マスク生活で肌の調子が悪くなった、マスクによって顔が老けたように感じるなどの話を多く聞くようになっています。その理由が、マスクをつけていることでお顔の表情が乏しくなり、筋肉を動かさなくなってしまうので「表情筋」が衰えてしまうことが原因です。このことで、シワやたるみの原因になったり、口臭の原因など、マスク老けと呼ばれる症状が感じられるようになります。
マスク老けセルフチェック
以下のチェックリストに3つ以上当てはまるとマスク老けの可能性があります。
- 口角が下がってきた
- ほうれい線・二重顎が気になる
- 以前より滑舌が悪くなった
- マスクしていると口呼吸になる
- 口の中が乾燥している
- 口臭が気になる
マスク老けの症状
マスク老けの症状を大きく分けると、表情筋を動かさないために起きる「顔のシワ・たるみ」、口呼吸になってしまっていることで起きる「口臭」があります。特に「口臭」は、口内環境が悪化している可能性があるため、虫歯や歯周病の原因になるだけでなく、生活習慣病などの病気につながる恐れがあります。
また、マスクで肌が擦れ、肌の乾燥が進んで炎症が起こると、皮膚がたるむことがあります。さらにマスク内での雑菌繁殖によっても炎症が拡がります。このように気づかないうちにエイジングでないたるみが進行してしまうケースがあります。
筋肉は動かさなければ硬くなり、さらに動きづらくなります。結果的にますます表情筋の衰えを加速させてしまうため、マスクをしていても、していなくても、なるべく表情を動かすことが大切です。
お肌がたるむ外的要因
お肌がたるむ外的要因は主に、紫外線、環境汚染、摩擦や圧迫、スキンケア不足の4つです。
紫外線
紫外線の中でも、特にUVAと呼ばれる紫外線が問題で、皮膚のコラーゲンとエラスチンの破壊を招きます。コラーゲンとエラスチンは肌の弾力を維持する重要な成分で、これらが減少すると肌はたるみやすくなります。紫外線によるダメージは長期間にわたって蓄積されるため、たるみのない肌を保つためには若い頃からの紫外線対策が必要になってきます。
環境汚染
環境汚染による影響も肌のたるみの一因になることがわかっています。大気中の微粒子、排気ガスなどは肌の表面に付着し酸化ストレスを引き起こします。この酸化ストレスはコラーゲンやエラスチンにダメージを与えることがあります。
摩擦や圧迫
スマートフォンの使用が増えた現代社会では、顔に対する摩擦や圧迫も無視できません。例えばスマートフォンを長時間使っていると首や顎に対する圧迫が増えることになります。スマートフォンを見るときは、首を下に曲げて前かがみになることが多く、この姿勢が癖になると姿勢や血流が悪くなり、結果的に老化を早める原因になります。
スキンケア不足
肌のケア不足がたるみの原因になります。適切なスキンケアが行われていないと肌のバリア機能が弱まり、乾燥や炎症が引き起こされやすくなります。特に洗顔が不十分だと汚れや皮脂が除去されず、肌の老化を加速させます。一方で乾燥肌はコラーゲンの減少を招き、その結果肌のたるみが促進される可能性もあります。
お顔のたるみの内的要因
お顔のたるみの内的要因は、加齢、骨格と筋肉、ホルモンバランスの乱れ、遺伝的要素、生活習慣です。
加齢
加齢は、避けられない内的要因であり、20代後半から30代にかけて肌の老化が始まるとされています。この時期からコラーゲンとエラスチンの生産が減少し、細胞の代謝も低下します。特に40代以降では、この減少が顕著になり、シワやたるみが明らかになってきます。またヒアルロン酸などの保湿成分も減少し、肌が乾燥しやすくなるため、さらにたるみを悪化させる可能性があります。
骨格と筋肉
特に目の下のたるみの原因となる要素は2つあります。そのうちの1つが骨格です。特に目の下の頬骨が大きく影響します。この頬骨が加齢による骨の老化や骨粗鬆症で下がったりすることで、その上の皮膚が落ち、目の下のたるみだけではなく、ほうれい線やマリオネットラインなどのシワが刻まれやすくなります。
そして、目の下のたるみの原因のもう1つは筋肉です。この筋肉こそが個人差の大きく出るところであり、筋肉が硬くなりすぎていたり、逆に弱くなりすぎて本来の機能を果たさなくなることによって目の下のたるみが生まれます。
ホルモンバランスの乱れ
女性の場合は、ホルモン変動の影響で肌に大きな変化を与えます。例えば女性ホルモンのエストロゲンは、肌の弾力性を維持する役割があり大事なものですが、更年期に入るとエストロゲンの量が減少し、肌の張りが低下しやすくなります。肌の水分量や脂分が変動し、肌のたるみに影響を与えることも少なくありません。さらにエストロゲンの分泌量が減るとプロゲステロンやテストステロンなど他のホルモンバランスも崩れ、その結果肌の脂分が減少したり、逆に過剰になったりして肌の状態が安定しなくなります。
遺伝的要素
遺伝的要素も肌の基本的な特性や老化の進行速度に影響を与えます。例えば親が早くからたるみが出る傾向にある場合、その遺伝的特性が子供に引き継がれる可能性があります。親子が顔つきや体型が似てくるのと同じように肌質も遺伝的な要素が大きくなります。
生活習慣の乱れ
生活習慣の乱れも体の内側からダメージを与え、たるみを形成します。例えば不規則な睡眠習慣は肌の修復作業を妨げ、肌の再生に悪影響を与えます。肌のターンオーバーも乱れ、皮膚細胞が新しく生まれ変わるスピードが遅くなり、その結果肌質が低下、たるみや乾燥シミができやすい状態になってしまう可能性があります。
不健康な食生活も問題になり、高糖質や高脂肪の食べ物は体内で糖化を引き起こし、肌の老化を促進させます。さらにビタミンCやビタミンEなどの抗酸化成分が不足すると酸化ダメージを体が中和することができなくなります。紫外線やストレスなどで受けたダメージでどんどん細胞が傷ついて劣化していくことになります。乱れた食生活を長年続けると、肌のたるみの原因になってしまいます。
さらに砂糖の摂り過ぎもたるみの原因になります。糖分の摂り過ぎによる糖化は、肌の焦げになりたるみを引き起こすことになります。摂取し過ぎてエネルギーになりきれなかった余った糖分は血液中に漂い、体内のタンパク質と結合することで体に炎症を引き起こしてしまいます。
このAGEs(糖化最終生成物)は、コラーゲン同士を結合させて肌の弾力を低下させる性質を持っています。さらに厄介なことに1度溜まるとなかなか外に出ていきません。AGEsが体の中で溜まる原因のうち半分以上は食事に含まれており、糖分の摂り過ぎには十分に注意が必要です。
ちょっと甘いものを食べすぎたと思った時は10分だけでも近所散歩する程度で 良いので運動をするようにしましょう。それだけで体の中に入った糖が使われて血糖値が上がりにくくなり、たるみの原因になるAGEsが発生しにくくなります。
お肌の構造
まずたるみの原因にもなる乾燥肌は、肌に元々備わっているバリア機能の低下です。バリア機能は皮脂膜・天然保湿因子・細胞間脂質の3つの因子が、役割を担っています。中でもバリア機能の8割を担う〝細胞間脂質〟は水分保持機能も果たしており、肌のうるおいを保つ上で欠かすことのできない保湿因子です。
〝細胞間脂質〟を理解するには、まずお肌の構造、その最上層である角質層についての理解が必要です。お肌の表面は、皮脂腺から分泌される皮脂と汗でできている「皮脂膜」で覆われおり、そこに皮膚常在菌がいて、お肌を酸性に保っています。その下には、「角質層」、「顆粒(かりゅう)層」、「有棘(ゆうきょく)層」、「基底(きてい)層」が並んでいます。これらを表皮と呼び、4層構造になっています。その奥に真皮、続いて皮下組織、そして表情筋があります。
表皮細胞は、表皮の最下の基底膜で生まれて、上部の角質層までくれば死んでしまいます。この表皮細胞が生まれて死んでいくプロセス(角化)を表皮の新陳代謝、つまりターンオーバーです。このターンオーバーの中で、細胞間脂質(セラミド、コレステロール、遊離脂肪酸など)が生まれます。細胞間脂質は、ラメラ構造になっており、水分の層と脂質の層が規則正しく交互になって薄い層状になっています。
お肌の乾燥はバリア機能の低下
細胞間脂質の主成分はセラミドです(50%を占める)。つまりバリア機能の大半は、セラミドが担っていると言っても過言ではありません。肌のセラミドが減少すると、しっかり保湿をしても肌がつっぱったり痒くなったりしやすくなります。肌の保湿成分であるセラミドはターンオーバーとともに作られ、ターンオーバーが低下するとセラミドも減ります。
その為にターンオーバーを整えることは、セラミドを増やすことに繋がり、1番の乾燥対策になります。しかし気温や湿度、紫外線など外的な刺激や、ストレスや女性ホルモンなどの内的な要因によって細胞間脂質にも影響を与えます。また表皮だけでなく真皮の状態もハリやツヤに影響を与えます。その他にも睡眠不足でターンオーバーが乱れている状態、またその他の原因で健康状態がよくない場合なども、細胞間脂質にも影響を与えます。
「うがい」でほうれい線を予防する
現代人の多くは表情筋の運動不足の状態にあります。またマスクで口元が隠れているため表情をつくらなくなっています。これらの結果として、口角を上げる習慣がなくなり、口周りの筋肉が使われなくなりフェイスラインが緩んでいます。特にスマホやパソコンなどで下向き姿勢になると顎がたるんできて2重顎の原因にもなります。表情筋や口周りの筋肉の衰えを感じている方は、日常から意識して顔周りの筋肉を動かすことが大切です。
笑顔を作る筋肉の上唇挙筋と頬骨筋は、頬にお水を溜めて「うがい」することで鍛えることができ、老け顔を予防できます。私たち日本人は欧米人と違って、お顔の一番外側にある大頬骨筋を使わない控えめな笑顔が特徴です。そのため顔の筋肉が衰えがちであり、ブクブクっと頬に水を溜めて「うがい」すると頬っぺたの下の頬骨筋口輪筋が鍛えられるため明るい笑顔をつくることができるようになります。その結果、口角を上げる口角挙筋も鍛えられ、顔全体が引き上げられて締まったお顔になります。
また、ほうれい線が気になる方にも「うがい」は効果的です。ほうれい線は、口をすぼめる動きをする口輪筋と、その周りの筋肉との境目につくシワです。口輪筋の周りには唇を上げる時に使う上唇挙筋と、笑顔など頬を上げる時に使う頬骨筋、口を広げるときに使う笑筋などがあります。これらの筋肉の境目がはっきりしてしまうと老け顔の原因になります。
ほうれい線が目立つ原因は、加齢による表情筋の衰え、皮膚の弾力の低下、繊維組織の衰えです。頬をふくらませるうがいも効果的ですが、食事の時に歯を均等に使って食べ物をしっかり噛むことも大切です。
美容鍼で筋肉をほぐす
刺鍼することで、交感神経が抑制されて筋肉がほぐれます。その刺激によりキカルシトニン遺伝子関連ペプチドが感覚神経末端から放出されて、筋肉の血管を拡張させることが明らか
になっています。つまり自律神経が整うことで、血管が拡張して筋肉が緩むのです。硬くなった表情筋を丁寧にほぐして、筋肉や骨周辺を柔らかくしていきます。
また頭への刺鍼は、頭皮の筋肉に働きかけることができます。頭皮には30種類以上もある表情筋につながる前頭筋や側頭筋などがあり、鍼でほぐしてあげることで、お顔周りの緊張をほぐれて、目元やほほなどお顔全体へのリフトアップ効果をもたらします。また自立神経系への働きかけが強いため、深くリラックスすることができます。
フェイスラインをほぐすツボ
固まった表情筋(特に頬やフェイスライン)をほぐしてあげることも大事です。また頭皮のたるみによって、顔が下がり、たるみの原因になることがあります。
マスク肌荒れのツボ
翳風(えいふう):耳の付け根の後ろ、口を開けるとくぼむところ
翳風を押すことでリンパの詰まりが解消されます。マスクによる負担で詰まったリンパをながしましょう。
側頭筋のコリ(耳の周り)
耳の周りを4本の指でほぐしましょう。マスクに引っ張られて側頭筋が凝っています。側頭筋が凝ると、ほうれい線などのたるみの原因になります。側頭筋をでほぐすことで、たるみ解消や、お顔のリフトアップにも効果的です。
【本コラムの監修】
・経歴
大学卒業後、美容の世界に入り、セラピストへ。豊富な美容知識や実務経験を活かし、その後、10年間は大手企業内講師として美容部員やエステシャンの育成、サロン店舗運営のサポートを行う。現在は、セラピスト、エステティシャン、美容カウンセラー、鍼灸師の経歴を活かし、お肌とこころと身体のトータルビューティースタイルを提案。表面だけでなく根本からのケアとして、老けない生活についてのコーチングを行う。