、ニールワンです。ナイアシアミドは表皮と真皮どちらにもアプローチして、表皮の角化促進、表皮のヒアルロン酸をアップ、真皮には繊維芽細胞の増殖促進、コラーゲンの産生を促進します。ナイアシンアミドは、表皮にも真皮にも効く有効成分で、それによってシワを改善するものです。
レチノールは、表皮にアプローチし、表皮のヒアルロン酸を増やすことでハリ感やツヤ感を出すことによってシワを改善するものです。因みにレチノールでシワ改善と言えるものは、資生堂ピュアレチノールだけです。
ポーラのニールワンは、真皮にアプローチする成分になり、真皮にあるコラーゲンやエラスチンの分解を抑えることによってシワを改善するものです。
それぞれアプローチする場所が違い、ナイアシンアミドは表皮にも真皮にもアプローチし、レチノールは表皮、そしてニールワンは真皮にアプローチしています。
まだ製品化されていない成分として、その他にも、日本メナード化粧品が安定化ビタミンE誘導体というシワ改善の承認を下ろしています。安定型ビタミンE 誘導体は、Dl-α-トコフェリルリン酸ナトリウムM、通称 VEP-Mと言い、これも表皮にアプローチして表皮のセラミドやヒアルロン酸の酸性を促進してシワ改善するものです。
一方でライスパワーNo.11は、皮膚の水分保持機能を改善する保湿の有効成分として認められていますが、勇心酒造の開発したライスパワーNo.11+は、表皮と真皮にアプローチしてシワを改善するだけでなく、基底膜にもアプローチします。
基底層から新しい細胞は生まれ、表皮の細胞となり、最終的に角質となっていきますが、基底膜にアプローチして、セラミドの産生を促し、水分を維持して乾燥肌を改善する成分が承認されています。
シワや様々な皮膚の疾患には、この基底膜が関係しているのではないかと考えられ様々な研究が行われていました。表皮と真皮の間にある基底膜は、シワにも関係しているのではないかと言われており、基底膜のコラーゲンが破壊されるとシワができると考えられています。まだ未解明ですが、シワが深いところでは、基底膜のコラーゲンがほぼ壊れており、基底膜のコラーゲン壊れたことで、シワができるということは間違いないと考えられています。
ライスパワーNo.11+は、基底膜にアプローチして、基底膜のコラーゲンを増加させるだけでなく、表皮のヒアルロン酸、細胞間脂質を増やして表皮にもアプローチするし、真皮のコラーゲンの破壊も抑制することが確認されています。今までは表皮と真皮もしくは表皮だけ、真皮だけの成分が多くありましたが、この成分は3つ全てにアプローチする革新的な成分になるかも知れません。
乾燥肌に有効な成分
ヘパリン類似物質
乾燥肌のお悩みに効果的な成分の1つがヘパリン類似物質です。元は医療用の保湿剤として使われており、水分を肌に引き込む力に優れています。通常であれば皮膚表面に膜を張ることで水分を維持するものが多い中、角質まで水分を浸透させて維持してくれます。肌は油と水が交互に構成されており(ラメラ構造)に水分を浸透させて整えてくれることができます。
医療用のヘパリン類似物質(0.3%)は保湿だけでなく、抗炎症作用、血行促進によってターンオーバーを促進するなどの働きがあります。一般的に市販されている化粧品や医薬部外品には、〜0.1%のものが多く、毎日の保湿に使っていただくことができます。
ツボクサエキス(CICA成分)
ニキビの炎症を抑えるイメージ(創傷治癒)があるかも知れませんが、乾燥肌にも効果的な成分です。含まれるマデカッソシドは、皮膚の水分量を上げるというデータが公表されています。皮膚の水分量が上がることで、肌のバリア機能が維持されるということも分かっています。
グリチルリチン酸ジカリウム
医薬部外品の中で、古くから用いられてきた抗炎症作用のある有効成分です。肌の水分量が少なくなると、肌のバリア機能が低下して炎症を起こしやすい状態になります。さらに炎症を起こすとバリア機能が低下していく負のスパイラルになります。そのため上記で述べたヘパリン類似物質やCICA成分で保湿することも大事ですが、まずは炎症を起こしにくい肌にしていくことが必要です。
セラミド
細胞間脂質の要であるセラミドは、特に乾燥肌の人は少ない傾向があります。角質と角質の間を埋めるセラミドが少なくなると水分が失われていきます。そのため乾燥肌の人はセラミドを補うことが大切です。このセラミドには様々な種類があり、人型セラミド、植物セラミド、類似セラミドなどがありますが、基準量をしっかり使っていきましょう。
美容鍼で首のしわ対策
美容鍼が首のしわ対策になるのは、首の筋肉の緊張をほぐし、しわ周辺の血流をよくすることができるからです。その結果、ターンオーバーが正常化して首のシワが薄くなるという効果が得られます。首の筋肉の緊張は、首のしわだけに関係するわけではありません。首の前面の筋肉が緊張すると、頬の皮膚が引っ張られるため、頬のたるみ、ほうれい線が目立つことになります。
また、首には「胸鎖乳突筋」という首の筋肉があります。女優の石原さとみさんが「私、胸鎖乳突筋を鍛えてるんです」と発言するほど、美容には大切な筋肉です。この筋肉に美容鍼でアプローチすることで「首の横しわ」の改善だけでなく、お顔のリフトアップ、むくみの撃退、肩こり解消につながります。
首のシワを予防するツボ
首元の血行を促して、首のシワを予防してくれるツボを紹介します。
天窓(てんそう):耳の後ろの骨から真下におろした線と、のどぼとけの線が交差するところにあるツボ

ツボを押す際には、親指以外の4本の指の腹で円を描くように揉み解すようにします。軽めの強さで5分程度押してください。ぜひ知識を持って自分の大切な身体を癒やしてください。
【本コラムの監修】

・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。